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10話
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ヴィンセントが、ソフィアを抱いたことが、お城で公となった。
客室で休んでいるはずのソフィアの様子を見に、王女が来たからである。
執務室には、王女と女官長とヘンドリック宰相、アデル書記官と、グレイ騎士団長が集まっていた。
ヴィンセントは、全員を見てから宣言した。
「ソフィア嬢を、私の妃にする。」
「な・・・なんですと?!」
ヘンドリック宰相が声を上げる。
ヴィンセントは、真剣な顔でヘンドリックに向きなおる。
「ヘンドリック。あの娘を私の妃に欲しい。」
王の椅子から離れて、ヘンドリックの目の前まで歩いて行く。王と家臣ではなく、ソフィアの祖父と、一人の男として、許しをもらおうと考えた。
そして真剣な顔で言った。
「私は、ソフィアを愛している。大切にするから、私に彼女をくれないか?」
「・・・まさか、陛下からそんな言葉が出るとは・・・なぜ、あの子なんじゃ。あの子は変わり者じゃて。」
「確かに変わってはいるが、彼女の言っていることは真理をついていると思う。」
ヘンドリックは、複雑な顔をしていた。
「頼む。私が欲しいと思った女は、彼女だけだ。」
ヘンドリックは、ヴィンセントの様子を見て、何度も頷いてから言った。
「陛下の思し召しじゃ、家臣であるわしが、異論など言えるわけもなかろうて。」
ヴィンセントは、パァッと明るい表情に変わって、ヘンドリックの手を握った。
「ありがとう。」
「しかしじゃな、陛下。それで、あの子に王家の紋章を授けなさったか?」
王家の紋章を授ける。つまり、彼女の中で射精したか?ということである。
「いや、まだだ。しかし、近いうちに授けるよ。そうでなければ、正式に妃にはなれないだろう?」
ヘンドリックが頷く。
それを見て、ヴィンセントは微笑んだ。
そして、全員に向き直ってヴィンセントは宣言した。
「では、そうゆうわけで、ソフィア・リッテンバーグを、本日より城に住まわせる。」
そう言うと、女官長が1歩前に出て、お辞儀をした。
「かしこまりました。お部屋を準備し、丁重におもてなしいたします。」
アデル書記官が、頷いてから言う。
「それでは俺は、その他100人の愛人達に、手紙を出しましょう。陛下に妃が決まったので、貴公の今後の幸せを願う的な感じですかね~。」
「アデル、すまんな。頼む。」
ヴィンセントが苦笑しながら言う。
グレイ騎士団長が微笑んだ。
「しかし、陛下から、こんな言葉が聞けるとはねぇ。まぁ、本当に良かったですよ。」
アデルが大きく頷く。
「全くです。もしかしたら、陛下は愛を知らずにご結婚なさるのかと思ってましたので。まぁ、お立場的に仕方の無いことだったのでしょうが。」
その時だった。王女が真剣な顔で言った。
「お待ちください。お兄様。皆様。」
全員が王女に視線を移す。王女は、兄王を厳しい眼差しで見た。
「ソフィアの気持ちは?ソフィアは妃になることなんて、望んでいないはずよ?」
王女の言葉に、ヘンドリックが眉間に皺を寄せて聞く。
「なぜ、そう思われるのですじゃ」
メリーアンは目を吊り上げたままで言う。
「ソフィアは、自分の夢を叶えるために、陛下に謁見に来たのよ!?それがなぜ、そんな話になるのです?おかしいわ!それに、彼女は留学先で意気投合した王子に求婚されていたのよ?受けようか悩んでいたわ!でも、ヘンドリック!!あなたが、彼女の話も聞かずに強制的に帰国させたんでしょう?!だから、彼女は仕方なく帰国したのよ!?帰国してから、ソフィアは言ったの。誰とも結婚する気は無いって。」
ヴィンセントは、目を見開いたまま動けなかった。胸をえぐられるような痛みを感じる。
ヘンドリックは、ショックを受けたようで、かすれた声で言う。
「そんな・・・そんな話は・・・」
「聞いてくれなかったんじゃない!!私はね『誰とも結婚する気は無い』って聞いた時、好きな人と結婚できないなら、自分はずっと1人でいいって意味かと思ったわ。」
メリーアンは、目に涙をいっぱいにためて言った。
