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6章
5 精霊使いの女
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「あ…あの…さっきから何を話しているんですか?妖精とか…精霊とか…」
そこに丁度お茶やお菓子を運んで彼が戻ってくる
彼はみんなにお茶を配り終えると、私の隣に腰を下ろしにこにこと見てくるので私は気まずさから目を泳がせた
「あら?ルカに聞いてなかった?この子はシルフと言って風の見習い精霊なの
うちは曽祖母の代より古くから精霊王と契約を結んでいてね、精霊の力を行使する代わりに若い王子を一人前になるまで育てる約束をしているの
シルフ、彼女はネリーさんよ」
ナターシャはどこかあどけなさの残る青年の頭を撫でながら言う
この子精霊なんだ…
そう言われてみれば髪の色といい目の色といい人間とはかけ離れているもんな
「あ…あの、妖精と精霊って違うものなんですか?」
妖精は見たことはあるものの精霊を見るのは初めてだった私は彼らには初歩的であろう知識を少し遠慮がちに聞いてみた
「そうだな…分かりやすく言うと、妖精には二通りあってそのまま妖精のままの者と妖精から精霊へと進化を遂げるものがあるんだ
妖精は限られた力しか持たないし寿命も五百年前後なのに対して、精霊は全知全能に近い存在で寿命も限りなく無限に近い」
「全知全能で無限の命なんて、精霊って神様に近い存在なんだね」
「神の作り出したこの世界の管理者といったとこだろうな」
この世界の管理者…
このシルフって子も一人前になるとすごい存在になるってことか
私は子供のように無邪気にお菓子を頬張る彼の姿に疑いの眼差しを向ける
今の彼からは想像もつかない…
「さあ少し休んだら今夜は精霊祭よ、ルカは外のたき火の準備を手伝ってちょうだいね」
精霊祭どんなお祭りなんだろう?
「あ!あの!私も何かお手伝いします!」
「そうね…あなたは精霊祭も初めてだし、シルフと一緒に湧き水の洞窟から新鮮なお水を汲んできてもらおうかしらね
それと湧き水の洞窟には綺麗な石がたくさん転がっているの、気に入ったものがあったら拾ってお出でなさいアクセサリーを作ってあげるわ
それに風と一体になるってとても素晴らしい事よ?」
ナターシャはそう言うとウインクしてみせた
風と…一体…?
彼女の言った言葉の意味が私にはよくわからなかった
その時、シルフが急に飛んだり跳ねたりして酷くはしゃいだと思うと私の手を掴みそのまま外へ連れ出したので、今度はなに?と私はまるで小さい子のお守りをしているような感覚に陥った
「ネリー、君と行けるなんて僕すごく嬉しいよ!」
私を抱きしめシルフが言う
突然の事に驚いた私は顔を真っ赤にして体を硬直させる
こ…この子…いきなり何するの!?
ルカに助けを求めようと視線を移すも彼は不機嫌そうだが何もしようとしてくれない
ルカ…?
「ネリー、全て僕にゆだねて…大丈夫だよ」
シルフがそう言うと彼の体がうっすらと消えるように透明になり、風が渦を巻き私の体を包むように吹き始め宙に浮かせた
「!?う、浮いてる!私浮いてるの!?」
これが精霊の力なの!?
私は少し怖くなり今にも消えそうなシルフにしがみついた
「大丈夫だ、落ちはしないから安心しろ!」
下の方でルカが呼びかける
「ルカ!」
ルカの姿がどんどん小さくなっていく
その時、下から吹き上げた強風で私たちは空高く舞い上がった
「きゃ!!」
冷たい風が頬に当たる
さっきの風できっと今頃空のうんと上まで来ているのだろう…
私は恐怖のあまり彼にしがみついたままきつく目を瞑っていた
「ネリー、目を開けて」
シルフの声…
目を開けろったって…怖い…
「大丈夫、僕を信じて」
私はその言葉を信じ静かに目を開ける
横には体からエメラルド色に輝く薄い羽を生やした神々しいシルフの姿が…
彼は私の手を握ると、半透明のその顔で微笑みかける
「綺麗…」
その姿に見惚れ恐怖心が一気に吹き飛ぶ
「下を見てネリー」
彼の言葉に私は何のためらいもなく見下ろす
そこには見渡す限りの雲海が広がり、自分たちの下をものすごいスピードで通り過ぎていく
雲の上を泳いでいるような感覚にとらわれる
体も軽く持ち上げられているような窮屈さも感じられない
まるで風になったみたいだ
そうか、ナターシャさんの言っていた風と一体になるってこのことだったんだ!
こんな素晴らしい景色きっと普通の人間として暮らしていたなら、絶対一生に一度だって体験できるものではない
そんな素晴らしい体験を普通の自分が今体験し見ているのだ
私はこの素晴らしい景色を忘れまいと目に焼き付けた
「すごい!すごいよシルフ!こんなの今まで見たことない!」
さっきまで自分より年下にしか見えなかった彼が今ではものすごく大きな存在に見える
彼の精霊の力のすごさを私はこの時初めて実感したのだった
「精霊祭まではまだ時間もあるし、空の散歩でも楽しもうか!」
彼の言葉に私は目を輝かせ相槌をうつ
こんなロマンチックな風景、ルカと一緒に見たかったな
今頃彼は何をしているだろうか?
私は自分だけがこんな遊んでいてもいいものだろうかと思いながらも、この空から見る素晴らしい世界に胸躍らせた
そこに丁度お茶やお菓子を運んで彼が戻ってくる
彼はみんなにお茶を配り終えると、私の隣に腰を下ろしにこにこと見てくるので私は気まずさから目を泳がせた
「あら?ルカに聞いてなかった?この子はシルフと言って風の見習い精霊なの
うちは曽祖母の代より古くから精霊王と契約を結んでいてね、精霊の力を行使する代わりに若い王子を一人前になるまで育てる約束をしているの
シルフ、彼女はネリーさんよ」
ナターシャはどこかあどけなさの残る青年の頭を撫でながら言う
この子精霊なんだ…
そう言われてみれば髪の色といい目の色といい人間とはかけ離れているもんな
「あ…あの、妖精と精霊って違うものなんですか?」
妖精は見たことはあるものの精霊を見るのは初めてだった私は彼らには初歩的であろう知識を少し遠慮がちに聞いてみた
「そうだな…分かりやすく言うと、妖精には二通りあってそのまま妖精のままの者と妖精から精霊へと進化を遂げるものがあるんだ
妖精は限られた力しか持たないし寿命も五百年前後なのに対して、精霊は全知全能に近い存在で寿命も限りなく無限に近い」
「全知全能で無限の命なんて、精霊って神様に近い存在なんだね」
「神の作り出したこの世界の管理者といったとこだろうな」
この世界の管理者…
このシルフって子も一人前になるとすごい存在になるってことか
私は子供のように無邪気にお菓子を頬張る彼の姿に疑いの眼差しを向ける
今の彼からは想像もつかない…
「さあ少し休んだら今夜は精霊祭よ、ルカは外のたき火の準備を手伝ってちょうだいね」
精霊祭どんなお祭りなんだろう?
「あ!あの!私も何かお手伝いします!」
「そうね…あなたは精霊祭も初めてだし、シルフと一緒に湧き水の洞窟から新鮮なお水を汲んできてもらおうかしらね
それと湧き水の洞窟には綺麗な石がたくさん転がっているの、気に入ったものがあったら拾ってお出でなさいアクセサリーを作ってあげるわ
それに風と一体になるってとても素晴らしい事よ?」
ナターシャはそう言うとウインクしてみせた
風と…一体…?
彼女の言った言葉の意味が私にはよくわからなかった
その時、シルフが急に飛んだり跳ねたりして酷くはしゃいだと思うと私の手を掴みそのまま外へ連れ出したので、今度はなに?と私はまるで小さい子のお守りをしているような感覚に陥った
「ネリー、君と行けるなんて僕すごく嬉しいよ!」
私を抱きしめシルフが言う
突然の事に驚いた私は顔を真っ赤にして体を硬直させる
こ…この子…いきなり何するの!?
ルカに助けを求めようと視線を移すも彼は不機嫌そうだが何もしようとしてくれない
ルカ…?
「ネリー、全て僕にゆだねて…大丈夫だよ」
シルフがそう言うと彼の体がうっすらと消えるように透明になり、風が渦を巻き私の体を包むように吹き始め宙に浮かせた
「!?う、浮いてる!私浮いてるの!?」
これが精霊の力なの!?
私は少し怖くなり今にも消えそうなシルフにしがみついた
「大丈夫だ、落ちはしないから安心しろ!」
下の方でルカが呼びかける
「ルカ!」
ルカの姿がどんどん小さくなっていく
その時、下から吹き上げた強風で私たちは空高く舞い上がった
「きゃ!!」
冷たい風が頬に当たる
さっきの風できっと今頃空のうんと上まで来ているのだろう…
私は恐怖のあまり彼にしがみついたままきつく目を瞑っていた
「ネリー、目を開けて」
シルフの声…
目を開けろったって…怖い…
「大丈夫、僕を信じて」
私はその言葉を信じ静かに目を開ける
横には体からエメラルド色に輝く薄い羽を生やした神々しいシルフの姿が…
彼は私の手を握ると、半透明のその顔で微笑みかける
「綺麗…」
その姿に見惚れ恐怖心が一気に吹き飛ぶ
「下を見てネリー」
彼の言葉に私は何のためらいもなく見下ろす
そこには見渡す限りの雲海が広がり、自分たちの下をものすごいスピードで通り過ぎていく
雲の上を泳いでいるような感覚にとらわれる
体も軽く持ち上げられているような窮屈さも感じられない
まるで風になったみたいだ
そうか、ナターシャさんの言っていた風と一体になるってこのことだったんだ!
こんな素晴らしい景色きっと普通の人間として暮らしていたなら、絶対一生に一度だって体験できるものではない
そんな素晴らしい体験を普通の自分が今体験し見ているのだ
私はこの素晴らしい景色を忘れまいと目に焼き付けた
「すごい!すごいよシルフ!こんなの今まで見たことない!」
さっきまで自分より年下にしか見えなかった彼が今ではものすごく大きな存在に見える
彼の精霊の力のすごさを私はこの時初めて実感したのだった
「精霊祭まではまだ時間もあるし、空の散歩でも楽しもうか!」
彼の言葉に私は目を輝かせ相槌をうつ
こんなロマンチックな風景、ルカと一緒に見たかったな
今頃彼は何をしているだろうか?
私は自分だけがこんな遊んでいてもいいものだろうかと思いながらも、この空から見る素晴らしい世界に胸躍らせた
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