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第六章 あいつはどんどん俺を蝕んでいく…甘い毒なんだ…
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その日の夕食は終始和やかな雰囲気だった。
亮も抱えていた大きな仕事がやっと終わったらしく、機嫌がかなり良かったのだ。
桂はそんな亮の様子にホッとした。饒舌だし顔色もとても良かったからだ。
亮は桂の料理に舌鼓を打ちながら、あれこれと取りとめもない事を喋った。話しは広がって、亮が大学時代イタリアに留学していた事やわざと留年してアジアや東欧を旅行した話し等を桂に聞かせる。
少年のように瞳を輝かせて留学や旅行の事を話す亮に、桂はドキドキしてしまう。
桂の好きな亮の姿がかいま見えて嬉しくなってしまうのだ。
桂も夢中になって、亮の話しに聞き入り相槌を丁寧に入れていく。亮は桂の質問に丁寧に答えて会話を盛上げて行った。
食後、桂はいつも通り食器を片付けながら時計を見てハァと息を吐いた。今日は泊らずに帰ろうと思っていたのだ。
最近、夜を亮と一緒に過ごす事が多くなった為に授業の準備が遅れがちだった。もちろん手を抜く事は出来ないので、徹夜したりして何とかこなしていたが、今日ばかりは授業で難しい質問が出た為に今夜中に調べないと…と決めていた。
「桂。もう終わったか?」
亮がキッチンを覗き込んだ。明るい亮の姿に、胸が刺すように痛んだ。
こんな機嫌の良い山本と一緒にいられるのに…それを振りきって帰ろうとする俺ってバカだな…。
少しだけ後悔が胸を掠める。それでも、今日は帰ろうと決めていた。
日々の生活費を削って日本語を勉強する学習者達が待っているのだ。彼らに中途半端な授業をする事は出来なかった。
「うん…終わった…。山本…俺…」
やっと言い出した言葉は亮が自分に向かって差し出した物を見た瞬間に消えていた。
「…な…に…?」
亮が差し出した物が…信じられず桂は言葉を失ったまま亮を見上げた。
桂の視線を受けとめて、亮が面映そうな表情を浮かべる。優しい瞳で桂を見詰めながら言った。
「この部屋の鍵だ…。スペア作った。持ってろよ。暗証番号はここに書いておいたから」
―亮の部屋のカードキー
桂は驚きで目を見開いたままそれを見詰めた。
触れてしまえば…消えてしまいそうで…。亮が照れたように続ける。
「最近、桂の方が帰るの早いだろ。その度にロビーで待っていてもらうのは悪いし。それに暑いから…お前が具合悪くなったりすると困る」
ほら…。
そう言って亮が桂の手にキーを押し込もうとする。
「…あ…」
逃げるように桂が一歩下がった。その様子を訝しげに亮が見つめて、どうしたんだ?と訊ねた。
桂は苦しそうに亮を見詰めると、視線を落として首を左右にゆっくりと振った。
「駄目だ…。山本…。俺は…その鍵受け取れない…」
亮も抱えていた大きな仕事がやっと終わったらしく、機嫌がかなり良かったのだ。
桂はそんな亮の様子にホッとした。饒舌だし顔色もとても良かったからだ。
亮は桂の料理に舌鼓を打ちながら、あれこれと取りとめもない事を喋った。話しは広がって、亮が大学時代イタリアに留学していた事やわざと留年してアジアや東欧を旅行した話し等を桂に聞かせる。
少年のように瞳を輝かせて留学や旅行の事を話す亮に、桂はドキドキしてしまう。
桂の好きな亮の姿がかいま見えて嬉しくなってしまうのだ。
桂も夢中になって、亮の話しに聞き入り相槌を丁寧に入れていく。亮は桂の質問に丁寧に答えて会話を盛上げて行った。
食後、桂はいつも通り食器を片付けながら時計を見てハァと息を吐いた。今日は泊らずに帰ろうと思っていたのだ。
最近、夜を亮と一緒に過ごす事が多くなった為に授業の準備が遅れがちだった。もちろん手を抜く事は出来ないので、徹夜したりして何とかこなしていたが、今日ばかりは授業で難しい質問が出た為に今夜中に調べないと…と決めていた。
「桂。もう終わったか?」
亮がキッチンを覗き込んだ。明るい亮の姿に、胸が刺すように痛んだ。
こんな機嫌の良い山本と一緒にいられるのに…それを振りきって帰ろうとする俺ってバカだな…。
少しだけ後悔が胸を掠める。それでも、今日は帰ろうと決めていた。
日々の生活費を削って日本語を勉強する学習者達が待っているのだ。彼らに中途半端な授業をする事は出来なかった。
「うん…終わった…。山本…俺…」
やっと言い出した言葉は亮が自分に向かって差し出した物を見た瞬間に消えていた。
「…な…に…?」
亮が差し出した物が…信じられず桂は言葉を失ったまま亮を見上げた。
桂の視線を受けとめて、亮が面映そうな表情を浮かべる。優しい瞳で桂を見詰めながら言った。
「この部屋の鍵だ…。スペア作った。持ってろよ。暗証番号はここに書いておいたから」
―亮の部屋のカードキー
桂は驚きで目を見開いたままそれを見詰めた。
触れてしまえば…消えてしまいそうで…。亮が照れたように続ける。
「最近、桂の方が帰るの早いだろ。その度にロビーで待っていてもらうのは悪いし。それに暑いから…お前が具合悪くなったりすると困る」
ほら…。
そう言って亮が桂の手にキーを押し込もうとする。
「…あ…」
逃げるように桂が一歩下がった。その様子を訝しげに亮が見つめて、どうしたんだ?と訊ねた。
桂は苦しそうに亮を見詰めると、視線を落として首を左右にゆっくりと振った。
「駄目だ…。山本…。俺は…その鍵受け取れない…」
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