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6章
7 願い事
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「さっきのがナベリウスという悪魔なのね…」
「恐らく…」
きっと知られてはいけない何かを精霊が言おうとしたせいだろう
「気配すら感じとれなかったわ…それに精霊の守りを解くなんて…強いわよ?」
彼女の言う通り奴は強敵だ、悪魔に力をもらっている僕だって所詮は人間だ
戦ったところで勝てる確率は0に等しい
「こういった話を聞いたことがあるわ…悪魔と人間が一体となって生まれた呪われた存在を消滅させるには、その人間の命を奪った品が最強の武器になると…」
「つまり…」
「ええ、その短剣があなたの契約する悪魔の人間としての生を終わらせたものであるなら、まだ半分は彼(バルツァー)を有する悪魔にとっては致命的な傷を負わせる武器になるはずよ
それを彼らが狙っているとしたら、彼らにとってゲルハルトは邪魔な存在ということでしょうね…」
彼女の言った事は正しいだろう…
僕にとってあいつが消されるのは願ったり叶ったりだ
でもそれは契約していないことが前提であって、契約を交わした僕にとって契約を切るのも切られるのもそれは自分の死を意味する
いずれにしてもゲルハルトがバルツァーで、ネリーがゾフィアの生まれ変わりである以上彼女とはもう…
「師匠、あなたに頼みたいことが…」
日が西の空に沈もうとした頃、強風とともに精霊とネリーが帰ってきた
「ルカ!」
何も知らない彼女が抱きつく
「おかえりなさい、もうそろそろ始めようとしていたころよ、気に入った石は拾えた?」
最後の食事を外のテーブルに運び終えたナターシャがシルフから水を受け取りながら言う
「これ!すごく神秘的な所でした!」
澄んだ青い石を差し出しネリーが言う
「よかったわ、多分あなたたちが帰るころには渡せるだろうから楽しみにしていてね」
「はい!」
「寒かったでしょ?火の前で温まるといいわ、ルカは儀式で使う物の準備を手伝ってちょうだい?私は着替えてきますから」
ナターシャに言われるまま僕は香草と水鏡の準備を始める
家の中からネリーを見ると彼女は精霊と楽しそうに喋っていた
妬く僕の肩にナターシャの手が乗る
「よく考えるべきよ?他に何か方法も見つかるかも知れないのだから…」
方法…方法があるのなら今すぐ教えてほしかった…
静まり返った闇の世界をたき火の日がオレンジ色に染め替え精霊祭は始まった
白いローブに身を包んだナターシャが香草をくべ東から北へと祈祷文を唱えながら進む
精霊祭、それは死者が精霊としてこの地に戻ってくる日
長い死の季節(冬)の到来を前に生まれ出た生(食物)に感謝し、再び来る春までの平穏を祈る祭りだ
「我らが守護者たる精霊の恵みと加護とに感謝します
これからも我らにその恩恵を授け、未来も平和が続く事を願います」
ナターシャの後に続き祈りの言葉を唱える
彼女は火を蝋燭に移すとそれを三人に手渡した
蝋燭を受け取ったルカとシルフはそれを持ったまま目をつぶり始める
一体彼らは何をしているのだろう…
「ルカたちは何してるんですか?」
隣にいるナターシャに聞いてみた
すると彼女は「この日は精霊に一つだけ願いを叶えてもらえる日なのよ、心の中で唱えてもいいからあなたも何かお願いしてごらんなさい?」と微笑み言った
一つだけ願いを叶えてもらえる…なんかロマンチック
私は目を瞑り心の中願い事を唱える
「ねえねえ!ネリーは何を願ったの?」
シルフが身を乗り出して聞いてくる
「ヒミツ!」
「なにそれ!ケチ―!」
ルカは何を願ったのかな?私は彼の願いが自分と同じであればいいなと思った
「それじゃあ、そろそろご飯にしましょうか?」
外に運び出されたテーブルには美味しそうな料理が食べきれないほど並んでいた
玉ねぎのキッシュ、ソーセージ、モーンクーヘン、シュネーバル、プディング…他にもいろいろある
「どれも美味しそう!これ全部ナターシャさんが作ったんですか?」
「まさか、私一人ではこれだけのものとても無理だったわ、シルフも手伝ってくれたからここまでできたのよ?遠慮しないで好きなだけ食べてちょうだいね」
「わー!いただきまーす!」
料理を皿に取り分けながらルカの方に視線を移す
そう言えば帰ってから彼とはあまり話してなかった…私は彼の隣に椅子を持っていき腰かける
「隣に座ってもいいかな?」
ルカは前とは変わったとはいえ静かな性格には変わりないので話しはじめは少し照れくさくなる
「ああ」
ルカも少し赤くなったみたいだ…その後しばしの沈黙が流れた
「楽しかったか?」
「え?」
「空…」
「あ…うん!」
よかった…と言いながら微笑む彼に胸がときめく
「あ…で、でもでも!ルカと一緒だったらもっといいのになって思った!こんな素敵な所に連れてきてくれてありがとね」
「ああ…」
無邪気に笑うネリーを見て僕は短剣に触れると見えるあの少女の事を思い浮かべ彼女と重ねた
彼女は自分がゾフィアの生まれ変わりであることは知らない