「そんな男性と別れて、自分の夢の話も聞いてもらえずにショックを受けて泣き疲れて眠っていたはずのソフィアが、お兄様に抱かれるなんておかしいわ!どうゆうことですの?!お兄様!本当の事を教えてください!・・・まさか・・・まさかムリやりなんてこと!」
「・・・・」
ヴィンセントは黙った。
その顔を見て、王女は目を見開き、ワナワナと怒りに震えながら、確信を得て言った。
「酷いわ!お兄様!精神的にも参って、部屋で休んでいた乙女を、無理やり犯すなんて!!」
「メリーアン、それは!状況的につけこんだのは、それは認める。だがしかし・・・。」
「最低!!最低よ!!お兄様!そんな方だとは思わなかったわ!!」
王女は怒りに任せて叫ぶと、部屋を出て行った。
取り残された部屋で、全員が気まずくなる。
暫くの沈黙が流れてから、最初に声を出したのはヘンドリックだった。
「陛下。わしは、ソフィアを選んで下さって、感謝しとります。」
ヘンドリックはヴィンセントを見て言う。
「あの子は、早くに両親を亡くして、叔父夫婦が侯爵家を継いだんじゃが、受け入れず1人で侯爵家を守ろうと必死になっておった時期があった。そのせいか男勝りで、頭は良いが、融通がきかんのじゃて。この世で生きていくのに、女1人でできることなど、何1つ無いのじゃ。叶いもしない夢を追いかけて、苦労して絶望して、歳をとった時には、普通の幸せを逃してしまうじゃろう。あの子には、もう2度と、1人になる寂しさを味わわせたくないんじゃ。ムリに結婚させてでも、家族をつくってやりたいんじゃ。」
目に涙をためて、ヘンドリックはヴィンセントの手を握った。
「陛下。わしは、息子の忘れ形見を側に置いておきたいんじゃ。なんと言われようとも、隣国になぞやりはせん。陛下、どうか御心のままに。」
ヴィンセントは、難しい顔をした。
やっと見つけた、愛しい女。まさか、ソフィアに思う男がいるなんて・・・。
「陛下が、その男を忘れさせてやればいいのでは?」
騎士団長のグレイが、さらりと言った。
「王女様の言う通りであれば、その男の事は諦めていたでしょうし、気になさることはありませんよ。」
その言葉に、アデルまでもが賛成する。
「確かに。陛下との時間を過ごされて、これから愛を育まれれば宜しいのですよ!」
ヴィンセントは、首を振った。
「メリーアンの言う通りだ。私は、ソフィアが愛おしくて、気持ちも確認せずに抱いた。そして、弱味につけこんで・・・私の愛人になるなら、自由にさせてやると取引をしたんだ。」
その場に居た、全員が唖然とした。
「じゃぁ・・・ソフィア嬢は、自分は陛下の愛人だと思っておられるんですね?」
ノアがボソリと言った。
「あいつが逃げるからだ!私の前から消えて、逃げようとするからだ!私は、会えなくなって、思い知った・・・。あの娘でなければダメなんだ!もう、他の女など抱きたくはない!」
顔を覆って、叫んだヴィンセントを見て、グレイ騎士団長が、肩眉だけあげて苦い顔で言う。
「解りますよ。好きな女とのセックスは、格別です。1度味わってしまえば、手放せません。」
アデルが、仕方ないなぁという顔で言う。
「それで最近、ご様子がおかしかったんですね。」
そこで、プッとノアが笑って言った。
「確かに、心ココにあらずでした。あんな姿を見たのは初めてでした。しかし、いつも引く手数多の陛下が、まさかの恋煩いだなんて思いもしませんでした。しかも、逃げられたんですか?」
ヴィンセントは、赤面して目を閉じて、恥ずかしそうに言い返す。
「逃げられた。まさか、この私が女に逃げられるなんて、想像もしていなかったんだ!」
ニヤリと、グレイ騎士団長も笑う。
「確かに、陛下は幼少の頃から、容姿も頭脳も武道も完璧で、女に困ったこと無かったですからねぇ~?まさかの、本命で逃げられるとは!プハッ!」
「笑うなグレイ。立ち直れなくなる・・・。」
「ぶはははっ!確かに!こんな、なさけない陛下は始めて見ました!」
「アデル~~~~!!」
ヴィンセントは、後ろからアデルの首を絞める。
「あはははっ!陛下、とりあえず、あれですよ。しかたがありません。ちゃんと言いましょう?」
「何をだ?」
