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2章
4 悪魔の住む家
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「契約者か…?」
ルカは窓から身を乗り出し舌打ちをする
「逃げられたのか…?」
アルベルトとともにユリウスがルカに近づき聞いてきた
「すみません…」
ルカはそう言いながら窓ガラスの散乱した室内を見たのち、再び外の方を不審そうに見回した
「ごめんなさい…私が勝手な事したせいで…」
ネリーはルカに近づくとすまなそうに頭を下げた
「いや、君のせいじゃない…僕があいつの契約者より力が劣っていたからだ…
むしろ君はよくやったよ、伯爵を助けたんだから」
ルカはネリーの肩に手を乗せユリウスとアルベルトの方を向き直った
「また悪魔は現れるのでしょうか?」
アルベルトが不安げにルカに聞く
「わかりません、でもヨアヒムの身体を乗っとった悪魔はもうこの家には潜り込めないでしょう…しかし彼の契約者、または違う悪魔が責めて来る可能性はあります…あの悪魔が言っていた短剣が彼らの手に入るまで…
よろしければその短剣、拝見させていただきたいのですが…」
ルカがそう言うとユリウスはアルベルトに指示し、アルベルトは頷くと一人部屋から出て行った
「この家に古くからある家宝の一つだ…家には隠し部屋が何個かあるんだけど、宝の類はその部屋の金庫に保管してあるんだ」
ユリウスはそう言うとうつむき
「悪魔に身体を乗っとられた人間は元に戻れるのかな…?」
と体を乗っ取られたヨアヒムの事を心配するようにルカに聞いた
「…仮に元の人間に戻られたとしても取り憑かれた期間によっては精神もそれなりに崩壊して肉体だって雑に扱われ損傷しているだろうから普通の生活を送るのは困難でしょうね…」
散らかった部屋を片付けながらそのように言うルカにユリウスは「そうか…」と言って壁にもたれかかりため息をついた
しばらくしてアルベルトが木箱を抱え部屋に戻って来た
アルベルトはユリウスにそれを渡すと、後は私がやりますからとルカから箒を取り上げた
「これがその短剣だ…今の所短剣と言ったらこれしか思いつかないんだが…」
ユリウスがその箱を開けると銀の短剣が姿を現した
その剣を見た瞬間、ネリーは突然の眩暈に襲われる
(何だろう…クラクラする…)
ネリーは立っていられなくなりその場にしゃがみこんだ
ルカが短剣に手を伸ばそうとした時うずくまるネリーに気づいたので彼は急いで彼女のもとに駆け寄った
「大丈夫か…?」
ルカがネリーの顔を覗き込み気にかけるように言った
「あ…大丈夫…ちょっと疲れているのかも…」
彼女がそう言うとアルベルトが廊下から椅子を持ってきてそれに座るよう促した
「あ…ありがとうございます…」
ネリーは気分が優れない中、短剣の事が気になる自分を不思議に感じながらもアルベルトの差し出した椅子に座ると具合が悪そうにうずくまった
「もうそろそろ帰ろう…」
ルカは心配そうな面持ちでネリーを見つめ言った
「シュタインマイヤーさん、あなたは確かに凄い魔術師だ…そこで折り入って頼みたいんだが…あなたさえよければこの短剣譲り受けてはくれないだろうか…」
ユリウスは箱を閉じるとルカの元に歩み寄り、表情を曇らせ箱を差し出す
差し出された箱をルカが見下ろし、しばしの沈黙が流れる
「しかし坊ちゃんそれでは…」
アルベルトが慌てるように二人の間に割って入った
「分かってる!分かってるけど…ここにこれを置いていたらまた誰かが殺される…捨てたり隠したりする事だってこの短時間で考えた…でもそれを誰かが拾ったら…もし僕みたいな普通の人間が…
僕達は魔法なんて使えないから悪魔には無力だ…でもあなたなら、あなたなら今日みたいに戦う事が出来ると思うんだ…
