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キリキリマイ
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(1)
「冬莉、この店寄ってみようよ」
「うん」
冬莉と瞳子はそう言って店の中に入っていった。
香水やら日記帳やらの店。
女子同士で選んだ方がいいだろうと僕達は店の外で待っていた。
どこもかしこも花にちなんだ物が並んでいる。
まあ、フラワーパークていうくらいだからそうなんだろう。
しかし男子的にはどうなんだ?
楽しいのか?
冬吾は楽しそうに瞳子と選んでいたから、僕も合わせていたけど。
「ちょっと外で休憩してていいかな?」
冬吾が瞳子にそう言って「いいよ」って瞳子が言ったので外で待っていた。
そして二人で待っていると冬吾が話しかけてきた。
「志希はデート初めて?」
「そりゃ初めての彼女だからね」
もちろん学校の帰りにコンビニ寄ったりSAPに寄ったりはしてる。
土日もショッピングモールに行ったりその程度はやっていた。
だけど車も持っていない中学生がこんなところに来るなんで普通ないだろう。
「じゃ、アドバイスするね」
冬吾がそう言った。
彼女は買い物も楽しみだけどそれ以上に楽しみな事がある。
それは何を買おうか彼氏と一緒に悩む事。
それは買い物だけじゃない。
どこを見るのも志希と一緒に見るのが冬莉は楽しいんだと冬吾は言った。
だから極力それに合わせてやった方がいい。
つまらなさそうにしていたら自分といても楽しくないのかと不安になる。
そうやって二人で楽しむのがデートなんだという。
「冬吾はデート慣れてるの?」
「そりゃ幼稚園の時からずっと一緒だったからね」
それに冬吾にはサッカーがある。
いつも瞳子に構ってやれない。
だから一緒にいる時くらい瞳子に合わせてやる。
ただ合わせるだけじゃダメだ。
それだと彼氏に無理をさせていると誤解させてしまう。
一緒の気持ちになることが大事。
忘れてはいけない事。
それはただの友達と遊びに来てるんじゃない。
大切な彼女と遊びに来ているんだ。
それは当たり前の用で実は凄く奇跡的な事。
その事を忘れなければ絶対にデート中に喧嘩なんて事にはならない。
「でも、今のところ大丈夫みたいだよ」
「何で冬吾にわかるの?」
「あんな冬莉初めて見た」
冬莉だって一人の女子だ。
だけどなぜか今まで彼氏がいなかった。
名前も知らない突然出現した男子に告白されても心は動かなかった。
そんな冬莉が初めて興味を持った男子が僕だ。
だからもっと自信もって。
冬莉があんな態度を見せるのは僕の前だけだ。
そうだったんだ。
冬莉って凄くモテるイメージがあったんだけど違うんだな。
「恋という意味すらわかってなかったからね」
そう冬吾は言った。
「2人で何を話していたの?」
冬莉と瞳子が出て来た。
「冬莉が前日に風呂に入って着ていく服を悩む相手は志希だけだよって教えてた」
「余計な事言わなくていい!」
冬莉は少し照れているようだった。
「志希も冬吾の言う事信じたらダメだよ」
冬莉が僕に言う。
「僕は嬉しかったけどね」
「なんで?」
「そんな姿を見せてくれるのは僕だけなんだろ?」
白いワンピースを着て麻のバッグを持っていた。
冬莉はやっぱり恥ずかしいみたいだ。
「これは、翼や愛莉のおさがりを着ているだけ」
片桐家の女性でミニスカートとかを好むのは天音と茜だけ。
しかし瞳子も面白かったようだ。
「でもいつも私達と遊ぶ時はジーパンとか穿いてたじゃない」
そうだったんだ。
それは見た事無いな。
恥ずかしいのだろうか?
