63 / 64
第4章
花が咲いた
しおりを挟む
手のひらくらいの大きさをしたこの花は、薄紅色の花弁が何層も重なってできている。
名前は『暁の王女』。
今から百年前、パートリッジ家の令息ウォルターが、庭師のガイと一緒に作り上げたんだ。妻となる王女ケイトリンへ贈るためにね。
以降のパートリッジ家は庭園の一番日当たりのいい場所を『暁の王女』の育成地と決めて、ニ十株ほどを大切に守り育ててきた。
だけど僕はこの花を守り切れなくて、数年前にぜんぶ枯らしてしまったんだ。
――そのはずなのに。
いま、僕の目の前には三株の『暁の王女』がある。二株は瑞々しい緑の茎と葉があるだけなんだけど、一株は二つの花と一つの蕾を持っていた。王都の貸衣装屋ゴールデン・ペタルにあった偽物の花とは違うよ。だってほら、上品で清々しくて、だけどとても優しいあの香りが漂ってるじゃないか。
「どうして……」
「お嬢様のご意向を受け、管理しておりました」
振り向くと、老執事が声と同じ静かな表情を浮かべてる。
「今から五年前の話でございます。奥様がお亡くなりになられたあと、お嬢様が私に仰ったのです。『どうか暁の王女を守ってあげて』と」
「姉上が……なんで?」
「これは私の予想ですが……『まだ幼くて、だけど優しい弟のために』と言っておられましたので、お嬢様はこのお花が“若君にとっては大切な存在だ”と考えておられたようです」
執事は少し口ごもったから、姉上はたぶん違う言い方をしたんだろうな。おそらく「お馬鹿なグレアム」あたりだろうね。
でも……そっか。『約束の花束をあなたに』でムダルとラジュワーのエピソードを書くくらいだし、姉上はきっと、僕とサラと『暁の王女』にまつわる話を知ってたんだね。
「じゃあ、『暁の王女』は、ずっとここで咲いてたの?」
「違いますよー!」
返事をした声は執事のものじゃなかった。僕がぎょっとして振りむくと、草をかき分けてメイドが現れる。後ろには下働き担当の男性もいた。
「このお花はですねー、お墓にあったんです!」
「はひゃ?」
う、びっくりして変な声になった。
老執事が「まだそこまでお話しをしていませんよ」と言ってから、続きを教えてくれる。
五年前にパートリッジ本邸の使用人はぐっと減ってしまった。執事と、下働きをする男性使用人と、メイドと。つまり、今も残ってくれてる三人だね。
その三人でまず始めたのは『暁の王女』を植え替えることだった。
だけど三人ではできることにも限界がある。それで村人たちの手を借りたんだって。
「アタシが、おっ父に相談したんです。植えるのにいい場所も探してもらいました!」
にこにこしながら口を挟むのは、もちろんメイドだ。
植え替えの候補地が決まったところで、三人の使用人と村人たちは雑草だらけの庭園に分け入った。なんとか『暁の王女』の育成地へ到着したけど、ニ十株あった『暁の王女』は四株が枯れていた。
このまま本邸の庭園で育てるのは無理だろうということで、使用人たちと村人は植え替えを決意したそうだ。
残った十六の株は大事に掘り返され、川のほとりや森の近く、寄り合い場所の庭など、村内の各地に分けて植えられた。どの場所が育成に適しているか分からなかったから、一か所に植えて全滅させるより、少しずつ分けて植えたほうがいいだろうって判断だったみたい。
村のみんなで面倒を見たけど、翌年までに五株が枯れた。
その後も少しずつ数を減らして、最終的に残ったのは六株。南向きの畑に植えられた三株と、小高い丘の上に植えられた二株と、そしてお墓の横に植えられた一株と。
その三か所から一株ずつ、合計で三株をパートリッジ家の元育成地へまた戻した。それがいま僕の見ている『暁の王女』なんだって。
そっか。何か月か前に三人の使用人と村人たちが庭園付近で何かしてるのを見たことがあったけど、この植え替えの準備だったんだね!
「このまま花をつけないかと気をもんでいましたが、幸いにも一株はずっと元気なままでした。おかげで咲いてくれたようです」
執事の声に合わせて風が吹き、咲いてる一株の葉が上を向く。それはなんだか花が胸を張ったように僕には見えた。
この一株はさっきメイドが言ったとおり、お墓に植えられていたものらしい。どうしてお墓に植えたのかというと――。
「実はそのお墓は、庭師の“ガイ”という方が埋葬されている場所だったのです」
みんなはガイが花を守ってくれるかもしれないと思ってお墓の横に植えたんだよね。ガイは『暁の王女』を作り出した人だから。
きっとみんなが優しいから、花は守ってもらえたんだ。だからこの一株は元気なままなんだよ!
