堕ちる犬

四ノ瀬 了

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The entirety of your pain is a gift from me to you.

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 三島が組長の部屋から廊下に出た時、一段温度が低く感じられ軽く身震いしてしまった。電話越しに川名に今お時間いいでしょうか、と問うた。どうした?といつまでたっても聞き慣れない冷えた声が返ってくる。しかし三島は組長のその声色がまったく嫌いというわけでは無かった。

「貞操帯の鍵をお借りしたいんです。」
『ああ、鍵ね。俺の机の一番下の引き出しにスペアがあと、2本ある。』
「そうですか。貰ってもいいですか、それ。くれませんか、俺に。」

 三島は矢継ぎ早にそう言って自分で驚いた。貰ってもいいですか、と聞くつもりはなかったからだった。借りてもいいですか、だろ。沈黙。電話の向こう側で組長以外の人間のざわめくような声が響いている。自分の血流の速まった音が押し当てた電話越しに聞こえる。

『いいよ。別に。一つ。お前にやっても。その代わり後からどう使ったか、俺に事後報告してくれ。』

 やけに優しい声に聞こえた。やるよ、と言われたと同時に脳の奥の方に痺れを覚えた。
 お前にやる、?三島は誤魔化すように話題を探した。

「は、ありがとうございます。勿論仔細に報告します。ところで、何故、あんなところにしまっておられたんです。」
『ソファの事。』
「ええ、そうです。わからないから。」
『じゃあ、お前なら、どうするんだ?』
「え?」
 電話の向こう側で微かにくすぐったいような笑い声が聞こえたような気がした。
『お前が俺だったら、どうしたんだ。』
「………。組長、俺はもう……。」

 許してやってよ、俺だったら最初からこんな酷いことは、しないんだよ、なんでこんな酷いこと、するんだ、とは、言えない。それは自分の立場だから考え得る事であって、責任者の立場である川名が、霧野を許して居たら組織のバランスが崩れる。だから、最初から無罪放免は事実上不可能。

 では、本当にもし自分が組長の立場だったら、どうする、潔く死刑、泣いて馬謖を斬るとはこのことだ。しかし、現状、もう、ただの死刑では済まさないという考えに至っている。だったら、俺なら、殺したということにして、別の、どうでもいい人間の拷問死させた残骸でも適当に皆には見せておいて、本人は海外にでも、遠くへ、俺の手で、逃がしてあげる。そうしてお金も、送ってあげる、俺だけがあの人の居場所を知っている。そういう状況が一番良いかもしれない。そのためだったら、頑張れる気がした。

「……。」

『ごめんごめん、意地悪言ったね。何故かって、境界線を、はっきりさせるためだよ。人か、人じゃないか、ハッキリした境界ことだ。俺はね、もうあまり覚えてないけれど、戯れに適当に人を、飼ってみたことがある。別に気にいっていたとかいないとかではなく、もうこの世に存在する権利の無い人間つまり自分の生命を抵当に入れた若い人間を戯れに精神が壊れるまで飼ってたんだよ。はじめこそ面白かったけど別に愛着も無い、まぁ、まだ、生きてはいるんだろうけど、もうどうでもいいんだな。……アレの場合は久しぶりにそれとは違う方法で飼ってみよう、と、思えた。座ってやってるのだから、そうやって、関わってやってるのだから、そうやって、自分の存在の意義を教えてやってるだけ……。わかる?あんなところ、じゃない、彼らにとってはあそこは、天獄なんだよ。でもまだアレは天獄だと自覚的に思えるまで時間がかかるはずから、長い間おいて自覚の根をはらせるため、わざわざ、やってあげたんだよ。伝わった?』

