今日もダンジョンでレベルアップ!貧乏無課金でも金持ちを蹴散らし、ざまぁ復讐そしてハーレムを作る!?

まめたろう

文字の大きさ
138 / 157
13章「新しい変化と誘惑」

第136話「石動の思惑」

しおりを挟む
#第136話「石動の思惑」

 佐藤が現状に苦しんでいるのと同じように、実は石動もまた少し困っていた。
 というのも――彼のこれまでのキャリアの中で、佐藤のようなタイプをリーダーに据えた経験がなかったのだ。これまで石動が接してきた人間と比較してあまりにもレベルが低い。

 御影グループは今、急速に拡大している。
 次々と新規プロジェクトが立ち上がり、優秀な人材たちが競い合うように成果を出し、会社を押し上げてきた。時には失敗もあるがそれでもチャレンジするのが急成長する会社の特徴と言えるだろう。
 もちろん競争だけでは軋みが生じる。そのバランスを上手に取り組織の中で様々な尖った人達をまとめ動かしてきたのが石動であり、彼自身も「結果を出せば評価される」環境で成長してきたとも言える。

 だからこそ――佐藤の相談は、正直、彼にとってはなかなかに衝撃的だった。

 あまりにも相談のレベルが低い。たいして何もやっていないし考えてもいないのに相談だけするとは何事なのか?耳を疑った。石動の普通が全く通用しない。石動の感覚では「様々な施行をしても、どうしてもうまくいかない場合」に来るのが相談なのだ。
 率直に言えば単純にリーダー失格としか言いようがない。
 だが皮肉なことに、あのクランの中では佐藤がまだ一番“まとも”なのだ。
 
 ある意味で初めてとも言える状況、そしてその感覚に困惑する。これまでだったら何も考える必要なかった。佐藤のような人間は迷わず切るだけの話だ。
 会社には必要がない。いや、下手をすればいるだけで他の人員に影響を及ぼすので害悪にもなるから早急に切り離す必要がある。多少の損をしてでもすぐに切るべきなのだ。それが一番効率が良い。

 仕方なく、少しおだてながら助言を与えたが、やはり根本的な気質は変わらない。
 「リーダーとしてどうあるべきか」を考える前に、自分の立場と周囲への不満ばかりを気にしている――それが今の佐藤だ。アドバイスするのも時間の無駄とも思えた。

 思えば、クラン『エクリプス』の人間たちは、御影グループの普通の社員とは違う。面接を受けて入社したわけでもない。いわば“コネ入社”の集合体だ。
 そこそこやる気はあるが、本質は「雇ってもらっている」側の意識が強い。
 自分が成長する、そして会社やクランを大きく成長させるという意識や責任感は薄く、むしろ「居場所を守る」ことに必死な者が多い。今後の安定した生活だけを考えているのだろう。
 そして何も捨てずに得ることばかりを考えている。そして他力本願。あまりにも残念な思考だ。

 正直に言えば、普段の御影グループであれば面接どころか書類審査で落ちるレベルの人間が集まっているわけだ。どうにもこうにも問題児ばかり。御影グループの会社内では初めて見るタイプの人達。
 石動にとっては新鮮な経験ではあったが、それ以上に――“やる気のなさ”が何よりも堪えた。

(能力がないのはまだいい。だが、やる気がないのは致命的だ。そういう人間と接することがこんなにしんどいとは……無駄にエネルギーを吸収されてしまっているのかもしれないですね)

 とはいえ、これが現代の普通の“ゆとり世代”の現実でもある。御影グループのような急成長している会社で、切磋琢磨してのし上がりたいとして集まってくる人間とはそもそも考え方からして違うのである。

 最低限の仕事をして給料をもらう。効率だけを重視する。そして残業や飲み会は「時間の無駄」。他の人間とのコミニケーションも不要。自分の勉強や成長よりもプライベートの維持が最優先。
 そんな人間が日本に増えているのは事実だった。それでは国が成長するはずもないのだが。日本が低迷している根本的理由の1つがそこにある。そしてそういった人間を極力、面接などの段階で排除して筋肉質な体質で成長したのが御影グループだった。

(総裁が「ワークライフバランスを捨てて働く」と当たり前のことを言っただけで大騒ぎする国だからな……そんなおかしな国が他にどこにあるというのだ。本当にメディアも一部言論人も滑稽だ。今の日本はやる気のある人間を攻撃し、そのやる気をそぐ馬鹿な人間が多すぎる。そうやって成長を阻害する。それで"今の日本の低迷は問題だ”とか言っているのだから本当に呆れるしかない)

 そう思いながらも、石動は自分を戒めた。
 ――これはこれで、自分の勉強にもなるだろう。
 意識の低い人間をどう引き上げるか。それもまた、リーダーシップの一形態だ。それが可能であれば御影グループは更に多くの人を引き上げ成長し強い組織になっていくことだろう。

 ただ宗教のように洗脳することができれば一番楽だが、もちろんそんなことをするわけにもいかない。誰にでも分かるようにやる気がでるように話をする必要がある。一般の研修ぐらいではどうにもならないレベルの人間をどうやって引き上げるか?
 実際、佐藤への助言も、限界まで視点を下げて話したつもりだった。
 しかし彼の表情からは、まるで響いていないのが見て取れた。あそこまでレベルを下げても動きそうにない。リーダーがあれではクランが組織として機能するはずもない。さて、どうしたものか?

(あそこまで下げても伝わらないか……ならばやはり)

 新しいリーダーを入れる手もある。
 だが、それでは“リーダーとメンバーの意識の差”が広がりすぎて、結局崩壊する可能性が高い。
 ならば、リーダー補佐――あるいは助言役のような存在を新たに入れるべきか。それならばお試し程度のことはできる。何か問題があっても外せばいいだけ、崩壊までには至らないだろう。

 石動は少し考え込み、ため息をついた。
 会社では“使えない人間”は切ればいい。それが合理的で当たり前のことだった。次に来る、やる気のある人間を待てばいい。
 だが、コネ入社の集まりのクランは違う。一応は社長直属のため切るわけにもいかず、底辺から育てるしかない。

(……初めてだな。ここまで“教育”だけに頭を使うのは)

 困惑しつつも、どこかでその状況を楽しんでいる自分がいた。
 今までの環境では味わえなかった、ある意味での“人間的試練”。下の人間に意識レベルを合わせるのはかなりしんどいし時間の無駄のようにも感じるが、それも自分には必要かことかもしれない。
 しんどいと思う気持ちがありつつも、新しい分野を開拓できるかもしれないとワクワクもしていた。

(さて、どう動かしましょうか……佐藤君を)

 石動はゆっくりとコーヒーを口に含み、深く息を吐いた。
 彼の静かな目には、冷徹な分析とかすかな興味が混じっていた。

---
時事ネタ入れてしまいました。Xで起業家の人達が言っている言葉をかなり参考にしています。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...