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数えの39歳独身。酒を飲む。

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国の声がかりで催される婚活パーティは、いつも盛況で人気があった。その中でも一部の者たちから絶大の人気を誇り、小規模ながら1年に1度開かれるこの会場は、待ち望まれていた。

 普通のやんわりとした出会いの場とは、違い、ここに集う者は、必ず婚姻を結びたいと思っている者が最後の砦として集まって来るため、切実さと必死さが半端なかった。

まあ、要するに身元がちゃんとした割に、異性と縁のない者が相手をみつけるためにガチの出会いを求めた場所だ。

 成人を迎えた男女が集められ、そこに集う男女には、ハッキリとした結婚の意思と共に、カップルになった者は、必ず結婚しなければならないという強制という暗黙のルールがあった。
カップル成立後の100%の婚姻率。それがこのパーティの売りで人気の理由だった。

そして、100%の婚姻率には隠された仕組みがある。カップルになったら最後、そこに参加する男には決して拒否ができないという事情が。

カップル二人だけの個室による時間の共有。

これによって、どんな相手がきても拒否が出来ない。
 家の事情により、送り込まれた一部の男たちからは、人生の墓場。と呼ばれていた。
ただ、これにも救いはある。
 会場でのフリータイムだ。
お互いを知るためのこの時間をすごく大切にする。(まあ、相手の値踏みだ)
これによって最低限の悲劇は、避けられていた。…結婚後の悲喜劇は、本人のみが知る。そこまでは国も責任はとれない。出会いの場を提供するだけでも良しとしてもらおう。


そしてこの、パーティに本人の意思ではなく義務として訪れている者がいた。

 国王の命令で会場入りした男が一人、憂鬱そうな顔で酒を飲んでいた。
 彼は、毎年このパーティに参加する事を義務付けられていた。
そう、毎年。かれこれ参加し続けて今年で5回目を迎える。

 婚活パーティに毎年の参加…すなわちそれは、未だ相手が見つからず独身であるという事。と同時に最後の砦と云われる場で女性からの指名を受けたことが無いことでもあった。

この事実は彼を地味ーに傷つけていたが、拒否る事が出来なかった。

 何故なら国王の命令だから。


 「ダグ、今年こそは嫁の一人ぐらいみつけてこいよ」と見目麗しい国王に、軽い激励を受け城から送り出された。

あの御方は、無茶を言われる。

 眉間に皺を寄せ、グラスを傾けながら、周り視線を無視して一人黄昏る。

 男の正体は、べレ国軍・総隊長ダグラス・ギールズ。

 御年数えの39歳。独身(ここにいる時点で間違いなく独身)。


 決して悪い顔ではない。強面で多少ごつくはあるがそれなりに整った容貌である。ただ身体が通常の男性より大きく近寄りがたい雰囲気を醸し出し40近い年食った男だというだけ。

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