(……ああ、文字通り、調教って、こと!!)
「……ああ、すみません、半分くらいは、理解できるかもしれません。」

 電話は切れていた。まるで最初からどこにもつながっていなかったかのような感覚だが、鍵が言われた通りの場所にあったなら、今の会話は妄想ではなく、真実である。

 部屋に戻ると、すぐさま熱気が皮膚にまとわりつき、濡れて、頭の芯がぐらぐら、緩めんでくる感じがする。強烈な雄獣の香り。部屋の中心で間宮が霧野に覆いかぶさっている。なんだ、まだ牡獣同士で交尾してるのか?一体、何をしているか、それともまた虐待でもしているのだろうか、と思い近づけば、間宮は霧野の身体に張付いてる拘束具をひどく丁寧な手つきで扱い、結び紐をきつくおそらくイイ具合になるように調整しながら、縛っているのだった。

 その光景は、間宮が自分の大事なブーツ紐を異常に熱心な様子で結んでいる様子と重なるのだった。
 以前ラブホテルで弄んだ時とは明らかに違う。
 三島は、間宮の背後で、衝撃を受けたと同時に、邪魔だ、と思った。

 三島の口から「間宮さん」と暗い声が出ていった。間宮はゆっくりと三島を振り返り「ああ、どうだったよ。」と笑顔で聞いた。彼の無邪気な笑顔に罪悪感を覚えないでもないが、続ける。「わかりました、鍵のありか。ところで二条さんが呼んでるとのことですよ。」「え?」間宮は途端に、目の前の”情事”を放棄して立ち上がって「本当か!!、それは本当なんだな?!!」と三島の肩を掴んで揺らした。「はい、組長経由で聞きました。だから、早く、行かれた方が、良い……。」三島が言い終わるが早いか間宮は自分の荷物の持ってきたことも忘れたようにそのまま部屋から出ていった。やった……。それからまるで息を突くように自分が嘘をつけたことで、澤野、いや、霧野に近づけたような気分にさせた。

「どうです?」

 三島は床に這いつくばっている霧野の側へ近づいて行って屈みこんで覗き込む。

 霧野は今の今まで、間宮の中に黒木の幻影を見ていたのだった。じらさらた上で犯されたことで、頭の中の芯が殆ど折れかかって、正常な判断ができない。間宮は霧野の視線を受けてにやにやとしながら言った。「一体どうしたの、そんなに熱心に俺の顔を見て。おかしいな。俺も何だか変な気持ちになってくるよ。そうだ、霧野さんをもっと気持ちよくしてあげる。その方法と気持ちとが俺にはわかる。今、他に邪魔もいないから。」間宮はそう囁いて、霧野の関節を拘束している人犬拘束袋の紐をきりきりと丁寧に結び上げ始めたのだった。

「う゛…‥」「ふふふ、鳴いてるの。皮膚が気持ちいいんでしょ。」「ちがう……」「そう?違うの?」きゅっきゅ太ももを締めつけられ、全身に奇妙な震えが訪れた。可動域がどんどん狭められていく感覚に疼くのだった。「我慢しなくてもいいのに、いや我慢してるから余計にいいんだね。ほら」「ぁ゛……っ」「こうやって締められるだけでいいだろう、可愛く結んであげる。内腿が震えているね。あーあ、とまらない、とまらないね、こうやって指摘してやればやる程に、とまらないじゃないか。あはは……あはぁ、良かったね、三島君が、貞操帯外してくれるかもしれないんだってね。でも、それは一瞬の気持ちよさでしかなくって、その後、霧野さんは今の情けない格好で、地下の自分のお家まで、戻らないといけないんだよ。あ、熱い熱くなったよ……想像しただけで熱いんだねぇ……、頭がいい、想像力が豊かってのは、時に罪だね。」

 間宮は片手で霧野の脇腹を触り始め、その手つきだけで霧野の不自由な身体が余計に発汗、掌と肉の間にぬるぬると湿った汗が噴き出し始める。「みんな、霧野さんのことを心配している。みんながお前を出迎えるだろうね。怖い?はずかしい?こんな格好で出て行きたくない?」「……。」間宮の指が霧野の内腿の皮膚を摘まんでつねった。「い゛…、あ、っぅ、」「馬鹿だなあ……感じてないで、質問に答えてよ。」「……。何で、てめぇの無意味な質問に、わざわざ応えやらなきゃいけないんだよ……」「あ?無意味ぃ?どこがぁ?」「嫌なのは当たり前だろ、聞かなくてもわかるよ。で、嫌って言ったら止めてくれんのかてお前は。逆だろう。違うか?」「あはは怒っちゃって面白。そうだね。だって俺は酷い目に遭ってる霧野さんをを見ていると良い気持ちになるんだもん。しょうがないよ。けど、それは俺だけじゃないね、霧野さんってさ、めちゃくちゃずるいよ、自覚ある?自分だって気持ちよくなるの、もう、わかってる癖して……。」「……ならない、」「ふぅん、あ、そうなの。じゃ、俺が貞操帯の鍵を受け取って適当に大きい荷物にでも梱包してお前の事、下まで運んでやろうか。その代わり、下まで行ったら二人で、しこたまSMしようぜ。ついでに、そのどうしようもねぇ開きっぱなしのコキ穴も散々使ってやるよ。俺が使い込んだら他の奴らなんかにはガバガバになって使えなくなるけど別にいいよな。二条さんの興味も薄れて一石二鳥だ。俺は二条さんに従うけどお前は俺に従えばいいんだよ……、最下層奴隷として、最高だぜ、もう、何も考えなくていいんだから。そう、俺とお前は今、一番距離が近い。このまま俺と一蓮托生するのがお前の今回の生にとって一番いいんだ。これから、お前が素直に俺に縋れるようになるまでいいとこ責めてやる。…‥震えてるな。怒ってんの?興奮してんの?どう?どっちがい?お前の、自分の口で、俺に、さぁ、お願いしてご覧よ、そうしたら、その通りにしてあげる。三島のことなんか、いや、何もかも全部、どうにでもなる。してやる。お前が俺に頼めるならな。ほら、言ってみろ!頭を下げて頼んでみろよ!霧野!俺に!降りてみろ!ひとつ、いま。そうしたら、……楽に、なるから。」

 そう言って間宮がまた紐を緩めてはきゅっと締めた。頭の奥がじんじんとする、それもいい気がした、きつく結んでいた唇が、震えながら、開きかける、その時、三島が戻ってきたのだった。

 間宮は霧野のとのことなど一切忘れたように出ていったのと、霧野は三島が嘘を言っていることがすぐにわかった。どうです?に対して「お前一人で俺を運べるのか?」と、急速に熱の冷めた霧野は言うだけだった。

「俺が?馬鹿言わないでください。何のために間宮さんと一緒にアンタを拘束したと思ってるんですか。馬鹿なこと言って、俺を、これ以上、失望させないでくれません?頼みますから。霧野さんが自分で歩いて戻るんですよ。俺は付き添うだけです。ほら、さっさと立ってください。立てるでしょ、四足で。はやく、10秒。10、9、」

 カウントをされると霧野の身体はつい従って、不格好に肘と膝を突く形で四足でなんとか立ってみせた。拘束具の光沢と同じ位白い肉は濡れていた。

「3……なんだ、5秒以内でも良かった位ですね。」

 三島は立ち上がり川名のデスクを漁って戻ってきて「はい、これ。」と霧野の目の前にしゃがみ込み頬杖ついて鍵をぶら下げて見せた。

「射精、したいんでしょお?ねぇ……。」

 三島はしゃがみ込んだ姿勢で前へ後ろへ揺れながら、目の前の男の表情が、羞恥と苦悶で歪むのを見ていた。代わりに大きな犬のような息遣いが部屋の中に大きく響いていたが、本人の自覚が無いようだ。

(いえまい、射精したいと、俺には言えないはずだ、これがまだ川名組長や二条、美里、ギリギリ間宮だったら言えるのかもしれないけど、俺にはまだ言えない。言えば、俺は彼らとは違うから素直に外してあげるのに。)

 三島は鍵をポケットの中に滑り込ませながら立ち上がり、霧野の周りを歩き回っていた。床に転がったまま霧野と同じ様に置いていかれた開けっ放しになった間宮のバッグの中が見える。それから、背後に回り込むと、長い間貫かれた上さっきまで間宮の巨根で耕された肉がぱっくりと物欲しそうに肉溝を呼吸するように開いて、時々、本人の震えに合わせて収縮し、その淫靡な花を、開いたり閉じたりしている。ちゅ。

 午後の光が、霧野の淫らな肉を照らし、輝かせた。三島は彼の背後で脚を止めた。すると、その豊満な白い肉まんじゅうの上で白彫りの華がみるみる息づき始め、可愛らしく晴れた裂け目の濡れた間から一筋、どろ、と濃い精液が流れ汗と混じりながらそのもりあがった内腿から拘束具の中へ垂れていくのだった。物欲しそうにしている。

「なんです?まさか、霧野さんともあろうものが、俺なんかに見られて、感じてるわけないですよね?なんか、尻の穴がひくついてますけど。気のせいですよね。俺の。」
「……、……」

 三島は、身体を強張らせた霧野を見降ろしていた。筋肉を無理にこわばられたせいか、余計に中かから間宮の汁が流れ出した。「ぁ゛」と悶絶するような堪え声を出し、内側から雄で自らの秘孔突かれた時の悦楽を改めて反芻するように感じているようだった。射精できない分、余計に欲望が下半身に重く堪り続け、喘がせるのだ。

 淫靡で芳醇な肉体の向こう側で、頭が下がっていく。三島は霧野の横に再び屈みこんで、ハーフチョークの穴に指を引っ掻けて首の後ろ側からぐいと引っ張った。首に革が食い込み、羞恥で自然下がりきっていた頭がぐんとあげられて、霧野は震える横目で、伺うように三島の口の辺りを見ていた。切れ長の目が充血し、眉と目の距離が近く、強くひそめられ、通常、普段なら、一歩二歩さがりたいような殺気だった気配もあるが、今、指一本でこうして吊り上げてやるだけで、苦しさで目の焦点がふらふらし、涙の膜が厚くなってきて、震えた唇の隙間から、どちらかといえば歓喜の喘ぎ声を出しそうな具合である。もう少しで全部、零れそう。表面張力が揺らいでる。

 そういえばこの首輪は初めて見る首輪だ、前は黒、ノアに使っているのと似た物を使われていたはず、これは組長の趣味にしてはちょっとかわいすぎる、三島はその紅いハーフチョークを子細に観察し始めた。よく観察すると、首輪の、しかも内側に革と同じ色の紅い糸でよく目を凝らさなければわからない程の刺繍が施されている。三島は覗き込むようにして、読んだ。おそらく最初はもっと分かりにくかっただろうが使っている内に霧野の体液が刺繍糸の部分に染み黒ずんで革の部分から浮き上がって見えるのだった。
 
 "The entirety of your pain is a gift from me to you."
 
 三島は目を細め、その文字の上を、何度も何度も、視線を往復させた。

「……。」

 三島は最初に霧野がソファに入れられていた時と同じように、指を引っ掻けていた首輪のリングに、縄を通したまま床に放置されていた腸液と腸膜に穢れてまだ乾いていないアナルフックを、霧野の爛れた淫肉の奥へと、自分の陰茎を代替して挿入するように、突き立てていった。にゅる、にゅる、にゅ、ぽんっと鰻が穴に入っていくような調子で咥え込み、小さな悲鳴を掻き消す程の粘着質な音を立て抵抗もなく、銀色の蛇口のような太い曲棒が元からそこに在ったかのように柔らかな肉の間に再びはまりこみ、輝いた。周囲に肉は迎合するようにきゅんきゅんと引き締まりその度尻の筋肉、骨格の溝さえくっきりと浮き上がる始末だった。

