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第五章 煙草なんて苦いだけ…吸いたくなんてないのに…
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すっかり陽が高く昇り、部屋の閉めきったカーテンの隙間から光が差しこんでくる。その陽の眩しさに、桂はやっと目を覚ました。
背中には相変わらず亮の温もり。耳元には彼の規則正しい寝息。
あまりに恋人同士らしいシチュエーションに桂は顔を赤らめながら体をそっと捩った。
亮を起こさないように、そっとベッドから滑り出る。ベッドサイドの時計に視線をやると午後の2時になりそうだった。
「随分…寝たんだ…」
明け方にこの部屋に来て、そのまますぐ眠って…。
桂はチラリとベッドの亮を眺めた。亮はベッドが広くなった所為かウーンと体を伸ばしながら、睡眠を貪っている。
まだ、起きそうにないな…。
笑みを浮かべて桂はそう考えながらキッチンに向かう。
亮は少し痩せたようだった。
多忙な仕事のせいだろう。ゆっくり休ませて、栄養を取らせたかった。
昼食にも遅い時間だけど、なにか美味しいブランチでも作ろう。
一緒に食事だけして…俺は帰れば良い…。
考えて桂は冷蔵庫を開ける。
予想はしていたが冷蔵庫は空っぽだった。
買物に行こうかとも思ったが、この部屋はオートロックだから一度出てしまうと、この部屋の鍵を持っていない桂は部屋に入れなくなる。
それに…亮が起きた時に側にいてやりたい…自惚れているなと思ってしまうが…そう思った。
「俺…ってバカだなぁ…」
亮を絶対に傷つけたくない…とことん亮に甘くなってしまう自分に桂は苦笑する。
キッチンをがさがさ漁って、なんとか食材を探し出す。
古くなってがちがちのフランスパン。卵4つ。賞味期限の怪しい牛乳。なぜかブロッコリーにしなびかけたアスパラガス。フリーザーにもらい物らしいハムの塊とソーセージ。
「さて…と。これだけか…どうすっかな?」
桂は並べた材料を苦笑交じりに見詰めるとがちがちのフランスパンに手を伸ばた。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「…桂…!」
寝室の扉が乱暴に開けられ、亮がリビングに飛び込んでくる。
髪の毛は寝起きでクシャクシャ。上半身はシャツを引っ掛けただけで、下半身はジーンズを履いてはいるがフロントは開けたまま…。
いつもの1分の隙も無い身だしなみと打って変わったしどけない姿に桂は驚いて、亮を見た。
亮はといえばキッチンに立っている桂を見つけて、ハァ―と大きな息を吐出すと次の瞬間には怒ったような顔でズカズカとキッチンに入ってくる。
「…ど…どうしたの?」
険悪な表情の亮の勢いに押されて桂がフライパンを持ったまま、ズルズルと後ずさる。亮は乱暴に桂の腕を掴むと引き寄せた。
「???」
桂は言葉もなく亮の体に抱き寄せられる。亮はギュッときつく桂を抱き寄せると、首筋に顔を埋めた。束の間桂の香りを感じるかのように息を吸い込むのが桂にも感じられる。
相変わらず怒ったような口調で亮が声を出した。
「帰っちまったのかと思った…。ベッドから出るなって…あれほど言ってるのに…。言う事聞けよ」
拗ねたような口調の亮。ホントに寂しがりやなんだから…自分を責める亮の言葉に桂は苦笑する。
フライパンを、レンジに置くと桂は腕を亮の背中に回す。亮に答えるように自分もキツク亮を抱きしめた。
「だって…仕方がないだろ。腹が空くだろう?何か作らなきゃと思って。でないと二人で飢えるだろ。」
桂の言葉を聞いて亮が顔を上げる。覗きこむように優しい笑みを湛えた桂の瞳が見つめられた。
熱っぽい視線で彼にそのまま見つめられて、ふいに桂の顎を亮が掴んだ。
ガッチリと顔を固定される。