僕は何かを言おうと思った。だけど何を言ってもみんなの優しい笑顔の前では足りないような気がして、ただ、
「ありがとう」
とだけしか口に出せなかった。
三人はただ、にっこりと花みたいに笑った。
……花が咲いた。
『暁の王女』が。
僕が守ろうとして守り切れなかった花は、僕の思いもかけない形でずっと咲いててくれた。
ああ。
僕の周りの人たちはみんな、なんてあたたかくて、なんて強いんだろう。
鼻の奥がツンとして、目頭が熱くなってくる。
服の袖で顔をぬぐった僕は、唾を飲みこんで口を開いた。
「……あの、さ。お願いがあるんだ」
「なんでしょうか」
「王都へ行きたいんだ。できれば今すぐ。――この忙しいときにごめん」
「必要なものはありますか」
真っ先に聞いてくれたのは下働きの男性だ。
僕は申し訳ない気持ちで小さくうなずく。
「『暁の王女』を持って行ってもいいかな」
我ながら調子いいなあとは思うけど、下働きの彼はにこりと笑った。
「すぐに用意します」
踵を返す彼に続き、メイドが「お弁当を用意しますね!」と言ってばたばたと走って行く。執事は胸に手を当てて頭を下げ、
「本来ならば、新年を迎える仕度をするのは私ども使用人の役目。どうぞ若君はお心のままにお過ごしくださいませ」
という言葉を残して立ち去った。
一人になった僕の頬を柔らかな風が撫でていく。その緩やかな流れと一緒に足を進めかけてふと思い返し、僕は日差しの中で輝く薄紅色に近寄った。
ねえ、サラ。
花が咲いたよ。
僕が持って行くって約束をして、君が欲しいって言ってた花。
ぜんぶ枯れたと思ってたけど、まだ残ってた。
姉上が、使用人たちが、村の人たちが、みんなで守ってくれたんだ。
おかげでまたパートリッジの本邸で見ることができたよ。
僕たちの思い出の花を。
『暁の王女』を!
君に何があったのか、どうしてルークとの婚約を解消したのか、僕には分からない。
だけど僕は今度こそ“グレアム”の姿で会いたい。
そうして君に、伝えたいことが、あるんだ。
名前は『暁の王女』。
今から百年前、パートリッジ家の令息ウォルターが、庭師のガイと一緒に作り上げたんだ。妻となる王女ケイトリンへ贈るためにね。
以降のパートリッジ家は庭園の一番日当たりのいい場所を『暁の王女』の育成地と決めて、ニ十株ほどを大切に守り育ててきた。
だけど僕はこの花を守り切れなくて、数年前にぜんぶ枯らしてしまったんだ。
――そのはずなのに。
いま、僕の目の前には三株の『暁の王女』がある。二株は瑞々しい緑の茎と葉があるだけなんだけど、一株は二つの花と一つの蕾を持っていた。王都の貸衣装屋ゴールデン・ペタルにあった偽物の花とは違うよ。だってほら、上品で清々しくて、だけどとても優しいあの香りが漂ってるじゃないか。
「どうして……」
「お嬢様のご意向を受け、管理しておりました」
振り向くと、老執事が声と同じ静かな表情を浮かべてる。
「今から五年前の話でございます。奥様がお亡くなりになられたあと、お嬢様が私に仰ったのです。『どうか暁の王女を守ってあげて』と」
「姉上が……なんで?」
「これは私の予想ですが……『まだ幼くて、だけど優しい弟のために』と言っておられましたので、お嬢様はこのお花が“若君にとっては大切な存在だ”と考えておられたようです」
執事は少し口ごもったから、姉上はたぶん違う言い方をしたんだろうな。おそらく「お馬鹿なグレアム」あたりだろうね。
でも……そっか。『約束の花束をあなたに』でムダルとラジュワーのエピソードを書くくらいだし、姉上はきっと、僕とサラと『暁の王女』にまつわる話を知ってたんだね。
「じゃあ、『暁の王女』は、ずっとここで咲いてたの?」
「違いますよー!」
返事をした声は執事のものじゃなかった。僕がぎょっとして振りむくと、草をかき分けてメイドが現れる。後ろには下働き担当の男性もいた。
「このお花はですねー、お墓にあったんです!」
「はひゃ?」
う、びっくりして変な声になった。
老執事が「まだそこまでお話しをしていませんよ」と言ってから、続きを教えてくれる。
五年前にパートリッジ本邸の使用人はぐっと減ってしまった。執事と、下働きをする男性使用人と、メイドと。つまり、今も残ってくれてる三人だね。
その三人でまず始めたのは『暁の王女』を植え替えることだった。
