海街の人魚姫

ガイア

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9話

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「おじいちゃんは、お祭りの準備を手伝うからほとんどいないんです。会場にずっといるらしくて」
 ナミさんは、そういって俺を見た。

「体育会館まで自力で行かないといけないってこと?」

「あっ・・・いえ、下の老人ホーム万海(まんかい)さんが12時30分にバスを出してくれるそうです」
 ナミさんは、困ったような嬉しそうな表情で微笑んだ。俺は、少し恥ずかしくなって、急いで話題を変えようとした。

「わかった、じゃあその、そろそろリハーサルを」
「そうですね」

 ナミさんは、そういって教会へと歩みを進めた。
「開けておいてくださるといってくださっていたみたいですので、開いていると思います」
 ナミさんの言う通り、教会は開いていた。

「さて、始めましょうか」
 ナミさんは、そういって俺を見た。
「うん」

 俺も、ナミさんを見て微笑んだ。ナミさんが自分で作ったオリジナル曲。俺も自分で曲を作ったりしていたから協力した、2人の曲。
 俺は、今作っている曲を一緒に歌って欲しいとナミさんに頼まれた。俺が歌うより、ナミさん1人で歌った方がいいといったんだけど、ナミさんがどうしても一緒に音楽をしたいといってくれて、ナミさんが演奏と歌。俺が歌を歌うことになった。

 曲が完成するのは案外早く、教会に早く集まってリハーサルを行った。

「俺が一緒に歌ってしまって本当に大丈夫なんだろうか」
 最近までそういっていたが、そのたびにナミさんが頬をふくらませて怒るので言わなくなった。
「大丈夫、完璧です」

 ナミさんがそういって、俺たちのリハーサルは、終了した。

「ナミさんはリハーサルしなくていいの?」
「大丈夫です、何度も家で弾いたので」

 そういって、ナミさんは空でピアノを弾く真似をした。俺は改めてナミさんは凄いと感じた。

「それより、お祭りには出店が出るらしいですよ、行きましょう」
 ナミさんは、キラキラした顔でそういった。
「去年はどうだったの?」
「行っていません。おじいちゃんが準備をしに行って、私は家にいました。毎年、人が多くて危ないからと・・・」
 ナミさんは、薄く微笑んで俯いた。

「じゃあ、今年は楽しまないとね」
「はい・・・」

 ナミさんはにこっと微笑んだ。お互い見つめあっていい雰囲気だったというのに、それはすぐに打ち破られた。

「おーい!ナミさん!」
 教会の扉が開いて子供たちが現れた。
「万海(まんかい)のバスが来たよ!」
 子供たちは、ナミさんに駆け寄った。
「みんなバスで来たのか?」
「うん!教会に向かう途中乗せて行ってくれた。今年は、ナミさんが一緒にお祭り回れるらしいから楽しみ!」
 子供たちは、本当に嬉しそうに言った。ナミさんは、沢山の人に愛されているのだと感じた。

「コウタ、行くぞ!」
 だが俺は、コウダ。生意気なガキ共め。
「さん、をつけろ」

 俺は、すっかり町の子供たちと打ち解けていた。バスに乗りこみ、いざリハーサル会場へ。ナミさんは、白い肩掛けバックに入っていたのだろう。子どもたちに昼飯のサンドイッチを食べさせてもらっていた。俺もコンビニで買ったおにぎりをお茶で流し込む。

 子供たちは子供たちで太鼓や踊りを披露する為にリハーサルに参加するらしい。
 体育会館はかなり広くて沢山の人がいた。俺は、ナミさんがいなかったらお祭りにも来なかっただろう。
 ずっと家で、後悔と悩みを抱えながら、ベットの上にいただろう。

 リハーサルは無事終わった。といっても流れを軽く説明したりするくらいのものだったけど。それから、衣装に着替えたり、準備が始まる。ナミさんと俺は、バスに乗せてもらって出演者の人たちと舞台裏へと向かった。
 ナミさんと俺は、15時から舞台裏でスタンバイしているやって仕立て屋の森さんに色々着付けなどやってもらえるらしい。森さんは、妹さんとお姉さんで仕立て屋さんをやっていて、着物の着付けからメイク、ヘアアレンジや散髪まで姉妹であらゆることができるこの町の凄い人だ。

 ナミさんは、リハーサルからなんだかそわそわしていた。バスに乗って外を眺めていると、出店はもう出店準備が整っているところも多いようで俺もわくわくした。お祭りなんてどれくらいぶりだろう。
 俺たちは出演までお互い別々で出演のための身支度を整えてもらう。

「お、お願いします」
「任せておいて!」
 俺は、森さん(妹さん)の方に紺色の浴衣の着付けをしてもらった。俺はいいっていったのにナミさんがどうしてもというから、こうして衣装である浴衣を着せてもらうことになったのだった。

「できたよ」

 髪の毛も綺麗に整えてもらった。ピンで横髪をとめてもらっって顔がすっきりした。

「女の子は男の子と違って時間がかかるから、楽しみに待っててね」
 そういってもらって、俺は舞台裏の順番を待つ席で座って待っていた。
「コウタさん!」

 すると、今今ステージで踊りを終えてきた女の子たちが俺に駆け寄ってきた。

「携帯見て、誰か待ってるんですか?」
「あ、うん。みんなお疲れ様。みんなの踊りみたかったな」
「ありがとうございます。ナミさんを待ってるんですか?」
「うん」

 女の子たちは、男の子と違って俺に礼儀正しい。

「結婚式で、お嫁さんを待ってるみたい!今日のコウタさんはいつもと違って見える!」
「コウタさん、今日はなんかかっこいいよ」
「うん!いつもと全然違う!」

 女の子たちは俺を囲んで口々に感想を述べた。

「う・・・うん、あ、ありがとね、へへ・・・へへ」
 子供っていうのは正直だなぁ。ナミさんの身支度は結構時間がかかっているようで、俺はドキドキしながらその時を待っていた。でも、もうすぐ出番だというのに、ナミさんが現れる気配がない。
「大丈夫かな。ナミさん、間に合うかな」

 16時10分になっても現れないナミさんに、俺は流石に不安になった。見に行こうかとも思っていたが、それは流石によくないと我慢した。なんて褒めようかとか色々考えていたのに、徐々に順番が迫ってくる不安で、どこかへいってしまった。結局ギリギリになってナミさんは現れた。
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