いきなり顔を拘束されて桂がうろたえた。逃げるように顔を捩ろうとするが亮はしっかりと桂の顎を掴んで離さない。
熱っぽく桂を見詰めたまま、顎を掴んでいる手に力を込めて心持桂の顔を自分の方へ上向かせる。
「…あ…」
桂が亮の意図に気がついて小さく声を漏らした。心臓がドクドクと高鳴っている。熱っぽい欲望を顕にした表情で亮が桂の唇に自分のそれを寄せてきた。
「…やっ…やめろっ…!」
桂が精一杯の力を振り絞って亮の胸をドンっと突き飛ばす。
突然の事に亮の体が一瞬バランスを崩してよろめいた。ゴツッと言う鈍い音が響いて、亮がしたたかに冷蔵庫に頭をぶつけるのが、ぼんやりとした桂の視界に入る。
「…っつ…!」
亮が頭を抱えて呻いた。桂は動揺を顕に唇を押さえる。胸は激しく動悸し…頬は熱く火照ってくる。震える声で桂は言葉を絞り出した。始めての夜のときと同じ…言葉を…。
「…約束が…違う…」
…もう少しでキスしてしまうところだった…。彼の唇が…あんなに近くで…。
彼の唇の柔らかい感触や…温もりまで…感じてしまいそうなほどの…距離…。
桂の責めるような声を聞きながら亮が体を起こした。怒りを孕んだような暗い瞳で桂をジッと射抜くように見詰める。暗い瞳と同じように怒りを押し殺したような低い声で亮が答えた。
「…からかっただけだよ…本気にするなんて…。お前バカだな…」
言って亮はプイッと桂に背を向ける。
―からかっただけだよ…。お前バカだな…。
残酷な言葉を平気で口にする男。
さっきまでの甘いミルクのような幸福感は消えうせて…傷つけられた心から血が流れ出すような…激しい痛みを桂は感じていた。
溢れそうになる涙をなんとか堪える。こめかみがズキズキと痛みはじめていた。それでも桂は亮の背中を見ながら言う。
「…なんだ…そっか…。ゴメン…俺…冗談通じなくて…。俺スゴイ…バカだ…。ゴメンな…」
切れ切れに言われた言葉に亮がパッと振り返った。
驚いたように桂を見詰める。その亮の瞳に桂は悲しみを押し込めてニッコリと微笑むと続けた。
「腹空かない?…俺…お腹ペコペコ。食事にしようぜ…」
背中には相変わらず亮の温もり。耳元には彼の規則正しい寝息。
あまりに恋人同士らしいシチュエーションに桂は顔を赤らめながら体をそっと捩った。
亮を起こさないように、そっとベッドから滑り出る。ベッドサイドの時計に視線をやると午後の2時になりそうだった。
「随分…寝たんだ…」
明け方にこの部屋に来て、そのまますぐ眠って…。
桂はチラリとベッドの亮を眺めた。亮はベッドが広くなった所為かウーンと体を伸ばしながら、睡眠を貪っている。
まだ、起きそうにないな…。
笑みを浮かべて桂はそう考えながらキッチンに向かう。
亮は少し痩せたようだった。
多忙な仕事のせいだろう。ゆっくり休ませて、栄養を取らせたかった。
昼食にも遅い時間だけど、なにか美味しいブランチでも作ろう。
一緒に食事だけして…俺は帰れば良い…。
考えて桂は冷蔵庫を開ける。
予想はしていたが冷蔵庫は空っぽだった。
買物に行こうかとも思ったが、この部屋はオートロックだから一度出てしまうと、この部屋の鍵を持っていない桂は部屋に入れなくなる。
それに…亮が起きた時に側にいてやりたい…自惚れているなと思ってしまうが…そう思った。
「俺…ってバカだなぁ…」
亮を絶対に傷つけたくない…とことん亮に甘くなってしまう自分に桂は苦笑する。
キッチンをがさがさ漁って、なんとか食材を探し出す。
古くなってがちがちのフランスパン。卵4つ。賞味期限の怪しい牛乳。なぜかブロッコリーにしなびかけたアスパラガス。フリーザーにもらい物らしいハムの塊とソーセージ。
「さて…と。これだけか…どうすっかな?」
桂は並べた材料を苦笑交じりに見詰めるとがちがちのフランスパンに手を伸ばた。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「…桂…!」
