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第2章
由緒正しき伯爵家の今
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さあ、これは困ったことになった。
エレノア姉上は“立場の違い”みたいなものにはすっごくこだわる人だから怒るだろうなあ。
とは思うんだけど、しょうがない、これがうちの現状だからね。ここは素直に答えるとするか。
「何って水汲みだよ。見たら分かるよね?」
「ええ、分かるから言ってますのよ! どうしてお前が水なんて汲んでいますの!」
今の青空を切りとったような色のドレスを着た姉上は、馬車から身を乗り出したままで叫ぶ。
「伯爵と言えば上級貴族、しかも我がパートリッジは王女を妻として迎えたこともある家柄でしてよ! その嫡男がまるで使用人のように水汲みをするなんて、とんでもないことですわ!」
「って言われても、今の我が家は人手が足らないんだよ」
これは事実。なにせ今のパートリッジ本邸には使用人が三人しかいないんだ。給金なんてほとんど払えてないのに三人とも残ってくれてる、その事実は本当にありがたい。
ありがたいんだけど、なにせこの本邸は広すぎる。三人の召使いじゃ回らないことが多いから、僕もちょこちょこ手伝いをしてるんだ。今回みたいに出かけるときは必要なものの買い出しをしたり、自分の部屋の掃除をしたりね。
ただ、使用人三人に僕が加わったところで、この広い本邸のすみずみまで手が届くはずもない。
「帰ってくるなら連絡が欲しかったなあ。せめて一日あればなんとかしたんだけど」
「……何の話ですの?」
「部屋の掃除の話だよ」
三人の使用人と僕だけじゃ普段使う場所をなんとかするのが精一杯だから、それ以外はほぼ何もしてない。というか、何もできない。もちろん、王都の別宅へ行きっぱなしになってる姉上の部屋の掃除だってやれるはずもないんだ。ごくたまに風通しをするけど、その程度だね。
連絡さえあったらなんとか滞在できるくらいには整えておいたんだけど、今のままだと咳とくしゃみが止まらなくなるかもね。
その辺は言わなくても伝わったんだと思う。御者が持ってきた踏み台で馬車を降り、僕の近くへ来た姉上は、とっても嫌な顔をしていた。
さて。姉上の機嫌をさらに損ねるのは怖いけど、これは重要なところだから聞いておかないとな。
僕は水桶を置き、姉上の傍に寄ってこそこそと囁く。
「ねえ、姉上。あの馬車と御者はどうしたの?」
姉上が乗って来た馬車は新品でこそないものの、あちこちに施された黄金の装飾は上品だし、きちんと手入れも行き届いてる。こんなに高価な馬車はどう見てもうちのものじゃない。
それに、馬車の横に控えて静かに立っている中年の男性。王都のパートリッジ別邸に何人の召使いがいるのか僕は把握してないけど、少なくとも前に見たときにあんな人はいなかったはず。どうしたんだろう、新たに雇ったのかな。給金は大丈夫なのかな。
不安そうな僕とは対照的に、姉上は澄まし顔のままだ。
「懇意にしてる方からお借りしましたのよ」
「馬車と御者を?」
「ええ」
「謝礼にいくら払ったの?」
「ご好意で貸してくださいましたのよ。謝礼などお渡ししたら逆に失礼になりますわ」
ふうん。となるとその家は、姉上に馬車と御者を貸しても問題ないくらいの財産があるってことか。少なくとも複数の馬車を持ってるし、使用人にも余裕があるんだね。
いいなあ、裕福で。
「だけどなんで急に帰って来たの? 旅費を工面するのだって大変だったでしょ?」
僕が言うと、姉上は眉間のしわを更にふかーく刻む。
「……グレアム」
「なに?」
「あまりお金のことを言うと、卑しく見えますわよ」
うぐっ。
「き、気を付ける……」
「そうなさい。お前のためにも」
ふう、と一つ息を吐いたエレノア姉上はつんと顔をそらす。そうして、
「今回、わたくしが帰って来たのは」
と言ったところで、
「坊ちゃーん!」
というメイドの大音声が姉上の声をかき消した。眦を上げた姉上が何を言うんだろうって僕はドキドキしたけど、珊瑚色の唇は特に開かなかった。ちょっとだけホッ。
「壊れたホウキを持ってきました!」
左手にホウキの柄、右手にホウキの先を持つメイドはずっと走ってたみたいで、僕の近くに来たときには真っ赤な顔をしてた。そうしてニコニコしながら僕を見て、姉上を見て、「んんん?」ってうなりながらまた僕を見て、姉上を見る。
「アタシの目、おかしくなっちまったんですかね? 坊ちゃんの横に、昨日の坊ちゃんが見えるんですが」
「別に目がおかしくなったわけじゃないよ。確かにここには……」
「あっ! 違うところ発見!」
メイドは叫んで姉上を指さす。同時にホウキの先も向けられて、姉上の頬がひくっと引き攣った。
「昨日の坊ちゃんよりも背が高いです!」
「背が高い……」
「はい! だって坊ちゃんの背は――」
メイドは左手を自分の少し上の辺りにかざす。ホウキの柄が顎を直撃しそうになったから、僕は慌てて飛びのいた。
「こんくらいですもん!」
こんくらいって……いや、その手の高さは僕の目の高さと同じくらいなんだけど。え、なに、僕ってそのくらいの背丈だと思われてる?
