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第十二章 ― そんな風に俺を扱わないで…期待してしまうから…―
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リナが桂の所に転がり込んで1ヵ月…。
リナは、表面上は落ち着きを見せていた。店にも出るし、桂と取りとめもない話しもする。そして笑うようにもなっていた。
桂はリナが心配でならなかった。
こんな風に立ち直りの早さを見せるリナが一番危ういのだと言う事を、長年の付き合いから知っていたからだ。
桂の心配を裏付けるように、リナは鬱々と物思いに耽ったり、眠りながら泣いたりという日々を送っていた。
慰めは要らない…それがリナの桂に求める役割だった。
桂も同情や慰めをしない。自分が同じ立場になった時に、やはり同じ事をリナに求めるから…。
ただ、肩寄せ合って二人で日常を過ごす…傷が癒えるまで…。
大学が学祭の準備で浮き立つ中、桂の仕事は夏休みの山を越えて落ち着きを見せ始めていた。
4月からの新しい学習者達も大分上達して日本や大学の生活に適応し始める。その為授業の負担も減り、幾らかの暇な時間を持つ事が出来るようになっていた。
が…反対に亮が今度は年末に向かって仕事が繁忙期を迎えてしまい、すれ違う日々が続いていた。
亮はイタリアへの出張が多くなり、日本にいる間は深夜までの残業。会社に泊まりこむ事も多くなっていた。亮は何とか時間を作って桂に逢おうとしていたが、桂はやんわりとそんな亮を押し止めていた。
自分の存在が亮の仕事の邪魔になりたくない…その一心で桂は携帯に連絡してくる亮に「無理するなよ。仕事が落ちついてからで良いから…」と物分りの良い自分を演じていた。
セックスが無い今…自分の役割は何も無い…それが桂の心境だった。
「寂しくないの?かっちゃん」
週末、ぼんやりと本を読んでいる桂に出勤前のリナが訊ねた。本から顔を上げて桂はキョトンとリナを見た。
「寂しいって…何が?俺が寂しいのか?」
桂の相変わらずの天然ボケな答えにリナが苛ついた顔をした。少し怒ったような声で続ける。
「そうよ、かっちゃんは寂しくないの?あいつと会えなくて。ここの所全然会えてないでしょう?」
リナの答えを聞いて桂があぁ、と言う顔をしてうっすらと笑ってみせた。
「寂しいよ。そりゃ、もちろん…」
寂しくないわけないじゃないか…。
そう心の中で付け加えた。
リナは桂の笑みを見ながら訝しそうに続けた。
「その割には平気そうな顔しているけど…」
平気そうな顔…?リナに言われて桂は鏡を探した。俺はどんな顔をしているんだろうか…?
「そうか?そんなつもりはないけど…。」
桂の答えにリナはそう?と腑に落ちないような表情で首を傾げた。桂の胸の内を探るようにジッと桂を見詰める。しばらく桂の顔を眺めつづけたリナが諦めたように溜息を吐いた。
「やっぱり、かっちゃん蓋しているでしょ?」
蓋と聞いて桂が苦笑いを浮かべた。
「感情の蓋か…?しているつもりはないけど」
ううん…リナは桂の言葉を否定した。
「逢いたいなら…逢いたいって気持を伝えないと、あの我侭な恋人はかっちゃんの気持理解出来ないよ。恋人同士でしょ。寂しいから…一人にしないでって」
最近のリナは桂と亮の事に興味なさそうにしていた。だからリナの言葉に桂が驚きで瞳を見開いた。
リナが真剣に怒ったような眼差しで自分を見るのを受けとめると、桂は言葉を選びながら口を開いた。
「リナ…恋人同士って言ったって…俺達はセックスフレンドだよ。身体が寂しいか寂しくないか…だけだ。気持は俺達の間には存在しない…。感情は抜きだ」
言ってから、思いがけず胃の辺りがキリリと痛んで桂は思わず胸を押さえた。
…そう…俺達はセックスフレンド…。
期間限定の恋人ごっこを演じているだけ…。ただ…それだけだ…。
この7ヶ月あまり繰り返し口にしてきた言葉をもう一度胸の中で呟いた。
