願いがかないますように… （ダーク版） 別バージョン

3 王国の実情

そんなドウゴ王子が突然、セレス王国に姿を見せなくなった。

いくら、平和なセレス王国とはいえ、スパイは、いるもので、情報部と周辺諸国との話を総合すると、どうやら、トウゴの国で、第一王子、第三王子の王位継承権による内紛から政変が起こり、戦となったようで、国防軍の将軍であるトウゴ王子が制圧に乗り出した為、悠長に結婚相手に会いに来れなくなったようだ。


さすが、軍事国家。

この時、まだ、子供であったオリビアは、状況を把握しておらず、薄情にも、これで、当分姿を見らずに済むと、単純に思っていた。


 内乱から、２年本当に会うこともなく、大国である軍事の国は、国中を巻き込んで大きな戦いとなって、疲弊していく。

そして、トウゴとオリビアの婚儀の約束まで、３ヶ月に迫った、15才の春、セレス王国は、ドウゴ王子の訃報の知らせを受け取った。

 父王に呼ばれた執務室で、オリビアは、トウゴの戦死と、機械の国への輿入れが決まったと、告げられる。

うっすら笑みを浮かべて、人の死を告げ、そのあとで新たな縁組みを無情にも、告げる王の冷淡さをオリビアは、無言で受けとめ頭を下げると静かに執務室を退出した。

 自室に戻ったオリビアは、初めて感情をだすことが出来る。ただ一人、外に漏れないよう声を殺して泣いた。



 本当は、解っていた。

 諸外国やセレス王国の思惑も軍事国家という大国の王子であるトウゴによって、オリビアという女の子が、守られていた事を。





 何の産業も資源もないこの国は、昔から、何故か王族に容姿端麗な者が、多く生まれる為、その時代の力のある大国の王族に縁付かせてきた。
つまり、婚姻という綺麗な包装に、子供包んで差し出し、人身御供のようにして存続してきたのである。

その事実は、諸外国の上層部では、暗黙の常識で、セレス王国で開かれる成人前の社交パーティーは、王子や王女の品評会であり、人買いよろしく文字通り、一番高い値をつけた国に下げ渡される。

セレス王国の王族は、成人前まで、大切に育てられ、売り渡さられるその直前まで、その事実を知らないまま、本当に仲睦まじい家族関係を装っていた。

けれど、そこには、人しての愛情でなく、商品を大切に保護しているに過ぎず、決して大事にされていたわけではなかった。