魔術師の仕事

阿部うりえる

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2章

5 悪魔の住む家

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その頃、悪魔は二階から飛び降りた際負った腕の傷を庇いながら薄暗い森を彷徨っていた
「クソ!あの魔術師…許さねえ…!」
悪魔は木に持たれ掛かると崩れるように腰を下ろし木々の間から遠くの空を虚ろな目で見上げた
頬に当たる風があまりにも心地よかったので彼はうつらうつらとし始めた
その時、地面の木の葉が鳴り誰かがこちらに近づいてきたので彼はびくりと体を震わせ警戒した
「誰だ!」
悪魔は右腕を庇いながら慌てて立ち上がろうとするが、その人物の顔を確認するなりホッとしたようにまた座り込んだ
「何てザマだ」
その人物とはルカの知り合いのゲルハルトだった
彼は呆れたように悪魔を見下ろし言う
「魔術師に邪魔されたんだ
でも助かったよ、あんたの助けがなかったら今頃また地獄行きだったぜ」
ははっと笑いながら悪魔が言う
「………」
ゲルハルトは冷淡な目で悪魔を見下ろすだけで何も言わなかった
「剣ならまた後から探せばいいだろ?またあの屋敷の人間を拉致ってさ…この身体はもう使えないしな…
どうせあの屋敷の何処かにあるんだ…焦る事じゃないだろ?」
悪魔はヨアヒムの身体を見ながらそのように言った
「…知らないのか?剣は魔術師の手に渡ったんだ」
ゲルハルトは何も知らない彼に真実を教えてやった
「そんなはずは…魔術師だって知らなかった…」
悪魔は困惑したように呟く
「おまえが野蛮な遊びに惚けていなければ今頃あれはこちらで処分していたんだ
やりすぎた演出が魔術師を呼び寄せるなんて思いもしなかったのか、呆れた奴だな…」
ゲルハルトはそう言いながら彼の前にしゃがむとその胸ぐらを掴み呆れたようにため息をついた
「ちっ、人間から悪魔になった奴の分際で…」
悪魔は舌打ちしてそのように呟くと彼を睨みつけた
「俺がなぜおまえみたいな虫けらを助けたと思う?」
悪魔に顔を近づけゲルハルトが問う
「…?」
悪魔は彼の言ったことに小首をかしげた
ゲルハルトはそんな彼ににこりと微笑むと彼を離し、その耳元で
「我は汝、悪魔ゾラスとの契約を解消する」
と静かに言った
すると悪魔の足元に模様のようなものが浮き上がり地面に大きな闇を形成した
闇からは無数の触手が這い出てきて逃げようとする悪魔の体に瞬く間に絡みつき自由を奪った
「おまえ!俺を助けておいて何故!」
悪魔は怒りに顔を歪ませ叫んだ
「わざわざおまえごときで俺の契約者の手を煩わせるのも可哀想だったからさ
…それから俺の娘に手を上げた仕返しを自分の手でしてやりたかったから…まあ、そう言ったとこだ」
ゲルハルトは闇の外に出ながらそう言うと触手を払おうとジタバタ暴れる悪魔を見てほくそ笑んだ
やがて大きなうなり声とともにヨアヒムの口から飛び出た黒い塊はすぐさま触手に捕えられ闇の中へと引きずり込まれた
それと同時に地面の闇も消え、後にはヨアヒムの亡骸だけが残った
ゲルハルトは亡骸の額にキスをすると不気味に微笑みながら森の奥へと消えて行った
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