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第1章 転生幼女は防御特化を試みる
第10話 【魔法盾】
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「今、何が起こった?」
「リフレクションか?」
「いや、それにしては盾から炎が出ているように見えたが」
周りの兵士たちから、そんな声が次々と上がる。
今のは間違いなく、盾から炎が飛び出していた。
そして今、私の魔力は確かに盾に注がれている。
──どうして?
普通、魔力が盾に注がれる、なんて有り得ない。
理由として考えられるのは『魔力付与』が働いたから、だろうが、それはおかしい。
魔力付与は普通、物体には関与しない。それこそ人にしか付与できないはず。
だとすれば、考えられる可能性は一つしかなかった。
──『盾術』『魔力付与』『魔力活性』の三つが当時に働いたから。
『盾術』で盾の適正が高められ、『魔力活性』で体内の魔力の勢いが強まった結果、『魔力付与』で盾に魔力を注ぐことができた。……可能性として考えられるのはこれのみ。
魔力を盾に注ぐことができる、というのはある一つのレアスキルの効果に似ていた。
その名も──スキル『魔法盾』。
盾に魔法を宿すことができるスキルだ。
もし、私が『魔法盾』に近い能力を使えるとしたら。
……使えるとしたら? ……どうなるのだろう。
分からない。だって私は、別に強くなりたいわけじゃないのだ。
ただ、毎日平穏に引きこもりができればいい。ただ、それだけ。
……だけどもしかしたら。
私が『魔法盾』を使えるとしたら。
次こそは、大切な人を守れる力を手に入れられるかもしれない。
その幻想に、私はほんの少しだけ希望を託す。
「……よし」
頷いて、私は次の攻撃に備える。
一つの考えが浮かんだ私は、風魔法を盾に注ぎ、右手には火属性の魔力を宿す。
クランは先の攻撃が見切られたと思ったか、今度は魔法を使わずに距離を詰めてきた。
すかさず私は、風魔法を宿した盾を突き出す。
──ガンッ。
盾と剣が衝突する鈍い音。
それと共に案の定、強い風が吹いた。
お互いにバランスを崩すが、私は寸前で踏み留まり、用意した右手をクランに向ける。
「ファイヤボール」
魔力活性により巨大化したファイヤボールを、クラン目がけて射出。
が。そこまでしても、私の魔法はクランに弾かれてしまった。
やはり私の魔法は未熟。実戦ではまだ役に立たないものらしい。
「はぁ──。はぁ──っ」
本当に限界だ。
息も切れて、魔力の流れをあまり感じられない。
なのにクランはすぐに次の攻撃の準備をしていた。
対する私は何も準備できていない。
迫り来る斬撃に咄嗟に盾を構えたが、剣の向きが先とは違う。
クランの攻撃は振り下ろしでなく、薙ぎ払いに変化していた。
攻撃手段の変化に私は対応しきれず、盾を手放し、体も投げ出される。
体を起こそうとするが、間に合わない。視界の端で、クランが剣を振り上げる──。
「──」
やばい、死ぬ。
本能で私は目を瞑った。そしてその時。
私たちの間に、迅速な風が吹き抜けた。
「そこまでだ」
目を開けば、父さんがクランの一撃を受け止めていた。
「勝負アリだな。アリエ。……クランの勝ちだ」
一瞬、その言葉を受け入れられなかった。
「ありがとうございました。アリエ様」
クランは私に頭を下げると、すぐに踵を返し、この場を後にした。
周りの兵士たちが、何か私の噂をしている。が、今は耳を貸す余裕もない。
……そっか。負けたんだ、私は。
ようやく現実を受け入れた。
少しだけ、悔しかった。
「リフレクションか?」
「いや、それにしては盾から炎が出ているように見えたが」
周りの兵士たちから、そんな声が次々と上がる。
今のは間違いなく、盾から炎が飛び出していた。
そして今、私の魔力は確かに盾に注がれている。
──どうして?
普通、魔力が盾に注がれる、なんて有り得ない。
理由として考えられるのは『魔力付与』が働いたから、だろうが、それはおかしい。
魔力付与は普通、物体には関与しない。それこそ人にしか付与できないはず。
だとすれば、考えられる可能性は一つしかなかった。
──『盾術』『魔力付与』『魔力活性』の三つが当時に働いたから。
『盾術』で盾の適正が高められ、『魔力活性』で体内の魔力の勢いが強まった結果、『魔力付与』で盾に魔力を注ぐことができた。……可能性として考えられるのはこれのみ。
魔力を盾に注ぐことができる、というのはある一つのレアスキルの効果に似ていた。
その名も──スキル『魔法盾』。
盾に魔法を宿すことができるスキルだ。
もし、私が『魔法盾』に近い能力を使えるとしたら。
……使えるとしたら? ……どうなるのだろう。
分からない。だって私は、別に強くなりたいわけじゃないのだ。
ただ、毎日平穏に引きこもりができればいい。ただ、それだけ。
……だけどもしかしたら。
私が『魔法盾』を使えるとしたら。
次こそは、大切な人を守れる力を手に入れられるかもしれない。
その幻想に、私はほんの少しだけ希望を託す。
「……よし」
頷いて、私は次の攻撃に備える。
一つの考えが浮かんだ私は、風魔法を盾に注ぎ、右手には火属性の魔力を宿す。
クランは先の攻撃が見切られたと思ったか、今度は魔法を使わずに距離を詰めてきた。
すかさず私は、風魔法を宿した盾を突き出す。
──ガンッ。
盾と剣が衝突する鈍い音。
それと共に案の定、強い風が吹いた。
お互いにバランスを崩すが、私は寸前で踏み留まり、用意した右手をクランに向ける。
「ファイヤボール」
魔力活性により巨大化したファイヤボールを、クラン目がけて射出。
が。そこまでしても、私の魔法はクランに弾かれてしまった。
やはり私の魔法は未熟。実戦ではまだ役に立たないものらしい。
「はぁ──。はぁ──っ」
本当に限界だ。
息も切れて、魔力の流れをあまり感じられない。
なのにクランはすぐに次の攻撃の準備をしていた。
対する私は何も準備できていない。
迫り来る斬撃に咄嗟に盾を構えたが、剣の向きが先とは違う。
クランの攻撃は振り下ろしでなく、薙ぎ払いに変化していた。
攻撃手段の変化に私は対応しきれず、盾を手放し、体も投げ出される。
体を起こそうとするが、間に合わない。視界の端で、クランが剣を振り上げる──。
「──」
やばい、死ぬ。
本能で私は目を瞑った。そしてその時。
私たちの間に、迅速な風が吹き抜けた。
「そこまでだ」
目を開けば、父さんがクランの一撃を受け止めていた。
「勝負アリだな。アリエ。……クランの勝ちだ」
一瞬、その言葉を受け入れられなかった。
「ありがとうございました。アリエ様」
クランは私に頭を下げると、すぐに踵を返し、この場を後にした。
周りの兵士たちが、何か私の噂をしている。が、今は耳を貸す余裕もない。
……そっか。負けたんだ、私は。
ようやく現実を受け入れた。
少しだけ、悔しかった。
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