転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第十一章

226話 いなくなるよね


 
 リズィとクダンの家に帰ると、ヤックが玄関の前で待っていた。尻尾を振って歓迎してくれる。

「ただいま」

 しゃがみこんで頭を撫でていれば、後ろの二人は犬を見たことがないのか一歩ずつ後ろへ後ろへと下がっていく。

「犬を見たことがないのか?」
「イヌ? そいつはワンコロだ。本で読んだことがある」

 ワンコロだと……! 確か前にもわんころと呼ばれていた。違和感があったんだ。確かにこの犬、見た目はゴールデンレトリーバーだが、尻尾は二本と不思議な見た目はしている。だが、ワンコロだと……。地下都市では犬をワンコロと呼ぶのか?

「兄さん、犬は地上で見たことがある。確かにそっくりだ」

 地上で犬に何かされたのか涙目でそう言うディスゲル兄様を見つつ、ワンコロと言うネーミングセンスのことについて考えていた。

「まあいいや。ここで待っててくれ」
「「置いていくな!!」」

 超面白いんですけど。
 二人を無視してリズィとクダンの家の中に入れば、皆はちょうど昼食の準備をしていた。

「ヴァントリア!!」

 ウォルズが一番最初に気づき、両手を広げて走り寄って来る。心配顔で抱きしめられた。

「バン様!」
「ヴァン、無事でよかった」
「どこ行ってたンだよ」
「心配したぞ」
「ヤックに待っててもらったんだ」

 リズィがヤックを呼ぶと、ヤックは家の中に入って来る。優秀な犬――ワンコロだ。

「……おかえり」

 クダンがそばに寄ってきて、頭を掻きながらそう言ってくる。

「ただいま!」

 そう返すと、わずかだがクダンの口角が上がった。
 それからずっと抱き着いたままのウォルズをどうしようかと考えていると、ウォルズが真剣な声音で言った。

「何でも一人で解決しようとするな」

 むぎぅぅと強く抱擁され、少し苦しい。

「うん」

 相当心配かけちゃったんだな。

「やけに素直だな」
「実はみんなに紹介したい人達がいて」
「え、結婚相手!? そんなの早すぎると思います!」
「そんなわけないだろ。人達って言っただろ」
「この世界では複数人で結婚できる階層もあるから間違いではないよ」
「そう言えばそうだな、ウロボスは一夫多妻だったような……。ウロボスに限らずオルテイルの王族もだし、王族は大変だな」

 そんな話をしていたら、扉の向こうから不機嫌そうな声が聞こえてくる。

「おい、まだかヴァントリア。余は早くウォルズに会わねばならぬ」
「あー、この偉そうな声で分かると思うけど、紹介したい人達はこちらです」

 サイオンとディスゲル兄様がワンコロにおびえつつ入ってくると、ウォルズが奇声に似た声を上げた。

「サ、サイオンに――ディスゲル!? 本物!? ディスゲルかっこよすぎだろやべえええええ!」
「そうなんだ、ディスゲル兄様はかっこいいんだ」
「ディスヴァンキタコレ! よっ、待ってました! ヴァントリアのツンデレ!」
「別にディスゲル兄様にはツンツンしたことないだろ」
「デレデレとな!? なんと素晴らしい情報をありがとうございまあああす!」

 ディスゲルは通常運転のウォルズを見て軽く引いている。
 サイオンとディスゲルにクダンとリズィを紹介し、彼らの知っている現状を話してもらう。その間に、俺は自分が王宮へ戻ることを仲間達に伝えた。
 すると、ウォルズが両手を握ってきて言った。

「俺も行く」
「でも」
「いつまでも一緒にいるよ」

 握られていた手がなんか熱くなる。

「私達も行きたいと言いたいところですが、脱獄囚に実験体……逆賊とも呼ばれた我々が行ってもいいのでしょうか」
「私は行く、お前を守ると約束したからな」
「行くって言っても、僕達が王宮に行くことを許してくれるかどうかが問題なンじゃないですか?」
「俺タチも行くぜ」

 彼等の声を聴いていたのか、話が終わったらしいサイオンが答える。

「王族であるヴァントリアとウォルズは問題ないだろうが、例え家来としてでも問題を起こしたお前達は王宮へ連れていけぬ。ヴァントリアと協力してシストの命令を達成することで信頼を得るだろう。ヴァントリアの努力しだいだ。まずはイーハ・タールと言う男に会ってみると良い。四皇級階ではあるが24層のナキューシオに仲間達と住んでいる」

 イーハ・タールと言えば吸血鬼集団のボスだ。穏和な性格をしているが、力の強い者達には血の暴走と言う吸血鬼特有の覚醒状態があり、新月の夜に起こる。彼らは暴走して仲間を殺さないよう、地下に閉じこもり夜を開ける。ゲームではその状態の時のイーハは厄介な敵となる。

「それからセルとヒオゥネと言う男はウロボスの王宮にいる筈だ、奴等には招待状を用意するように言っておく。それを持って10層ラハードヘ向かえ。良いな?」
「あ、ああ。分かった」
「その前に余達はメルカデォの中止を宣言しに39層へ向かわなくてはならぬ」
「もちろん、この町でも宣言するよ」

 ディスゲル兄様が続けて言うと、サイオンは頷く。

「宣言は今日のメルカデォで行う。余達は今からビレストに亜人、獣人達を集めさせ、その場で宣言する」

 話を聞いていたウォルズが「ちょっと待って」と話に割って入って来る。

「いろいろ話されてるけど、つまり、サイオンとディスゲルはヴァントリアに協力する気になったってこと?」
「協力ではない。これ以上ヴァントリアを気持ち悪くせぬため、つまり自分のためにやっていることだ」
「ヴァントリアは世界一可愛いだろ!」
「ウォルズ、こいつに何を言っても無理だ。俺のこと気持ち悪いとしか思ってないから。散々分からさせられたから」
「準備が整ったら知らせる。ディスゲル、余達は宿屋で休むぞ」
「分かった。オレも結構疲れてたんだ」
「余は疲れてなどない」
「はいはい」

 サイオンたちが去ると、俺達は昼食をとる。席に座る前にクダンに呼び止められた。

「ありがとう。お前のおかげで、俺はメルカデォに出なくて済んだ。命の恩人だ」
「助けたかった人たちは大勢いるし、助けられなかった人たちも大勢いる。お前が無事でよかった」

 クダンが頷くと、リズィも話を聞いていたのか近くまでやって来た。

「ありがとう。ヴァントリアお兄ちゃん。お父さんや私達みたいな人がいなくなるよね」

 クダンと俺はその言葉にハッとする。リズィは父親を化け物とは呼ばなかったが、自分を責めてはいたのだと分かって。

「そうしてみせる」

 そう告げると、二人は目に涙を浮かべながら感謝した。
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