寝室の扉が乱暴に開けられ、亮がリビングに飛び込んでくる。
髪の毛は寝起きでクシャクシャ。上半身はシャツを引っ掛けただけで、下半身はジーンズを履いてはいるがフロントは開けたまま…。
いつもの1分の隙も無い身だしなみと打って変わったしどけない姿に桂は驚いて、亮を見た。
亮はといえばキッチンに立っている桂を見つけて、ハァ―と大きな息を吐出すと次の瞬間には怒ったような顔でズカズカとキッチンに入ってくる。
「…ど…どうしたの?」
険悪な表情の亮の勢いに押されて桂がフライパンを持ったまま、ズルズルと後ずさる。亮は乱暴に桂の腕を掴むと引き寄せた。
「???」
桂は言葉もなく亮の体に抱き寄せられる。亮はギュッときつく桂を抱き寄せると、首筋に顔を埋めた。束の間桂の香りを感じるかのように息を吸い込むのが桂にも感じられる。
相変わらず怒ったような口調で亮が声を出した。
「帰っちまったのかと思った…。ベッドから出るなって…あれほど言ってるのに…。言う事聞けよ」
拗ねたような口調の亮。ホントに寂しがりやなんだから…自分を責める亮の言葉に桂は苦笑する。
フライパンを、レンジに置くと桂は腕を亮の背中に回す。亮に答えるように自分もキツク亮を抱きしめた。
「だって…仕方がないだろ。腹が空くだろう?何か作らなきゃと思って。でないと二人で飢えるだろ。」
桂の言葉を聞いて亮が顔を上げる。覗きこむように優しい笑みを湛えた桂の瞳が見つめられた。
熱っぽい視線で彼にそのまま見つめられて、ふいに桂の顎を亮が掴んだ。
ガッチリと顔を固定される。
いきなり顔を拘束されて桂がうろたえた。逃げるように顔を捩ろうとするが亮はしっかりと桂の顎を掴んで離さない。
熱っぽく桂を見詰めたまま、顎を掴んでいる手に力を込めて心持桂の顔を自分の方へ上向かせる。
「…あ…」
桂が亮の意図に気がついて小さく声を漏らした。心臓がドクドクと高鳴っている。熱っぽい欲望を顕にした表情で亮が桂の唇に自分のそれを寄せてきた。
「…やっ…やめろっ…!」
桂が精一杯の力を振り絞って亮の胸をドンっと突き飛ばす。
突然の事に亮の体が一瞬バランスを崩してよろめいた。ゴツッと言う鈍い音が響いて、亮がしたたかに冷蔵庫に頭をぶつけるのが、ぼんやりとした桂の視界に入る。
「…っつ…!」
亮が頭を抱えて呻いた。桂は動揺を顕に唇を押さえる。胸は激しく動悸し…頬は熱く火照ってくる。震える声で桂は言葉を絞り出した。始めての夜のときと同じ…言葉を…。
「…約束が…違う…」
…もう少しでキスしてしまうところだった…。彼の唇が…あんなに近くで…。
彼の唇の柔らかい感触や…温もりまで…感じてしまいそうなほどの…距離…。
桂の責めるような声を聞きながら亮が体を起こした。怒りを孕んだような暗い瞳で桂をジッと射抜くように見詰める。暗い瞳と同じように怒りを押し殺したような低い声で亮が答えた。
「…からかっただけだよ…本気にするなんて…。お前バカだな…」
言って亮はプイッと桂に背を向ける。
―からかっただけだよ…。お前バカだな…。
残酷な言葉を平気で口にする男。
さっきまでの甘いミルクのような幸福感は消えうせて…傷つけられた心から血が流れ出すような…激しい痛みを桂は感じていた。
溢れそうになる涙をなんとか堪える。こめかみがズキズキと痛みはじめていた。それでも桂は亮の背中を見ながら言う。
「…なんだ…そっか…。ゴメン…俺…冗談通じなくて…。俺スゴイ…バカだ…。ゴメンな…」
切れ切れに言われた言葉に亮がパッと振り返った。
驚いたように桂を見詰める。その亮の瞳に桂は悲しみを押し込めてニッコリと微笑むと続けた。
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