俯いてしまった。
そんな時冬吾が肘でとんとんと僕を叩く。
意味は大体わかった。
「似合ってるよ」
僕がそう言うと冬莉は嬉しそうにしていた。
今すぐ絵にしたいくらいの笑顔だった。
学校では見たことが無い。
「じゃ、先に行こう?愛莉から良い場所あるって聞いた」
そう言って僕の腕を掴んで先に行く。
瞳子と冬吾はその後をゆっくりついてきた。
冬莉が連れて来たのは花に飾られたベンチ。
そこに2人で座って写真を撮りたいという。
冬莉は冬吾にスマホを渡していた。
僕と冬莉は並んでベンチに座る。
冬莉は構わず思いっきり密着してくる。
さすがに戸惑った。
冬吾達が話をしていた。
クラスで一番胸がデカいのは冬莉だと。
そんな胸が腕に密着している。
さすがにそっちに気がいってしまった。
「ちゃんと前見て笑って」
冬莉に言われてそうする。
その後瞳子と冬吾も撮ってやる。
「そろそろ時間かな?」
冬莉が時計を見て言う。
僕達は戻ることにした。
(2)
帰りの車の中で最後部の席で冬吾と瞳子は話をしていた。
私の隣にも志希がいる。
ただ少し引っ張りまわし過ぎたようだ。
うたた寝をしている。
そして私の肩に頭を乗せる。
こんな風に気を許せるのは多分志希だけだろう。
しかし志希はすぐに目を覚まして慌てて離れる。
「ごめん」
「いいよ、それより……」
少し意地悪をしてやろう。
「そんなに私の胸気になるの?」
ベンチで写真を撮っている時も気にしてた。
巨乳というわけではないけどクラスでは一番大きいらしい。
見た目もそんなに悪くないと自負している。
天音は悔しがっていた。
「冬莉は私より大きいんだよ」
瞳子も加担する。
「そ、そうなんだ」
志希は笑って誤魔化そうとしていた。
「興味あるなら見せてあげてもいいよ」
その時パパの運転が乱れた。
「冬莉、そういう話は冬夜さんのいないところでしなさい」
するなと言わないのが愛莉だ。
「天音も不思議がっていた。私だけ小さいのはなんでだ!?って」
「母さんも気にしたことないから分からないけど」
パパが綺麗だって言ってくれるからそれだけで十分だったらしい。
「じゃあ、私も志希に綺麗って言ってもらえたらいいのかな?」
「そうかもしれないわね」
パパは一切話に混ざろうとしなかった。
「でも冬莉はまだだったの?」
愛莉はそういう話にすぐに首を突っ込んでくる。
娘の恋話に興味があるのだろうか?
「キスくらいはしたよ」
その先はまだ。
翼は空に下着を選んでもらったって言ってたけど、志希はそういう店に入りたがらない。
私に似合わないからかな?
そうじゃないと分かっていたけどわざとそう言ってみた。
「男の子にも色々事情があるのよ」
愛莉が中学生の時は愛莉が下着姿になってもパパは何もしてくれなかったらしい。
「僕は瞳子としたよ」
冬吾が言った。
「ちゃんと優しくあげたのでしょうね?」
「冬吾君緊張してたけど優しかったです」
瞳子が言った。
パパは何か考えているようだった。
「冬夜さん、いい加減慣れて下さい。冬莉達だって中学生なのですよ」
「い、いや。やっぱり難しいよ愛莉」
「困った父親ですね」
愛莉はそう言って笑っていた。
瞳子と志希を家に送って私達も帰る。
「今日は出前でいいですか?」
愛莉が言うと皆口をそろえて言う。
「チャーシュー麺大盛り!餃子とチャーハン!」
出前が届いて食べていると茜が私を見ていた。
「どうしたの?」
「いや、思ったんだけどさ。冬莉の食べた分全部胸にいってるんじゃない?」
茜が言うとパパがむせた。
「それだったら天音が小さいのは説明つかないよ」
お腹も出てるわけじゃないし。
「そうだよね~」
夕食を食べて風呂に入る。
最近はいつ何があってもいい様に風呂に入っていた。
「恋ってそこまで変わる物なのかな~?」
茜が不思議そうに言う。
茜の洗濯物を回収に来た愛莉が言う。
「茜がおかしいの!せめて下着くらい毎日着替えなさい!」
「汚れた時は替えてるから問題ないって」
「そういう問題じゃありません!」
いつもの光景を見ながら私は志希にメッセージを送っていた。
「で、いつになったら私を攫ってくれるの?」
「ど、どうしたの急に!?」
「志希は焦ったりしないの?」
「何を?」
私は説明した。
私は志希を他の女子に取られるか不安で仕方ない。
だから志希の全部を独り占めしたい。
私は志希の物だって伝えたい。
志希にはそういう不安はないのだろうか?
