私、「自然」に愛されて育ちました!

つきの

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春の章

保護されました。

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騎士団の男達は、そのあまりの美しさに立ち尽くしていた。


「…団長、この子かな?この国では見ない黒髪に、やたら生地の薄い衣服着てるけど。」

そうトニーが問いかける。


「…おそらくそうであろうな。…美しい。

っしかし、どうしたものか。眠っている所を黙って連れ出すのはいささか宜しくない。しかし起こすのもな…。大変気持ちよさそうだ。」

団長はやや頰を染めまくし立てた。


千春はむにゃむにゃと、何やら夢でもみているかのようだ。笑みを浮かべながら気持ちよさそうに体を丸めて眠っていた。


「可愛い…。
んー、後で謝ったらどうですか?このままにしておくのは危険だし。そもそも女の子が野宿はダメでしょ。」


「…仕方ない、気持ちよさそうに眠っているところ悪いが、起こすか。」


「あ、じゃあ俺が!」
トニーが嬉々として手を挙げる。


「?あぁ、頼む。」


「はいっす!」

そうトニーは返事すると、彼女へと近づく。

そして、起こそうとその体に手を伸ばしたその時…


彼女の目がわずかに開いたのだ。


「…おっ。目、覚めたかな?
可愛いお嬢さん、ちょうどいい。お話を……」




ーーー


千春はやけに周りが騒がしく感じた。


「(…んー、うるさいなぁ…。誰か、いる…?)」


そう眠たい目を何とか開くと、目の前がぼんやりと見えてきた。

そして、徐々に覚醒した千春の目の前に、
いかつい鎧を身に纏った男が、こちらに手を伸ばしているのが見えた。


そして、

「…おっ。目、覚めたかな?
可愛いお嬢さん、ちょうどいい。お話を……」


その男が声を掛けたのと同時に、千春はぎゅっと目をつむり、叫んだ。


「……ぃやっ…!!フィンーっ!!」

すると、騎士達の前に突然金髪の女が現れ、男達に向かって手を振り払った。

すると騎士団の周りをゴオッと強い風が囲む。


「うわっ!なんだ⁈ってか、あの女いつ出てきた⁈」
トニーは風に耐えながら、金髪の女を見て言う。


「トニー!それより愛し子様だ!」
トレインがそう叫ぶ。


「っ分かってる!」




しかしトニーが風にひるんだ隙に、千春は木のウロから飛び出した。


「っあ、待て!」



「(っなに、⁈)」

いかつい鎧の男が自分に何かしようとしていた。
千春は状況が理解できず、恐怖する。



転びそうになりながらも必死に走った。

しかし…

ザクッ!

「いたっ!」
突然の足裏の痛みに転んでしまう。



思わず裸足で出てきてしまったため、足裏を傷つけてしまったのだ。


『…千春、平気?怪我をしたの?』

フィンは騎士団の元から離れ、千春へと近づく。


「もう、何なの…っ?ぐすっ。」

訳も分からず、痛いのも相まって涙が出てきた。


すると、


「おーい、悪かったよ!そんな怖がらないでくれ!俺たちは悪い奴じゃないからさ!」


そう言い先程の男が走ってきた。その後ろには他にも同じような鎧を着た男達もいる。


「ごめんな、怖がらせて。大丈夫か?」


「…っ、足いたい…っ」
千春は男の方は見ずに俯きながら答えた。



「えっ!!もしかして怪我した⁈
っやべ!陛下に怒られる!無傷でって言ってたよな⁈」

トニーはそう言うと焦ったように後ろの男達を振り返った。


「トニー、下がってろ。

…申し訳ありません、愛し子様。驚かせてしまったあげく、怪我をさせるとは、私の思慮不足でした。」

騎士団長アクラスは千春の前にひざまづいて、頭をさげた。


「…?いとしごさま?
私、千春って言います。多分、人違いです…。それに、貴方達は…?」
千春は涙目になりながらも答えた。


「申し遅れました。私はルーテニア王国の騎士団、団長。
アクラス・ブラウンと申します。
そして貴女は確かに愛し子様です。その美しい黒髪に、黒い瞳。この国ではまず生まれてこない色です。そして、貴女の先程の力。
…察するに、何か特別な力を使ったのでは?」


「?はい。私、友達自然の力を自由に使えるから。いつも皆が助けてくれるんです…。」


「やはり、そうでしたか。貴女様を我が国にて保護させていただきたいのです。
国王がお待ちです。一緒に来て頂けませんか?」


「…分かりました。

…さっきの人、怖がって攻撃しちゃって、ごめんなさい。大丈夫でしたか?怪我とか…。」


千春は申し訳なさそうに、シュンとして謝る。


「だ、大丈夫ですよ!それより、俺のせいで怪我させて、すみません!
団長、早く連れて帰って手当てしましょう!」


「そうだな。千春殿、少し失礼する。」
そう言うと、アクラスは千春を横抱きに抱え上げた。


「わっ!あ、あの、…私、重いですよ?自分で歩きます。」
本当は足の痛みで満足には歩けないのだが、千春は羞恥に頰を染めて俯いた。


「この程度、重いとは言いません。
さぁ、行きましょう。城に戻ったらすぐ手当をさせて頂きます。」


フィンはすでに千春の傍から姿を消していた。
事の成り行きを見て大丈夫だと判断したのだろう。


そうして、アクラスは捜索時に三手に分かれていた他の騎士団員達へ狼煙を上げ、愛し子を発見したことを伝えた。
そして皆で城へと戻っていったのだった。
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