義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日

文字の大きさ
12 / 86
姉妹の三日間

お姉ちゃんは私の隣に座りたい

しおりを挟む
「いらっしゃいませ~。何名様でしょうか~」
「ふ、二人です!」
「かしこまりました~。空いてる席へどうぞ~」

 ファミレスへと辿り着き、緊張しながらも対応をすませる。
 学生二人でファミレスだなんて、初めてでなんか新鮮だ。
 今までは家族としかこういうのには行ったことが無かったから。
 って、お姉ちゃんは家族か。

「どこ座る?」
「て、てんちゃん。緊張しすぎ」
「ちょ! こ、こういうのは初めてなんだから! わ、笑うな!」
「ご、ごめん。つい」
「お姉ちゃんこそ、この店は慣れっこなんでしょ? 後はお姉ちゃんに任せたからね! あ、席は私は端っこがいい」
「んー。はい。分かった」

 お姉ちゃんは、渋々了解したように、端っこの席へと歩みを進めた。
 彼女の背中を私は追う。

 席は、片方が椅子で、もう片方がソファーだった。
 端っこの席にありがちなやつだ。
 お姉ちゃんが椅子に座ったので、私はソファーへと向かう。

「よいしょっと」

 正真正銘の端っこ。角の席。
 私の横は90度の壁。
 正面にはお姉ちゃんがいる。

 お姉ちゃんがいる。けど、立ち上がった。
 そして、無言で私の隣へと。

「なにやってるの。お姉ちゃん」
「隣座ってもいい?」
「まぁ。どうぞ?」

 というか逃げれないし。

「よかった。んっしょんっしょ」
「お姉ちゃん? なんでさらに近づくの?」

 肩がピトッとくっつく距離まで、お姉ちゃんは近づいてきた。
 お、お姉ちゃん。そんなに私のことが好きなのだろうか。

「気にしないで」
「気にするよ」
「じゃあ、なにを頼むか決めましょうか」
「おい! 話逸らすな!」
「私は今パスタの口よ」
「……」

 無視を極めたお姉ちゃんが喋るその様は、もはや独り言だ。
 虚空に向かって話しかけている。
 まぁ、隣に座られるのは嫌ではないから別にいいけど。

「私もパスタがいい。でも、注文はお姉ちゃんね」
「分かった。……私、ミートソースかペペロンチーノがいいな」
「じゃあ。どっちも頼もうよ。半分ずつ」
「おぉ。てんちゃん頭いい! じゃあ、呼び出しベル押してよ」
「あ、うん」

 ピンポーン。
 その音とほぼ同時に、厨房から「少々お待ちを~」と元気の良い、よく通る声が聞こえてきた。
 お姉ちゃんの体が、少し離れる。
 引っ付いてるところを店員に見られるのは恥ずかしいのだろうか?

 そして、すぐに店員がきた。
 お姉ちゃんは小声ながらも、ちゃちゃっと注文をし、ついでにドリンクバーも頼んでいた。
 店員が去ったのを見計らうように、お姉ちゃんはすぐに私の横へ体を寄せる。
 もう。ちょっと恥ずかしいんだけど。

「ちょ、ちょっと。私、飲み物ほしいかも」
「じゃあ、私がとってくる。なにがいい?」
「お姉ちゃんのと同じのでいいよー。ありがとー」
「どういたしまして」

 飲み物を取りに行くお姉ちゃんの背中を見て、ふと。思ったのだが。
 私たち、仲良くなるの早いなぁ。
 嬉しいか、と問われたら、これは素直に嬉しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...