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第十四章 ― 分かっているさ…自分の立場なんて…自分がマリーゴールドだって事ぐらい…―
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しおりを挟む突然の電話だった。
高橋健志と名乗ったその人は亮から桂の携帯の番号を聞いたと言った。
電話の声は確かに記憶通りの、健志の声だった。
一体どうして彼が…。湧きあがる疑問を胸に桂は健志の声に耳を傾けた。
「亮の事で話しがあります。お忙しい所申し訳無いですが、お会い頂けないでしょうか?」
丁重に、だが有無を言わさない口調で健志は桂に告げた。
動揺で震えそうになる声を押さえながら桂は了承の言葉を口にしていた。健志は、「J’s Bar」を指定すると時間を桂に告げた。
淡々と時間と場所を伝えると健志はあっさりと電話を切ってしまった。後に取り残されたように桂は呆然と携帯を見つめつづけたのだった。
健志の電話で不安ばかりが膨らんでいった。彼がどんな用件なのか…嫌な想像ばかりをしてしまう。
こういったパターンでありがちなのは修羅場だよな…桂はそう考えてため息を吐いた。
亮と自分の関係を考えれば修羅場なんてありえない。
亮の気持は健志にあるのだから。健志が嫉妬をする必要はないのだし…。しかも今は俺と亮の間に肉体関係は無くなってしまっている。
それだったら…なぜ…?桂はあれこれと健志の用件を考えつづけた。ハッと息を呑んだ。二つだけ思い当たる事がある。
「冬休みの事かな…?」
もしかして亮が冬はニューヨークに行かない…とでも言ったのかもしれない。当然怒るよな。俺の所為だと思っているのかも…。
「それとも…」
もう一つの理由を考えて桂はぎゅっと胸を押さえた。どうしてもこれを考えるたび胸がギリギリと痛んでしまうのを押さえる事ができなかった。
もう、亮との恋人ごっこを止めろと言うつもりかもしれない…。これも当然だ。
自分の恋人が他の奴と付き合っていれば、いくらごっこと言っても気分は良くないはずだ…。
「契約解除…かも…な…」
呆然と桂は呟いた。ショックを押し込めて桂はうっすらと一人笑いを浮かべた。頭を振って…覚悟を決めたのだ…。
どんな用件にしろ…毅然とした態度で接しよう…。
桂はそう決めた。
別れろと言われても絶対に取り乱したりはしない…。
プライドを持って健志の要求を受けいれよう…。
健志の要求を拒絶する権利など俺には無いのだから…。
桂は、覚悟を決め、健志に会いに行こう決意し、この場に来たのだ。
そして、今・・・・桂は亮の恋人、健志と対峙する。
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