結婚とは案外悪いもんじゃない

あまんちゅ

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第6話 楚夢雨雲-1

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「…………」

朝だ。頭は寝ぼけていた。ただ、起きた瞬間に自分の体に違和感を感じた。違和感というか、痛み。

「いってぇ……」

昨日の寝起きより数倍の頭痛。まるで、頭の内側からドンドン叩かれているような痛みだ。やっべ、これマジのやつやん。

寝ぼけた頭で対策を考える。とりあえず、頭痛薬飲もう。夕方までには治さないと……って、いま何時だ? 俺の部屋には時計がないので、ベットに寝転がったままスマホを探す。


「…………ん?」

あれ、いつもは枕元に置いてるんだけどな。スマホがないぞ。昨日の夜帰ってきて、そのあとどこに置いたっけ? やばい、どこに置いたかさっぱり記憶にない。

ふと、ひとつの可能性が浮かんだ。

昨日の帰り、落としたかもしれない。どしゃ降りの雨の中を走っていたし、スマホを落としても気がつかない可能性は充分ある。

「………………」

え、やばくね? スマホなかったら何時かわからないし、連絡も取れない。

「ヤバいヤバいヤバい!!」

とりあえず家の中を探そう! と勢いよく体を起こしたが、急に起き上がったせいで頭痛がひどくなってしまった。あまりの痛さに、再びベットに横になる俺。

……焦るな、焦るな俺。ひとつひとつ目の前の問題を解決していけば大丈夫だ。深呼吸しよ。

「いたっ」

ゆっくり息を吸ったら、さらに痛みがひどくなってしまったけど、俺は全然焦ってない。

とりあえず時間を確認しよう。時計がないとはいえ、テレビはある。テレビをつければ、時間を確認できるはず。


ベットから少し身を乗り出す形で、テーブルに置いてあるリモコンを手に取った。テレビをつけると、予想通り画面の左上に時間が表示してある。


「11時27分か……」

よかった。寝坊して約束をすっぽかすという最悪の事態は免れたようだ。でも油断はできない。約束の時間まであと6時間ほど。準備の時間も考えると、あと5時間でこの頭痛を何とかしなければならない。

薬のんで寝よ。それが正解だ。でもその前に、何か食べないとな。幸い、食欲はあるのでうどんでも作るか。
そう思って起き上がろうとしたけど、再び凄まじい頭痛に襲われた。……よし、もう少し休もう。

ふと、今日見た夢を思い出した。ここのところ毎日夢を見ているな。それも、全部美幸が出てくる夢。正確に言うなら、美幸と結婚してる夢。

今日見た夢は、何だか不安になる夢だった。あくまで夢なのだから、真に受ける必要はないんだけど、気になることもいくつかあった。

…………今日、聞いてみようかな。


そんなことを考えていると、家のインターフォンが鳴った。

こんな時に誰だ? 出ないといけないのは分かっているのだが、体が思うように動かない。無理に動かそうとすれば、再び頭痛がひどくなる。ここは居留守でやり過ごそう。


ピーンポーン。

再び、インターフォンがなった。どうせ、セールスか何かだろ。高い壺とか絵画とか売り付けられるに決まってる。無視だ無視。

ピーンポーン。
ピーンポーン。

…………。



ピーンポーンピーンポーンピーンピーンポーンピーンポーンポーンポーン。

「うるせえわ!!!」

俺は痛みを忘れて飛び起き、インターフォンの受話器を取ってそう叫んだ。相手が誰かは知らねえが、こっちは頭痛くて休んでんだよ! 静かにしてくれマジで!


「…………どちらさまですか?」

俺が怒鳴った後、受話器からは何の音も聞こえなかった。しびれを切らした俺が声を発すると、それに答えるように小さな声が聞こえてきた。


「………………あの、神田、です。こんにちわ」

「……は?」
「いやあの、ですから、神田ですって。開けてください」

「………………えーっと」

鈍っている頭で考える。神田って、あの神田だよな。馬鹿の。えーっと、なぜに俺の家に神田が? そもそも、住所教えてないよな?

「もしもし、高坂さん? 開けてもらえませんか?」
「あ、ああ」

何はともあれ、もう無視するわけにもいかないか。とりあえず何か用事があって来たんだろう。どうせごはんを作ろうとしていたところだし、丁度いいってことにしよう。

若干ふらつきながらも、廊下の壁を伝うようにして歩く。よし、着いた。
俺は、玄関の扉を開けた。


「なんだよ神田。一体何のよ…………」
「あ、高坂さん。おはようございます」

神田、お前……。

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