異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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惑星アクア編 終章

第2話 現状確認

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 レオパルト2は貞宗宅の前で、ふよふよと宙に浮いていた。
 家の中をスキャンすると亀田夫婦とお風呂から上がったマヨーラが確認できる。

 貞宗はホイールスラスターの音に気が付いたのだろう、少し怪訝そうな顔をしてこちらに向かって来た。

 ガチャリ

 車庫の大扉の一部にある勝手口から出て来た。

 「お? なんだ?」

 目の前で浮いている戦車に驚いている様子だ。
 レオパルト2だろうとは思っているが、見た目が結構変わっているので戸惑ってもいるらしい。

 「隊長、出て来たよ」

 「だな」

 「スイのお父様なのです」

 「そうだねー」

 「この人がスイのお父さん?」

 ユーナが訊くも、スイの返事は素っ気ない。

 「です」

 「撃ってみよっか」

 為次はニヤニヤしながら言った。
 冗談だと正秀は分かっているものの、拳銃を突然に発砲している所を見ているので少々不安もある。

 「撃たねーよっ」

 「バカタメツグ」

 「軽い冗談だって」

 「為次なら本気で撃ちそうだぜ」

 「うへへ、まあいいや。ところでさ、どう思う?」

 「どうって? 何がだよ」

 「隊長に決まってるでしょ」

 「……は? 別に変わりは無さそうだぜ」

 「だよね。上から見た時もだけど、変わり無さ過ぎじゃない?」

 「どういうことだよ、為次」

 「よしゃ。俺が隊長と話すから、みんなは通信を入れっぱにしといて」

 「お、おう」

 「はいです」

 「分かった」

 「アイちゃんもおけ?」

 『問題無い、常に監視はしている』

 『こっちからも見ているからな』

 と、エクステンペスト以外にスラスキアスからも通信が入った。

 「うい。んじゃ、とりあえず入るかな」

 為次はそう言うと、トラクタービームを起動させ車庫の扉をロックした。
 そのまま左右に動かして扉を開く。

 ガラン ゴロン ゴロン……

 「うぉっ!? なんだこいつ?」

 いきなり車庫の大扉が勝手に開き始めて驚いた貞宗。

 「あなた、どうかしました?」

 クリスも何事かと出て来た。
 その後ろからはマヨーラも付いて来ている。

 「あら? 何これ? サダムネはまた新しい魔導艇を作ったの?」

 「違う! 俺じゃない」

 3人が騒いでいると、レオパルト2は勝手に車庫へと入って行く。
 中へ入ると90度向きを変え、履帯を下に向けて着地した。

 「「「…………」」」

 亀田さんの人はどうしていいのか分からず、黙って見ているとハッチが開き中の4人が頭を覗かせる。

 「着いた」

 「おう」

 「あら皆さんでしたか」

 皆を見たクリスは笑顔で迎えてくれた。

 「ただいまクリスさん。それに隊長、マヨーラも」

 正秀が挨拶をするとマヨーラは嬉しそうに砲塔へと駆け登って来る。

 「マサヒデ! やっと帰って来た…… え…… 誰?」

 正秀と同じハッチから顔を出しているユーナを見ると、とたんに表情が険しくなった。
 咄嗟に言い訳を考える正秀。

 「お、おう…… えっとだな…… このは……」

 「私はユーナ。マサヒデの2番目の女」

 「うぉいっ! ユーナちゃん!?」

 「はぁぁぁ!? なんですってぇ! どういうことなの? ちゃんと説明してちょうだいマサヒデ!!」

 「ち、違うんだ。マヨーラ落ち着いてくれ」

 「違わないから落ち着かなくていい」

 ユーナは表情も変えずに、さも当たり前のように言い放った。

 「っ!? マサヒデ! 帰って来てイキナリなんなのコイツはっ」

 マヨーラは砲塔の上で仁王立ちになりユーナを指す。
 まだ半分車内に居る正秀からは、チラリとパンツが見えていた。

 「これには色々と事情があってだな……」

 「へー、そうなの。それなら詳しく聞かせてちょうだい」

 「お…… うぐっ……」

 相方の正秀は何やら修羅場らしい。
 為次にとっては予定通りであった。

 やっぱユーナを連れて来て正解だったわ、うひゃ。

 などと思っていながら面白そうに見ていた。
 しばらくすると、ギャーギャー騒ぐマヨーラに引き摺られ家の中へと連れ去られてしてまった。
 その後をユーナも澄ました顔で追いかけるのであった。