「今日冬吾と話をしてたんだ」
そう言えば2人で話をしていたな。
「何を話していたの?」
「……今日僕の前にいた冬莉は冬吾も知らない冬莉だったって」
あんなに楽しそうにしていた冬莉は初めて見た。
それはきっと志希の前でしか見せないだろう。
そんな話をしていたのか。
「だから多分冬莉は僕の物だって実感できた」
「私はそうじゃないよ。志希だけずるい」
「……でも場所どうするの?」
「私の家に使ってない部屋がある。防音もしているから大丈夫」
「僕は彼女の父親がいる中でそういう事しないといけないの?」
「じゃ、私が志希の家に行けばいいの?」
「……どっちでも変わらないな」
だと思った。
「今度泊りに行くよ」
「楽しみにしてる」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ってメッセージを終えて充電器にセットすると茜が聞いてきた。
「楽しそうだね」
「茜は違うの?」
「それがさ、聞いてよ!」
最近壱郎はバイトばかりで遊んでくれない。
話をするのは学校にいる間だけ。
休日までバイトしてるんだよ。
「……同棲した方がよかったんじゃない?」
「うーん、しかし壱郎と一緒に生活しててさすがに今の生活は出来ないからなぁ」
茜は悩んでいるらしい。
「そんなに心配しててもしょうがないよ。壱郎だって本当は茜と一緒にいたいんじゃないの?」
誠司みたいに無関心になっているわけじゃなさそうだ。
だって毎日ちゃんとメッセージは送って来るみたいだし。
「確かにそうかもね」
そうして私達は眠りについた。
(3)
「まあ、飲みなさい冬夜君」
「はい……」
冬夜さんはやっぱりパパさんとりえちゃんを呼んで飲んでいた。
仕方のない人だ。
私も一緒に話に混ざる。
「この先まだ莉子がいるんですよ」
「愛莉……男親というのはそういうものなんだ。自分がオムツを変えていた大切な娘が自分の手を離れていくんだ。……やはり寂しい物があるよ」
「パパさんはその話を冬夜さんの前でするの止めてって言ったでしょ!」
冬夜さんだって真似しだしたんだから。
「でも冬夜君の子供は皆いい子だから問題ないわよ~。絶対に間違ったことはしないから~」
りえちゃんが言う。
「もう少し子供の事を信用してあげてもらえませんか?」
いつも私が見ているから大丈夫ですよ。
しかし冬夜さんの悩みは微妙に違うようだった。
「娘がそうなるのは何となく慣れてきたんです」
え?
「好きな人と結ばれて嫁に行くってのは理解したつもりです」
「……じゃあ、何が問題なんだい?」
パパさんが聞いていた。
冬夜さんは説明してくれた。
冬莉も恋人が出来て変わった。
具体的に言うとちゃんと服を着るようになった。
風呂にも入るようになった。
洗濯物も出している。
だけど一つ問題がある。
それは茜だった。
茜は恋人がいるのに全く変わらない。
相変わらずの生活をしている。
高校を出たら2人で同棲するものだと思ったら実家から通うと言いだした。
理由は壱郎の前で今の生活は無理だから。
それを放っておいていいのだろうか?