いい加減分かれよ…冗談めいた軽い口調でそう告げる桂をリナは心なしか悲しそうな表情で見詰めつづけていた。
リナは、表面上は落ち着きを見せていた。店にも出るし、桂と取りとめもない話しもする。そして笑うようにもなっていた。
桂はリナが心配でならなかった。
こんな風に立ち直りの早さを見せるリナが一番危ういのだと言う事を、長年の付き合いから知っていたからだ。
桂の心配を裏付けるように、リナは鬱々と物思いに耽ったり、眠りながら泣いたりという日々を送っていた。
慰めは要らない…それがリナの桂に求める役割だった。
桂も同情や慰めをしない。自分が同じ立場になった時に、やはり同じ事をリナに求めるから…。
ただ、肩寄せ合って二人で日常を過ごす…傷が癒えるまで…。
大学が学祭の準備で浮き立つ中、桂の仕事は夏休みの山を越えて落ち着きを見せ始めていた。
4月からの新しい学習者達も大分上達して日本や大学の生活に適応し始める。その為授業の負担も減り、幾らかの暇な時間を持つ事が出来るようになっていた。
が…反対に亮が今度は年末に向かって仕事が繁忙期を迎えてしまい、すれ違う日々が続いていた。
亮はイタリアへの出張が多くなり、日本にいる間は深夜までの残業。会社に泊まりこむ事も多くなっていた。亮は何とか時間を作って桂に逢おうとしていたが、桂はやんわりとそんな亮を押し止めていた。
自分の存在が亮の仕事の邪魔になりたくない…その一心で桂は携帯に連絡してくる亮に「無理するなよ。仕事が落ちついてからで良いから…」と物分りの良い自分を演じていた。
セックスが無い今…自分の役割は何も無い…それが桂の心境だった。
「寂しくないの?かっちゃん」
週末、ぼんやりと本を読んでいる桂に出勤前のリナが訊ねた。本から顔を上げて桂はキョトンとリナを見た。
「寂しいって…何が?俺が寂しいのか?」
桂の相変わらずの天然ボケな答えにリナが苛ついた顔をした。少し怒ったような声で続ける。
「そうよ、かっちゃんは寂しくないの?あいつと会えなくて。ここの所全然会えてないでしょう?」
リナの答えを聞いて桂があぁ、と言う顔をしてうっすらと笑ってみせた。
「寂しいよ。そりゃ、もちろん…」
寂しくないわけないじゃないか…。
そう心の中で付け加えた。
リナは桂の笑みを見ながら訝しそうに続けた。
「その割には平気そうな顔しているけど…」
平気そうな顔…?リナに言われて桂は鏡を探した。俺はどんな顔をしているんだろうか…?
「そうか?そんなつもりはないけど…。」
桂の答えにリナはそう?と腑に落ちないような表情で首を傾げた。桂の胸の内を探るようにジッと桂を見詰める。しばらく桂の顔を眺めつづけたリナが諦めたように溜息を吐いた。
「やっぱり、かっちゃん蓋しているでしょ?」
蓋と聞いて桂が苦笑いを浮かべた。
「感情の蓋か…?しているつもりはないけど」
ううん…リナは桂の言葉を否定した。
「逢いたいなら…逢いたいって気持を伝えないと、あの我侭な恋人はかっちゃんの気持理解出来ないよ。恋人同士でしょ。寂しいから…一人にしないでって」
最近のリナは桂と亮の事に興味なさそうにしていた。だからリナの言葉に桂が驚きで瞳を見開いた。
リナが真剣に怒ったような眼差しで自分を見るのを受けとめると、桂は言葉を選びながら口を開いた。
「リナ…恋人同士って言ったって…俺達はセックスフレンドだよ。身体が寂しいか寂しくないか…だけだ。気持は俺達の間には存在しない…。感情は抜きだ」
言ってから、思いがけず胃の辺りがキリリと痛んで桂は思わず胸を押さえた。
…そう…俺達はセックスフレンド…。
期間限定の恋人ごっこを演じているだけ…。ただ…それだけだ…。
この7ヶ月あまり繰り返し口にしてきた言葉をもう一度胸の中で呟いた。
いい加減分かれよ…冗談めいた軽い口調でそう告げる桂をリナは心なしか悲しそうな表情で見詰めつづけていた。
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