「きちんと、気持ちを伝えましたか?好きなら好きだと、愛していると伝えるべきです。」
客室で休んでいるはずのソフィアの様子を見に、王女が来たからである。
執務室には、王女と女官長とヘンドリック宰相、アデル書記官と、グレイ騎士団長が集まっていた。
ヴィンセントは、全員を見てから宣言した。
「ソフィア嬢を、私の妃にする。」
「な・・・なんですと?!」
ヘンドリック宰相が声を上げる。
ヴィンセントは、真剣な顔でヘンドリックに向きなおる。
「ヘンドリック。あの娘を私の妃に欲しい。」
王の椅子から離れて、ヘンドリックの目の前まで歩いて行く。王と家臣ではなく、ソフィアの祖父と、一人の男として、許しをもらおうと考えた。
そして真剣な顔で言った。
「私は、ソフィアを愛している。大切にするから、私に彼女をくれないか?」
「・・・まさか、陛下からそんな言葉が出るとは・・・なぜ、あの子なんじゃ。あの子は変わり者じゃて。」
「確かに変わってはいるが、彼女の言っていることは真理をついていると思う。」
ヘンドリックは、複雑な顔をしていた。
「頼む。私が欲しいと思った女は、彼女だけだ。」
ヘンドリックは、ヴィンセントの様子を見て、何度も頷いてから言った。
「陛下の思し召しじゃ、家臣であるわしが、異論など言えるわけもなかろうて。」
ヴィンセントは、パァッと明るい表情に変わって、ヘンドリックの手を握った。
「ありがとう。」
「しかしじゃな、陛下。それで、あの子に王家の紋章を授けなさったか?」
王家の紋章を授ける。つまり、彼女の中で射精したか?ということである。
「いや、まだだ。しかし、近いうちに授けるよ。そうでなければ、正式に妃にはなれないだろう?」
ヘンドリックが頷く。
それを見て、ヴィンセントは微笑んだ。
そして、全員に向き直ってヴィンセントは宣言した。
「では、そうゆうわけで、ソフィア・リッテンバーグを、本日より城に住まわせる。」
そう言うと、女官長が1歩前に出て、お辞儀をした。
「かしこまりました。お部屋を準備し、丁重におもてなしいたします。」
アデル書記官が、頷いてから言う。
「それでは俺は、その他100人の愛人達に、手紙を出しましょう。陛下に妃が決まったので、貴公の今後の幸せを願う的な感じですかね~。」
「アデル、すまんな。頼む。」
ヴィンセントが苦笑しながら言う。
グレイ騎士団長が微笑んだ。
「しかし、陛下から、こんな言葉が聞けるとはねぇ。まぁ、本当に良かったですよ。」
アデルが大きく頷く。
「全くです。もしかしたら、陛下は愛を知らずにご結婚なさるのかと思ってましたので。まぁ、お立場的に仕方の無いことだったのでしょうが。」
その時だった。王女が真剣な顔で言った。
「お待ちください。お兄様。皆様。」
全員が王女に視線を移す。王女は、兄王を厳しい眼差しで見た。
「ソフィアの気持ちは?ソフィアは妃になることなんて、望んでいないはずよ?」
王女の言葉に、ヘンドリックが眉間に皺を寄せて聞く。
「なぜ、そう思われるのですじゃ」
メリーアンは目を吊り上げたままで言う。
「ソフィアは、自分の夢を叶えるために、陛下に謁見に来たのよ!?それがなぜ、そんな話になるのです?おかしいわ!それに、彼女は留学先で意気投合した王子に求婚されていたのよ?受けようか悩んでいたわ!でも、ヘンドリック!!あなたが、彼女の話も聞かずに強制的に帰国させたんでしょう?!だから、彼女は仕方なく帰国したのよ!?帰国してから、ソフィアは言ったの。誰とも結婚する気は無いって。」
ヴィンセントは、目を見開いたまま動けなかった。胸をえぐられるような痛みを感じる。
ヘンドリックは、ショックを受けたようで、かすれた声で言う。
「そんな・・・そんな話は・・・」
「聞いてくれなかったんじゃない!!私はね『誰とも結婚する気は無い』って聞いた時、好きな人と結婚できないなら、自分はずっと1人でいいって意味かと思ったわ。」
メリーアンは、目に涙をいっぱいにためて言った。
「そんな男性と別れて、自分の夢の話も聞いてもらえずにショックを受けて泣き疲れて眠っていたはずのソフィアが、お兄様に抱かれるなんておかしいわ!どうゆうことですの?!お兄様!本当の事を教えてください!・・・まさか・・・まさかムリやりなんてこと!」