もちろん自分が卑怯な事してるって分かってる…
だけど僕みたいな普通の人間にはこれくらいの選択肢しか思い浮かばないんだ…」
ユリウスは今にも泣き出しそうな顔を伏せ、震える手で箱を差し出しながら言った
「分かりました」
ルカはそう言うとユリウスの手から箱を受け取り今にも泣きそうな彼の頭を撫でてやった
「…あ…ご…ごめんなさい!」
ユリウスはルカに抱きつくとわんわんと泣き出してしまった
「僕だって魔術が使えなかったら、きっと君と同じ選択をしただろう…だから謝る事なんてないんだ…」
ルカは泣き止まないユリウスを慰めるように彼の背中を摩りながらそう言った
割れた窓からはそよ風が流れ込み、東の空は薄っすらと明るくなり始めていた_____
それから部屋の片づけを手伝った彼らはユリウスとアルベルトに見送られ屋敷を後にしようとしていた
「本当にお送りしなくてよろしいんですか?」
アルベルトは歩いて帰るというルカ達に申し訳なさそうに問う
「ええ、あんなに報酬を頂いておいて、馬車まで出させるわけにはいきませんよ…」
ルカはそう言うと帽子を被り荷物を持ち直し一人歩き出した
「それじゃあ…待ってよールカ!」
ネリーは二人に軽く会釈をすると彼の後を追いかけ走り出した
彼らを見送るユリウスが大きく手を振り
「またいつでも来てよー!待ってるからー!」
と本来の子供のような笑顔で言った
そのことに気付いたアルベルトはそんなユリウスを見るのは何年かぶりだと微笑んだ
「ルカ、あの子のお兄さんみたいだったね」
ネリーがルカを小突きながら冷やかすように言った
「手のかかる妹がうちにはいるからな」
ルカは負けじと横目でネリーを見ながら失笑した
「もう!ルカの馬鹿!」
ネリーは頬を膨らませそっぽを向いくと空を見上げ
(それにしても…あの時の眩暈は何だったのかな…)
見上げた空は雲一つなくどこまでも青く澄み渡って見えたが、ネリーはなぜか短剣のことが気がかりで一人もやもやとしていた_____
ルカは窓から身を乗り出し舌打ちをする
「逃げられたのか…?」
アルベルトとともにユリウスがルカに近づき聞いてきた
「すみません…」
ルカはそう言いながら窓ガラスの散乱した室内を見たのち、再び外の方を不審そうに見回した
「ごめんなさい…私が勝手な事したせいで…」
ネリーはルカに近づくとすまなそうに頭を下げた
「いや、君のせいじゃない…僕があいつの契約者より力が劣っていたからだ…
むしろ君はよくやったよ、伯爵を助けたんだから」
ルカはネリーの肩に手を乗せユリウスとアルベルトの方を向き直った
「また悪魔は現れるのでしょうか?」
アルベルトが不安げにルカに聞く
「わかりません、でもヨアヒムの身体を乗っとった悪魔はもうこの家には潜り込めないでしょう…しかし彼の契約者、または違う悪魔が責めて来る可能性はあります…あの悪魔が言っていた短剣が彼らの手に入るまで…
よろしければその短剣、拝見させていただきたいのですが…」
ルカがそう言うとユリウスはアルベルトに指示し、アルベルトは頷くと一人部屋から出て行った
「この家に古くからある家宝の一つだ…家には隠し部屋が何個かあるんだけど、宝の類はその部屋の金庫に保管してあるんだ」
ユリウスはそう言うとうつむき
「悪魔に身体を乗っとられた人間は元に戻れるのかな…?」
と体を乗っ取られたヨアヒムの事を心配するようにルカに聞いた
「…仮に元の人間に戻られたとしても取り憑かれた期間によっては精神もそれなりに崩壊して肉体だって雑に扱われ損傷しているだろうから普通の生活を送るのは困難でしょうね…」
散らかった部屋を片付けながらそのように言うルカにユリウスは「そうか…」と言って壁にもたれかかりため息をついた
しばらくしてアルベルトが木箱を抱え部屋に戻って来た
アルベルトはユリウスにそれを渡すと、後は私がやりますからとルカから箒を取り上げた