最初は壱郎の事を気にしているから同棲を拒んだのだからいいだろうと思っていた。
しかし本当にその判断は正しかったのか?
それを続けていて茜に壱郎の下に嫁ぐ意思はあるのだろうか?
冬眞と莉子は問題ない。
多分ちゃんとわかっているだろう。
純也も独立しているのに。
「申し訳ありません。私が至らないばかりに……」
「愛莉を責めているわけじゃないんだ。ただこういう時男親はどうしたらいいんだろうって悩んでね」
するとパパさんは笑っていた。
「まだ冬夜君の下が良いって言ってるんだ好きにさせてやればいいじゃないか」
いつまでも親の下で暮らせるとはきっと思っていない。
恋人の事もきっと考えている。
人生の中で親と共に過ごす時間というのは僅かな物だ。
いつかは巣立つ時が来る。
もう親があれこれ言う時期ではない。
じっと見守ってあげなさい。
パパさんがそう言った。
「あまり早くにいなくなるのも寂しいものだよ」
パパさんはそう言って笑う。
話が終るとパパさん達は帰っていった。
私達も戸締り等をして寝室に入る。
「親って難しいんだね」
冬夜さんがそう言って笑う。
冬夜さんですら難しい物なんだ。
そんな冬夜さんに私がしてあげる事は何となく分かった。
私は冬夜さんに抱きつく。
「子供に手がかかってる時間がかなりなくなりました」
あとは冬莉や冬眞達くらい。
「時間を持て余しているのではないですか?」
「そうかもしれないね」
「じゃあ、その分私に時間を使ってください」
私ならずっと冬夜さんの側にいますよ。
「そうだね」
沢山の子供達を抱え悩んでいた時期が終った。
これからは2人の時間が増えるはず。
だから2人で過ごそう。
今のパパさんとりえちゃんがしてるように。
「冬莉、この店寄ってみようよ」
「うん」
冬莉と瞳子はそう言って店の中に入っていった。
香水やら日記帳やらの店。
女子同士で選んだ方がいいだろうと僕達は店の外で待っていた。
どこもかしこも花にちなんだ物が並んでいる。
まあ、フラワーパークていうくらいだからそうなんだろう。
しかし男子的にはどうなんだ?
楽しいのか?
冬吾は楽しそうに瞳子と選んでいたから、僕も合わせていたけど。
「ちょっと外で休憩してていいかな?」
冬吾が瞳子にそう言って「いいよ」って瞳子が言ったので外で待っていた。
そして二人で待っていると冬吾が話しかけてきた。
「志希はデート初めて?」
「そりゃ初めての彼女だからね」
もちろん学校の帰りにコンビニ寄ったりSAPに寄ったりはしてる。
土日もショッピングモールに行ったりその程度はやっていた。
だけど車も持っていない中学生がこんなところに来るなんで普通ないだろう。
「じゃ、アドバイスするね」
冬吾がそう言った。
彼女は買い物も楽しみだけどそれ以上に楽しみな事がある。
それは何を買おうか彼氏と一緒に悩む事。
それは買い物だけじゃない。
どこを見るのも志希と一緒に見るのが冬莉は楽しいんだと冬吾は言った。
だから極力それに合わせてやった方がいい。
つまらなさそうにしていたら自分といても楽しくないのかと不安になる。
そうやって二人で楽しむのがデートなんだという。
「冬吾はデート慣れてるの?」
「そりゃ幼稚園の時からずっと一緒だったからね」
それに冬吾にはサッカーがある。
いつも瞳子に構ってやれない。
だから一緒にいる時くらい瞳子に合わせてやる。
ただ合わせるだけじゃダメだ。
それだと彼氏に無理をさせていると誤解させてしまう。
一緒の気持ちになることが大事。
忘れてはいけない事。
それはただの友達と遊びに来てるんじゃない。
大切な彼女と遊びに来ているんだ。
それは当たり前の用で実は凄く奇跡的な事。
その事を忘れなければ絶対にデート中に喧嘩なんて事にはならない。
