転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
69 / 293
第五章 前編

66話 視線



 はぁ、と前からため息が聞こえる。どんよりとした空気が店の中を包んでいたが、ウォルズは困った様に笑ってこちらに向き直った。

「……これはある情報筋の話なんだけど。ヴァントリアは呪われてる。ウロボス一族と、オルテイル一族の呪いを同時に受けている」

 ピクリとジノとイルエラが反応する。ジノが顔を真っ青にして思わずといった風に呟いた。

「呪いそのもの……」
「え?」

 イルエラがそれに答えるように言った。

「ヒオゥネが言っていたことか」
「君等、ヒオゥネから聞いたのか……?」
「よくは覚えていないが……ヴァントリアが呪いそのものだと奴が言っていたことは覚えている。」

 ヴァントリアが呪いそのもの? どう言うことだ。

 呪いと言ったらヒオゥネで、でも、ヒオゥネとヴァントリアに接点はない。ウォルズが言ってたキスのシーンくらい……ひえ、やめ、ああっ想像なんてしてる場合か! と、兎に角、例のシーンくらいしかないじゃないか!

 それにウォルズの言っていたウロボス一族とオルテイル一族からの呪いと言うのも気になるし……。

「……その石は呪いの侵食を抑える石なんだ。マデウロボスはヒオゥネの先祖で、彼も昔その手の実験を受けてあの姿になったと思われている。そしてあいつの中に呪いを抑える石が存在しているという情報も掴んでいた。いつかヴァントリアに会った時、助けてあげようと思って探してた。」
「マデウロボス……ウロボス一族だったのか。確かに名前もそれっぽいけど……」

 ある情報筋とは前世のことだろう。前世でプレイしたA and Zの話だ。だからジノやイルエラの前では話そうとしなかったのか。

「抑えると言っても、石が吸収するだけだ。満タンになると、そこの武器みたいに、石から呪いが漏れて周囲に影響を与える。……でも無いよりはマシだ。武器の方はダメだったみたいだけど、万の左足の石なら充分な大きさがあるからまだ保つ筈だよ」
「……待て、呪いそのものと言うことは、ヴァンを吸収してしまうんじゃないのか」
「身体を生成するくらい圧縮された高濃度の呪いなんて、吸収したらすぐ満タンになって、こんな石なんかじゃ、何の機能も持てなくなるよ。漏れまくり。むしろ周囲に悪影響を及ぼす機能になるね……。だけど、その心配はない……ヴァントリアの身体は確かに呪いで出来てるけど、吸収はされないんだ。ちゃんと身体として変化して機能しているからだ」

 難しくて頭が追いつかない。一体なんの話をしてるんだ。やっぱり晴兄は頭がいい。

「ヴァントリアにとって呪いは細胞みたいなものだ。簡単に剥がせるもんじゃない。もう身体の組織として彼の一部になってるんだ。多分、どんな方法で呪いを奪おうとしても無駄だ。でも、逆に注ぐことは出来る……」

 ジノやイルエラの顔が険しくなる。そうか、彼等は博士の実験で呪いを管によって注がれていた。

「……呪いを注がれたらどうなるか君達なら分かる筈だ」
「普通なら身体が腐るか、バラバラに弾け飛ぶ。……そうして45層のゴミ捨て場に捨てられるのだろう」

 ……っ、もしかして、失敗作と呼ばれてた彼等のことを言ってるのか?

「どうしてヴァントリアは無事だと思う?」
「どうしてって……」

 ウォルズの質問にジノが苦虫を噛み潰したような顔をしてこちらにちらりと視線を向ける。

「呪われてるんだ。何層もの。何十層もの呪いが複雑に入り交じって呪われている……。あいつが、あいつらがヴァントリアを自分のものにしたいが為にヴァントリアに呪いを掛けて——」
「あいつらって?」

