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LASTSEASON
偽りの君の運命
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(1)
「冬夜さん、起きてください。朝ですよ」
「おはよう愛莉……」
「おはようございます。大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
僕は起きると着替える。
何か体がだるいなあ。
どうしたんだろう?
仕度をすると朝食を食べる……が。
おかしいな、食欲が湧かない。
でも愛莉心配するだろうしな。
コーヒーで流し込む。
その後いつも通り愛莉とゆっくりしてから仕事に行く
「お体気を付けてくださいね。行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ」
会社に着くといつも通り準備をして朝礼を済ませて業務開始。
今日の予定は……外回りはないな。
事務所でデータ入力作業。
相変わらず事務所内は気まずい空気が流れていた。
一人黙々と事務をする神木さん。
昼休みになると一人弁当を食べてそして寝る。
午後の業務開始15分前になると妙な体操を始める。
そして午後の業務開始。
今日は何事もない。
定時きっかりに神木さんは帰る仕度を始める。
「冬夜、お前も定時で上がっていいって言われてるだろ。こっちもその予定で仕事渡してるからいいぞ」
「すいません、お先に失礼します。おつかれさまでした」
達彦先輩に言われると僕も帰り支度を始める。
「冬夜ちょっと待て!」
達彦先輩に呼び止められる。
「お前ここ一桁間違えてるぞ!」
え?
達彦先輩のモニタを見る。確かに明らかにおかしい。
「すいません直ぐ修正します……」
「あ、いや。俺がやっとくからいいよ。それよりお前大丈夫か?最近ケアレスミスが多いぞ?」
「すいません注意してやってるんですけど」
「そろそろ気のゆるみが出て来る時期かもな。それとも試験勉強で知恵熱でたか?」
達彦先輩は笑っている。
「どうしたんだ?上原」
社長が来た。
「いや、最近たるんでるんじゃないかって冬夜に注意してたところです」
「ふむ……」
達彦先輩が言うと社長が僕の顔を見る。
「顔色悪いな……朝ごはんしっかり食べとるか?」
「ええ、食べてるんですけど食欲湧かなくて」
「夜はしっかり寝ておるか?」
そういや最近試験勉強で寝てないな。
「最近試験勉強してるからどうしても遅くなって」
「ふむ……夏バテかもしれんな?今日は帰ってゆっくり寝なさい。業務に差支え出たら困るぞ」
「すいません」
「片桐君は真面目だからな、勉強も必死なんだろうが少しリラックスしたほうがいいぞ。あの男にそのまじめさがあればいいんだが……」
「じゃ、失礼します」
そう言って家に帰る。
「ただいま……」
「おかえりなさい、お疲れ様でした。冬夜さん?」
家に帰った途端急に体が重くなる。
ふらついて愛莉に抱きついてしまった。
「もうだめですよ。そう言うの後にしてくださいな」
「ごめん……」
「どうかされましたか?」
「あ、いや。大丈夫……」
着替えると夕食を食べる。
だめだ……食欲がない。
でも食べなきゃ……。
「あの……お口にあいませんでしたか?」
「そ、そんなことないよ」
無理矢理流し込む。
そんな僕を見て考え込む愛莉。
「どうしたの?」
「いえ、お風呂になさってくださいな」
「わかった」
お風呂に入ると寝室に行く。
愛莉は真剣な眼差しでノートPCを見ていた。
「愛莉、お風呂空いたよ?」
「は、はい」
愛莉は慌ててノートPCをたたむとお風呂に向かう。
愛莉はもどってくると麦茶の入ったコップを持ってくる。
「今日はお酒切れたの?買って来ようか」
「駄目です!今日はお酒は控えてください」
どうしたんだろう?
「……それを飲んだら今日はお休みになってください」
「でも、試験勉強が……」
「今日は駄目です。お願いします。お休みになってください」
「いったいどうしたの?」
すると愛莉は頭を下げた。
「ごめんなさい、全ては私のせいなんです。私が冬夜さんのスケジュール管理サボってたから」
え?
「冬夜さん夏バテみたいです。今はゆっくり休んで。ごめんなさい。食事も注意しないといけなかった」
愛莉が泣いてる。
「こんなんでお嫁さんなんて笑われてしまいます。お嫁さん失格です」
「お嫁さんを泣かせるなんて僕もまだまだ旦那失格だな」
「え?」
愛莉の背中をさすってやる。
「わかった。今日はゆっくり休むよ。これ以上お嫁さん困らせたくないからね」
「……ありがとうございます」
「礼を言うのは僕だよ愛莉。ありがとう。そしてごめんね」
麦茶を飲むと愛莉に言われたとおりにベッドに入る。
愛莉はテレビを見ている。
じっと愛莉を見ている。
それに愛莉が気づいたらしい。
「あ、明り気になりますよね。リビングで見てますね。おやすみなさい」
「愛莉は寝ないのかい?」
「私少し見たいテレビがあるので」
「そう。じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
愛莉は寝室を出てリビングに向かった。
僕は本当に疲れていたようで、すぐに眠りについた。
「冬夜さん、朝ですよ」
「おはよう愛莉?」
あれ?今日はベッドの外か。
愛莉の顔を見てすぐ気づいた。
隈がある……。
「昨日ちょっと夜更かしし過ぎたみたいです」
愛莉はそう言って笑う。
何か隠してる。
すぐわかった。
「愛莉昨日の夜何してた?」
「テレビに夢中になり過ぎたんです。ごめんなさい。朝食出来てますから準備してきてくださいな」
愛莉はそう言って寝室を出る。
何を隠してる?
部屋を見渡せばすぐにわかった。
着替えて準備をするとダイニングに行く。
そしてリビングのテーブルを見ればすぐにわかる。
僕の参考書が並んである。
僕がそれに気づいたのを愛莉も気づいたらしい。
「ちょ、ちょっとどんな資格なんだろう?って気になって……」
参考書と過去問題集をさっと見る。
愛莉が夜になにをしていたかすぐにわかった。
無数にある付箋と要所要所にあるメモ書き。
何よりおどろいたのがその的確さだ。
試験は会計学に属する科目2科目と税法に属する科目6科目のうち3科目を選択して計5科目うける。
僕は法人税と消費税、国税徴収法を選んでいたのだが、愛莉には伝えていない。
なのに愛莉はは重点的にその3科目をチェックしてノートにまとめていた。
「差し出がましいとも思ったのですが、少しでもお力になれたらと思って……」
「……なんで選択科目わかったの?」
「冬夜さんの問題集見てたらすぐわかりました」
僕はテーブルに本を置くと愛莉に近づく。
「頑張ってる冬夜さんを手伝ってあげたくてつい手が出ました。すいません!」
愛莉を強く抱きしめる。
「ありがとう。本当に僕は幸せ者だな」
「私の方こそ幸せ者です。こんなに素敵な旦那様に巡り会えて」
ご飯を食べると愛莉は片づけてリビングで二人でくつろぐ。
「あの、冬夜さん。一つ提案があるのですがよろしいでしょうか?」
「どうしたの?」
「差し出がましいとは思うのですが、私やっぱり冬夜さんのお手伝いがしたいのですが……」
「?」
愛莉は言う。
一緒に勉強させてくださいと。一緒に頑張りたい。僕の勉強スケジュールはやっぱり愛莉がしないと駄目だと言う。
どこまで健気なんだろう……。
断る理由が見つからなかった。
「わかったよ。ただし一つ条件がある」
「なんなりと」
「こんな無茶は二度としないって約束できる?愛莉が倒れたら意味がない」
「わかりました。約束します」
「それと僕に黙ってこんな無茶をした罰を与える」
「え?」
不安そうな愛莉。だけどすぐにその不安は解ける。目を閉じて僕を受け入れる愛莉。
「冬夜さんは意地悪です。こんな罰ではまたしたくなっちゃいます」
「それはだめだよ」
「はい」
時間になると玄関に行く。
「じゃあ、行ってくるね」
「お気をつけて。行ってらっしゃい」
「ところで愛莉」
「どうなさいました?」
「よく一晩であそこまで書きこめたね。徹夜してた?」
「いえ、寝ましたよ?」
選択科目を絞っていたとはいえ、見事な書き込みだった。
要所を的確に押さえてある。
それが疑問だった。
それを愛莉は一言で片づける。
「そんなの一目見たらわかりますよ」
愛莉はにこりと笑っていた。
愛莉はそういう子だったという事を今さら思いだした。
その日のお弁当はスパイスの効いたチャーハンだった。
愛莉なりに夏バテ予防にと考えたのだろう。
美味しくいただいた。
(2)
「木元さんちょっと来てください!」
またか……
「どうしました?」
「ここ間口の寸法が全然違うんだけど」
え?
職人さんが測ると図面と50㎜も違う。
「ここに嵌めるカウンターの天板の天板が寸法全部狂ってくるんだけどどうする?」
「天板削れませんか?」
「天板はいいけど下収納どうするの?一体型だから作り替えになるよ?」
とはいえ柱を削るわけには行かない。
所長に報告する。
「そんなの現寸計らないで作った業者の責任で作り替えさせろ」
所長の意向を伝える。
「だから、設計図作った時に現寸送ってくれって言いましたよね!」
「す、すいません」
「それと窓の天板石膏ボード貼る前に取り付けるって言ったのにもう石膏ボード貼ってるよ!どうすんの!?」
現場を確認すると確かに石膏ボードが張られている。
内装工事の業者を呼び出す。
どうして付けたのか問いただす。
「他の監督に確認したら張って良いって言ったからつけたんだけど?」
その監督に言う。ちょっと年配の人。
「それちゃんとホワイトボードに書いた?」
「書きましたよ」
事務所に戻って工程表を見る。
きっちり書き込んである。
「あ、確認してなかったわ。ごめんごめん」
ごめんごめんて……
「どうすんの?これじゃ固定出来ないよ?」
所長に聞く。
「ビス止めしとけ!ていうか一々細かい事俺に聞くんじゃなくて自分で判断しろ」
ビスで固定って見栄えどうするんだよ?
「本当にビス止めでいいんですね?」
「ああ、それでいいから。もう納期ないんだ!ボード張り替えるわけにもいかないだろ」
その事を伝える。
「あんちゃん自分の言ってる事理解してる?見栄え悪くなるよ?それに間口変わってくるから一旦工場に持って帰ってやり替えだよ。工賃発生するよ?」
平謝りして作り返してもらう。
仕上げに入るとこんなトラブル日常茶飯事だ。
まあ、着工時からトラブルばかりなんだけど。
基礎工事をしていて基礎が10㎜ずれたとかは日常茶飯事。蓋を開けてみたら鉄筋丸出しなんてこともあるくらいだ。
その度に呼び出される。
そして今日は最悪の日だった。
「ちょっと木元さん来てよ!」
今度はなんだ?
「何で先に便器設置してんの!?仕上げしずらいじゃないか」
慌てて業者に電話する。
「だって納期が3日前だったから。ちゃんと所長には話したよ」
工程表を見る。
確かに3日前だ。
内装業者にその旨を伝える。
「工程が遅れてる事くらい木元さんだって分かってるだろ!しっかりしてくれよ!」
一度取り付けた便器を外すわけにもいかない。頭を下げて工事をしてもらう。
そうして一日が終える……訳が無い。
ここからが本番だ。
事務作業をひたすら行う。
現場監督の業務は、工事現場の工程管理・作業指示・予算組み・発注・説明会・クレーム対応などだ。
さらにISOの書類を作成しなければならない。
そんな事をしていたら、0時を過ぎる。
現場が始まると、月曜から出勤。土曜の朝に朝に帰宅するなんてことざらだ。
土曜の飲み会に参加できるのは土日が休めるからではない、月曜から土曜日まで現場に入り浸りだ。
当然着替えは無い。
同期の現場監督は次々と辞めていったよ。
それでも建物が出た時は充実感を得る。
だがそれもつかの間。
施主のクレームがつく。
そのクレームの対応に追われる。
そして花菜との約束はきっちり守っている。
疲労の体をおして、彼女に一日をプレゼントする。
喜んでる花菜を見て一安心する。
掴まの名のの一日の休息
そう一日で終わってしまう。
そして日曜には出かける。
「あまり無理しないでね」
その言葉が唯一の清涼剤。
外に出る。もう夏がおとずれていた。
(3)
カランカラン
「こんにちは」
喫茶店青い鳥。
やってくると愛莉と恵美と晶。
いつもの客が来ていた。
「いらっしゃいませ」
気だるそうに言う美里の声。
「注文はいつものでいいよね?」
対称的に明るい咲の声。
そして渡辺班の主婦陣に寄る井戸端会議が始まる。
いつもは主人の愚痴から始まるのだが、今日は違った。
それぞれ主人に不安を抱いているらしい。
それは不満などではなく、心から主人の身を案じている。
3人の主人は皆試用期間を終え正社員になった。
当然責任もより大きなものになる。
酒井君の場合は最初から責任重大だったけど。
……石原君もそうか、本業の傍ら芸能事務所の社長をやっている。
二人とも口数が元々多くなかったけどさらに減ったらしい。
うちの主人も今の現場監督になってから週末まで帰ってこなくなった。
遊びに行ってるわけじゃない。
仕事で現場事務所に泊まり込みで働いている。
海の日の3連休までに竣工する予定らしいが。体調が不安だ。
片桐君も夏バテをしてしまったらしい。
愛莉は自分を責めていた。
皆無理をして働いている。
それは神奈や穂乃果や亜依も一緒だ。
皆大変なんだな。
そんな話をしていた時だった。
カランカラン。
新たな来客のようだ。
「いらっしゃいませ……って彩人?」
美里は入ってきたカップルを見て言った。
「姉さん、久しぶり」
彩人と言われた人は美里の事を「姉さん」と言った。
姉弟なんだろうか?
「どうしてここまで、あなた別府大学のはずでしょ?」
美里は驚いている。別府大学の人か。
「姉さんが心配で様子見に来たんだよ。同棲始めたって母さんから聞いて。2人とも心配してたよ」
「……とりあえず適当に座って」
二人はカウンター席に座る。
「美里、紹介してよ」
咲が言う。
「はい、弟の北村彩人と……」
「はじめまして、彩人さんと交際させていただいてる松本遥と申します」
そう言って女性の方が挨拶した。
二人は新歓コンパで知り合ったらしい。実家は吉野にあるんだとか。
で、遥さんの実家に挨拶に行った帰りに寄ったらしい。
「2人ともサークル活動とかやってるの?」
咲さんが聞いた。
「その件もあって姉さんに相談に来たんだ」
彩人さんは言う。
別府の大学にレガリスとという出会い系サークルがあるという。
そこの新歓で二人は意気投合したのだが、どうもサークルの行動がおかしいらしい。
すぐに二人とも抜けた。
噂の縁結びのサークルと聞いたのだけど噂とは全然違う内容だったらしい。
そこで思い出したのが美里が噂のサークルに入っていたと言う事。
良かったらそこに2人共入れて欲しいという。
そばで聞いていた恵美が言った。
「入れてあげたらいいじゃない」
二人は驚いた。
「それもそうね。素性も問題なさそうだし良いわよ。私が責任持つから」
咲が言う。
「あの、あなた方は」
「初めまして。渡辺班の大学生代表をやってる竹本咲といいます」
咲が自己紹介すると皆自己紹介をした。
「まさかみんな同じグループだったなんて」
彩人君は驚いている。
「で、どうする?入る」
「入れてもらえるなら入れて欲しいです。なあ?遥」
「そうだね。でもどんな事するんですか?」
「社会人もいるからメッセージのやり取りが主で後は月に何回か飲み会とか、今月は海にキャンプに行ったりかな」
咲が説明する。
「それなら問題ないよな?遥」
「うん、よろしくお願いします」
二人がそう言うと咲は二人とIDの交換をする。
そして渡辺班に招待した。
「吉野から別府まで通ってるの?」
咲が遥に聞いていた。
「週1で実家に帰る程度であとは彼の家とかに泊まり込んでますね」
彩人は別府で一人暮らしをしているらしい。
「それでもう一つ心配があるのですが」
彩人は説明する。
二人がレガリスを抜けて以来脅迫が続いているらしい。
「簡単に抜けられると思うな」
「抜けますで済むと思ってるのか」
「どうなるかわかってるんだろうな?」
そんなメッセージが毎日届いて困っているらしい。
二人とも身を護る程度のことは出来る。
それでも女性にとっては恐怖だろう。
それを聞いていた恵美は笑う。
「今すぐ返信しなさい『渡辺班に入ったから』って」
二人は言われたようにメッセージを返した。
返事は来なかった。
「あとはブロ削すればいいわ。それで解決」
「渡辺班てどういうグループなんですか?」
彩人が聞く。
「そんなに怖がることは無い噂通りの班よ」
恵美が答える。
「今週末にでも新歓設定してあげるからぜひ来てね」
咲がそう言うと二人は帰っていった
二人が帰ると私は聞いた。
「レガリスって恵美は知ってるの?」
「ええ、前に確か私立大で暴れてたと思うけど」
美琴や咢が狙われていたヤンキー達が名乗っていたっけ?
「で、気になって調査入れていたのよ。……連中凝りもせずまたつくったみたいね」
エゴイスト、アーバニティ、スティンガーに続く悪徳サークル。
しかし規模はそんなに大きくないし、入る人も少ないという。
入っても直ぐに抜ける人がいるらしい。
そして彼等は渡辺班に嗅ぎ付けられるのを恐れている。
「それで渡辺班の名前を出したんだ」
愛莉が言うと、恵美は頷いた。
「どうせビビッて何もできやしないわよ。して来たら私が始末するから問題ない」
恵美が言う。
「そっか、じゃあ安心だね」
愛莉が言う。
「でも花菜、あなた大丈夫なの?週1しか帰れないって異常よ?」
晶が私に聞いてきた。
「週1帰れるだけマシな方らしいのよ。中には納期が無いからって休日に現場に来る下請け業者もいるらしくて……」
業者が来る以上現場に現場監督は残っていないといけない。
私が話をすると晶は電話していた。
「もしもしパパ?……今すぐ来て欲しいんだけど……そう、青い鳥って喫茶店」
晶が電話して30分後に晶の父親が来た。
「どうしたんだ晶?急用だと言ったのだが」
「パパの会社に物凄い無能がいるらしくて」
「なに……?」
晶が自分の父親に今言ったことを説明している。
晶の父親が怒りに震えているのは私達も分かった。
「現場は何処か分かるかい?花菜さん」
「確か鷲見のアパートだったと思います」
「ああ、あそこか……確かに工程が遅れていると聞いたな」
そう言いながら晶の父親は電話をしていた。
「ああ、私だが今すぐ支店長はいるか?すぐに呼び出せ!いないならこっちに連絡するように伝えろ!」
数分後に電話がかかってきた。
「お前が支店長か?鷲見の現場の件だが、所長を厳重に注意しろ!工程表も満足に管理できない無能など我が社には必要ない!それと内装会社はこの現場限りで契約を破棄しろ!もっとマシな会社などいくらでもいる。役立たずと取引する必要などない」
晶の父親はその後15分ほど支店長を叱りつけて電話を終えた。
今の下請け業者を厳しくチェックしてから無能なのは全部切り捨てるらしい。替えはいくらでもいる。と晶のお父さんはいう。
「花菜さんと言ったか。君の主人には悪い事をしたね。今後このような事が無いように厳しく言っておいたから許して欲しい」
「あ、ありがとうございます」
そう言うと晶の父さんは重要な取引があるからと去っていった。
その後数十件の下請けとの取引が切られたそうだ。
(4)
「それじゃ、新人二人の歓迎会はじめるぞ」
渡辺君がそう言うと宴が始まった。
いつもと違う日本料理の店。
西松君が見つけて来たらしい。
繁華街の外れにある店。
ふぐのコースを頼んでいた。
僕達のテーブルには愛莉、渡辺夫妻、竹本夫妻、北村さん、栗林君、彩人、松本さんがいた。
「まあ、こんな感じで偶に集まって飲んでるんだ。ゆっくり楽しんで言ってくれ」
「はい」
渡辺君が言うと二人は返事する。
それにしてもレガリスね。
次から次へと懲りずにでてくるものだよ。
やってることは前に比べたらしょぼいものだけど。
サークルで飲み会をして法外な料金を請求するらしい。
そんなので運営が成り立つんだから大したものだ。
二人には渡辺班に入ったその日から脅迫はパタリと止んだらしい。
やはり渡辺班の名前は強いそうだ。
「2人はどうしてつきあったの?」
愛莉はそう言う事を聞くのが好きらしい。
二人は照れながら話をしていた。
新歓で意気投合したそうだ。
その日のうちに連絡先を交換して今に至る。
吉野まで帰るのが面倒なので彩人の家に泊まっているんだそうだ。
半同棲生活だね
愛莉と松本さん達はすぐに意気投合していた。
「ところで冬夜、お前は大丈夫か?夏バテで倒れたと聞いたが?」
渡辺君が聞いてきた。
あれから特に問題はない。
愛莉のスケジュール調整は相変わらず衰えてないらしい。
順調にこなせている。
さてと、フグも食ったところで名残惜しいけど後の楽しみに取っておくか。
「冬夜どこ行くんだ?」
「冬夜さんどうなされました?」
渡辺君と愛莉が聞く。
「ちょっと他のテーブルに挨拶してくる」
そう言うと別のテーブルに行く。
まずは木元先輩のテーブル。
木元夫妻、酒井夫妻、石原夫妻、ますたーどの4人組がいる。
木元夫妻に聞いてみた。
「ああ、あれから問題なくやれているよ。所長も変わって無事竣工できそうだ。海には行くよ」
「ごめんなさいね、パパにも言っておいたから『歳だけ取っただけの役立たずなど捨ててしまえ』と」
志水家は人の人生を狂わせるのが好きらしい。
その後しばらく話をして次のテーブルに行く。
佐々木君達のテーブルだ。
佐々木君、小林さん、梅本君、桜木さん、若宮さん、涼宮君、高校生4人組がいる。
「楽しんでる?」
「ふぐなんて初めて食いましたよ。めっちゃうまい」
「確かにこの味には興味あるね。この後雑炊なんだって?」
「片桐君は食べなくていいの?」
梅本君と佐々木君と公生が言う。
「うん、ちょっと気になることがあってね」
「気になること?」
「ああ、大したことじゃないんだけどね」
「是非聞きたいね、興味ある」
公生と佐々木君が聞いてる。
「君達と話をするのはまたの機会にするよ」
そう言って次のテーブルに移動する。
多田夫妻、桐谷夫妻、中島夫妻、卜部さん、神田さん。悠木さん、長谷部さん、ちぃちゃん、高槻君。
「瑛大はどう?就活上手く言ってる?」
「薬のルート営業の仕事に就けた。来月から働くことになった」
「瑛大営業なんて大丈夫か!?」
「決まった客先訪問するだけだから楽だって面接の人が言ってた」
誠は瑛大の心配をしているようだ。
「手取りもいいんだぜ!」
瑛大は得意気に話す。
不安しか残らないないんだけど、まあ本人がやり甲斐を感じているならいいか。
「頑張りなよ」
そう言ってまた別のテーブルに行く。
晴斗、白鳥さん、亀梨君、森園さん、三沢君、岸谷さん、秋吉夫妻、如月夫妻。
「どうしたんすか、先輩があいさつ回りなんて珍しいっすね」
「たまにはね。楽しんでる?」
「フグとか初めて食ったっす!から揚げまじうめぇっす!」
美味いよね。晴斗は感動してるようだ。
「有栖は仕事順調?」
「はい、夏休みにはまた遠征です」
「この前テレビからも出演依頼きたんですよ」
二人は楽しそうに話す。
「亀梨君達も就職決まったんだって?」
「ええ、晶さんの会社に就職決まりました」
「それはよかった」
「全部片桐君のお蔭です」
「まあ、そう言う事言いっこなしで今日は楽しんでよ」
「はい」
そう言うと最後のテーブルに行く
真鍋夫妻、丹下夫妻、椎名夫妻、水島夫妻、檜山夫妻、西松夫妻、小鳥遊さん、月見里君。卜部さん、神田さん。
渡辺班の医療部門とその他に綺麗に別れて話しをしている。
「どうしたんですか?片桐先輩?」
真鍋君が聞いてきた?
「ただのあいさつ回り。楽しくやってる?」
「ええ、楽しくやってますよ?」
「佐たちはどう?」
「別に普通だが」
「そうか……」
「片桐先輩また何か企んでますか?」
桜子さんが言って来た。
「別に何も?」
「ならいいんですが……」
「ま、何も考えないで楽しんでよ」
「はい」
そう言うと、僕は自分の席に戻った。
「冬夜さん、お疲れ様です」
「ありがとう愛莉」
愛莉がコップにビールを注いでくれる。
「で、冬夜。どうしたんだ?急に?」
渡辺君が聞いてきた。
「渡辺君も感じてるんじゃない?違和感に」
「……そういうことか」
渡辺君が言うと僕がうなずいた。
「で、どうするつもりなんだ?」
「このまま行けば空中分解だ」
「たしかにな?」
「だったらやることは一つだよ」
「やること?」
渡辺君が聞いていた。
「2次会で説明するよ」
僕はそう言って雑炊を食べていた。
「冬夜さん、起きてください。朝ですよ」
「おはよう愛莉……」
「おはようございます。大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
僕は起きると着替える。
何か体がだるいなあ。
どうしたんだろう?