「ふむふむ。そうなると、こっちの人は本物のエレノアお嬢様ですね! おっはようございまーす!」
王都にいるはずのエレノア姉上がどうしてここにいるのかとか、人を指さしたら駄目だとか、偉い人に向かって「こっち」って言うなんて失礼だとか、そもそもホウキを持ったまま動くと周囲が危険だろうとか、このメイドは細かいことを一切気にしない。ひたすら元気に挨拶をして、ハラハラとする僕にホウキを差しだした。
「それじゃあ坊ちゃん、ホウキをお願いします!」
「ああ……」
僕がちらりと窺うと、姉上はプルプルと震えていた。
あ、まずい。
メイドの態度もだけど、僕がホウキを持ってるのも気に入らないんだ。また「パートリッジの嫡男が!」なんて怒鳴りそう。ここはさっさと退散するに限る!
「じゃ、じゃあ、僕は行くから、姉上の世話を頼むよ。それから御者の人の部屋も」
「お任せください!」
どんと胸を叩くメイドには不安しかない。でも考えたって仕方ないから、とにかく僕はこの場から離れようと決めて、近くの草を食んでいた馬に乗る。
颯爽と駆け去れたらちょっと格好良かったけど、年寄り馬はやっぱりのんびりと歩くばっかりだった。
そういえば姉上が戻ってきた理由は聞けなかったな。
村から戻ってきたら改めて聞くことにしよう。
……ちょっと怖いけど。
エレノア姉上は“立場の違い”みたいなものにはすっごくこだわる人だから怒るだろうなあ。
とは思うんだけど、しょうがない、これがうちの現状だからね。ここは素直に答えるとするか。
「何って水汲みだよ。見たら分かるよね?」
「ええ、分かるから言ってますのよ! どうしてお前が水なんて汲んでいますの!」
今の青空を切りとったような色のドレスを着た姉上は、馬車から身を乗り出したままで叫ぶ。
「伯爵と言えば上級貴族、しかも我がパートリッジは王女を妻として迎えたこともある家柄でしてよ! その嫡男がまるで使用人のように水汲みをするなんて、とんでもないことですわ!」
「って言われても、今の我が家は人手が足らないんだよ」
これは事実。なにせ今のパートリッジ本邸には使用人が三人しかいないんだ。給金なんてほとんど払えてないのに三人とも残ってくれてる、その事実は本当にありがたい。
ありがたいんだけど、なにせこの本邸は広すぎる。三人の召使いじゃ回らないことが多いから、僕もちょこちょこ手伝いをしてるんだ。今回みたいに出かけるときは必要なものの買い出しをしたり、自分の部屋の掃除をしたりね。
ただ、使用人三人に僕が加わったところで、この広い本邸のすみずみまで手が届くはずもない。
「帰ってくるなら連絡が欲しかったなあ。せめて一日あればなんとかしたんだけど」
「……何の話ですの?」
「部屋の掃除の話だよ」
三人の使用人と僕だけじゃ普段使う場所をなんとかするのが精一杯だから、それ以外はほぼ何もしてない。というか、何もできない。もちろん、王都の別宅へ行きっぱなしになってる姉上の部屋の掃除だってやれるはずもないんだ。ごくたまに風通しをするけど、その程度だね。
連絡さえあったらなんとか滞在できるくらいには整えておいたんだけど、今のままだと咳とくしゃみが止まらなくなるかもね。
その辺は言わなくても伝わったんだと思う。御者が持ってきた踏み台で馬車を降り、僕の近くへ来た姉上は、とっても嫌な顔をしていた。
さて。姉上の機嫌をさらに損ねるのは怖いけど、これは重要なところだから聞いておかないとな。
僕は水桶を置き、姉上の傍に寄ってこそこそと囁く。
「ねえ、姉上。あの馬車と御者はどうしたの?」
姉上が乗って来た馬車は新品でこそないものの、あちこちに施された黄金の装飾は上品だし、きちんと手入れも行き届いてる。こんなに高価な馬車はどう見てもうちのものじゃない。
