海街の人魚姫

ガイア

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8話

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次の日、ナミさんの演奏会の後に俺はチラシ作り、ナミさんは招待状作りをどういうものにするかを考えていると、子供たちが近寄ってきた。

「なにしてんの?」
「海町祭りでナミさんが演奏するからチラシを作ろうと思って」

 俺がそういうと、子供たちが顔を見合わせた。

「ナミさんは?」
「私は、おじいちゃんに演奏に来てほしくて、招待状を作ろうと思っているんだけど、どういうものにしようか考えていて・・・」

 子供たちは、目を輝かせた。

「面白そう!わたしたちも手伝いたい!」
「お兄ちゃんだけずるいぞ!」

 こういうのは、子供達の方が頭が柔らかく、沢山のアイデアが出てくるらしい。素直に感心してしまったし、助かった。クラスに絵が上手い子がいるらしく、今度ナミさんの絵を描いてもらえるように頼んでくれるらしい。
 ナミさんの方も順調そうだ。
 それから俺たちは演奏終わり後に集まって、海町祭りの演奏会に向けて準備を進めた。

「ナミさんが演奏を終えた後、花束的なものを渡したいんだけど、何かアイデアないか?」
 演奏会に来ていた女の子を集めて俺はナミさんに聞こえないように聞くと、

「じゃあ、花でネックレスを作ったらいいじゃない。アロハでやるやつ」
「なんていうんだっけ、あれ」
「ハワイアンレイだよ、お母さんがフラダンスやってるの。花の冠もよくない?お母さん花の冠もするよ!」
「かわいい!きっとお姫さまみたいになるよ」

 こんな具合でするするアイデアを出してくれる。子供って本当に凄い。

「じゃあ、ナミさんに内緒で花屋に行かないとな。この辺で花屋っていったらどこだ?」
「フラワー山本だね」
「ちょっと遠いけど、歩いていけるよ」
「早速行こう!山本さんは演奏をたまに聴きにきてるからきっと作ってくれるよ!」

 子供たちだけじゃなく、ポスターを貼ってもいいといってくれたお店の人や、バスでナミさんの演奏を見に来ているお年寄りの方々は皆で当日バスで来てくれると言ってくれたり、快くハワイアンレイを作ってくれるといってくれた花屋の山本さんや、ナミさんが演奏で着る衣装を用意してくれるらしい仕立て屋の森さんなど、沢山の町の人が協力してくれて、応援してくれた。

 楽しみだ、俺は素直にそう感じ、皆もそういっていた。そして、ナミさんの頼み事を叶えるべく、俺たちはいつもより教会へ早く来て、もう一つの計画に向けて動いていた。
 一人で教会から帰る帰り道、ふと海風が俺の頬を撫でた。

「ここの海って、こんなに綺麗だったんだな」

 俺の故郷の海は、目が覚めるような、綺麗な青い色をしていた。
 気づいたらあっという間に時間は過ぎていて、とうとうお祭り当日が訪れた。
 仕事が休みか、もしくは午前中に切り上げるくらい、この町にとって海町祭りというのは大切で、大きなお祭りらしい。お祭りの開始は、15時から。出店などが集まり、17時まで町の中心にあるステージは、出し物や踊りなど、町の人たちの特技や趣味などを披露する場になる。ナミさんの出番は16:30からだ。13時から、体育会館で軽いリハーサルが行われるらしく、それまでには会場に行かなくてはならない。
 会場に行く前に、少し練習がしたいというナミさんに俺は教会へと向かうことになった。

「父さん、母さん」

 俺は、朝ごはんを食べている父さんと母さんに大きく息を吸ってから切り出した。

「今日、俺の友達が祭りのトリでピアノを演奏するんだ」

 祭りのトリというのは最初から決まっていたらしい。両親は誰のことか大体わかっているという顔で俺の話を聞いていた。

「是非見に来てほしい」
 そういうと、父さんと母さんは顔を見合わせて微笑んだ。
「当たり前でしょ?」

 その言葉に俺はほっと胸をなでおろした。

「後、俺そのステージで歌うから」
 俺がそういうと、また父さんと母さんは顔を見合わせた。
「え!?」
「ごちそうさま!」

 俺はすくっと立ち上がると、照れ隠しでそれ以上の言葉を聞かないようにそのまま玄関へと向かった。コンビニでお昼ご飯のおにぎりと飲み物を買ってリュックに詰め込む。
 教会へ着くと、ちょうどナミさんがナミさんのおじいちゃんの車から降りるところだった。

「ナミさん!」
「コウタさん!」
 ナミさんは、俺を見ると嬉しそうに微笑んだ。今日のナミさんは、水色のワンピースに、肩掛けバックを下げていた。

 俺は、ナミさんとの挨拶もそこそこに俺たちを後ろで見つめているナミさんのおじいちゃんを見て慌てて頭を下げた。

「お、おはようございます」
「・・・・・」

 ナミさんのおじいちゃんは難しい顔で俺を見た。

「招待状、霞からもらったんだ」
「は、はい!」
「一応、見には行くからな」

 ナミさんのおじいちゃんは、不愛想だったけど確かにそういった。そして、子供たちとナミさんが一緒に作っていた小さな貝殻が張り付けてある水色の招待状をポケットから出して俺に見せてくれた。俺は、きっとこの時、最近で一番の笑顔を浮かべていたと思う。

「ありがとうございます!」
「それじゃ、霞。ワシは準備があるから。コウタくんか」

 ナミさんのおじいちゃんは車に乗って窓を少し開けて俺を見た。

「は、はい」
「霞をよろしくな」
「はい」

 俺は、誠実に返事をした。ナミさんのおじいちゃんは満足そうに鼻を鳴らして車で行ってしまった。
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