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第四章 この想いを終わらせるために…始めたんだ…

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 俺は精神安定剤で…しかも抱き枕も兼ねるのか…。

どんどん契約内容が増えていく…。

 桂は背中から亮に抱き込まれたまま自嘲気味に考える。当の亮はスース―と穏やかな寝息を立てていた。

 電話を切って、きっかり20分後に亮は車で桂のマンションのすぐ側まで来た。

 亮は桂のマンションに来た事もなく、マンションの場所も知らなかった。というよりは桂が教えないでいたのだ。

 自分が亮のマンションに行くのは契約だが、亮が自分のマンションに来る必要性は無いと思っていたから…。

 いや…違う。自分の部屋に亮がいる事に馴染みたくなかったから…。

 それに亮も桂の部屋に興味を示した事は無かった。

 電話で亮はしつこく桂のマンションの位置を問いただしたが、桂はやんわりと「俺のマンション…車じゃ判りづらいから。」そう言って亮の質問を拒絶していた。

 代わりに国道沿いの目立つコンビニを待ち合わせ場所に指定したのだった。

 苦虫を噛み潰したような仏頂面で亮は桂を迎えに来た。

 何も言わず、桂を乗せると真っ直ぐ自分のマンションまで走らせる。部屋に入ると相変わらず何も言わず桂をベッドに押し込んだ。

「どうしたんだよ…?」

 何も言わない亮に訳もわからず桂は訊ねた。亮は自分も桂の横に身体を横たえると桂の背中を抱き寄せる。

 熱い身体に抱き込められて桂の鼓動が早鐘のように鳴り出していた。

 亮は桂のうなじに鼻を擦りつけるようにして顔を埋めると、くぐもぐった声で呟いた。

「俺…スゴイ眠いんだ…。頼む…寝かせて…。」

 なにを言ってんだ??? 

 亮の支離滅裂な行為に混乱して桂は亮に聞こうと身体をもがこうとする。

 だがそんな桂の動きをキツク抱きしめて封じ込めた亮は、もう安心したように寝息を立てて眠りに落ちていたのだ。

 仕方ないよな…桂は肩越しに亮の吐息を感じて、滲み出る嬉しさそのままにわざと言って見る。

 亮に逢えないかと思っていたのだ。それが思いがけず一緒に夜を過ごす事が出きる…。いやもう日曜の明け方だけど…。数時間は一緒にいられるから…嬉しい…良かった…。

 桂は自分の腹部でしっかり組まれた亮の掌にそっと自分の手を重ね合わせる。

 幸せな思いに包まれたまま桂も優しい眠りに吸い込まれていった。
 
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