仕度をすると朝食を食べる……が。
おかしいな、食欲が湧かない。
でも愛莉心配するだろうしな。
コーヒーで流し込む。
その後いつも通り愛莉とゆっくりしてから仕事に行く
「お体気を付けてくださいね。行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ」
会社に着くといつも通り準備をして朝礼を済ませて業務開始。
今日の予定は……外回りはないな。
事務所でデータ入力作業。
相変わらず事務所内は気まずい空気が流れていた。
一人黙々と事務をする神木さん。
昼休みになると一人弁当を食べてそして寝る。
午後の業務開始15分前になると妙な体操を始める。
そして午後の業務開始。
今日は何事もない。
定時きっかりに神木さんは帰る仕度を始める。
「冬夜、お前も定時で上がっていいって言われてるだろ。こっちもその予定で仕事渡してるからいいぞ」
「すいません、お先に失礼します。おつかれさまでした」
達彦先輩に言われると僕も帰り支度を始める。
「冬夜ちょっと待て!」
達彦先輩に呼び止められる。
「お前ここ一桁間違えてるぞ!」
え?
達彦先輩のモニタを見る。確かに明らかにおかしい。
「すいません直ぐ修正します……」
「あ、いや。俺がやっとくからいいよ。それよりお前大丈夫か?最近ケアレスミスが多いぞ?」
「すいません注意してやってるんですけど」
「そろそろ気のゆるみが出て来る時期かもな。それとも試験勉強で知恵熱でたか?」
達彦先輩は笑っている。
「どうしたんだ?上原」
社長が来た。
「いや、最近たるんでるんじゃないかって冬夜に注意してたところです」
「ふむ……」
達彦先輩が言うと社長が僕の顔を見る。
「顔色悪いな……朝ごはんしっかり食べとるか?」
「ええ、食べてるんですけど食欲湧かなくて」
「夜はしっかり寝ておるか?」
そういや最近試験勉強で寝てないな。
「最近試験勉強してるからどうしても遅くなって」
「ふむ……夏バテかもしれんな?今日は帰ってゆっくり寝なさい。業務に差支え出たら困るぞ」
「すいません」
「片桐君は真面目だからな、勉強も必死なんだろうが少しリラックスしたほうがいいぞ。あの男にそのまじめさがあればいいんだが……」
「じゃ、失礼します」
そう言って家に帰る。
「ただいま……」
「おかえりなさい、お疲れ様でした。冬夜さん?」
家に帰った途端急に体が重くなる。
ふらついて愛莉に抱きついてしまった。
「もうだめですよ。そう言うの後にしてくださいな」
「ごめん……」
「どうかされましたか?」
「あ、いや。大丈夫……」
着替えると夕食を食べる。
だめだ……食欲がない。
でも食べなきゃ……。
「あの……お口にあいませんでしたか?」
「そ、そんなことないよ」
無理矢理流し込む。
そんな僕を見て考え込む愛莉。
「どうしたの?」
「いえ、お風呂になさってくださいな」
「わかった」
お風呂に入ると寝室に行く。
愛莉は真剣な眼差しでノートPCを見ていた。
「愛莉、お風呂空いたよ?」
「は、はい」
愛莉は慌ててノートPCをたたむとお風呂に向かう。
愛莉はもどってくると麦茶の入ったコップを持ってくる。
「今日はお酒切れたの?買って来ようか」
「駄目です!今日はお酒は控えてください」
どうしたんだろう?
「……それを飲んだら今日はお休みになってください」
「でも、試験勉強が……」
「今日は駄目です。お願いします。お休みになってください」
「いったいどうしたの?」
すると愛莉は頭を下げた。
「ごめんなさい、全ては私のせいなんです。私が冬夜さんのスケジュール管理サボってたから」
え?
「冬夜さん夏バテみたいです。今はゆっくり休んで。ごめんなさい。食事も注意しないといけなかった」
愛莉が泣いてる。
「こんなんでお嫁さんなんて笑われてしまいます。お嫁さん失格です」
「お嫁さんを泣かせるなんて僕もまだまだ旦那失格だな」
「え?」
愛莉の背中をさすってやる。
「わかった。今日はゆっくり休むよ。これ以上お嫁さん困らせたくないからね」
「……ありがとうございます」
「礼を言うのは僕だよ愛莉。ありがとう。そしてごめんね」
麦茶を飲むと愛莉に言われたとおりにベッドに入る。
愛莉はテレビを見ている。
じっと愛莉を見ている。
それに愛莉が気づいたらしい。
「あ、明り気になりますよね。リビングで見てますね。おやすみなさい」
「愛莉は寝ないのかい?」
「私少し見たいテレビがあるので」
「そう。じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
愛莉は寝室を出てリビングに向かった。
僕は本当に疲れていたようで、すぐに眠りについた。
「冬夜さん、朝ですよ」
「おはよう愛莉?」
あれ?今日はベッドの外か。
愛莉の顔を見てすぐ気づいた。
隈がある……。
「昨日ちょっと夜更かしし過ぎたみたいです」
愛莉はそう言って笑う。
何か隠してる。
すぐわかった。
「愛莉昨日の夜何してた?」
「テレビに夢中になり過ぎたんです。ごめんなさい。朝食出来てますから準備してきてくださいな」
愛莉はそう言って寝室を出る。
何を隠してる?
部屋を見渡せばすぐにわかった。
着替えて準備をするとダイニングに行く。
そしてリビングのテーブルを見ればすぐにわかる。
僕の参考書が並んである。
僕がそれに気づいたのを愛莉も気づいたらしい。
「ちょ、ちょっとどんな資格なんだろう?って気になって……」
参考書と過去問題集をさっと見る。
愛莉が夜になにをしていたかすぐにわかった。
無数にある付箋と要所要所にあるメモ書き。
何よりおどろいたのがその的確さだ。
試験は会計学に属する科目2科目と税法に属する科目6科目のうち3科目を選択して計5科目うける。
僕は法人税と消費税、国税徴収法を選んでいたのだが、愛莉には伝えていない。
なのに愛莉はは重点的にその3科目をチェックしてノートにまとめていた。
「差し出がましいとも思ったのですが、少しでもお力になれたらと思って……」
「……なんで選択科目わかったの?」
「冬夜さんの問題集見てたらすぐわかりました」
僕はテーブルに本を置くと愛莉に近づく。
「頑張ってる冬夜さんを手伝ってあげたくてつい手が出ました。すいません!」
愛莉を強く抱きしめる。
「ありがとう。本当に僕は幸せ者だな」
「私の方こそ幸せ者です。こんなに素敵な旦那様に巡り会えて」
ご飯を食べると愛莉は片づけてリビングで二人でくつろぐ。
「あの、冬夜さん。一つ提案があるのですがよろしいでしょうか?」
「どうしたの?」
「差し出がましいとは思うのですが、私やっぱり冬夜さんのお手伝いがしたいのですが……」
「?」
愛莉は言う。
一緒に勉強させてくださいと。一緒に頑張りたい。僕の勉強スケジュールはやっぱり愛莉がしないと駄目だと言う。
どこまで健気なんだろう……。
断る理由が見つからなかった。
「わかったよ。ただし一つ条件がある」
「なんなりと」
「こんな無茶は二度としないって約束できる?愛莉が倒れたら意味がない」
「わかりました。約束します」
「それと僕に黙ってこんな無茶をした罰を与える」
「え?」
不安そうな愛莉。だけどすぐにその不安は解ける。目を閉じて僕を受け入れる愛莉。
「冬夜さんは意地悪です。こんな罰ではまたしたくなっちゃいます」
「それはだめだよ」
「はい」
時間になると玄関に行く。
「じゃあ、行ってくるね」
「お気をつけて。行ってらっしゃい」
「ところで愛莉」
「どうなさいました?」
「よく一晩であそこまで書きこめたね。徹夜してた?」
「いえ、寝ましたよ?」
選択科目を絞っていたとはいえ、見事な書き込みだった。
要所を的確に押さえてある。
それが疑問だった。
それを愛莉は一言で片づける。
「そんなの一目見たらわかりますよ」
愛莉はにこりと笑っていた。
愛莉はそういう子だったという事を今さら思いだした。
その日のお弁当はスパイスの効いたチャーハンだった。
愛莉なりに夏バテ予防にと考えたのだろう。
美味しくいただいた。
(2)
「木元さんちょっと来てください!」
またか……
「どうしました?」
「ここ間口の寸法が全然違うんだけど」
え?
職人さんが測ると図面と50㎜も違う。
「ここに嵌めるカウンターの天板の天板が寸法全部狂ってくるんだけどどうする?」
「天板削れませんか?」
「天板はいいけど下収納どうするの?一体型だから作り替えになるよ?」
とはいえ柱を削るわけには行かない。
所長に報告する。
「そんなの現寸計らないで作った業者の責任で作り替えさせろ」
所長の意向を伝える。
「だから、設計図作った時に現寸送ってくれって言いましたよね!」
「す、すいません」
「それと窓の天板石膏ボード貼る前に取り付けるって言ったのにもう石膏ボード貼ってるよ!どうすんの!?」
現場を確認すると確かに石膏ボードが張られている。
内装工事の業者を呼び出す。
どうして付けたのか問いただす。
「他の監督に確認したら張って良いって言ったからつけたんだけど?」
その監督に言う。ちょっと年配の人。
「それちゃんとホワイトボードに書いた?」
「書きましたよ」
事務所に戻って工程表を見る。
きっちり書き込んである。
「あ、確認してなかったわ。ごめんごめん」
ごめんごめんて……
「どうすんの?これじゃ固定出来ないよ?」
所長に聞く。
「ビス止めしとけ!ていうか一々細かい事俺に聞くんじゃなくて自分で判断しろ」
ビスで固定って見栄えどうするんだよ?
「本当にビス止めでいいんですね?」
「ああ、それでいいから。もう納期ないんだ!ボード張り替えるわけにもいかないだろ」
その事を伝える。
「あんちゃん自分の言ってる事理解してる?見栄え悪くなるよ?それに間口変わってくるから一旦工場に持って帰ってやり替えだよ。工賃発生するよ?」
平謝りして作り返してもらう。
仕上げに入るとこんなトラブル日常茶飯事だ。
まあ、着工時からトラブルばかりなんだけど。
基礎工事をしていて基礎が10㎜ずれたとかは日常茶飯事。蓋を開けてみたら鉄筋丸出しなんてこともあるくらいだ。
その度に呼び出される。
そして今日は最悪の日だった。
「ちょっと木元さん来てよ!」
今度はなんだ?
「何で先に便器設置してんの!?仕上げしずらいじゃないか」
慌てて業者に電話する。
「だって納期が3日前だったから。ちゃんと所長には話したよ」
工程表を見る。
確かに3日前だ。
内装業者にその旨を伝える。
「工程が遅れてる事くらい木元さんだって分かってるだろ!しっかりしてくれよ!」
一度取り付けた便器を外すわけにもいかない。頭を下げて工事をしてもらう。
そうして一日が終える……訳が無い。
ここからが本番だ。
事務作業をひたすら行う。
現場監督の業務は、工事現場の工程管理・作業指示・予算組み・発注・説明会・クレーム対応などだ。
さらにISOの書類を作成しなければならない。
そんな事をしていたら、0時を過ぎる。
現場が始まると、月曜から出勤。土曜の朝に朝に帰宅するなんてことざらだ。
土曜の飲み会に参加できるのは土日が休めるからではない、月曜から土曜日まで現場に入り浸りだ。
当然着替えは無い。
同期の現場監督は次々と辞めていったよ。
それでも建物が出た時は充実感を得る。
だがそれもつかの間。
施主のクレームがつく。
そのクレームの対応に追われる。
そして花菜との約束はきっちり守っている。
疲労の体をおして、彼女に一日をプレゼントする。
喜んでる花菜を見て一安心する。
掴まの名のの一日の休息
そう一日で終わってしまう。
そして日曜には出かける。
「あまり無理しないでね」
その言葉が唯一の清涼剤。
外に出る。もう夏がおとずれていた。
(3)
カランカラン
「こんにちは」
喫茶店青い鳥。
やってくると愛莉と恵美と晶。
いつもの客が来ていた。
「いらっしゃいませ」
気だるそうに言う美里の声。
「注文はいつものでいいよね?」
対称的に明るい咲の声。
そして渡辺班の主婦陣に寄る井戸端会議が始まる。
いつもは主人の愚痴から始まるのだが、今日は違った。
それぞれ主人に不安を抱いているらしい。
それは不満などではなく、心から主人の身を案じている。
3人の主人は皆試用期間を終え正社員になった。
当然責任もより大きなものになる。
酒井君の場合は最初から責任重大だったけど。
……石原君もそうか、本業の傍ら芸能事務所の社長をやっている。
二人とも口数が元々多くなかったけどさらに減ったらしい。
うちの主人も今の現場監督になってから週末まで帰ってこなくなった。
遊びに行ってるわけじゃない。
仕事で現場事務所に泊まり込みで働いている。
海の日の3連休までに竣工する予定らしいが。体調が不安だ。
片桐君も夏バテをしてしまったらしい。
愛莉は自分を責めていた。
皆無理をして働いている。
それは神奈や穂乃果や亜依も一緒だ。
皆大変なんだな。
そんな話をしていた時だった。
カランカラン。
新たな来客のようだ。
「いらっしゃいませ……って彩人?」
美里は入ってきたカップルを見て言った。
「姉さん、久しぶり」
彩人と言われた人は美里の事を「姉さん」と言った。
姉弟なんだろうか?
「どうしてここまで、あなた別府大学のはずでしょ?」
美里は驚いている。別府大学の人か。
「姉さんが心配で様子見に来たんだよ。同棲始めたって母さんから聞いて。2人とも心配してたよ」
「……とりあえず適当に座って」
二人はカウンター席に座る。
「美里、紹介してよ」
咲が言う。
「はい、弟の北村彩人と……」
「はじめまして、彩人さんと交際させていただいてる松本遥と申します」
そう言って女性の方が挨拶した。
二人は新歓コンパで知り合ったらしい。実家は吉野にあるんだとか。
で、遥さんの実家に挨拶に行った帰りに寄ったらしい。
「2人ともサークル活動とかやってるの?」
咲さんが聞いた。
「その件もあって姉さんに相談に来たんだ」
彩人さんは言う。
別府の大学にレガリスとという出会い系サークルがあるという。
そこの新歓で二人は意気投合したのだが、どうもサークルの行動がおかしいらしい。
すぐに二人とも抜けた。
噂の縁結びのサークルと聞いたのだけど噂とは全然違う内容だったらしい。
そこで思い出したのが美里が噂のサークルに入っていたと言う事。
良かったらそこに2人共入れて欲しいという。
そばで聞いていた恵美が言った。
「入れてあげたらいいじゃない」
二人は驚いた。
「それもそうね。素性も問題なさそうだし良いわよ。私が責任持つから」
咲が言う。
「あの、あなた方は」
「初めまして。渡辺班の大学生代表をやってる竹本咲といいます」
咲が自己紹介すると皆自己紹介をした。
「まさかみんな同じグループだったなんて」
彩人君は驚いている。
「で、どうする?入る」
「入れてもらえるなら入れて欲しいです。なあ?遥」
「そうだね。でもどんな事するんですか?」
「社会人もいるからメッセージのやり取りが主で後は月に何回か飲み会とか、今月は海にキャンプに行ったりかな」
咲が説明する。
「それなら問題ないよな?遥」
「うん、よろしくお願いします」
二人がそう言うと咲は二人とIDの交換をする。
そして渡辺班に招待した。
「吉野から別府まで通ってるの?」
咲が遥に聞いていた。
「週1で実家に帰る程度であとは彼の家とかに泊まり込んでますね」
彩人は別府で一人暮らしをしているらしい。
「それでもう一つ心配があるのですが」
彩人は説明する。
二人がレガリスを抜けて以来脅迫が続いているらしい。
「簡単に抜けられると思うな」
「抜けますで済むと思ってるのか」
「どうなるかわかってるんだろうな?」
そんなメッセージが毎日届いて困っているらしい。
二人とも身を護る程度のことは出来る。
それでも女性にとっては恐怖だろう。
それを聞いていた恵美は笑う。
「今すぐ返信しなさい『渡辺班に入ったから』って」
二人は言われたようにメッセージを返した。
返事は来なかった。
「あとはブロ削すればいいわ。それで解決」
「渡辺班てどういうグループなんですか?」
彩人が聞く。
「そんなに怖がることは無い噂通りの班よ」
恵美が答える。
「今週末にでも新歓設定してあげるからぜひ来てね」
咲がそう言うと二人は帰っていった
二人が帰ると私は聞いた。
「レガリスって恵美は知ってるの?」
「ええ、前に確か私立大で暴れてたと思うけど」
美琴や咢が狙われていたヤンキー達が名乗っていたっけ?
「で、気になって調査入れていたのよ。……連中凝りもせずまたつくったみたいね」
エゴイスト、アーバニティ、スティンガーに続く悪徳サークル。
しかし規模はそんなに大きくないし、入る人も少ないという。
入っても直ぐに抜ける人がいるらしい。
そして彼等は渡辺班に嗅ぎ付けられるのを恐れている。
「それで渡辺班の名前を出したんだ」
愛莉が言うと、恵美は頷いた。
「どうせビビッて何もできやしないわよ。して来たら私が始末するから問題ない」
恵美が言う。
「そっか、じゃあ安心だね」
愛莉が言う。
「でも花菜、あなた大丈夫なの?週1しか帰れないって異常よ?」
晶が私に聞いてきた。
「週1帰れるだけマシな方らしいのよ。中には納期が無いからって休日に現場に来る下請け業者もいるらしくて……」
業者が来る以上現場に現場監督は残っていないといけない。
私が話をすると晶は電話していた。
「もしもしパパ?……今すぐ来て欲しいんだけど……そう、青い鳥って喫茶店」
晶が電話して30分後に晶の父親が来た。
「どうしたんだ晶?急用だと言ったのだが」
「パパの会社に物凄い無能がいるらしくて」
「なに……?」
晶が自分の父親に今言ったことを説明している。
晶の父親が怒りに震えているのは私達も分かった。
「現場は何処か分かるかい?花菜さん」
「確か鷲見のアパートだったと思います」
「ああ、あそこか……確かに工程が遅れていると聞いたな」
そう言いながら晶の父親は電話をしていた。
「ああ、私だが今すぐ支店長はいるか?すぐに呼び出せ!いないならこっちに連絡するように伝えろ!」
数分後に電話がかかってきた。
「お前が支店長か?鷲見の現場の件だが、所長を厳重に注意しろ!工程表も満足に管理できない無能など我が社には必要ない!それと内装会社はこの現場限りで契約を破棄しろ!もっとマシな会社などいくらでもいる。役立たずと取引する必要などない」
晶の父親はその後15分ほど支店長を叱りつけて電話を終えた。
今の下請け業者を厳しくチェックしてから無能なのは全部切り捨てるらしい。替えはいくらでもいる。と晶のお父さんはいう。
「花菜さんと言ったか。君の主人には悪い事をしたね。今後このような事が無いように厳しく言っておいたから許して欲しい」