「でも、今のところ大丈夫みたいだよ」
「何で冬吾にわかるの?」
「あんな冬莉初めて見た」
冬莉だって一人の女子だ。
だけどなぜか今まで彼氏がいなかった。
名前も知らない突然出現した男子に告白されても心は動かなかった。
そんな冬莉が初めて興味を持った男子が僕だ。
だからもっと自信もって。
冬莉があんな態度を見せるのは僕の前だけだ。
そうだったんだ。
冬莉って凄くモテるイメージがあったんだけど違うんだな。
「恋という意味すらわかってなかったからね」
そう冬吾は言った。
「2人で何を話していたの?」
冬莉と瞳子が出て来た。
「冬莉が前日に風呂に入って着ていく服を悩む相手は志希だけだよって教えてた」
「余計な事言わなくていい!」
冬莉は少し照れているようだった。
「志希も冬吾の言う事信じたらダメだよ」
冬莉が僕に言う。
「僕は嬉しかったけどね」
「なんで?」
「そんな姿を見せてくれるのは僕だけなんだろ?」
白いワンピースを着て麻のバッグを持っていた。
冬莉はやっぱり恥ずかしいみたいだ。
「これは、翼や愛莉のおさがりを着ているだけ」
片桐家の女性でミニスカートとかを好むのは天音と茜だけ。
しかし瞳子も面白かったようだ。
「でもいつも私達と遊ぶ時はジーパンとか穿いてたじゃない」
そうだったんだ。
それは見た事無いな。
恥ずかしいのだろうか?
俯いてしまった。
そんな時冬吾が肘でとんとんと僕を叩く。
意味は大体わかった。
「似合ってるよ」
僕がそう言うと冬莉は嬉しそうにしていた。
今すぐ絵にしたいくらいの笑顔だった。
学校では見たことが無い。
「じゃ、先に行こう?愛莉から良い場所あるって聞いた」
そう言って僕の腕を掴んで先に行く。
瞳子と冬吾はその後をゆっくりついてきた。
冬莉が連れて来たのは花に飾られたベンチ。
そこに2人で座って写真を撮りたいという。
冬莉は冬吾にスマホを渡していた。
僕と冬莉は並んでベンチに座る。
冬莉は構わず思いっきり密着してくる。
さすがに戸惑った。
冬吾達が話をしていた。
クラスで一番胸がデカいのは冬莉だと。
そんな胸が腕に密着している。
さすがにそっちに気がいってしまった。
「ちゃんと前見て笑って」
冬莉に言われてそうする。
その後瞳子と冬吾も撮ってやる。
「そろそろ時間かな?」
冬莉が時計を見て言う。
僕達は戻ることにした。
(2)
帰りの車の中で最後部の席で冬吾と瞳子は話をしていた。
私の隣にも志希がいる。
ただ少し引っ張りまわし過ぎたようだ。
うたた寝をしている。
そして私の肩に頭を乗せる。
こんな風に気を許せるのは多分志希だけだろう。
しかし志希はすぐに目を覚まして慌てて離れる。
「ごめん」
「いいよ、それより……」
少し意地悪をしてやろう。
「そんなに私の胸気になるの?」
ベンチで写真を撮っている時も気にしてた。
巨乳というわけではないけどクラスでは一番大きいらしい。
見た目もそんなに悪くないと自負している。
天音は悔しがっていた。
「冬莉は私より大きいんだよ」
瞳子も加担する。
「そ、そうなんだ」
志希は笑って誤魔化そうとしていた。
「興味あるなら見せてあげてもいいよ」
その時パパの運転が乱れた。
「冬莉、そういう話は冬夜さんのいないところでしなさい」
するなと言わないのが愛莉だ。
「天音も不思議がっていた。私だけ小さいのはなんでだ!?って」
「母さんも気にしたことないから分からないけど」
パパが綺麗だって言ってくれるからそれだけで十分だったらしい。
「じゃあ、私も志希に綺麗って言ってもらえたらいいのかな?」
「そうかもしれないわね」
パパは一切話に混ざろうとしなかった。
「でも冬莉はまだだったの?」
愛莉はそういう話にすぐに首を突っ込んでくる。
娘の恋話に興味があるのだろうか?
「キスくらいはしたよ」
その先はまだ。
翼は空に下着を選んでもらったって言ってたけど、志希はそういう店に入りたがらない。
私に似合わないからかな?
そうじゃないと分かっていたけどわざとそう言ってみた。
「男の子にも色々事情があるのよ」
愛莉が中学生の時は愛莉が下着姿になってもパパは何もしてくれなかったらしい。
「僕は瞳子としたよ」
冬吾が言った。
「ちゃんと優しくあげたのでしょうね?」
「冬吾君緊張してたけど優しかったです」
瞳子が言った。
パパは何か考えているようだった。
「冬夜さん、いい加減慣れて下さい。冬莉達だって中学生なのですよ」
「い、いや。やっぱり難しいよ愛莉」
「困った父親ですね」
愛莉はそう言って笑っていた。
瞳子と志希を家に送って私達も帰る。
「今日は出前でいいですか?」
愛莉が言うと皆口をそろえて言う。
「チャーシュー麺大盛り!餃子とチャーハン!」
出前が届いて食べていると茜が私を見ていた。
「どうしたの?」
「いや、思ったんだけどさ。冬莉の食べた分全部胸にいってるんじゃない?」
茜が言うとパパがむせた。
「それだったら天音が小さいのは説明つかないよ」
お腹も出てるわけじゃないし。
「そうだよね~」
夕食を食べて風呂に入る。
最近はいつ何があってもいい様に風呂に入っていた。
「恋ってそこまで変わる物なのかな~?」
茜が不思議そうに言う。
茜の洗濯物を回収に来た愛莉が言う。
「茜がおかしいの!せめて下着くらい毎日着替えなさい!」
「汚れた時は替えてるから問題ないって」
「そういう問題じゃありません!」
いつもの光景を見ながら私は志希にメッセージを送っていた。
「で、いつになったら私を攫ってくれるの?」
「ど、どうしたの急に!?」
「志希は焦ったりしないの?」
「何を?」
私は説明した。
私は志希を他の女子に取られるか不安で仕方ない。
だから志希の全部を独り占めしたい。
私は志希の物だって伝えたい。
志希にはそういう不安はないのだろうか?