それに、馬車の横に控えて静かに立っている中年の男性。王都のパートリッジ別邸に何人の召使いがいるのか僕は把握してないけど、少なくとも前に見たときにあんな人はいなかったはず。どうしたんだろう、新たに雇ったのかな。給金は大丈夫なのかな。
不安そうな僕とは対照的に、姉上は澄まし顔のままだ。
「懇意にしてる方からお借りしましたのよ」
「馬車と御者を?」
「ええ」
「謝礼にいくら払ったの?」
「ご好意で貸してくださいましたのよ。謝礼などお渡ししたら逆に失礼になりますわ」
ふうん。となるとその家は、姉上に馬車と御者を貸しても問題ないくらいの財産があるってことか。少なくとも複数の馬車を持ってるし、使用人にも余裕があるんだね。
いいなあ、裕福で。
「だけどなんで急に帰って来たの? 旅費を工面するのだって大変だったでしょ?」
僕が言うと、姉上は眉間のしわを更にふかーく刻む。
「……グレアム」
「なに?」
「あまりお金のことを言うと、卑しく見えますわよ」
うぐっ。
「き、気を付ける……」
「そうなさい。お前のためにも」
ふう、と一つ息を吐いたエレノア姉上はつんと顔をそらす。そうして、
「今回、わたくしが帰って来たのは」
と言ったところで、
「坊ちゃーん!」
というメイドの大音声が姉上の声をかき消した。眦を上げた姉上が何を言うんだろうって僕はドキドキしたけど、珊瑚色の唇は特に開かなかった。ちょっとだけホッ。
「壊れたホウキを持ってきました!」
左手にホウキの柄、右手にホウキの先を持つメイドはずっと走ってたみたいで、僕の近くに来たときには真っ赤な顔をしてた。そうしてニコニコしながら僕を見て、姉上を見て、「んんん?」ってうなりながらまた僕を見て、姉上を見る。
「アタシの目、おかしくなっちまったんですかね? 坊ちゃんの横に、昨日の坊ちゃんが見えるんですが」
「別に目がおかしくなったわけじゃないよ。確かにここには……」
「あっ! 違うところ発見!」
メイドは叫んで姉上を指さす。同時にホウキの先も向けられて、姉上の頬がひくっと引き攣った。
「昨日の坊ちゃんよりも背が高いです!」
「背が高い……」
「はい! だって坊ちゃんの背は――」
メイドは左手を自分の少し上の辺りにかざす。ホウキの柄が顎を直撃しそうになったから、僕は慌てて飛びのいた。
「こんくらいですもん!」
こんくらいって……いや、その手の高さは僕の目の高さと同じくらいなんだけど。え、なに、僕ってそのくらいの背丈だと思われてる?
「ふむふむ。そうなると、こっちの人は本物のエレノアお嬢様ですね! おっはようございまーす!」
王都にいるはずのエレノア姉上がどうしてここにいるのかとか、人を指さしたら駄目だとか、偉い人に向かって「こっち」って言うなんて失礼だとか、そもそもホウキを持ったまま動くと周囲が危険だろうとか、このメイドは細かいことを一切気にしない。ひたすら元気に挨拶をして、ハラハラとする僕にホウキを差しだした。
「それじゃあ坊ちゃん、ホウキをお願いします!」
「ああ……」
僕がちらりと窺うと、姉上はプルプルと震えていた。
あ、まずい。
メイドの態度もだけど、僕がホウキを持ってるのも気に入らないんだ。また「パートリッジの嫡男が!」なんて怒鳴りそう。ここはさっさと退散するに限る!
「じゃ、じゃあ、僕は行くから、姉上の世話を頼むよ。それから御者の人の部屋も」
「お任せください!」
どんと胸を叩くメイドには不安しかない。でも考えたって仕方ないから、とにかく僕はこの場から離れようと決めて、近くの草を食んでいた馬に乗る。
颯爽と駆け去れたらちょっと格好良かったけど、年寄り馬はやっぱりのんびりと歩くばっかりだった。
そういえば姉上が戻ってきた理由は聞けなかったな。
村から戻ってきたら改めて聞くことにしよう。
……ちょっと怖いけど。
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