土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第8章 城東会戦と人吉攻防戦

第1話

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 背面軍の熊本城到着、更に政府軍による熊本城完全解放を受けて、4月16日に西郷軍は軍議を開いていた。
 二本木に置かれていた西郷軍の本営は、木山に移されていた。

「この際、この地に止まって一戦を挑み、雌雄を決すべきだ」
 桐野利秋らは、強硬に主張した。
「この際、鹿児島の本拠地を守備する部隊を送り、一部は大分、宮崎方面に展開して、勢力を張り、持久戦を挑むのはどうか」
 それに対して、野村忍助らはそう主張した。
「大体、一戦を挑むというが、戦力的に無理がある。
 我々は守勢を執るべきだ」

 実際、熊本城近辺にいる西郷軍の総兵力は、最早、1万に満たない。
 一方、熊本城近辺にいる政府軍は背面軍と田原坂方面軍が合流し、それに熊本城に籠城していた熊本鎮台軍も加わった結果、3万に達しようとしていた。
 約3倍の戦力差にもかかわらず、野戦を挑むのは無謀、という野村らの主張は一理あったのだ。

「桂久武らを鹿児島には派遣済みだ。
 鹿児島の守備を顧慮する必要はない。
 それに野村らの主張に従うならば、ただでさえ劣勢の戦力を更に分散させることになる。
 この地での一戦にかけるべきだ」
 桐野らは、野村らに対して、そう主張した。
 議論は紛糾したが、最終的に桐野らが主張を押し通し、熊本城東での会戦に、西郷軍は今後の運命をかけることになった。

 その頃、熊本城近郊で、海兵隊の幹部は、長崎以来の久しぶりの邂逅にお互い感慨にふけっていた。
「古屋佐久左衛門少佐が亡くなられたのか」
 滝川充太郎少佐は、その知らせを聞いた瞬間、言葉を詰まらせてしまった。
「嘘だ、と言ってくれ。
 古屋少佐は歴戦の軍人で戦の名手だ。
 戦死されるわけがない」

「それが戦争というモノだ。
 幾ら戦の名手でも戦死されることはある。
 それに田原坂の突破に成功したのを見届けられての戦死だ。
 勝ち戦の喜びの中で、古屋少佐が亡くなられたのは救いだと思う」
 土方歳三少佐は言った。

「そうだな、それがせめてもの救いだ」
 滝川少佐は、落涙しながら言った。
「古屋少佐の後、私が事実上の第1海兵大隊長として着任し、大隊長の任務を務めています。
 どうかよろしくお願いします。」
 林忠崇大尉は、滝川少佐にあらためて挨拶した。
「分かった。こちらこそよろしく頼む」

「話を変えるが、熊本城救援一番乗りを果たしたそうだな」
 気分を変えるためもあり、土方少佐が言った。

「行き違いがあってな。
 命令が海兵隊の下に届いていなかった。
 それで、何も知らずにのこのこと熊本城に向かってしまって、一番乗りを果たしただけなんだが。
 お蔭で背面軍所属の陸軍の将兵から睨まれた、睨まれた。
 中には黒田参軍が海兵隊に功績を上げさせるためにわざと海兵隊に連絡しなかったとか、言う奴まで出た。
 そういうそちらも田原坂では奮闘したらしいな」

 滝川少佐の言葉に、土方少佐は半ば独り言で返した。
「結果的にな。
 それにしても古屋少佐をはじめ、多くの兵を失うことになった。
 そういえば、西郷軍から京の復讐と言われたよ。
 こちらも思わず戊辰の復讐と言いたくなった。
 お互い復讐心をたぎらせあうことはないだろうに」

「全くだな。そういえば本多幸七郎の第4海兵大隊はどうした」
「どうも、新作戦に投入されるらしいという情報が入りました。
 出所は秘密ですが」
 林大尉が口をはさんだ。

「林大尉はいつの間にか陸軍から情報を入手しているな。
 出所が秘密というなら、それ以上は聞くまい。
 それにしても、一大決戦が近そうだな。
 どこで戦うことになるやら」
 土方少佐が言った。

「海兵隊全体のこの場での指揮権は、私にあるということでいいか」
 滝川少佐が確認した。
「それでいい。
 滝川少佐が最先任だ」
 土方少佐は同意した。
 林大尉も無言で同意した。
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