現代文の模試に出そうな評論たち

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良心の限界

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よく慈善を目的として、財団法人なんかに多額の寄付をするハリウッドスターやIT長者がいる。ディカプリオとかジョブズやビルゲイツもその1人である。障害者や難病患者の支援、または人類文明発展のための研究への投資など多種多様な慈善事業の種類がある。そういった多種多様な慈善事業が大勢の大富豪の道徳的善意によって賄われている。そう考えると、いやはやこれはなんと感心すべき事実であろうかと普通の人は思うだろう。

しかし、その単一的側面のみでこれを見てしまっていいのだろうか?
つまり、金持ちは道徳的で生来的な良心だけでこの寄付をやってのけているのだろうか?私はことさら猜疑に思う。

結論から言うと、これらの寄付はなにも良心の側面のみから行われているのではない。(ただし、これは全くないというわけではなく、良心側面が大部分をしめた寄付が少ないということを示唆している。)

寄付金控除というのを聞いたことがあるだろうか?寄付金を払った分だけ税金が優遇され払わなくてもよくなると言う制度である。我が国でもある制度だが、
自由の国アメリカは我が国とは控除のスケールがまったくもって違う。つまり、彼らは莫大な寄付によって支払うべきさらに莫大な税金を回避しているのである。

さて、これを踏まえて今日考えてほしいのは彼らはこの優遇がなくなったとき、果たして寄付を続けるのだろうか?ということである。

全員がやらなくなるとは思わないが、それでも寄付をする人は減るのではないか。このように見立てるのがここは筋であろう。(私が富豪だとしたらもちろん優遇が無かったら寄付などまったくしないだろうし。)

【余談になるが、この大富豪の寄付というのは、実に気持ち悪いものだと私は思う。だってそもそも彼ら金持ちは社会的弱者から搾り取ることによって巨万の富を得ているわけで(マルクス理論的には)、それを自らもう一度そういった弱者に与えようなどというのは中々狂った行為だと思う。むしろ、それには良心というよりかは弱者の搾取が彼らによって行われていることについて目をそらさせるためのエサとして使われているように思うのである。】注:さて、話を戻そう

では、皆さんにお尋ねしよう。富豪は良心の赴くままに寄付をしているのか、
それとも、優遇という「利益」のもとに
寄付をしているのだろうか?
もう、答えは自明だろう。


はっきり言って良心、そして善意、さらには正義というのは「利益」があってこそ原初的に成り立つものなのである。
この「利益」というのはなにも金銭的なことばかりを言っているのではない。


例えばここに少々ばかり考えすぎる浦島太郎がいたとしよう。
彼は少し目上の人と(上司や教師のような)海岸線をともに歩いて談笑をしている。そこに突然、村の童子達にいじめられている亀が現れる。

さて、ここでまた質問。考えすぎる浦島は一体ここでなにを考えるだろうか。

浦島「目上の人が隣にいる状況下で今ここで亀を助けなければどうなるだろう。
あぁ、僕はきっとあの人に失望されるかもしれない。はたまたここで助ければ、自分の高度な倫理観をアピールできるかもしれない。」
瞬間的にここまで考えられる人ははっきり言って、もはやサイコパスだけれども、感覚的、本能的にこの状況の上でそのような思考がある。

「失望されるかもしれない」というのはつまり亀を助ければ「失望されない」ということだ。
これを「不安及び恐怖からの解放による利益」と言えるのではないか。

この利益について、イメージしやすいのは忘れ物の時である。この場合の正義は早めに言うことだが、そこには「遅く言うと教師に叱られる」というバイアスがかかっている。早めに言えば、それを回避できる。そういう心理が隠れている。つまりこれも「不安及び恐怖からの解放による利益」と言えるだろう。


だから、つまり今日私が言いたいのは、
良心が単一でその効用を及ぼしうる範囲は非常に狭く、そしてその良心は利益と相互的に作用することによって持続しているということである。

少々小難しい風に書いてしまったが、
裏を返せば、良心を涵養する、つまり「あれこれしなさいよ」とか「こういうふうにしたほうがいいんじゃない」というときというのはその根拠を良心に任せすぎずにその裏にある「利益」というものをしっかりと提示するべきだということである。

ということで今日から私もいろんな人に
ご飯なんかを奢ろうと思うのである笑





(ただし、今回述べた内容は宗教による良心という超特殊なモノの上には全く成り立たないことを一応書いておく。)







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