異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

文字の大きさ
159 / 183
テラ宙域編 4章

第11話 An intruder has penetrated our force field

しおりを挟む
 正秀とスイはカタパルトデッキへと誘導されていた。
 ワープ終了と同時に出撃をする予定だからである。
 後方にはエンジェル隊も控えている。

 『おーい、聞こえる?』

 A.A.S.の端末を通して、為次の声が聞こえてきた。

 「おう、ばっちりだぜ」

 「です」

 『間もなくワープアウトします。カタパルトの使用方法は大丈夫ですか?』

 今度はメイが話し掛けてきた。
 だが、そこへ為次が割り込む。

 『待った、待った。カタパルトは今回使わない。会敵するまでに宇宙での機動に慣れてもらわないと』

 『その心配は不要だぞタメツグ。オートスタビライザーを起動しておけば子供でも宇宙遊泳はできるからな』

 「おっと、アイちゃん艦長。それじゃダメなんだぜ。ヒーローってのは誰よりも強くなくちならないのさ。宇宙遊泳なんてチンタラしたマネしてたらヒーローの名折れだぜ!」

 などと、戦車から取って来た大剣を振り回しながら意味不明な拒否をした正秀。
 ついでに、変なポーズも取っている。

 『だってさ…… でも、マサの話はまともに聞かない方がいいかも』

 「なんだと為次! 聞こえてるぞっ」

 『あひゃひゃ』

 「後で覚えとけよっ!」

 『それって悪者のセリフじゃ……』

 「うっせー!」

 聞いていた艦長は少々、呆れて言う。

 『分かった、分かった。好きにしたまへ。だから喧嘩をするな』

 「おう」

 「です」

 と、そこへメイからの報告が入る。

 『お取り込み中のところで申し訳ありませんが、ワープアウトします。3…… 2…… 1…… 今』

 色鮮やかな光のトンネルを抜けると、後方から幾つもの光の筋が前方へと流れて行く。
 光の筋は徐々に短くなり点となるが、今度は逆に前方から後方へと伸び始めた。
 その筋も最終的には点となり、ワープ終了と共に星々の輝きとしての姿を現すのであった。

 『タイフーン交戦中。残機7、うち大破は2機です』

 「まさか、もうられてるのか?」

 『向こうは補給したばかりだからな』

 艦長は正秀に問に、そう答えた。

 「ん? 補給が完了してるなら、いいじゃないか」

 『多分、あっちのエンジェル隊が全部新品ってことなんじゃ……』

 『その通りだタメツグ。戦闘経験など皆無に等しい』

 「……そうか、行こうぜ…… スイちゃん」

 「はいですっ」

 『いてら』

 「メイちゃん。悪りぃが、やっぱカタパルトを使うぜ」

 『了解、位置に着いて下さい』

 「おう」

 「です」

 二人はそれぞれ射出プレートに乗ると、背部に板状の物が迫り上がり体を固定した。
 そして、そのまま巨大な多角形のトンネルらしき場所へと移動される。
 直径は30メートル以上はあるだろう、周りは青白い光が薄暗く明滅している。
 プレートはそのまま前に進むと床を離れ、トンネルの入り口を過ぎた円の中央付近で宙に浮いた状態になった。

 『11番機、12番機、射出準備完了。ターゲット、サラマンダー、Aクラス。マサヒデさん、スイさん、データは見れてますか?」

 「おう、この赤い蛇だろ」

 「違うのです、これはサラマンダーではないのです」

 A.A.S.の情報統合システムであるグラススクリーンに映し出される魔獣は赤く長い蛇であった。
 アクアに発生しているトカゲに近い体を持つ同じ名前の魔獣とは、見た目はかなり異なる。
 但し、属性は同じ火であろう、全身に炎を纏っているので赤く見える。

 『きっと魔獣も宇宙仕様なんでしょ』

 為次は言った。

 「そうなのですか……」

 『いや知らんけど』

 「はう……」

 「スイちゃん、為次とイチャイチャするのは後だ。早く助けに行こうぜ」

 「はいです」

 『イチャイチャとかしてないし!』

 「メイちゃん、出してくれっ」

 『待った、待った』

 「なんだよっ、為次」

 『スイ、ユーナにポーション渡しといて』

 「はいです。ユーナ様っ」

 と、別の射出プレートに乗っているユーナにヒールポーションを数本投げた。

 『ユーナはそれ持って、あっちのエンジェルに渡しといて』

 「分かった。渡す」

 「もういいだろ、メイちゃん出してくれ」

 『了解、カタパルトチューブ内重力偏差開始。3…… 2…… 1…… 11番機射出』

 正秀を乗せたプレートが凄まじい勢いでトンネル内を加速する。
 重力制御によって加速度を打ち消してはいるが、完全には無理だ。
 固定されている背部プレートに体が押し付けられる。

 「うぉぉぉぉぉ!」

 『続けて12番機、3…… 2…… 1…… 射出』

 「うにゃぁぁっ!?」

 二人はカタパルトチューブと呼ばれるトンネルを抜けると、一瞬で母艦から遠ざかって行く。

 『マサ、スイ。機動のテストしといて』

 「おう」

 「です」

 二人は猛烈な勢いで流されつつ、右や左に動いてみる。

 「よっ、とっ、はっ。イメージすれば好きな方に動けるんだな、これは凄いぜっ」

 元々、運動神経バツグンな正秀は初めてなのに思い通りに動けている様子だ。

 一方、スイは……

 「おとととっ、なんですかこれはっ。はうっ!?」

 クルクル回ったりフラフラしたりで、まともに飛べていない。

 『スイ、オートスタビライザー入れて』

 「は、はい。えっと…… これですね」

 オートスタビライザーが起動すると、体が安定した。
 移動の方も問題なくできるようになった。

 「おーっ、動けるようになったです」

 そこへ、メイからの通信が入る。

 『正秀さん、スイちゃん。間もなく会敵します。気を付けて』

 「了解」

 「です」

 『アイちゃん、向こうのエンジェル隊を下げれない?』

 『援護は要らないのか?』

 『弾をばら撒くのに邪魔かも』

 『……よかろう、メイ!』

 『はい。こちらエクステンペスト。タイフーンはエンジェル隊を後退させて下さい』

 こちらからの要請にタイフーンは素直に従ってくれた。
 エクステンペストがAAAクラスの魔獣を損害無しで討伐の報告は受けていたし、何より新人だけの部隊でAクラスの討伐は困難を極めるのは目に見えていた。
 事実、部隊の半数は既に戦闘不能となっている。

 サラマンダーに取り付いていたエンジェル達が一斉に散開するのが見て取れる。
 それを見た為次は指示を出す。

 『よしゃ、スイはチェーンガンで牽制して。ロックしてから撃てば後は自動で追尾するから』

 「はいですっ」

 メニューからチェーンガンを起動し、サラマンダーを注視するとロックオンされる。
 一連の動作はすべて脳波コントロールが可能となっているが、慣れも必要な為にグラススクリーンによる操作も併用していた。


 「喰らうのですよ」

 ダララララララッ!

 フレキシブルアームの先端に装着されているチェーンガンから高速の弾丸が無数に撃ち出される。
 見越し射撃はもちろん、敵を主弾幕へと誘導するのに牽制射撃も混ぜながら全自動で狙いを定めてくれる。

 『12番機交戦開始』

 『うむ』

 『んじゃ、マサもよろしく。イフリート戦と違って熱はシールドで防げるはずだから』

 「任せなっ!! ってバリアじゃないんだな……」

 『あっしまっ…… んも、まあいいか。えっと…… スイは撃ち過ぎないで、実態弾だからすぐに弾切れになるよ』

 「はいっ」

 ばら撒かれる弾丸がサラマンダーの胴体を打ち付けるたび、肉片と共に炎が飛散する。
 口を開けて何かを叫んではいるが、真空なので相変わらず聞こえない。
 それでも、怒っているのは何となく理解できた。
 鬱陶しいスイの攻撃をどうにかしたいのであろう。
 突撃はして来るが、顔面に弾丸が当たると諦めて体をクネらせながら逃げてしまう。

 『スイ、射撃を減らして引きつけてよ。その隙にマサ』

 「なんだよ、スイちゃんをおとりに使うのか?」

 『当然だってば。何もしなければアイツはスイを襲う。帰還しても船ごと襲って来るよ…… 忘れたの?』

 「……だったな」

 『どういうことだ? タメツグ』

 『アイちゃん話は後で、マサの一撃で終わらせるから』

 「へへっ。為次、言ってくれるじゃーねかっ」

 正秀はスイの後方上部に距離を取って位置に付いた。
 チェーンガンによる弾幕を徐々に減らしてサラマンダーを引き付けるスイ。

 そして正面に捉えた次の瞬間……

 スイは射撃を止めると一気に上へと移動する。
 同時に正秀は上からサラマンダーの頭部目掛けて全身全霊の斬撃を叩き出す!!

 「マサヒデ様っ!!」

 「おっけー! スイちゃん!」

 大剣に淡い光が纏、揺らめく……

 『11番機も攻撃開始の模様』

 「行くぜっ! 必殺滅殺撲殺ざぁぁぁぁぁん!!」

 刀身がサラマンダーの鼻先をぶった斬る!

  ーー 一閃 ーー

 激しい爆発が胴体を駆け抜ける!!

 ……………
 ………
 …

 ーー ブリッジ

 「全機収容完了しました」

 戦闘は正秀の一撃により、呆気なく終わった。

 「うむ、本艦はこれより通常形態に移行後、再度ヒマワリに向かう」

 「了解」

 サラマンダーの死骸が何処かへ流れて行く。
 顔面は吹き飛び、背中は尻尾の先まで砕き裂かれ1本の溝ができている。
 このまま何処まで漂って行くかは分からないが、恒星の重力圏を抜けるだけの速度は出ていない。
 何処かの星に落ちるのか、はたまた衛星軌道に乗ってしまうだろうか……

 「タメツグ……」

 「んー?」

 艦長は色々と聞きたいことがあったので補助席を畳む為次に話し掛けるが、後の言葉が出て来なかった。

 「……いや、ご苦労だったな」

 とりあえず、ねぎらいの言葉を掛けておいた。

 「うん。俺は何もしてないけどね」

 「そんなことはないぞ」

 「そう……」

 「向こうの大破したエンジェルも怪我は無いそうだ」

 「どうでもいいや、それより二人のとこに行ってくるわ」

 「ああ」

 ブリッジから出て行く為次を、艦長は少し寂しそうに見送った。
 そこへ囁く声が聞こえてくる。

 「アイちゃんカンチョ」

 「なん…… だと……?」

 鬼の形相でメイを睨む。

 「ひぃ!?」

 「もう一度言ってみろ!! メーイッ!!」

 「いぎゃぁ! やっぱり怒るじゃないっ!」

 「こっちへ来いっ」

 「いやぁぁぁっ、ごめんなさーいっ!」

 艦長はメイのアタマを掴むと、引き摺りながらブリッジを後にした……

 隣の席のオペレーターが連れ去られてしまったセリナは思う。

 「バカ」

 と…… 口に出していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...