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第1章 転生幼女は防御特化を試みる
第9話 模擬戦ー2
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先に動いたのはクランの方だった。
両手剣を担ぎながらも素早い身のこなしで私に詰め寄る。
その間わずか一瞬で、クランは私目がけてその大きな両手剣を振り下ろす。
早い。早すぎる。
「──っ」
私はその両手剣に、咄嗟に左手に持った盾を突き出した。
「いた──っ!」
ゴン。という鈍い音が盾から鳴る。
攻撃は防ぐことができた。
なのに威力は貫通するように私に伝わる。
そのまま私は後ろの方へ体を投げ出されてしまった。
体を起こそうとすると、すぐに次の攻撃が繰り出される。
私は再び盾を構える。が、同じように吹き飛ばされた。
近くにいる兵士たちから、どよめきの声が上がる。
「……はぁ。はぁ」
正直、七歳の体では限界だ。
なのにクランの攻撃の手は止みそうにない。
間髪入れずに次の攻撃が私を襲う。次は盾を突き出すのも間に合いそうになかった。
だから咄嗟に片手剣を投げ捨て、右手を突き出す。
「バリアー!」
私がずっと練習していた魔法のうちの一つ、バリアー。
それは、盾を使うよりも簡単にクランの両手剣を弾いてみせた。
「なっ──!?」
クランが虚を突かれたような声を上げる。
私が魔法を使うのを意外に思ったのだろう。
だが一度バリアーを見せてしまったら、今後は今のようにうまくはいかないだろう。
とりあえず距離を取ろう。そうすれば、考える時間も生まれるはずだ。
と、私は盾だけを持ってクランと距離を取る。
だが攻撃の手は止まるところを知らない。
「……うぅ」
走りながら思わず間抜けな声が飛び出した。
そりゃ圧倒的な戦闘力の差を見せつけられたらこんな声も出る。
だけど、クランとの距離を離すことにはどうやら成功したらしい。
これで私にも猶予ができる──と、思ったのだが。
「ファイヤボール」
クランは、火属性の初級魔法であるファイヤボールを繰り出した。
そのファイヤボールは、私の数歩前に着弾する。
「わっ──」
途端に上がるのは土煙。
安心したのも束の間、土煙の奥から圧倒的な気配を感じる。
そしてクランは土煙の中から飛び出してきた。
両手剣が間も無く振り下ろされる。
「バリアー!」
私は寸前で結界を作り出す。
クランを弾くの同時に走り出し、またクランと距離を離した。
しかし、これでは防戦一方になってしまっている。
しばらくは凌げるだろうけど、いずれ負けてしまうのは簡単に目に見えた。
どうすれば。どうすれば私は、クランに一撃を与えられる?
考えろ。考えろ、私。
「…………」
そういえば、今日私はスキル鑑定をしてもらったばかりだ。
そんなタイミングで父さんが模擬戦をしろと言った。
私が持っているスキルは『盾術』『魔力付与』『魔力活性』の三つ。
盾術の恩恵は、今実際に盾をしようしてなんとなく感じることができた。
盾はどこか軽く感じるし、クランの攻撃だって少しならいなせている。
魔力付与と魔力活性だが、基本スキルの発動方法は本を読んで理解している。
そして父さんは、この模擬戦では魔法を使用しても良いと言った。
つまりこれは、私のスキルを活かして戦え。と、そういうことだろうか。
分からない。分からない……が、やってみる価値はありそうだ。
一応初級魔法であれば全属性使うことができる。
だがそれらはまだ、実戦で使えるレベルのものではない。
それでも『魔力活性』を利用すれば、今よりも使える魔法にはなるはずだ。
「……よし」
私は一つ頷き、焦点を思考から現実に合わせる。
距離を置いたクランは、再びファイヤボールの構えだった。
「ファイヤボール」
案の定、その右手から魔法が放たれる。
一回手法が分かれば、私にできるのはこの魔法。
私は敢えてファイヤボールに詰め寄り、右手を突き出した。
「──リフレクション」
反射魔法のリフレクション。
過去一回のみ、実戦で使用した魔法だ。
一回のみだが、あの一回は私にとって忘れられない一回でもある。
リフレクションの使い方なら、もう忘れることはないだろう。
「リフレクション──!?」
ファイヤボールは見事に反射され、クランの元へ飛んでゆく。
クランは驚いた様子だったが、流石は父さんの弟子か。
両手剣の一振りでその魔法は簡単に防がれてしまう。
「馬鹿な。……リフレクションで」
ブツブツと何かを呟くクラン。
魔法を防げたというのに、どこか不満げである。
だが今が好奇だ。
私もクランと同様に、火属性の魔力の用意をする。
魔力活性を使用し、体内の魔力の動きを活発にする。魔力付与は今は使い道がないが、盾術なら使い道がある。私はしっかりと盾を構え、ファイヤボールの用意をした。
しかしクランの復帰も早かった。私が魔法の用意を終える前に、再び私に詰め寄る。
「くぅ──っ」
手が塞がっているためバリアーは使用できない。
私は左手に構えた盾で、今度はしっかりとクランの攻撃を防ぐ。
それでもやはり彼の両手剣の威力は凄まじく、簡単によろめいてしまう。
が──その時だった。
「えっ──?」
クランの攻撃を防いだ盾から、炎が現出した。
そしてその炎はクランに襲い掛かる。
クランは炎をギリギリで回避したが、何が起こったのか理解できてないようだった。
同様に訳が分からないと言ったような声が、兵士たちから飛び交う。
無論、私だって今、何が起こったのか分からなかった。
だけど確かに、私の持った盾から炎が飛び出した。
──あれ?
そして、私は違和感に気が付いた。
──魔力が盾に注がれている?
両手剣を担ぎながらも素早い身のこなしで私に詰め寄る。
その間わずか一瞬で、クランは私目がけてその大きな両手剣を振り下ろす。
早い。早すぎる。
「──っ」
私はその両手剣に、咄嗟に左手に持った盾を突き出した。
「いた──っ!」
ゴン。という鈍い音が盾から鳴る。
攻撃は防ぐことができた。
なのに威力は貫通するように私に伝わる。
そのまま私は後ろの方へ体を投げ出されてしまった。
体を起こそうとすると、すぐに次の攻撃が繰り出される。
私は再び盾を構える。が、同じように吹き飛ばされた。
近くにいる兵士たちから、どよめきの声が上がる。
「……はぁ。はぁ」
正直、七歳の体では限界だ。
なのにクランの攻撃の手は止みそうにない。
間髪入れずに次の攻撃が私を襲う。次は盾を突き出すのも間に合いそうになかった。
だから咄嗟に片手剣を投げ捨て、右手を突き出す。
「バリアー!」
私がずっと練習していた魔法のうちの一つ、バリアー。
それは、盾を使うよりも簡単にクランの両手剣を弾いてみせた。
「なっ──!?」
クランが虚を突かれたような声を上げる。
私が魔法を使うのを意外に思ったのだろう。
だが一度バリアーを見せてしまったら、今後は今のようにうまくはいかないだろう。
とりあえず距離を取ろう。そうすれば、考える時間も生まれるはずだ。
と、私は盾だけを持ってクランと距離を取る。
だが攻撃の手は止まるところを知らない。
「……うぅ」
走りながら思わず間抜けな声が飛び出した。
そりゃ圧倒的な戦闘力の差を見せつけられたらこんな声も出る。
だけど、クランとの距離を離すことにはどうやら成功したらしい。
これで私にも猶予ができる──と、思ったのだが。
「ファイヤボール」
クランは、火属性の初級魔法であるファイヤボールを繰り出した。
そのファイヤボールは、私の数歩前に着弾する。
「わっ──」
途端に上がるのは土煙。
安心したのも束の間、土煙の奥から圧倒的な気配を感じる。
そしてクランは土煙の中から飛び出してきた。
両手剣が間も無く振り下ろされる。
「バリアー!」
私は寸前で結界を作り出す。
クランを弾くの同時に走り出し、またクランと距離を離した。
しかし、これでは防戦一方になってしまっている。
しばらくは凌げるだろうけど、いずれ負けてしまうのは簡単に目に見えた。
どうすれば。どうすれば私は、クランに一撃を与えられる?
考えろ。考えろ、私。
「…………」
そういえば、今日私はスキル鑑定をしてもらったばかりだ。
そんなタイミングで父さんが模擬戦をしろと言った。
私が持っているスキルは『盾術』『魔力付与』『魔力活性』の三つ。
盾術の恩恵は、今実際に盾をしようしてなんとなく感じることができた。
盾はどこか軽く感じるし、クランの攻撃だって少しならいなせている。
魔力付与と魔力活性だが、基本スキルの発動方法は本を読んで理解している。
そして父さんは、この模擬戦では魔法を使用しても良いと言った。
つまりこれは、私のスキルを活かして戦え。と、そういうことだろうか。
分からない。分からない……が、やってみる価値はありそうだ。
一応初級魔法であれば全属性使うことができる。
だがそれらはまだ、実戦で使えるレベルのものではない。
それでも『魔力活性』を利用すれば、今よりも使える魔法にはなるはずだ。
「……よし」
私は一つ頷き、焦点を思考から現実に合わせる。
距離を置いたクランは、再びファイヤボールの構えだった。
「ファイヤボール」
案の定、その右手から魔法が放たれる。
一回手法が分かれば、私にできるのはこの魔法。
私は敢えてファイヤボールに詰め寄り、右手を突き出した。
「──リフレクション」
反射魔法のリフレクション。
過去一回のみ、実戦で使用した魔法だ。
一回のみだが、あの一回は私にとって忘れられない一回でもある。
リフレクションの使い方なら、もう忘れることはないだろう。
「リフレクション──!?」
ファイヤボールは見事に反射され、クランの元へ飛んでゆく。
クランは驚いた様子だったが、流石は父さんの弟子か。
両手剣の一振りでその魔法は簡単に防がれてしまう。
「馬鹿な。……リフレクションで」
ブツブツと何かを呟くクラン。
魔法を防げたというのに、どこか不満げである。
だが今が好奇だ。
私もクランと同様に、火属性の魔力の用意をする。
魔力活性を使用し、体内の魔力の動きを活発にする。魔力付与は今は使い道がないが、盾術なら使い道がある。私はしっかりと盾を構え、ファイヤボールの用意をした。
しかしクランの復帰も早かった。私が魔法の用意を終える前に、再び私に詰め寄る。
「くぅ──っ」
手が塞がっているためバリアーは使用できない。
私は左手に構えた盾で、今度はしっかりとクランの攻撃を防ぐ。
それでもやはり彼の両手剣の威力は凄まじく、簡単によろめいてしまう。
が──その時だった。
「えっ──?」
クランの攻撃を防いだ盾から、炎が現出した。
そしてその炎はクランに襲い掛かる。
クランは炎をギリギリで回避したが、何が起こったのか理解できてないようだった。
同様に訳が分からないと言ったような声が、兵士たちから飛び交う。
無論、私だって今、何が起こったのか分からなかった。
だけど確かに、私の持った盾から炎が飛び出した。
──あれ?
そして、私は違和感に気が付いた。
──魔力が盾に注がれている?
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