土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第8章 城東会戦と人吉攻防戦

第7話

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 その一方で、城東会戦を終えた政府軍はというと。

 4月21日に、城東会戦は事実上終結したのだが、政府軍は、すぐには行動に移らなかった。
 城東会戦による弾薬等の消耗は激しかったし、会戦に参加した兵の疲労も、それ以前からの熊本城解囲のための作戦行動も相まって蓄積していたのだ。
 その弾薬等の補給や兵の疲労回復の休養等のために、暫く政府軍は動けなかった。
 確かに、一面では間違った判断とは言い難かった。
 だが、海兵隊の幹部は、この政府軍の行動について手厳しく非難した。
 確かにすぐには動けなかったかもしれない、だが、それにしても休養等に時間を取り過ぎだ、と。

 4月24日、山県有朋参軍の命令により、熊本城近辺にいる大佐以上の政府軍の指揮官が集合して、今後の政府軍の方策について会議が開かれた。
 本来なら、熊本城近辺にいる海兵隊には、大佐クラスの指揮官がいないので、参加が認められないが、海兵隊の意見を聞かないわけにもいかないからという理由もあり、特例扱いで、滝川充太郎少佐の参加が認められた。
 そのために、滝川少佐は、会議の末席に連なることになった。

 滝川少佐は会議に列席している面々を見て、ふと思った。
 それにしても薩長が多いな、旧幕府出身は自分だけか。
 海兵隊が、旧幕府関係者ばかりと言われるのも無理はない。
 この状況が改善され、陸軍が日本全体から成るのはいつだろう。
 また、海兵隊も速やかに人員募集については改善せねば。
 その思いの陰で、会議は山県参軍の主導により、粛々と進められていった。

 まず、議題になったのは、西郷軍の今後の目的だった。
 西郷軍の主力はどこに向かい、何をするつもりなのか?
 色々と意見が出たが、浜町の住民の多くが、西郷軍の兵から聞いたという西郷軍の主力は人吉に向かった、という説が、最終的には大勢を占めた。
 人吉は、宮崎、熊本、鹿児島へと街道が通じる交通の要衝である、と同時に山岳に囲まれた盆地であり、守備に向いた好適地でもあった。
 西郷軍が人吉に割拠し、適時、反撃を行えば、政府軍は苦戦を強いられる可能性が高い。

 次の議題は、政府軍が即時に行動を起こすか、それとも補給等が整ってから行動を移すかだったが、ここで鋭い対立が、会議の参加者の間で起こった。
 滝川少佐を含む少数派は、政府軍の即時の行動を主張したのだが、多数派は、政府軍の行動は補給等が完全に整ってからだと主張し、山県参軍の判断により、多数派の意見が採用された。

 そして、部隊の配置についても、議論百出の状況になった。
 滝川少佐は、陸軍の配置は陸軍内の議論に任せることにし、海兵隊は、海外からの弾薬輸入に依存している割合が高いこと等から、八代から球磨川沿いでの人吉侵攻の任務に、海兵隊は充てられたい旨を、会議の場で主張した。
 実際問題として、海外からの弾薬は長崎に一旦、陸揚げされた後、海兵隊に供給されていた。
 八代から海兵隊が進軍するばならば、長崎港から八代港へ海運による弾薬の輸送が円滑に行える。

 この主張は陸軍からも了解され、海兵隊は八代へ移動し、人吉侵攻の準備を整えることになった。
 結局、朝から始まった政府軍の幹部会議は夜までかかる大会議になり、その結果を受けて、政府軍は部隊の再配置等を進めることになった。

 政府軍の補給が完了し、疲労回復も済んで、政府軍の部隊の再配置も完了して、完全に人吉侵攻のための準備が整った、と山県参軍等が判断するのには、結果的に5月5日の夜まで掛かった。
 翌日、5月6日朝を期して、政府軍の人吉侵攻作戦は発動されることになった。

 なお、このてん末に海兵隊幹部は呆れかえり、早期侵攻を逸りつつ、数日に亘って、八代近辺で待機する羽目になった。
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