だけど三人ではできることにも限界がある。それで村人たちの手を借りたんだって。
「アタシが、おっ父に相談したんです。植えるのにいい場所も探してもらいました!」
にこにこしながら口を挟むのは、もちろんメイドだ。
植え替えの候補地が決まったところで、三人の使用人と村人たちは雑草だらけの庭園に分け入った。なんとか『暁の王女』の育成地へ到着したけど、ニ十株あった『暁の王女』は四株が枯れていた。
このまま本邸の庭園で育てるのは無理だろうということで、使用人たちと村人は植え替えを決意したそうだ。
残った十六の株は大事に掘り返され、川のほとりや森の近く、寄り合い場所の庭など、村内の各地に分けて植えられた。どの場所が育成に適しているか分からなかったから、一か所に植えて全滅させるより、少しずつ分けて植えたほうがいいだろうって判断だったみたい。
村のみんなで面倒を見たけど、翌年までに五株が枯れた。
その後も少しずつ数を減らして、最終的に残ったのは六株。南向きの畑に植えられた三株と、小高い丘の上に植えられた二株と、そしてお墓の横に植えられた一株と。
その三か所から一株ずつ、合計で三株をパートリッジ家の元育成地へまた戻した。それがいま僕の見ている『暁の王女』なんだって。
そっか。何か月か前に三人の使用人と村人たちが庭園付近で何かしてるのを見たことがあったけど、この植え替えの準備だったんだね!
「このまま花をつけないかと気をもんでいましたが、幸いにも一株はずっと元気なままでした。おかげで咲いてくれたようです」
執事の声に合わせて風が吹き、咲いてる一株の葉が上を向く。それはなんだか花が胸を張ったように僕には見えた。
この一株はさっきメイドが言ったとおり、お墓に植えられていたものらしい。どうしてお墓に植えたのかというと――。
「実はそのお墓は、庭師の“ガイ”という方が埋葬されている場所だったのです」
みんなはガイが花を守ってくれるかもしれないと思ってお墓の横に植えたんだよね。ガイは『暁の王女』を作り出した人だから。
きっとみんなが優しいから、花は守ってもらえたんだ。だからこの一株は元気なままなんだよ!
僕は何かを言おうと思った。だけど何を言ってもみんなの優しい笑顔の前では足りないような気がして、ただ、
「ありがとう」
とだけしか口に出せなかった。
三人はただ、にっこりと花みたいに笑った。
……花が咲いた。
『暁の王女』が。
僕が守ろうとして守り切れなかった花は、僕の思いもかけない形でずっと咲いててくれた。
ああ。
僕の周りの人たちはみんな、なんてあたたかくて、なんて強いんだろう。
鼻の奥がツンとして、目頭が熱くなってくる。
服の袖で顔をぬぐった僕は、唾を飲みこんで口を開いた。
「……あの、さ。お願いがあるんだ」
「なんでしょうか」
「王都へ行きたいんだ。できれば今すぐ。――この忙しいときにごめん」
「必要なものはありますか」
真っ先に聞いてくれたのは下働きの男性だ。
僕は申し訳ない気持ちで小さくうなずく。
「『暁の王女』を持って行ってもいいかな」
我ながら調子いいなあとは思うけど、下働きの彼はにこりと笑った。
「すぐに用意します」
踵を返す彼に続き、メイドが「お弁当を用意しますね!」と言ってばたばたと走って行く。執事は胸に手を当てて頭を下げ、
「本来ならば、新年を迎える仕度をするのは私ども使用人の役目。どうぞ若君はお心のままにお過ごしくださいませ」
という言葉を残して立ち去った。
一人になった僕の頬を柔らかな風が撫でていく。その緩やかな流れと一緒に足を進めかけてふと思い返し、僕は日差しの中で輝く薄紅色に近寄った。
ねえ、サラ。
花が咲いたよ。
僕が持って行くって約束をして、君が欲しいって言ってた花。
ぜんぶ枯れたと思ってたけど、まだ残ってた。
姉上が、使用人たちが、村の人たちが、みんなで守ってくれたんだ。
おかげでまたパートリッジの本邸で見ることができたよ。
僕たちの思い出の花を。
『暁の王女』を!
君に何があったのか、どうしてルークとの婚約を解消したのか、僕には分からない。
だけど僕は今度こそ“グレアム”の姿で会いたい。
そうして君に、伝えたいことが、あるんだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる