義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日

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姉妹の三日間

脂っぽい味

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「飲み物とってきたよ」
「ありがとありがと。オレンジジュース?」
「うん」

 氷が2~3個入っており、ジュースはコップの八割くらいまで満たしている。
 私はそれを受け取ると、ちびちびと口の中に流し込んだ。
 歯に触れる氷がちめたい。

「おいしー!」
「てんちゃん。オレンジジュースすき?」
「ジュース系は全部すきだよ。……あのさ、その「てんちゃん」って凄く響きいいし、私は嬉しいんだけど、私の苗字は天川てんかわじゃなくて姫川だから、親の前とかでは呼ばないでよ……?」
「呼びそう」
「ねぇ! とりあえず私の前では「てんちゃん」でいいけど、家族の前では別の呼び方してね!」

 そう言った私は、何かを誤魔化すかのようにジュースを飲み干す。

「じゃあ。てんちゃんも私のことみっちゃんって呼んでよ」

 お姉ちゃんは頭を私の肩に置きそう言う。
 一瞬、ゾクッと体が震えた。
 耳元で囁かれているような感じだ。

「お。お、お、お。お、お姉ちゃんのことは「お姉ちゃん」がしっくりくるかな」

 幼稚園の頃は、お姉ちゃんは一人の女の子だったわけで、家族になった今、みっちゃんと呼ぶ必要は無い。
 多分、そうだと思う。

「そっか。……あ、ジュースもう無いね。私も無いしもっかい行ってくるね」
「あ、ありがとう」

 横目でドリンクバーに行く彼女を見送る。
 普通に考えれば、あんな美人が私のことを好きっていうのは、なんか凄いことだと思う。
 私だってお姉ちゃんのことは、好きだけど好きにはなれない。
 ……って。今日だけで何回このことを考えただろうか。
 まるで言い聞かせるように、暇さえあれば何度もこんな同じことを思考している。

 だけど。よくよく考えてみると、「普通」の基準が分からない。
 姉妹が仲良くする、ということは普通。
 ……ハグ。とかも普通。
 ……キス。これは普通じゃない。

 だから。多分。
 普通というのはキス未満の関係。
 だからキスさえしなければ普通の姉妹。
 そういうことだろう。
 そう頭の中で結論を出してみた。
 これ以上のことをもう考えないことにしよう。

「てんちゃん」

 聞こえた声に反射的に顔あげる。
 お姉ちゃんが持っていたジュースを私の正面に持ってきた。

「あ、ありがと。次はメロンジュースか。美味しそう。いただきまーす」

 しかし、口をコップにつけた時、少し特徴的な匂いが鼻を突いた。
 なんだろうこの匂い。
 匂いの源はこのコップだけど、なんだろ。あぶらっぽいって言うのかな。

 まぁいいや。と、普通に飲んだ。
 うん。美味しい。
 気にすることでも無かったようだ。
 だが、その時、

「……? お姉ちゃん」

 視線を感じた。
 見れば、お姉ちゃんは、どこか幸せそうにこちらを眺めていた。
 ……変なの。
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