「あ、ありがとうございます」
そう言うと晶の父さんは重要な取引があるからと去っていった。
その後数十件の下請けとの取引が切られたそうだ。
(4)
「それじゃ、新人二人の歓迎会はじめるぞ」
渡辺君がそう言うと宴が始まった。
いつもと違う日本料理の店。
西松君が見つけて来たらしい。
繁華街の外れにある店。
ふぐのコースを頼んでいた。
僕達のテーブルには愛莉、渡辺夫妻、竹本夫妻、北村さん、栗林君、彩人、松本さんがいた。
「まあ、こんな感じで偶に集まって飲んでるんだ。ゆっくり楽しんで言ってくれ」
「はい」
渡辺君が言うと二人は返事する。
それにしてもレガリスね。
次から次へと懲りずにでてくるものだよ。
やってることは前に比べたらしょぼいものだけど。
サークルで飲み会をして法外な料金を請求するらしい。
そんなので運営が成り立つんだから大したものだ。
二人には渡辺班に入ったその日から脅迫はパタリと止んだらしい。
やはり渡辺班の名前は強いそうだ。
「2人はどうしてつきあったの?」
愛莉はそう言う事を聞くのが好きらしい。
二人は照れながら話をしていた。
新歓で意気投合したそうだ。
その日のうちに連絡先を交換して今に至る。
吉野まで帰るのが面倒なので彩人の家に泊まっているんだそうだ。
半同棲生活だね
愛莉と松本さん達はすぐに意気投合していた。
「ところで冬夜、お前は大丈夫か?夏バテで倒れたと聞いたが?」
渡辺君が聞いてきた。
あれから特に問題はない。
愛莉のスケジュール調整は相変わらず衰えてないらしい。
順調にこなせている。
さてと、フグも食ったところで名残惜しいけど後の楽しみに取っておくか。
「冬夜どこ行くんだ?」
「冬夜さんどうなされました?」
渡辺君と愛莉が聞く。
「ちょっと他のテーブルに挨拶してくる」
そう言うと別のテーブルに行く。
まずは木元先輩のテーブル。
木元夫妻、酒井夫妻、石原夫妻、ますたーどの4人組がいる。
木元夫妻に聞いてみた。
「ああ、あれから問題なくやれているよ。所長も変わって無事竣工できそうだ。海には行くよ」
「ごめんなさいね、パパにも言っておいたから『歳だけ取っただけの役立たずなど捨ててしまえ』と」
志水家は人の人生を狂わせるのが好きらしい。
その後しばらく話をして次のテーブルに行く。
佐々木君達のテーブルだ。
佐々木君、小林さん、梅本君、桜木さん、若宮さん、涼宮君、高校生4人組がいる。
「楽しんでる?」
「ふぐなんて初めて食いましたよ。めっちゃうまい」
「確かにこの味には興味あるね。この後雑炊なんだって?」
「片桐君は食べなくていいの?」
梅本君と佐々木君と公生が言う。
「うん、ちょっと気になることがあってね」
「気になること?」
「ああ、大したことじゃないんだけどね」
「是非聞きたいね、興味ある」
公生と佐々木君が聞いてる。
「君達と話をするのはまたの機会にするよ」
そう言って次のテーブルに移動する。
多田夫妻、桐谷夫妻、中島夫妻、卜部さん、神田さん。悠木さん、長谷部さん、ちぃちゃん、高槻君。
「瑛大はどう?就活上手く言ってる?」
「薬のルート営業の仕事に就けた。来月から働くことになった」
「瑛大営業なんて大丈夫か!?」
「決まった客先訪問するだけだから楽だって面接の人が言ってた」
誠は瑛大の心配をしているようだ。
「手取りもいいんだぜ!」
瑛大は得意気に話す。
不安しか残らないないんだけど、まあ本人がやり甲斐を感じているならいいか。
「頑張りなよ」
そう言ってまた別のテーブルに行く。
晴斗、白鳥さん、亀梨君、森園さん、三沢君、岸谷さん、秋吉夫妻、如月夫妻。
「どうしたんすか、先輩があいさつ回りなんて珍しいっすね」
「たまにはね。楽しんでる?」
「フグとか初めて食ったっす!から揚げまじうめぇっす!」
美味いよね。晴斗は感動してるようだ。
「有栖は仕事順調?」
「はい、夏休みにはまた遠征です」
「この前テレビからも出演依頼きたんですよ」
二人は楽しそうに話す。
「亀梨君達も就職決まったんだって?」
「ええ、晶さんの会社に就職決まりました」
「それはよかった」
「全部片桐君のお蔭です」
「まあ、そう言う事言いっこなしで今日は楽しんでよ」
「はい」
そう言うと最後のテーブルに行く
真鍋夫妻、丹下夫妻、椎名夫妻、水島夫妻、檜山夫妻、西松夫妻、小鳥遊さん、月見里君。卜部さん、神田さん。
渡辺班の医療部門とその他に綺麗に別れて話しをしている。
「どうしたんですか?片桐先輩?」
真鍋君が聞いてきた?
「ただのあいさつ回り。楽しくやってる?」
「ええ、楽しくやってますよ?」
「佐たちはどう?」
「別に普通だが」
「そうか……」
「片桐先輩また何か企んでますか?」
桜子さんが言って来た。
「別に何も?」
「ならいいんですが……」
「ま、何も考えないで楽しんでよ」
「はい」
そう言うと、僕は自分の席に戻った。
「冬夜さん、お疲れ様です」
「ありがとう愛莉」
愛莉がコップにビールを注いでくれる。
「で、冬夜。どうしたんだ?急に?」
渡辺君が聞いてきた。
「渡辺君も感じてるんじゃない?違和感に」
「……そういうことか」
渡辺君が言うと僕がうなずいた。
「で、どうするつもりなんだ?」
「このまま行けば空中分解だ」
「たしかにな?」
「だったらやることは一つだよ」
「やること?」
渡辺君が聞いていた。
「2次会で説明するよ」
僕はそう言って雑炊を食べていた。
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