「・・・・」
ヴィンセントは黙った。
その顔を見て、王女は目を見開き、ワナワナと怒りに震えながら、確信を得て言った。
「酷いわ!お兄様!精神的にも参って、部屋で休んでいた乙女を、無理やり犯すなんて!!」
「メリーアン、それは!状況的につけこんだのは、それは認める。だがしかし・・・。」
「最低!!最低よ!!お兄様!そんな方だとは思わなかったわ!!」
王女は怒りに任せて叫ぶと、部屋を出て行った。
取り残された部屋で、全員が気まずくなる。
暫くの沈黙が流れてから、最初に声を出したのはヘンドリックだった。
「陛下。わしは、ソフィアを選んで下さって、感謝しとります。」
ヘンドリックはヴィンセントを見て言う。
「あの子は、早くに両親を亡くして、叔父夫婦が侯爵家を継いだんじゃが、受け入れず1人で侯爵家を守ろうと必死になっておった時期があった。そのせいか男勝りで、頭は良いが、融通がきかんのじゃて。この世で生きていくのに、女1人でできることなど、何1つ無いのじゃ。叶いもしない夢を追いかけて、苦労して絶望して、歳をとった時には、普通の幸せを逃してしまうじゃろう。あの子には、もう2度と、1人になる寂しさを味わわせたくないんじゃ。ムリに結婚させてでも、家族をつくってやりたいんじゃ。」
目に涙をためて、ヘンドリックはヴィンセントの手を握った。
「陛下。わしは、息子の忘れ形見を側に置いておきたいんじゃ。なんと言われようとも、隣国になぞやりはせん。陛下、どうか御心のままに。」
ヴィンセントは、難しい顔をした。
やっと見つけた、愛しい女。まさか、ソフィアに思う男がいるなんて・・・。
「陛下が、その男を忘れさせてやればいいのでは?」
騎士団長のグレイが、さらりと言った。
「王女様の言う通りであれば、その男の事は諦めていたでしょうし、気になさることはありませんよ。」
その言葉に、アデルまでもが賛成する。
「確かに。陛下との時間を過ごされて、これから愛を育まれれば宜しいのですよ!」
ヴィンセントは、首を振った。
「メリーアンの言う通りだ。私は、ソフィアが愛おしくて、気持ちも確認せずに抱いた。そして、弱味につけこんで・・・私の愛人になるなら、自由にさせてやると取引をしたんだ。」
その場に居た、全員が唖然とした。
「じゃぁ・・・ソフィア嬢は、自分は陛下の愛人だと思っておられるんですね?」
ノアがボソリと言った。
「あいつが逃げるからだ!私の前から消えて、逃げようとするからだ!私は、会えなくなって、思い知った・・・。あの娘でなければダメなんだ!もう、他の女など抱きたくはない!」
顔を覆って、叫んだヴィンセントを見て、グレイ騎士団長が、肩眉だけあげて苦い顔で言う。
「解りますよ。好きな女とのセックスは、格別です。1度味わってしまえば、手放せません。」
アデルが、仕方ないなぁという顔で言う。
「それで最近、ご様子がおかしかったんですね。」
そこで、プッとノアが笑って言った。
「確かに、心ココにあらずでした。あんな姿を見たのは初めてでした。しかし、いつも引く手数多の陛下が、まさかの恋煩いだなんて思いもしませんでした。しかも、逃げられたんですか?」
ヴィンセントは、赤面して目を閉じて、恥ずかしそうに言い返す。
「逃げられた。まさか、この私が女に逃げられるなんて、想像もしていなかったんだ!」
ニヤリと、グレイ騎士団長も笑う。
「確かに、陛下は幼少の頃から、容姿も頭脳も武道も完璧で、女に困ったこと無かったですからねぇ~?まさかの、本命で逃げられるとは!プハッ!」
「笑うなグレイ。立ち直れなくなる・・・。」
「ぶはははっ!確かに!こんな、なさけない陛下は始めて見ました!」
「アデル~~~~!!」
ヴィンセントは、後ろからアデルの首を絞める。
「あはははっ!陛下、とりあえず、あれですよ。しかたがありません。ちゃんと言いましょう?」
「何をだ?」
「きちんと、気持ちを伝えましたか?好きなら好きだと、愛していると伝えるべきです。」
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