「これがその短剣だ…今の所短剣と言ったらこれしか思いつかないんだが…」
ユリウスがその箱を開けると銀の短剣が姿を現した
その剣を見た瞬間、ネリーは突然の眩暈に襲われる
(何だろう…クラクラする…)
ネリーは立っていられなくなりその場にしゃがみこんだ
ルカが短剣に手を伸ばそうとした時うずくまるネリーに気づいたので彼は急いで彼女のもとに駆け寄った
「大丈夫か…?」
ルカがネリーの顔を覗き込み気にかけるように言った
「あ…大丈夫…ちょっと疲れているのかも…」
彼女がそう言うとアルベルトが廊下から椅子を持ってきてそれに座るよう促した
「あ…ありがとうございます…」
ネリーは気分が優れない中、短剣の事が気になる自分を不思議に感じながらもアルベルトの差し出した椅子に座ると具合が悪そうにうずくまった
「もうそろそろ帰ろう…」
ルカは心配そうな面持ちでネリーを見つめ言った
「シュタインマイヤーさん、あなたは確かに凄い魔術師だ…そこで折り入って頼みたいんだが…あなたさえよければこの短剣譲り受けてはくれないだろうか…」
ユリウスは箱を閉じるとルカの元に歩み寄り、表情を曇らせ箱を差し出す
差し出された箱をルカが見下ろし、しばしの沈黙が流れる
「しかし坊ちゃんそれでは…」
アルベルトが慌てるように二人の間に割って入った
「分かってる!分かってるけど…ここにこれを置いていたらまた誰かが殺される…捨てたり隠したりする事だってこの短時間で考えた…でもそれを誰かが拾ったら…もし僕みたいな普通の人間が…
僕達は魔法なんて使えないから悪魔には無力だ…でもあなたなら、あなたなら今日みたいに戦う事が出来ると思うんだ…
もちろん自分が卑怯な事してるって分かってる…
だけど僕みたいな普通の人間にはこれくらいの選択肢しか思い浮かばないんだ…」
ユリウスは今にも泣き出しそうな顔を伏せ、震える手で箱を差し出しながら言った
「分かりました」
ルカはそう言うとユリウスの手から箱を受け取り今にも泣きそうな彼の頭を撫でてやった
「…あ…ご…ごめんなさい!」
ユリウスはルカに抱きつくとわんわんと泣き出してしまった
「僕だって魔術が使えなかったら、きっと君と同じ選択をしただろう…だから謝る事なんてないんだ…」
ルカは泣き止まないユリウスを慰めるように彼の背中を摩りながらそう言った
割れた窓からはそよ風が流れ込み、東の空は薄っすらと明るくなり始めていた_____
それから部屋の片づけを手伝った彼らはユリウスとアルベルトに見送られ屋敷を後にしようとしていた
「本当にお送りしなくてよろしいんですか?」
アルベルトは歩いて帰るというルカ達に申し訳なさそうに問う
「ええ、あんなに報酬を頂いておいて、馬車まで出させるわけにはいきませんよ…」
ルカはそう言うと帽子を被り荷物を持ち直し一人歩き出した
「それじゃあ…待ってよールカ!」
ネリーは二人に軽く会釈をすると彼の後を追いかけ走り出した
彼らを見送るユリウスが大きく手を振り
「またいつでも来てよー!待ってるからー!」
と本来の子供のような笑顔で言った
そのことに気付いたアルベルトはそんなユリウスを見るのは何年かぶりだと微笑んだ
「ルカ、あの子のお兄さんみたいだったね」
ネリーがルカを小突きながら冷やかすように言った
「手のかかる妹がうちにはいるからな」
ルカは負けじと横目でネリーを見ながら失笑した
「もう!ルカの馬鹿!」
ネリーは頬を膨らませそっぽを向いくと空を見上げ
(それにしても…あの時の眩暈は何だったのかな…)
見上げた空は雲一つなくどこまでも青く澄み渡って見えたが、ネリーはなぜか短剣のことが気がかりで一人もやもやとしていた_____
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