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第1章 土方歳三、北の大地へ
第4話
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ブリュネの下から大鳥圭介が去って何分、いや何時間が経ったのか。
そんなに時間が経ってはいない気がする一方、何時間も経ってしまった気が、ブリュネにはしていた。
大鳥は、伝習隊の幹部に対して呼集を掛けたらしい。
(というのは日本語がそう分からないからだが、多くの人が駆け付ける気配がした)
そして、自分達のいる近くの部屋に人が集まったらしいが、予想通りかなり揉めているらしく、内容は全く分からないが怒号や罵声が飛び交っている気配がしてくる。
ブリュネはただひたすら待とう、と思った。
まずは、伝習隊の幹部がどう決断するかだ、そのうえで再度説得を試みよう。
そう思っていると、ブリュネ大尉と共に行動すると言い張って、同行してきた自分の部下のフォルタン軍曹から声をかけられた。
「どうなると思いますか」
「分からないというのが、自分の正直なところだ。
だが、何とか説得したい。
しかし、本当に私についてきて良かったのか」
「今更、言いっこなしですよ。
大尉1人に背負わせるのはあんまりです。
それにもし、幕府が徹底抗戦すると決めていたら、自分も脱走するつもりでした。
大尉も同じでしょうが」
「お互い脱走した身になったのに、大尉と呼ばれるのは変なものだな」
その一言がフォルタンの琴線のどこかに触れたのか、フォルタンは微笑んで言った。
「そうですね。確かに変な気がします。
でも、大尉は今でも私の敬愛する上官ですし、大尉ですよ。
それに変といえば、国民同士が殺し合いをここ数十年の間に何回もしたことがあるフランス人が、200年以上も国民同士が殺し合いをしたことが無い日本人に対して、国民同士の殺し合いを止めるように説得する方が変な気がしませんか」
「確かにな」
フランス大革命から100年も経たないのに、我が祖国フランスは革命遂行の美名の下、国民同士が殺しあうことをどれほどしてきただろう。
何とも皮肉な話と言えば皮肉な話だ。
それにしても、とブリュネは出発前の榎本との会話をあらためて思い起こした。
榎本は言っていた。
「まずは、伝習隊を訪ねて、大鳥圭介と土方歳三の2人を説得してください。
伝習隊の司令官は大鳥ですが、隊員の信望をより集めているのは、後から来た土方と思われます。
伝習隊は、旧幕府陸軍関係者が最も集まっている最大勢力の部隊です。
伝習隊が降伏を決断すれば、他の旧幕府陸軍諸隊の多くが抗戦を断念して、降伏の決断を行うと思います。
大鳥はあなたと面識があるし、私の知っている大鳥の性格からいっても、あなたが赤心をもって説得すれば降伏を決断するでしょうが、土方はそうはいかないと思われます。
下手をすると、自分1人で偽官軍の薩長に斬り込んでいき、斬り死にすると言い出すかもしれません。
彼について知る人の話等から、そうなってもおかしくない、いや、そうなる気がするのです。
それ故、この書簡を渡してください。
この書簡を読めば、土方は翻意して、伝習隊の投降に賛成してくれる気がします」
榎本は、書簡に何と書いたのか、あえて自分は聞かなかった。
どうも嘘を交えて書簡を書いている気がしたからだ。
だから、真意を知らぬ方がいい、下手に嘘なのを知ってしまったら、自分は嘘を貫けない。
そんなことを考えているうちに、近くの部屋での喧騒が収まっていることに気づいた。
誰かがこの部屋に近づいてくる。
「ブリュネさん、それから他の皆さん、私と共に来てください。
他の伝習隊の幹部の面々が直接、あなた方の話を聞いたうえで最後の決断を下したいそうです」
大鳥が、部屋の戸を開けるとすぐに話した。
ブリュネ達は立ち上がり、大鳥の後に続いた。
いよいよ、伝習隊の決断が決められる時がきたようだった。
そんなに時間が経ってはいない気がする一方、何時間も経ってしまった気が、ブリュネにはしていた。
大鳥は、伝習隊の幹部に対して呼集を掛けたらしい。
(というのは日本語がそう分からないからだが、多くの人が駆け付ける気配がした)
そして、自分達のいる近くの部屋に人が集まったらしいが、予想通りかなり揉めているらしく、内容は全く分からないが怒号や罵声が飛び交っている気配がしてくる。
ブリュネはただひたすら待とう、と思った。
まずは、伝習隊の幹部がどう決断するかだ、そのうえで再度説得を試みよう。
そう思っていると、ブリュネ大尉と共に行動すると言い張って、同行してきた自分の部下のフォルタン軍曹から声をかけられた。
「どうなると思いますか」
「分からないというのが、自分の正直なところだ。
だが、何とか説得したい。
しかし、本当に私についてきて良かったのか」
「今更、言いっこなしですよ。
大尉1人に背負わせるのはあんまりです。
それにもし、幕府が徹底抗戦すると決めていたら、自分も脱走するつもりでした。
大尉も同じでしょうが」
「お互い脱走した身になったのに、大尉と呼ばれるのは変なものだな」
その一言がフォルタンの琴線のどこかに触れたのか、フォルタンは微笑んで言った。
「そうですね。確かに変な気がします。
でも、大尉は今でも私の敬愛する上官ですし、大尉ですよ。
それに変といえば、国民同士が殺し合いをここ数十年の間に何回もしたことがあるフランス人が、200年以上も国民同士が殺し合いをしたことが無い日本人に対して、国民同士の殺し合いを止めるように説得する方が変な気がしませんか」
「確かにな」
フランス大革命から100年も経たないのに、我が祖国フランスは革命遂行の美名の下、国民同士が殺しあうことをどれほどしてきただろう。
何とも皮肉な話と言えば皮肉な話だ。
それにしても、とブリュネは出発前の榎本との会話をあらためて思い起こした。
榎本は言っていた。
「まずは、伝習隊を訪ねて、大鳥圭介と土方歳三の2人を説得してください。
伝習隊の司令官は大鳥ですが、隊員の信望をより集めているのは、後から来た土方と思われます。
伝習隊は、旧幕府陸軍関係者が最も集まっている最大勢力の部隊です。
伝習隊が降伏を決断すれば、他の旧幕府陸軍諸隊の多くが抗戦を断念して、降伏の決断を行うと思います。
大鳥はあなたと面識があるし、私の知っている大鳥の性格からいっても、あなたが赤心をもって説得すれば降伏を決断するでしょうが、土方はそうはいかないと思われます。
下手をすると、自分1人で偽官軍の薩長に斬り込んでいき、斬り死にすると言い出すかもしれません。
彼について知る人の話等から、そうなってもおかしくない、いや、そうなる気がするのです。
それ故、この書簡を渡してください。
この書簡を読めば、土方は翻意して、伝習隊の投降に賛成してくれる気がします」
榎本は、書簡に何と書いたのか、あえて自分は聞かなかった。
どうも嘘を交えて書簡を書いている気がしたからだ。
だから、真意を知らぬ方がいい、下手に嘘なのを知ってしまったら、自分は嘘を貫けない。
そんなことを考えているうちに、近くの部屋での喧騒が収まっていることに気づいた。
誰かがこの部屋に近づいてくる。
「ブリュネさん、それから他の皆さん、私と共に来てください。
他の伝習隊の幹部の面々が直接、あなた方の話を聞いたうえで最後の決断を下したいそうです」
大鳥が、部屋の戸を開けるとすぐに話した。
ブリュネ達は立ち上がり、大鳥の後に続いた。
いよいよ、伝習隊の決断が決められる時がきたようだった。
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