いや、僕がそう思ってるだけで彼女自身気付いているのか?彼女は僕よりも鮮明な記憶の断片を見たのだから…
「恐らく…」
きっと知られてはいけない何かを精霊が言おうとしたせいだろう
「気配すら感じとれなかったわ…それに精霊の守りを解くなんて…強いわよ?」
彼女の言う通り奴は強敵だ、悪魔に力をもらっている僕だって所詮は人間だ
戦ったところで勝てる確率は0に等しい
「こういった話を聞いたことがあるわ…悪魔と人間が一体となって生まれた呪われた存在を消滅させるには、その人間の命を奪った品が最強の武器になると…」
「つまり…」
「ええ、その短剣があなたの契約する悪魔の人間としての生を終わらせたものであるなら、まだ半分は彼(バルツァー)を有する悪魔にとっては致命的な傷を負わせる武器になるはずよ
それを彼らが狙っているとしたら、彼らにとってゲルハルトは邪魔な存在ということでしょうね…」
彼女の言った事は正しいだろう…
僕にとってあいつが消されるのは願ったり叶ったりだ
でもそれは契約していないことが前提であって、契約を交わした僕にとって契約を切るのも切られるのもそれは自分の死を意味する
いずれにしてもゲルハルトがバルツァーで、ネリーがゾフィアの生まれ変わりである以上彼女とはもう…
「師匠、あなたに頼みたいことが…」
日が西の空に沈もうとした頃、強風とともに精霊とネリーが帰ってきた
「ルカ!」
何も知らない彼女が抱きつく
「おかえりなさい、もうそろそろ始めようとしていたころよ、気に入った石は拾えた?」
最後の食事を外のテーブルに運び終えたナターシャがシルフから水を受け取りながら言う
「これ!すごく神秘的な所でした!」
澄んだ青い石を差し出しネリーが言う
「よかったわ、多分あなたたちが帰るころには渡せるだろうから楽しみにしていてね」
「はい!」
「寒かったでしょ?火の前で温まるといいわ、ルカは儀式で使う物の準備を手伝ってちょうだい?私は着替えてきますから」
ナターシャに言われるまま僕は香草と水鏡の準備を始める
家の中からネリーを見ると彼女は精霊と楽しそうに喋っていた
妬く僕の肩にナターシャの手が乗る
「よく考えるべきよ?他に何か方法も見つかるかも知れないのだから…」
方法…方法があるのなら今すぐ教えてほしかった…
静まり返った闇の世界をたき火の日がオレンジ色に染め替え精霊祭は始まった
白いローブに身を包んだナターシャが香草をくべ東から北へと祈祷文を唱えながら進む
精霊祭、それは死者が精霊としてこの地に戻ってくる日
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「我らが守護者たる精霊の恵みと加護とに感謝します
これからも我らにその恩恵を授け、未来も平和が続く事を願います」
ナターシャの後に続き祈りの言葉を唱える
彼女は火を蝋燭に移すとそれを三人に手渡した
蝋燭を受け取ったルカとシルフはそれを持ったまま目をつぶり始める
一体彼らは何をしているのだろう…
「ルカたちは何してるんですか?」
隣にいるナターシャに聞いてみた
すると彼女は「この日は精霊に一つだけ願いを叶えてもらえる日なのよ、心の中で唱えてもいいからあなたも何かお願いしてごらんなさい?」と微笑み言った
一つだけ願いを叶えてもらえる…なんかロマンチック
私は目を瞑り心の中願い事を唱える
「ねえねえ!ネリーは何を願ったの?」
シルフが身を乗り出して聞いてくる
「ヒミツ!」
「なにそれ!ケチ―!」
ルカは何を願ったのかな?私は彼の願いが自分と同じであればいいなと思った
「それじゃあ、そろそろご飯にしましょうか?」
外に運び出されたテーブルには美味しそうな料理が食べきれないほど並んでいた
玉ねぎのキッシュ、ソーセージ、モーンクーヘン、シュネーバル、プディング…他にもいろいろある
「どれも美味しそう!これ全部ナターシャさんが作ったんですか?」
「まさか、私一人ではこれだけのものとても無理だったわ、シルフも手伝ってくれたからここまでできたのよ?遠慮しないで好きなだけ食べてちょうだいね」
「わー!いただきまーす!」
料理を皿に取り分けながらルカの方に視線を移す
そう言えば帰ってから彼とはあまり話してなかった…私は彼の隣に椅子を持っていき腰かける
「隣に座ってもいいかな?」
ルカは前とは変わったとはいえ静かな性格には変わりないので話しはじめは少し照れくさくなる
「ああ」
ルカも少し赤くなったみたいだ…その後しばしの沈黙が流れた
「楽しかったか?」
「え?」
「空…」
「あ…うん!」
よかった…と言いながら微笑む彼に胸がときめく
「あ…で、でもでも!ルカと一緒だったらもっといいのになって思った!こんな素敵な所に連れてきてくれてありがとね」
「ああ…」
無邪気に笑うネリーを見て僕は短剣に触れると見えるあの少女の事を思い浮かべ彼女と重ねた
彼女は自分がゾフィアの生まれ変わりであることは知らない
いや、僕がそう思ってるだけで彼女自身気付いているのか?彼女は僕よりも鮮明な記憶の断片を見たのだから…
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