「今日冬吾と話をしてたんだ」
そう言えば2人で話をしていたな。
「何を話していたの?」
「……今日僕の前にいた冬莉は冬吾も知らない冬莉だったって」
あんなに楽しそうにしていた冬莉は初めて見た。
それはきっと志希の前でしか見せないだろう。
そんな話をしていたのか。
「だから多分冬莉は僕の物だって実感できた」
「私はそうじゃないよ。志希だけずるい」
「……でも場所どうするの?」
「私の家に使ってない部屋がある。防音もしているから大丈夫」
「僕は彼女の父親がいる中でそういう事しないといけないの?」
「じゃ、私が志希の家に行けばいいの?」
「……どっちでも変わらないな」
だと思った。
「今度泊りに行くよ」
「楽しみにしてる」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ってメッセージを終えて充電器にセットすると茜が聞いてきた。
「楽しそうだね」
「茜は違うの?」
「それがさ、聞いてよ!」
最近壱郎はバイトばかりで遊んでくれない。
話をするのは学校にいる間だけ。
休日までバイトしてるんだよ。
「……同棲した方がよかったんじゃない?」
「うーん、しかし壱郎と一緒に生活しててさすがに今の生活は出来ないからなぁ」
茜は悩んでいるらしい。
「そんなに心配しててもしょうがないよ。壱郎だって本当は茜と一緒にいたいんじゃないの?」
誠司みたいに無関心になっているわけじゃなさそうだ。
だって毎日ちゃんとメッセージは送って来るみたいだし。
「確かにそうかもね」
そうして私達は眠りについた。
(3)
「まあ、飲みなさい冬夜君」
「はい……」
冬夜さんはやっぱりパパさんとりえちゃんを呼んで飲んでいた。
仕方のない人だ。
私も一緒に話に混ざる。
「この先まだ莉子がいるんですよ」
「愛莉……男親というのはそういうものなんだ。自分がオムツを変えていた大切な娘が自分の手を離れていくんだ。……やはり寂しい物があるよ」
「パパさんはその話を冬夜さんの前でするの止めてって言ったでしょ!」
冬夜さんだって真似しだしたんだから。
「でも冬夜君の子供は皆いい子だから問題ないわよ~。絶対に間違ったことはしないから~」
りえちゃんが言う。
「もう少し子供の事を信用してあげてもらえませんか?」
いつも私が見ているから大丈夫ですよ。
しかし冬夜さんの悩みは微妙に違うようだった。
「娘がそうなるのは何となく慣れてきたんです」
え?
「好きな人と結ばれて嫁に行くってのは理解したつもりです」
「……じゃあ、何が問題なんだい?」
パパさんが聞いていた。
冬夜さんは説明してくれた。
冬莉も恋人が出来て変わった。
具体的に言うとちゃんと服を着るようになった。
風呂にも入るようになった。
洗濯物も出している。
だけど一つ問題がある。
それは茜だった。
茜は恋人がいるのに全く変わらない。
相変わらずの生活をしている。
高校を出たら2人で同棲するものだと思ったら実家から通うと言いだした。
理由は壱郎の前で今の生活は無理だから。
それを放っておいていいのだろうか?
最初は壱郎の事を気にしているから同棲を拒んだのだからいいだろうと思っていた。
しかし本当にその判断は正しかったのか?
それを続けていて茜に壱郎の下に嫁ぐ意思はあるのだろうか?
冬眞と莉子は問題ない。
多分ちゃんとわかっているだろう。
純也も独立しているのに。
「申し訳ありません。私が至らないばかりに……」
「愛莉を責めているわけじゃないんだ。ただこういう時男親はどうしたらいいんだろうって悩んでね」
するとパパさんは笑っていた。
「まだ冬夜君の下が良いって言ってるんだ好きにさせてやればいいじゃないか」
いつまでも親の下で暮らせるとはきっと思っていない。
恋人の事もきっと考えている。
人生の中で親と共に過ごす時間というのは僅かな物だ。
いつかは巣立つ時が来る。
もう親があれこれ言う時期ではない。
じっと見守ってあげなさい。
パパさんがそう言った。
「あまり早くにいなくなるのも寂しいものだよ」
パパさんはそう言って笑う。
話が終るとパパさん達は帰っていった。
私達も戸締り等をして寝室に入る。
「親って難しいんだね」
冬夜さんがそう言って笑う。
冬夜さんですら難しい物なんだ。
そんな冬夜さんに私がしてあげる事は何となく分かった。
私は冬夜さんに抱きつく。
「子供に手がかかってる時間がかなりなくなりました」
あとは冬莉や冬眞達くらい。
「時間を持て余しているのではないですか?」
「そうかもしれないね」
「じゃあ、その分私に時間を使ってください」
私ならずっと冬夜さんの側にいますよ。
「そうだね」
沢山の子供達を抱え悩んでいた時期が終った。
これからは2人の時間が増えるはず。
だから2人で過ごそう。
今のパパさんとりえちゃんがしてるように。
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のぞみ
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