 ウォルズはその言葉にハッとしてこちらに振り返る。

「ご、ごめん……それは言えない。思い出すと君が混乱する」
「そ、そっか……」

 ウォルズの真剣な顔に何も言えなくなる。……全く話は理解できなかったけど、ただならぬ緊張感に、今は無理に聞き出すべきでは無いと分かった。

 突っ込んで聞いたところで、何か利益がありそうではない。どちらかと言うと、聞いてはダメなような気がした。

 よく分からないけど、ずっと、今も。誰かに見られているような気がして。

 ウォルズは武器を手にすると俺の胸の前に差し出してくる。

「この話は終わりにしよう。ごめん。焦ってたみたいだ……」
「……何に焦ってたんだ?」
「……ヒオゥネと接触したんだよね? その、ヒオヴァンは尊いから存分に楽しんでくれて構わないんだけど、でもよくよく考えたらヒオゥネは危険だし……でもエロ……じゃなくて、とてもよいよね、じゃなくて、もっとやr……じゃなくて!」
「もう良い。言わんとしていることは分かった」

 武器をウォルズから受け取ってさっさと話を切り上げようとする。彼が興奮しだす前に。

 ヒオゥネは、追っかけられてた時もなんか怖かったし。彼が呪いについて研究してるなら、呪いがどうたらな俺は標的になりやすいってことを多分言いたいんだろう。

「ヒオゥネには充分気をつけるよ」
「そんな! ちょっとは油断して襲われちゃう展開になってもいいんだよ⁉︎ だから気をつけると言うよりは少し気にしちゃう程度でいいよ! あれ、俺どうしてこんなにヒオゥネのことばっかり考えてるんだ。も、もしかして俺、ヒオゥネのこと——的な展開とか本気で求めてるから!」
「あのな、お前はもう少し自重しろ」

 ウォルズは残りの武器をジノやイルエラに渡す。

「僕には必要ねえよ」
「私も……あまり扱ったことはないから。持つ意味がないと思うが」
「護身用だよ。確かに君達は強いけど……俺より弱いんだし?」

 ニコリと爽やかな笑みで答えたウォルズ。

 分かりやすい挑発に二人の額に青筋が立つ。……なんかウォルズが爽やかじゃない。いや笑顔は爽やかだけど。なんというか、内側から黒く染め上げられたものがダダ漏れというか……。

 言いたいことを言ったからか、なんか意地悪になってきたな。

 つまり……ジノやイルエラに以前より心が開ける様になったってことか! いいことだ。うんうん。俺も早く皆と冗談を言い合ったり喧嘩したりできるような関係になりたいなぁ。

「何ニヤニヤしてるんだよ……お前も僕達が役立たずだって言いたいのか?」
「え、いや、仲良くていいなぁって」
「はああッ⁉︎ どう考えても嫌味言われてたじゃないか!」
「元気でいいなぁ」
「何のほほんと言ってんだよ。言っとくけどそれそこのおっさんと同じ台詞だからなっ」

 ぷりぷりしちゃってまあ。やっぱり子供は可愛いなぁ。

 よしよしと頭を撫でると目付きが一層鋭くなる。照れ隠しも健在か。

 ウォルズが隣に並んで、ジノの頭を撫でていた俺の手を取る。一瞬ジノの目からウォルズに向けて世界を滅亡させる光線が出た気がしたけど気のせいだよな。

「武器も手に入れたことだし……博士を助けに行きたいけど」
「もう行くのか? 皆俺の所為で疲れてるんじゃ……」
「俺は平気だよ? 体力あるから。あれ位じゃへこたれない」

 ジノとイルエラがウォルズの言葉にムッとする。

「僕だってスタミナくらいあるっての!」
「私も負けない……少し暴れたくらいで疲れるような情けない奴と一緒にするな」

 やっぱり皆男だからかプライドは高いらしいな。

 ……イルエラもジノもウォルズも凄いな。俺なんてヘトヘトなのに。

「そうだよな。暴れてすらいないのに疲れてる俺ってやっぱり情けないんだよな……」
「……いや、その、お前のことではなくて。疲れているなら私が担いでやろうか?」
「——い、いいよ! い、いっつもいっつも担がれて逆に疲れる!」

 腰に手を回されそうになり、思わず回避すると、イルエラの眉間にシワが寄った。

 わ、悪かったよ、そんなに怒るなよ。

「た、助かってるよ。で、でもなんか、恥ずかしい」

 担がれて走り回られるなんて恥ずかしくて耐えられない。注目の的じゃないか、一応前世は引き籠りなんだぞ。

「…………」
「イルエラ?」

 やっぱり怒ってるのか?



感想 23

あなたにおすすめの小説

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。 ================= 高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。 ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。 そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。 冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで…… 優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
 【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!  僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして? ※R対象話には『*』マーク付けます。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL