魔術師の仕事

阿部うりえる

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6章

3 君といる瞬間(とき)を…

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次の日の朝私たちはルカの知り合いの精霊使いの老女を訪ねるべく何もない田舎道を歩いていた
昨日あんなこと聞いちゃったからルカ怒ってるのかな…?
家を出たきり一言も喋ってない…
せっかく二人きりになれたのにな…
私は今されながら自分の発言を後悔しため息をついた
その時、突然ルカが歩みを止めこちらを振り返ったので私は驚き目を見開く
「ネリー…」
差し出された白くて繊細な手のひら…
「?へ…?」
「手…繋がないか…?」
赤らめた顔を隠すように視線をそらし彼が言う
ルカの口からまさかこんなことを聞くなんて…正直驚いた
でも嬉しかった
少しひんやりした大きくて華奢な彼の手…
嬉しくて、なんだか少し恥ずかしかった
「ごめんな我が儘言って…嫌なら言ってくれ離すから」
「そんなこと!そんなことないよ!嬉しいの…手、繋ぐの久しぶりで」
キスまでした仲だというのに久しぶりすぎて、まるでこういうことするの初めてみたいでとても新鮮だった
「彼女の所に行く前に少し寄り道してもいいか?」
「?お客さんの所?」
「違う、まあ、秘密だ」
悪戯っぽくルカが微笑みかける
「なにそれー!」
その微笑みを見て私は昨日から離れてしまった距離が少し修復されたようで安心した
そして彼の口から過去を話そうと思うまでその事には触れないようにしようと自分に言い聞かせた
ルカに手を引かれるまま私たちは横道にそれ森の中を進んだ
どこに行くのかな?
もしかして今日こそ彼と…?
私は期待から胸がときめき顔が熱を帯びるのを感じた
森を抜け小高い丘を越えるとそこには廃村と化した小さな村が広がっていた
きっとペストか魔女狩りか何かで失われた村なのか…住む人をなくし何年も経つのだろう、外から見た家々は老朽化し所々朽ち落ち、高い草が生い茂り辺りは虫の鳴き声や鳥の鳴き声しか聞こえない
ルカはこんな所になんで…?
「この先に教会があるんだ…」
「教会?」
「さあ行こう!」
「あ…うん…」
僕は彼女の手を引き、草をかきわけながら先へと進む
いつか魔術師として歩み出す前に立ち寄った教会にあった古いステンドグラスを彼女に見せたかったから
ただ、それだけのために
壊れた扉の隙間から教会の中へと入る
雲が晴れると日の光が窓から差し込み、散らかって塵だらけの床に色とりどりの光をまき散らした
「綺麗だろ?よかった、まだ壊れてなくて…これを見せたかったんだ」
異教の神と天使が混ざり合ったようなその絵はどことなくネリーに似ていた
僕は初めてこの絵を見た時その美しさに恋をしたが今思えばその時から君に焦がれていたのだろう
彼女は僕の手から離れると目を輝かせステンドグラスの光降り注ぐ真下へと歩み出す
「すごく綺麗…」
「うん、君に少し似てるんだ、この絵」
彼女の肩を抱き寄せその瞳を覗き込むと若干潤んでいるように見えた
「わ、私!?こんな綺麗じゃないよ…」
「綺麗だよ」
恥かしそうに伏せるその顔を撫で下ろすとネリーが顔を上げる
こんなに顔を赤らめて…
僕はふふと笑うと引き寄せられるようにその唇に口づけた
彼女の手が背に回り、その小さな膨らみが体に触れる
僕はおもむろにその膨らみへと指を滑らす
柔らかいそれに僕は今まで感じたことない安心感と高ぶる欲望を覚えた
これ以上したら…
僕は惜しむようにそれを二、三度揉んだのち手放すと、その華奢な体を抱きしめ頭を撫で下ろした
「一応…神聖な場所だからな」
苦しい言い訳だったが彼女も納得したように小さく頷いたので僕は心の中で安堵し、高ぶった雄を鎮めようと大きく息をついた
その後この廃村を後にした僕たちは宿に一泊したのちナターシャの住む山への道を歩み出した
左手に握られた君の手
その温もりを…
嬉しそうなその顔を…
今、幸せなこの瞬間を心に刻みつけて
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