 それでも散々巨雄に耕された豊かな淫肉にはまだ余裕があるようで、捲れた肉、桃色の肉の隙間に小さな空間が開いて、くぱくぱとそこだけ別の生物のように濡れた口を開いて、止まならないのだった。散々擦られた場所にまた、冷たいものを突っ込まれ、自分が、穴だけの、存在になったような気分に霧野の頭をまた一段階鈍らせる。俺は穴じゃない、穴じゃ……いや、穴と思っていれば、楽なのか?”コキ穴”、罵倒言葉が頭をリフレインすると身体がどうにかなりそうで中から火山が噴火するのだが出口がなく代わりに冷や汗とと共に引きつった笑みが出て狂いそう。

 霧野は喘ぎ喘ぎ思いをめぐらせたが、今すぐそばにいるのが美里でも間宮でもなく三島であることが、霧野の正気に余計に活を入れたのだった。それから美里のことが時折嫌でも頭の中にちらつくのだ。川名は見せしめのつもりで、精神的な責めのつもりいで、美里の首輪を使わせているのかもしれないし確かにその効果はかなりある、が、これがあることで、くやしいが、いいこともあるのだ。耐えられないと思っても、耐えられることもある。正気。美里が何の罰も受けていないとは、思ってない。現にこうして現われないことを考えてもそうだ。

 三島は背後から霧野を眺めた。肉の裂け目から、銀の棒が、真っすぐに背中に沿って伸びる縄が、もりあがった背肉の谷間にロープウェイのように全く真っすぐに首元へと上昇し、下げられなくなった彼の頭が前を向いて肩と腕を、振るわせている。既に決して楽な姿勢ではないはずだ。

 三島は霧野の濡れそぼった肉の溝のその隙間に小指をつっこみ、曲げた。「んっ……‥」指に、霧野の肉がにゅるりとまとわりついて、発生した振動までもが、伝わってくる。銀棒のはまり込んだ肉孔の上の頂点から、右回りに、肛門を一周させるように、指を移動させ、頂点についたら、また、今度は左周りに指を突き挿れ突き挿れ、ぐぽぐぽと柔肉に突き立てた。既に散々焦らされ突かれ瑞瑞しく腫れた肉門を刺激し続けると、ぁ゛っ、ぁ゛、と堪えきれない声が漏れでていた。

 霧野自ら、自分で、首輪で上手い具合に首を絞め、声を漏れないように努力しているのが後ろから見て、わかって三島は微笑ましい気分になった。それから、小指から逃がれようと動いても、こちらがほんの数センチ小指を動かすだけでよかった。逃げようとすると、首が締るのと、不自由な、慣れない姿勢で固定された全身に疲れが回るようだった。だんだんと、あきらめたように、従順になっていると思えば、また無駄に頑張っているが、その間にも牝犬穴はどんどん発情して、やわらかくなって三島に媚びるように吸い付いた。

 三島はひとしきり小指でぐるぐると霧野の肉壺の入口で円を描き、抜いた。ぷちゅ……、泡の弾けるような音と共に、脱力したような高い声が漏れた。三島は霧野の肉盛にまだ温かい小指を眺めた。

 西日でてらてらと光り、目の前の霧野の肉はさっきより孔を拡げ、収めているというより、”しゃぶっている”と言う風にアナルフックを受け止めて肉で呼吸しているようであった。腰が揺れている。無意識に揺らしているのだ。美里だったら何を誘ってんだこの牝犬がとでも罵倒するだろうが三島は微笑ましい気分でそのデカい尻を見守っていた。

 フックで上に引っ張られ、上に無理やり拡げられている普段なら蕾のように口を閉じた小さな肛門は、普段以上に女性器のように縦に割れて見えた。三島はさっき間宮の鞄の中に見えた物を取り出した。全ゴム製の黒い尻尾型バイブレーション玩具である。三島は霧野の背後でその稼働方法を確認した。

 ヴンヴン!!!、その音に霧野の身体が反応していた。三島の手の中で、ゴム製の尻尾は内部の振動と連動して尻尾を振ったり上げたりする。三島は、その先端を霧野の肉の渓谷その隙間に、突き立てた。
「ば……っ、馬鹿……!」
 ようやく悲鳴が上がった時、三島は心をぎゅうとそのまま掴まれたような感じたことのない愛おしさに、一瞬手を止めた。が、ゆっくりと裂けないように続ける。ゴムのように柔軟な肉が伸びる。最初の頃は裂けに裂け、その傷跡がまだ見えるが、今裂ける様子もなく、もりもりと、ふくらむように広がっていく。

 さすがに、アナルフックとバイブの二本でぎちぎちだが、ゆっくり濡らしながらいけば、入る。

 だいたい、間宮の怪物がはいったり一回に通常の男根二本咥え込むことも可能なんだし、なぁにが馬鹿、だ、馬鹿はてめぇの頭とてめぇのガバガバマンコじゃねぇか、あははは!!!!、と思って、ハッとした。何を考えているのだろう。それでも三島の手は止まらないし、一度入り始めた気持ちのいいい異物を、霧野のアソコは本人の言動とは裏腹に美味しそうにぬるぬると飲みこんでいくのである。アナルフックと玩具の二本の棒が歪にアソコを押し拡げ、また新しい高貴な淫臭が漂ってくるような気がした。霧野は馬鹿と罵倒した後も、言いたいことはあるのだろうが、口を開けば喘いでしまうとわかっているようで、黙って唸っていた。

 全てがはまり込む。そして、貞操帯の隙間から何か大量の汁がこぼれていていつの間にか床に水たまりができており、これも麝香のような苦い淫臭の原因だった。三島はしばらく霧野の肉体を観察してから、組長の部屋の奥の給湯室に向かった。なんとなく、自分だけ、お茶でも飲みたい気分だったから。そこに、ちょうどいい籠を見つけた。誰かが果物か何かを手土産に持ってきたのか籠が、まるではじめから自分達のために用意されていたかのように、放棄されていた。三島は15分程、組長の給湯室で勝手に湯を沸かし茶を飲んで過ごし、籠を持って戻った。霧野は立っているのが辛かったらしく、勝手に四足で立つのを止めていたので気が付くと無言で横から思い切り鳩尾を蹴り上げていた。その拍子に尻尾が飛び出るかと思ったが、流石調教された膣、出ないで中から霧野を強くついて悶絶させたようだった。それから、気が付くと、10、9、……と口が勝手にカウントしていた。

 元の姿勢に戻った霧野の前に、三島が最初のようにしゃがみこむと「お前……!」と流石に、以前の彼のような表情でキレていたが、今は、全然怖くなかった。おまえの、え、と開いた口に籠の持ち手を突っ込んで手を離した。「ん゛……!?」と声を出したものの、皆の”調教”の賜物とでもいうのか、口は勝手に必死に落とさないようにソレを咥えて、噛んでいた。瞳はさっきまでと同じ調子で怒りをあらわにしていたので、ポケットの中に突っ込んでいたリモコンでケツ穴にぶちこんである犬の象徴の玩具を動かしてやった。「ううう゛う゛」吊りあがった瞳はそのままだが、みるみる顔を紅くして、鼻でふんふんと息をして、本当にまるで犬のように唸って、耳にちょうどいい。

「霧野さんそれ、美里さんから貰った首輪でしょ、気持ちいいですか?」
「!?」

 一段階、振動を上げると、乱れかけた表情が更に乱かけ、俯こうとするのだが、それは当の美里の首輪が許さないのだ。「美里さんから貰ったんでしょう、それ。気持ちいいの?良かったですね。この、変態。」「ん゛……っ、ん゛……っ!!」霧野は否定するように首を左右に振っていたが、三島は、あまりに嘘が下手すぎて無様と思った。ニンゲン、いや、今の霧野さんはニンゲンではないから、素直になれるのだ。きっと。

「今も、美里さんの事考えて、余計に感じちゃってるんですか?きもいです。美里さんからあんな風に、雑巾のように扱われていた癖に、霧野さんって本当に真性マゾだったんですね、がっかりしちゃいます。俺のことが美里さんだったらいいとか、見えるとか、”美里さんから与えられている痛み”だとか、思っちゃってるんですか?そうやって、この辛い現実から、逃げようとしてます?ずるいですよ、ほんと、心底きもちわるいです、ふたりして。なんか、俺前からずっと思ってたんですよ、距離が近いってね、俺、もっと澤野さんと近づきたかったんすよ、でも、美里さん、”ああいう人間”ですから、勿論仕事の面では尊敬してますけど、人間性は別、あからさまに嫌な顔しますからね、俺は立場上はむかえませんし、貴方はそういうとこ妙に鈍感で気が付かないしで、それで、何です?そりゃあ組長も怒りますよね。霧野さん達が折檻の皮をかぶって実は影でただただホモってただけなんだから。最低。俺も一報を聞いて驚きましたよ。ところで、霧野さんのせいで、美里さんが、一体どんな目に遭ってたのか知ってる範囲で教えてあげましょうか。俺、反対しましたよ。もちろん霧野さんの時と同じようにね。正直、清々した気分もあったんですけど、でも、俺、それよりも、霧野さんが傷つくの、すごく、嫌だったから……。本当です。でも残念ながら、俺にはそこまで大きな権限は与えられていないんです。ごめんなさい。だから、黙って、見ていることしかできなかった。でも別に、霧野さんの時ほど、感じなかったし、心も、それほど、痛まなかった、そんなことよりも、霧野さんに見せたら一体どんな反応をするのだろう、と、いけないことまで、思ってしまって、居ないはずの貴方に縋りたいと思う程に、とまらないところだったくらいです。ああ、そうだ、似鳥さんが来ていましたよ、それが、どういうことかわかりますよね、霧野さんの時よりマシとはいえさぞ、屈辱だったでしょうね。一度顔を合わせたそうですね、顔色が悪く見えたかもしれませんけど、美里さんはいつもそうだから、きっと何もわからなかったでしょうし、そういう姿を、見せたくも無かったでしょうね、特に、霧野さんには。一応貴方がこうして返ってきたから、一旦免除されたのかもしれませんけど、未だ事務所に来てないんですよ。もう二度と会えないかもしれませんよね、どう……気持ちいい?その首輪。美里さんが、貴方にあげた。でも、俺気が付いてしまったんです、そうやって二人で自滅してくれて、まぁ良かったかもしれないって、だって、だからこそ、今こういう機会が末端の俺にもまわってきてくれたんですよ。そう、黙っていることもできたけど、今霧野さんと遊んであげているのは、誰でもない、俺であって、美里さんではないってことを、ちゃんと、わからせてあげようと思って、こんな話をわざわざしたんです。霧野さんが悪いんです、全部……、俺だって、本当はこんなこと、したくないんですからね……、ああ、そろそろ移動しましょうか。こんなとこで遊びすぎちゃって、やっぱり駄目ですね、俺。」

 霧野が答える代わりにヴンヴンと尻尾が嬉し気に音を立て揺れて返事した。大きな腰がビク!ビク!と跳ねあがり、力が抜けかけ、上半身の姿勢が自然と低くなる、すると、アナルフックが淫部、結合された美里の首輪が呼吸を、霧野の身体を矯正するように、キリ……キリ……と、内から外から、そして、精神と肉体とを、厳しく戒めるのだった。
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