義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日

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義姉妹の夏休み

ふくえらび

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 お姉ちゃんが服を選んでくれる。
 それだけで、今日は外に遊びに行って良かったと、家に帰ったら思えるのだろう。
 これから毎日、お姉ちゃんと遊ばないと満たされない気がするけど、夏休みというのはなんとも不条理なもので、宿題という過酷な試練が私達を待ち構えているのだ。
 今日遊んだ分、明日は宿題しないとなーなんて余り楽しくないことを考えてしまう。

「てんちゃんはどんな服が好み?」
「なんでもー。というか、お姉ちゃんが選んでくれるならなんでもいいよ」

 正直に答える。
 けど、これはどっちの経費を使用するのだろう。
 そりゃあ私だとは思うけど、あんまり高い服を選ばれても私お金はあんまないし……。
 本当にお小遣い貰っとけば良かったな。
 まぁ、お母さんも夏休み初日、私が遊びに行くとは思わないだろうしなー。

「……お金あんま無いからほどほどにお願い致します」
「……別に、私が出してもいいけど?」
「もしかして、お姉ちゃんお金持ち?」

 そういえば、家にあるゲーム機類も自分で買ってるとか言ってた気がする。

「いや、大量のお年玉。……前々から貯金してたし、ばあちゃん家って金持ちだからいっぱいくれるの」
「へー、意外。おばあちゃん家とか行くんだ」
「小学校の時だけど。……去年の年末年始は父さん一人で行ってた」

 それ、おばあちゃん悲しみそう。
 って、険悪ムードにしたくないため口に出さずに思う。
 にしても、その言い方だと本当に沢山お金を持っていそうだ。
 おばあちゃんの好意でお姉ちゃんに与えたお金を、私が使っていいのか少し疑問符が浮かぶけど……お姉ちゃんのおばあちゃんは私のおばあちゃんでもある。
 だからいいだろう。
 そういう感じに都合のいいように納得する。

「そうなんだ。……まぁ! お言葉に甘えまくってお金はお姉ちゃん! よろしく!」
「う、うん。じゃあ、服えらぼ」


※※※※※※


「ほら。てんちゃん、これとかどう?」
「うーむ」

 お姉ちゃんが最初に提示してきた服は、キャラクターが描かれた服だった。
 ……シナ◯ロール。
 可愛いんだけどね。どこか子供っぽい。
 私はもう十三歳。立派な……子供かも。

「お気に召さなかった? だって、てんちゃん、トークアプリのアイコン、マイメロじゃん」
「そうだけども。……着る服がマイメロっていうのも恥ずかしいじゃん」
「んー。……じゃあ、次これ!」

 買い物かごに色々詰め込んだお姉ちゃんが、また服を取り出す。

 えっと。次の服は。
 何というか、すごいメルヘンな服だ。
 ひらひらがついていて、ピンク色で。
 ……お人形さんみたいな服だ。
 というかこの店、子供っぽいのが多い。

「お姉ちゃん。お姉ちゃんは、私に何を求めているの?」
「……とりあえず、着てみて。これ」

 ……もしや。
 私は着せ替え人形なのか。
 りかちゃんなのか。私はりかちゃんなのか。
 服選びという体で、私を着せ替えしたいだけじゃないのか。

「……うん。いいよ」

 だけど。
 好奇心の方が勝った。


【あとがき】

何気に初あとがきです。
なぜマイメロが伏字をしていなくて、シナ◯ロールが伏字をしているのかについてはスルーしましょう。はい
いつも読んでくださりありがとうございます!
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