転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第九章

212話 弱者の証だ


 俺はディスゲル兄様と共にサイオンのところへやって来ていた。サイオンはディスゲル兄様の姿を見て驚く。

「どうしてこんなところにいるのだ、ディスゲル」
「いつもの冒険だ」
「そうか。ほどほどにしろ。それより……」

 ジロリとサイオンの冷たい瞳がこちらを見る。

「何故貴殿がヴァントリアなどと一緒にいるのだ?」
「オレは自分が見て来たこと全てが正しいと思い込んでいたんだ。でも全て誤解だった。だからその償いだ、兄さんと話したいって言うから、一緒に説得しようと思ってね」
「説得だと?」

 サイオンが不機嫌そうにこちらを見て来るので、奴の目をまっすぐ見て答える。

「メルカデォを止めたいんだ! 協力してくれ!」
「サイオン兄さん、オレからも頼む」
「何?」

 そう簡単に、いいよ、なんて言ってくれないとは分かっているけれど、どうやって説得しよう。何も考えずに飛び出して来ちゃったな……。

「止める手助けをしてやってもいい」
「え!?」

 ど、どう言うこと? 何でそんなに簡単にOKしてくれちゃうんだ?
 それともサイオンは実は弟に甘えられたいタイプの優しいお兄ちゃんだったとか!?

「あ、ありが――」
「――貴様が今ここで死ねば、協力してやってもいい」
「な……っ!?」
「何を驚いている、貴様が生きている限り、余が貴様に協力することなどない」

 何故だ、全て俺が理由だとでも言うのか。確かに、俺のことを嫌っているだけで、他の人にはいい人だと認識されていると気付いたけど、ここまでとは。
 でも俺は奴隷達を傷つけて来た、サイオンはそれを知っている。助けるための行動とは理解していない筈、それなのに救おうとしないと言うことは、無関心であると言うことだ。

「メルカデォのことだけじゃない、奴隷制度も止めたいんだ! 他の階層でも奴隷達は酷い目に遭わされてる!」
「それが何だと言うのだ」

 それを聞いて、カチンと来る。

「お前は自分達のことしか考えてない、王宮から出ようともしない、知ろうとしない、止めようとしない、無責任にもほどがあるぞ!」

 サイオンの目が鋭く光り、俺の身体がビクつく。

「無責任だと? 何故余が責任など負わねばならぬ。周りが勝手に起こしたことだ」
「アンタは王族なんだ! この地下都市を正す義務があるんだっ!! 周りを止めるのもアンタの仕事だ!」
「喚くな、例えそうだとしても貴様の言うことなど聞くか」

 ディスゲルもそれを聞いて、頭に血が上りカッとなる。

「サイオン兄さん! そういう問題じゃない!」
「そういう問題だ、余はそいつの存在だけは許せぬ。そいつがたとえ余の命の恩人になったとしてもだ。余はそいつだけは好きになれぬ。名前を聞くだけで虫酸が走る。大嫌いな奴が喜ぶようなことを、余がすると思うか?」
「俺からも頼んでるんだサイオン兄さ――」
「確かに貴殿は可愛い弟だがシストではないし――ヴァントリアは今すぐ失せろ。気味が悪い。余は貴様等大っ嫌いだ」

 それを聞いて、黙り込んでいると、相手は嘲笑を浮かべる。俺はそれに歩んでいき、口角の上がるその頬に向かって、思いっきり、手のひらを振りかざす。

 そして―――バチイイイインッと彼の頬目掛けて振り下ろした。

 サイオンの左頬は一瞬で赤く染まった。
 目を見開き、自分の頬を押さえるサイオンは、ギロリとこちらに冷たい瞳を向ける。
 そんな目を見ると、カタカタと身体が震えだす。だけど、怖いからって逃げられない。俺はみんなを助けてあげなくちゃならない。そう、俺はみんなを助けるんだ。

「お前が、俺を嫌いとか、どうだっていいんだよ。……嫌いならほっといてくれよ。俺が喜ぶか悲しむかなんてどうだっていいだろ!? すぐそこに苦しんでいる人達がいるのに! どうして助けてあげないんだよ!! いっつもそうだ、話は聞かないし目は合わせないし、まるで存在しないもののように扱って……俺だけなら別にいいんだ、ひとりぼっちは慣れてる。例えたくさん人が周りに集まってきたとしても、俺はずっとひとりぼっちなんだ」

 ディスゲル兄様は様子がおかしいと思ったのか首を傾げる。

「ヴァントリア?」
「……でも民のことはちゃんと見ろ! 俺以外の人のことをちゃんと見ろ! 助けるべき者を助けて罪を償わせるべき者にちゃんと償わせてやってくれ! サイオン、俺のことなんて考えないでいいんだ、皆の為にお前の力を貸してくれ!」

 サイオンは「はっはっはっは」と急に腹を抱え、大口で笑い出し、笑いを止めたかと思えば俺のことを見て言った。

「死んでも貸さぬ。貴様のため? 民のため? 何を言っている? 何故余が他人を救わないといけないんだ?」
「…………な、何を言って」
「シストがそうしているのなら、それでいいんだ。あいつが何をしようが余は口出ししないし、何より不快だと思ったこともない。そいつらは余達とは流れる血が違うんだ、他種族を救う意味があるか?」
「……に、兄様」
「兄と呼ぶな、反吐が出る」

 サイオンの冷たい瞳を見ていると、自然と涙が溢れる。

「な、なんで……なんで」
「ヴァントリア……」

 ディスゲルが肩に触れようとするのを見て、サイオンはピクリと眉を動かした。

「よせ」

 サイオンは目の前に立ち、俺の顎に指を這わせ、顔を上げさせる。それを見下げながら恍惚とした笑みを浮かべた。

「ヴァントリア、余は貴様の泣き顔だけは大好きだぞ。涙は弱者の証だ」

 ――――バチイイインッと、再び頬を叩くと、睨み付けられる。

「…………貴様、さっきから何をしているか分かって――くっ!」
 また頬を叩き、次の言葉が来る前にまた叩く。叩き、叩き、叩き、叩き、叩き続け、彼を地面に押し倒してから、サイオンの腰に跨りながら叩き続ける。

「こ、この、いい加減に――」
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