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第1章 土方歳三、北の大地へ
第10話
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榎本武揚は、奇跡的に無事に手元についた飛脚便を読み終えると、ほっとしたような顔をした。
荒井郁之助はそれを見て声をかけた。
「何とかなったようですね」
「ブリュネ大尉から連絡があった。
伝習隊、衝鋒隊、遊撃隊等々、全ての幕府諸隊が降伏したそうだ。
ブリュネ大尉自身も神速丸に乗って、こちらにもうすぐ戻ってくるとのことだ」
「ということは、大鳥圭介さん達も全員降伏して」
「そうだ、大鳥さんも、土方さんも、生きていた幕府諸隊の面々全員が、武器を置いてくれた。
本当に良かった」
荒井は心の底から安堵した。
幕府の有為な多くの人材が、これによって遺されたのだ。
きっと今後、日本の将来にいい影響を及ぼすだろう。
荒井は、榎本とのやり取りの一節に、ふと疑問を覚え、質問した。
「それにしても、土方さんが降伏を決断してくださるとは意外でした。
近藤勇さんの後を追って、土方さんは自害するのではないか、とまで思っていたのですが」
「さすがに、近藤さんの遺言に、土方さんは逆らえないよ」
「その近藤さんの遺言は、どうやって榎本さんに伝えられ、また、伝えられた方はどうされたのです」
「私に近藤さんの遺言を伝えられた方は。牢の中で病死された。
最期までできたら、土方さん達に、近藤さんの遺言を直接話したいと言われていた。
本当に無念だったろう」
だが、榎本は、それとなく自分に対して、目をそらし、遠くを見やりながら、返答している。
荒井は、ふと思った。
近藤さんの遺言というのは、榎本さんのでっち上げではないのか。
死人に口なしだ。
土方さん達が、直接聞こうにも最早聞きようがない。
榎本さんとしては、何としても新選組から遺された土方さんを助けたくて、いろいろ情報を集めた末に近藤さんの遺言をねつ造したのかも。
「どうかしたのか」
「いえ」
思わず自分の考えにふけっていたらしい、榎本さんに声をかけられて荒井は我に返った。
「ところで、私はもうすぐ船から降りることになった。
後はよろしく頼む」
「どういうことですか」
荒井は榎本に聞き返した。
「徳川家の家臣たちを蝦夷地に入植させて、屯田兵にする仕事を私は仰せつかったよ。
言いだしっぺなのだから自分でやれ、ということらしい。
本音としては、私を海軍から引き離したいのだろうな。
私がここ「開陽」に乗っていては、いつ軍艦を引き連れて何を企むか分からん、と警戒されているみたいだ」
「それはまた、えらい仕事を」
荒井は、そこまで言って、後の言葉を自分は飲み込んだ。
自分にも、えらい仕事が舞い込むことに気付いたからだ。
「屯田兵にするといっても、そう簡単にはいかん。
いざという時に戦える兵士にするには、いろいろと大変な手間がかかるからな。
そこでだ、君には屯田兵の指揮官を育てる仕事を頼みたい。
指揮官が有能でないと兵士が迷惑する」
「ちょっと待ってください。
私は海軍の軍人ですが」
「薩長がどこまで屯田兵に協力してくれると思う。
私としては、君に頼むしかない。
海兵隊というのがあるだろう。
そこを基幹にして、屯田兵の指揮官を養成し、いざというときに備えるのだ」
榎本は、諄々と荒井を説得した。
「えらい仕事を私に頼むものですね。
拒否するという選択肢が、私には無いみたいですし、出来る限り尽力しますよ」
とうとう、榎本に荒井は答えた。
「数年もすれば、大鳥達が出獄してくるだろう。
大鳥達に、この件について、私や君が協力を要請したら、大鳥達もきっと応えてくれるはずだ。
それまで、つらいかもしれないが、懸命に君は頑張ってくれ」