 為次もどうなるだろう? と思い付いて行こうとしたが、楽しみは後に取っておこうと降車して貞宗とクリスの前へと立った。

 「ただいま」

 「はい、お帰りなさい」

 為次が降車するのを見て、スイも降りて来る。

 「スイも一緒なのです」

 「そうね、スイちゃんもお帰りなさい」

 「はいです」

 時折、リビングの方からマヨーラの甲高い声が聞こえてくる。
 しかし、為次は気にする様子も無く貞宗を見て笑っていた。

 「ふんっ、その様子だと成果はあったようだな」

 「まあね」

 「で、どうだったんだ?」

 「んまあ、控えに目に言っても大収穫ってとこだねぇ」

 「ふむ、レオも随分と様変わりしたようだな」

 「見た目はA7+だけどね、中身は…… 企業秘密かな」

 「ちっ、もったいぶりやがって」

 「あなた。ここで立ち話もなんですから、中へ入ったらどうですか。タメツグさん達も帰って来たばかりでですし」

 「お? あ、ああ…… そうだな」

 クリスの提案にリビングへ行こうとするが、マヨーラのうるさい喚きが絶え間なく聞こえてくる。

 「「…………」」

 為次と貞宗は黙って顔を見合わせた。
 それを見たクリスは提案してくれる。

 「そうだわ、近くのカフェにでも言って来たらどうかしら?」

 「それが良さそうだな…… 仕方ない喫茶店にでも行くか」

 「え、カフェじゃないの?」

 「どちらも同じだ。いちいち細かいことを気にするな」

 「はいはい」

 「行くぞ、山崎」

 「あ、ちょっと待って。スイはどうする?」

 「はい。スイも一緒に…… あ…… えっと、せっかくなのでクリス様のお手伝いを」

 「まあ、スイちゃんったら。助かるわぁ」

 「えへへー、です」

 「では行ってくる。すぐに戻って来ると思うがな」

 「はい。行ってらっしゃい」

 そんなこんなで、貞宗と為次は2人でカフェへと赴くのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 カフェは3区画先の角にあった。
 中々に趣きのある洒落た雰囲気のお店だが、如何せん広い。
 店員はマスターとウエイトレスの2人だけの様子だ。
 そのせいなのだろう、異様に広い空間ではあるがテーブル席が3つとカウンター席があるだけであった。

 その内のテーブル席の1つに貞宗と為次は向かい合わせで座っていた。

 「お待たせしましたー。えっと黒苦茶がー」

 「ああ、俺だ」

 「はい、どうぞ」

 そう言いながら、注文したドリンクを持って来たウエイトレスは湯気の立つカップを貞宗の前へと置いた。
 もう1つのグラスは為次の前に差し出される。

 「では、こちらがキャベツジュースで」

 「どもども」

 「では、ごゆっくり」

 ウエイトレスがカウンターの方へと戻ると、貞宗は怪訝そうに言う。

 「それ飲めるのか?」

 「慣れると意外と上手いッスよ」

 「お前が好きなら構わんが…… それで、宇宙はどうだった?」

 「んー、それなりに成果はあったッスよ。バーサーカー化も治せそうだし、レオも宇宙をちゃんと走れるようにしてもらったし」

 「ほう、そいつは良かった」

 「あ、でもレオの調整が終わってなくてね。できれば魔導機関の最終調整をお願いしたいんスが」

 「ああ、構わんぞ」

 「隊長の方はどうッスか? ターナ達に変化は?」

 「…………」

 貞宗は何かを考える様子で、すぐには答えなかった。
 カップを手に取りコーヒーらしき飲み物をすする。

 カチャリ

 ソーサーへカップを戻すと、ようやく口を開く。

 「問題は無い。すべて順調だ」

 「へぇ…… そりゃ良かった」

 「…………」

 「シムリとシャルは? 見かけないけど」

 「ああ、あいつらならサイクスに居るぞ。シムリがスレイブに纏わり付いてな、押しかけ女房みたいなものだ、あれは……」

 「うは、スレイブも大変だわ」

 「シャルも妹だけでは心配らしいから、向こうに居るぞ」

 「そうなんすか。で、バハムートは?」

 「……っ!?」

 「塔に居るんでしょ?」

 「……どうしてそう思う?」

 「なんとなくね……」

 貞宗はジッと為次の目を見つめる。
 まるで品定めをするかのように……

 「なあ山崎よ」

 「あ、はい」

 「バハムートは生まれくるべき存在だとは思わないか?」

 「あー……」

 その言葉で理解した。
 貞宗は既にターナの意識に囚われているのだと。

 帰って来て早々に面倒臭いと思わずにはいられない為次。

 宇宙から観測した時点で平穏過ぎるとは思っていた。
 予定ではターナがバハムートを作るのを貞宗が阻止するはずであったが、形跡はまったく無かった。
 もし、実行されていたならば、なんらかの騒動が起こっていたと予想できる。
 しかし、その痕跡は見受けられない。

 ターナが魔獣の制作を諦めるとは考え辛い。
 ならば答えは簡単だ。
 貞宗が容認したのだと……

 となればバハムートは何処に居るのか?
 エクステンペストで地上をスキャンをした時には発見できなかった。
 限られる場所は3ヶ所。
 3機あるサテライトアンカーのどれかである。
 どれも対スキャン装甲を使用されているし、ノーマルシールドも健在であったから。

 それに、おおかたサイクスであるのは容易に予測できる。

 が……

 ただ1つ懸念があった。
 
 「もう結構成長してるんスか?」

 「ああ…… そうだ」

 「早いッスね」

 「失望させたか?」

 「いえ、全然まったく。俺達もね、やっぱり強い魔獣は作るべきだと思うようになってきたんスよ」

 その為次の言葉は本心ではなかった。
 むしろ、ただの嘘である。

 思考を汚染されてしまった者への反論など無意味だと知っていたから。
 ならばバハムートをさっさと見つけて退治した方が面倒臭くなくていいに決まっている。

 先にマインドジェネレーターを起動してしまう手もあるが、それに関しては情報が少な過ぎる。
 突然に記憶が戻ると、どのような影響が出るのか前例が無いのだ。
 狂った行動でもされてしまったら、たまったものではない。

 「本当にそう思うのか?」

 念を押すように貞宗は訊いた。

 「あ、はい。戻ったらマサやスイにも聞いてみるといいかも」

 こっそり会話を聞いている仲間への口裏合わせだった。

 「ふむ……」

 と、呟く貞宗はどこかしら安心した様子の表情が見受けられた。
 反面、為次は先程考えていた懸念が杞憂で終わればと思い安心どころではない。

 「地下に居るッスか?」

 「ああ……」

 為次はグラスを手に取るとキャベツジュースを一気に飲み干し、しばし考える。

 「ごくごくごく」

 魔獣の成長には生物の魂が必要だ。
 この1ヶ月少々の間で急速に育てるには人間を食べさせるのが手っ取り早い。

 宮殿の地下……

 「奴隷区画かぁ……」

 と、為次は呟くのであった。
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