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第十五章 ― もう充分…そんな風に苦しんでくれただけで…。もう…終りにしよう…―
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優しい甘やかされた、マシュマロのようなふわふわした感覚に包まれて桂は目を覚ました。
自分をしっかりと包み込む亮の逞しい体躯が、当然の様に有る事の喜びに桂の胸が不意に締めつけられる。
グッスリと穏やかな寝息をたてている、亮の顔を見上げながら桂はおずおずと亮の額に手を伸ばした。
サラリとした緩いウェーブの掛かった前髪を、満ち足りた想いで胸を温かくしながら、かきあげてやる。
いつも彼の隣で目覚める度、キスできない寂しさを埋める為に儀式のように繰り返した行為…。
…これが最後かな…思って不覚にも涙が出そうになって慌てて桂は目尻を拭った。
亮がんーと唸って、身体を捩る。手が桂の身体を抱き寄せると、ぱちっと目を開いた。慌てたように瞳を揺らすと、自分を見つめる桂の瞳を認めて嬉しそうに笑みを零した。
「おはよう」
会話のきっかけを探すように、亮は少し照れたように朝の挨拶を口にしながら、はにかんだ笑みを目尻に含ませて桂を見ると、額にキスを落とす。
「うん…おはよう…」
亮の言葉に答えながら、穏やかな亮に桂の鼓動がトクンと鳴った。亮は惜しそうに桂の身体を離すとゆっくりと起き上がる。
亮の均整の取れた背中を見つめながら、桂もベッドから身を起こした。
「…ぁ…」
途端…昨夜の行為の名残…疼くような身体の痛みと亮の…を感じて桂が軽く声を上げた。
桂の様子に気付いた亮は、ベッドに腰掛けると桂の身体を横から抱き寄せる。こめかみに口付けると労わるように、大丈夫か…と呟いた。
昨夜の貪欲に亮を求めて身体を激しく絡めあった光景が、思い出されて桂は羞恥に首筋まで真っ赤に染めた。
桂が赤らんでいるのを楽しそうに亮は見つめると、首の筋肉のこわばりほぐしてやる様に揉んでやる。そして宥めるように甘く囁いた。
「昨夜は…久し振りだったから…。そんなに…赤くなるなよ…。俺の方がまた…欲しくなるだろ…」
言ってまた瞼にキスを落とした。亮の唇の感触を瞼に感じた後桂は目を開けた。
亮の優しい視線とぶつかって桂は照れて笑いを零した。亮も笑顔を見せる。二人でひとしきり笑った後亮が、今度こそ本当に立ち上がった。
「今…なにか飲むモノ持ってくる。待ってて…」
ガウンを羽織って、寝室を出て行く亮の背中を、愛しさを顕にした瞳で見送ると桂はパタッとベッドの背に凭れてふぅっと息を吐いた。昨夜の亮との夜を繰り返し頭の中で再生する。
甘くて優しいセックス。本当に心も身体も満たされるような行為だった。
お互いのすべてを差し出して、一つに溶け合わすように身体を重ねた…。
これで…満足しなきゃいけない…。健志さんに彼を返す前に…こんな風に心を通わせあって抱き合えた…。
切ない笑みを零して桂は考えつづける…。
「あ…れ…俺…」
桂は亮に請われて口にした言葉を思い出して顔を赤らめた。
そう…確かに自分は告げていた…。好き…って…。
「どうしよう…。俺…なんて事…」
口に出来ない想いを…言ってしまっていた…。
亮は覚えているだろうか…?いや…覚えてなんかいない…はずだ…。桂は諦めたように首を振った。
「所詮…ベッドの中の睦言さ…。覚えてなんかいるはずがない…」
告げて…そして殺した亮への想いを考えて、桂は眼を閉じると涙を零していた。
自分をしっかりと包み込む亮の逞しい体躯が、当然の様に有る事の喜びに桂の胸が不意に締めつけられる。
グッスリと穏やかな寝息をたてている、亮の顔を見上げながら桂はおずおずと亮の額に手を伸ばした。
サラリとした緩いウェーブの掛かった前髪を、満ち足りた想いで胸を温かくしながら、かきあげてやる。
いつも彼の隣で目覚める度、キスできない寂しさを埋める為に儀式のように繰り返した行為…。
…これが最後かな…思って不覚にも涙が出そうになって慌てて桂は目尻を拭った。
亮がんーと唸って、身体を捩る。手が桂の身体を抱き寄せると、ぱちっと目を開いた。慌てたように瞳を揺らすと、自分を見つめる桂の瞳を認めて嬉しそうに笑みを零した。
「おはよう」
会話のきっかけを探すように、亮は少し照れたように朝の挨拶を口にしながら、はにかんだ笑みを目尻に含ませて桂を見ると、額にキスを落とす。
「うん…おはよう…」
亮の言葉に答えながら、穏やかな亮に桂の鼓動がトクンと鳴った。亮は惜しそうに桂の身体を離すとゆっくりと起き上がる。
亮の均整の取れた背中を見つめながら、桂もベッドから身を起こした。
「…ぁ…」
途端…昨夜の行為の名残…疼くような身体の痛みと亮の…を感じて桂が軽く声を上げた。
桂の様子に気付いた亮は、ベッドに腰掛けると桂の身体を横から抱き寄せる。こめかみに口付けると労わるように、大丈夫か…と呟いた。
昨夜の貪欲に亮を求めて身体を激しく絡めあった光景が、思い出されて桂は羞恥に首筋まで真っ赤に染めた。
桂が赤らんでいるのを楽しそうに亮は見つめると、首の筋肉のこわばりほぐしてやる様に揉んでやる。そして宥めるように甘く囁いた。
「昨夜は…久し振りだったから…。そんなに…赤くなるなよ…。俺の方がまた…欲しくなるだろ…」
言ってまた瞼にキスを落とした。亮の唇の感触を瞼に感じた後桂は目を開けた。
亮の優しい視線とぶつかって桂は照れて笑いを零した。亮も笑顔を見せる。二人でひとしきり笑った後亮が、今度こそ本当に立ち上がった。
「今…なにか飲むモノ持ってくる。待ってて…」
ガウンを羽織って、寝室を出て行く亮の背中を、愛しさを顕にした瞳で見送ると桂はパタッとベッドの背に凭れてふぅっと息を吐いた。昨夜の亮との夜を繰り返し頭の中で再生する。
甘くて優しいセックス。本当に心も身体も満たされるような行為だった。
お互いのすべてを差し出して、一つに溶け合わすように身体を重ねた…。
これで…満足しなきゃいけない…。健志さんに彼を返す前に…こんな風に心を通わせあって抱き合えた…。
切ない笑みを零して桂は考えつづける…。
「あ…れ…俺…」
桂は亮に請われて口にした言葉を思い出して顔を赤らめた。
そう…確かに自分は告げていた…。好き…って…。
「どうしよう…。俺…なんて事…」
口に出来ない想いを…言ってしまっていた…。
亮は覚えているだろうか…?いや…覚えてなんかいない…はずだ…。桂は諦めたように首を振った。
「所詮…ベッドの中の睦言さ…。覚えてなんかいるはずがない…」
告げて…そして殺した亮への想いを考えて、桂は眼を閉じると涙を零していた。
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