「分かりました。海兵隊を整備し、屯田兵強化のために、私は懸命に尽力しましょう」
荒井は返答の上で、榎本に敬礼した。
榎本も、荒井に答礼した。
荒井郁之助はそれを見て声をかけた。
「何とかなったようですね」
「ブリュネ大尉から連絡があった。
伝習隊、衝鋒隊、遊撃隊等々、全ての幕府諸隊が降伏したそうだ。
ブリュネ大尉自身も神速丸に乗って、こちらにもうすぐ戻ってくるとのことだ」
「ということは、大鳥圭介さん達も全員降伏して」
「そうだ、大鳥さんも、土方さんも、生きていた幕府諸隊の面々全員が、武器を置いてくれた。
本当に良かった」
荒井は心の底から安堵した。
幕府の有為な多くの人材が、これによって遺されたのだ。
きっと今後、日本の将来にいい影響を及ぼすだろう。
荒井は、榎本とのやり取りの一節に、ふと疑問を覚え、質問した。
「それにしても、土方さんが降伏を決断してくださるとは意外でした。
近藤勇さんの後を追って、土方さんは自害するのではないか、とまで思っていたのですが」
「さすがに、近藤さんの遺言に、土方さんは逆らえないよ」
「その近藤さんの遺言は、どうやって榎本さんに伝えられ、また、伝えられた方はどうされたのです」
「私に近藤さんの遺言を伝えられた方は。牢の中で病死された。
最期までできたら、土方さん達に、近藤さんの遺言を直接話したいと言われていた。
本当に無念だったろう」
だが、榎本は、それとなく自分に対して、目をそらし、遠くを見やりながら、返答している。
荒井は、ふと思った。
近藤さんの遺言というのは、榎本さんのでっち上げではないのか。
死人に口なしだ。
土方さん達が、直接聞こうにも最早聞きようがない。
榎本さんとしては、何としても新選組から遺された土方さんを助けたくて、いろいろ情報を集めた末に近藤さんの遺言をねつ造したのかも。
「どうかしたのか」
「いえ」
思わず自分の考えにふけっていたらしい、榎本さんに声をかけられて荒井は我に返った。
「ところで、私はもうすぐ船から降りることになった。
後はよろしく頼む」
「どういうことですか」
荒井は榎本に聞き返した。
「徳川家の家臣たちを蝦夷地に入植させて、屯田兵にする仕事を私は仰せつかったよ。
言いだしっぺなのだから自分でやれ、ということらしい。
本音としては、私を海軍から引き離したいのだろうな。
私がここ「開陽」に乗っていては、いつ軍艦を引き連れて何を企むか分からん、と警戒されているみたいだ」
「それはまた、えらい仕事を」
荒井は、そこまで言って、後の言葉を自分は飲み込んだ。
自分にも、えらい仕事が舞い込むことに気付いたからだ。
「屯田兵にするといっても、そう簡単にはいかん。
いざという時に戦える兵士にするには、いろいろと大変な手間がかかるからな。
そこでだ、君には屯田兵の指揮官を育てる仕事を頼みたい。
指揮官が有能でないと兵士が迷惑する」
「ちょっと待ってください。
私は海軍の軍人ですが」
「薩長がどこまで屯田兵に協力してくれると思う。
私としては、君に頼むしかない。
海兵隊というのがあるだろう。
そこを基幹にして、屯田兵の指揮官を養成し、いざというときに備えるのだ」
榎本は、諄々と荒井を説得した。
「えらい仕事を私に頼むものですね。
拒否するという選択肢が、私には無いみたいですし、出来る限り尽力しますよ」
とうとう、榎本に荒井は答えた。
「数年もすれば、大鳥達が出獄してくるだろう。
大鳥達に、この件について、私や君が協力を要請したら、大鳥達もきっと応えてくれるはずだ。
それまで、つらいかもしれないが、懸命に君は頑張ってくれ」
「分かりました。海兵隊を整備し、屯田兵強化のために、私は懸命に尽力しましょう」
荒井は返答の上で、榎本に敬礼した。
榎本も、荒井に答礼した。
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