願いがかないますように…  (ダーク版) 別バージョン

kitahara

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4 王族の存在は…

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王位継承者であり、唯一、国に残る皇太子さえも、例がいなく売られる。
 国王と立つか、婚姻を結び後継が生まれるその時まで。

けれど、そんなことを続けていると、人は、いつしか心が壊れてしまう。
 最終的には、感情的のない者になるか、死を選ぶか何れにしても、まともな状態では、いられない。

そうして、生き残る事が出来た者は、優しい笑顔で心の冷たい無情な国王となる。

 皇太子である兄もまた、成人した後、時々視察と銘打った旅行に出かけは、諸外国で手厚く饗されていた。

 穏やかで優しかった兄もまた、少しづつ変わりはじめる。3年前、一冊の本をオリビアに手渡し、せめてお前だけでも、と呟いた兄の慈しむような目を見たのも、それが最後だった。

オリビアの姉たちもまた、結婚という言葉で、国から送り出された供物だった。

 農耕の国に嫁いだ姉は、40才も年の離れた老王で、サデスティックな性格な上、5度目の結婚だった。

 森林の国に嫁いだもう一人の姉は、10人もの側妃のいる好色な偏執偏愛の皇太子で、監禁状態にあると聞く。



 平和で容姿端麗な王族の排出国と言われるこの国は、とうの昔から病んでいる。

そして、最後に残った王女のオリビアもまた、彼ら同様に商品として、品評会の末、一番高い値をつけた国に送り出される運命にあった。



兄が新婚旅行に旅立った夜、何故か、急に本が読みたくなり、手にとったのは、海に身を投げ恋に生きた姫の物語。
3年前、成人前の兄から手渡された本で、懐かしくなって、読んでみることにした。

ああ、本当に悲しい話…。

 子供の頃とは、違って、どうすることもできないこともあるという事を知っているからこそ、否定しょうとは思わないけれど・・・。

いいお話でも読んで悲しく思うことは仕方ない・・・


最後のページまで読み進めた時、指に違和感を感じ、厚さが不自然にあることに気づいた。

 気になって厚みのある部分に触れると何かが、挟まっているようで閉じられた後がある。
ばらけないように丁寧に引き剥がすと、小さな文字で書かれたメモと封筒が挟まれていた。


メモは、私にあてたもので、書名には兄の名前が書いてあった。

 最初この文章に気づいたのは、5代前の王女であったようだ。
 彼女は、私たち同様何も知らず、幸せな幼少時代を過ごした。
けれど、彼女もまたこの国の真実を知り、後世に残すため王立ではなく、子供部屋の図書室の本棚の奥まった隠し扉の引き出しに隠していた。

 私は、偶然、その扉を見つけ、この封筒を見つけた。

 王太子としての立場上、私は逃げることができない。

 姉たちも残された時間が少なく、逃げることはかなわないだろう。
けれどオリビアなら、逃げることが可能かもれない。

 成人を迎える私は早い段階で、心を封印する薬を飲まされるだろう。
 代々皇太子に行われていた儀式だ。
 今までの私はいなくなり、心がなくなった次代の国王が、生まれる。



ドウゴに後の事を頼んだ。
 彼は、私が成人前に出会った、唯一信じることができた人だ。

どうか、幸せになってほしい。

それが、兄として貴方に残せる私の最後の願いです。
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