転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第十一章

230話 いじめたかっただけだ



 目が覚めるとそこは暗い地下室ではなくて、柔らかいベッドの上だった。天井の明かりが眩しくて、思わず腕で目元を覆う。
 すると、指にちょん、と何かが触れてきて光に慣れてきた視界でその方向を見ると、あの黒いウサピョン――コゲテルが心配そうに擦り寄ってきていた。
 服もいつの間にか着せられてる。まさかヒオゥネが着せたのか!? は、恥ずかしすぎるぅぅぅ……。
 コンコン、とノックの音が響き、ピクリと身体を揺らす。服はもう着ていると言うのに毛布を肩まで上げてくるまり、「はい」と答える。扉が開き、奥からイーハが現れた。

「どうしてお前が」

 警戒していると、イーハはため息をつきながら答えた。

「貴方を大事にするようウロボス帝に命ぜられたんだよ」

 ウロボス帝……おそらくイーハは本物のウロボス帝がヒオゥネだと知らない。なら彼と話した時、ヒオゥネはセルに化けていたんだろう。

「なぜ貴方なんかを助けるんだろう」
「そうだな。どうして助けてくれるんだろうな。俺がして来たことは悪いことだから、お前達に狙われたっておかしくはないのにな」
「責めているのかな?」
「お前達はどうして信者なんて作るんだ?」
「正常な状態で協力してくれる人がいるとでも?」
「洗脳してるのか?」
「いいや。貴方のように新月の夜に襲わせて、精神を崩壊させるんだよ」
「人形のように従順になるってことか」
「そう言う能力があるからね」
「吸血鬼に噛まれた人は吸血鬼になるんじゃないのか?」
「血を流し込まれたらの話だよ。彼らは操り人形、我々に血液を提供するドナーだ」

 ……ゲームの世界での設定はそうなのか。

「イーハは何で吸血鬼に?」
「ルーハンによって吸血鬼にされたんだ。当時の私は死ぬ寸前だったんだ、それを救うために、行ったことだったんだろうね」
「ルーハンは優しいんだな。拷問好きなくせに」
「彼は幼少期から拷問されていたんだ。拷問好きな訳じゃないさ」
「確かに拷問されてそれを好きになるなんて変だけど、ルーハンは楽しそうだったぞ」
「その言い方だと拷問されたのかな?」
「まあ少しだけ。その後助けてくれたりして、いい奴だって、考えを改めたよ」

 イーハは目を細め、考えるような素振りを見せてから言う。

「……貴方はシルワール様に拷問されていたと王宮では噂が流れている。本当なのかい?」
「まあ、今更隠すことじゃない。そうだよ、拷問も強姦もされてた」
「だから捻くれたと?」
「捻くれたふりをしていたんだ。奴隷達や苦労している人達の為に演技をして、彼らのことも騙して助けた。今は後悔している、普通に助けてやれば良かった。みんなに協力してくれと頼んで回れば良かったって」
「……貴方がそんな人な訳がないと言いたいが」
「失礼だな」
「貴方は私を責めはしないようだね」
「生きる為にしたことだろ」
「いいや、ただ貴方をいじめたかっただけだ」
「おい」
「でも、貴方はメルカデォを廃止させると言っていた。それが本当なら、さっきの話も本当のことなんだろうね」
「ああ、もう一人じゃない。兄様達が手伝ってくれたから出来たことだ。まだ廃止出来たとは言えないけど。セル達のことも説得しないといけないから」
「ウロボス帝なら説得されそうな気がするけど。今なら貴方を助けた理由も何となく分かるしね」
「え?」
「理想の相手が見つかったとずっと言ってるからね」
「あ、ああ。なるほど」

 セルのあの叫び声を思い出す、凄まじかったな、あれは。

「次はウロボス帝のところへ向かうのかな?」
「ああ、そうしようと思ってる」
「信者を作るのをやめろとは言わないのかな?」
「言いたいけど、俺にはそれよりいい策が思いつかない」
「なら、私が作るよ。君より頭の出来がいい自信があるからね」
「どうして協力してくれる気になったんだ」
「君のいう通り、ルーハンはいい奴なんだ」
「ルーハンを褒めたから協力するって……単純なんだな」
「彼が君を助けたと言うのなら、君はいい奴だったってことだろう?」
「さあ、それは、分かんないけど」
「自分をあまり苛めないようにね」
「ありがとうイーハ。ドナー達が自由になれると聞いて安心した」
「そこまでは言ってないけど。そうしろと言われているような気もするな。仕方がない、理解してくれる人がいるかもしれない、歩み寄っていくよ」
「話を聞いてくれる人はいる、きっと理解してくれる人がいる。きっと、みんな協力してくれるよ。難しいかもしれないけど、応援してる。俺にできることがあるなら何でも言えよ」
「じゃあ、偶にでいいから王族の血を提供してくれないかな?」
「……考えておく」
「あはは、貴方はバカな奴なんだね」

 だからどうしてそこに行き着く。


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 イーハの用意した部屋で休んでいると、テイガイアの通信機にシストから連絡が来た。テイガイアと別れる前、これからも連絡が入るだろうと彼が譲ってくれたのだ。

『ウロボス帝……ヒオゥネの分身が33層ベルファインにいるらしい。奴のいるウロボスの宮殿には基本的にオルテイル一族は入れない。だからベルファインに向かってくれとヒオゥネから言伝だ』
「わ、分かった」
『イーハは説得出来たのか?』

 なんで……って思ったけど、居場所が分かるからナキューシオに来ていることが分かっててもおかしくないのか。

「出来たぞ」
『そうか』

 それだけ? 褒めてくれないのか? そりゃそうか、ヴァントリアはするべきことをしただけだもんな。

「じゃあ、切るぞ」
『ああ』

 気まずくなってそう言うと、あっさり返事が返ってくる。通信を切り、仲間達の集まるウォルズの泊まる部屋に行き、次は33層ベルファインに行くと伝えた。
 心配させない為にも昨晩のことは言っていない。
 傷は呪いのおかげで元通りに戻ったしな。


.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+


「イーハ!!」

 教会の扉を朝一番に来て開け放った者がいた。この世界では珍しい黒の衣装、黒いシルクハットを被った男だった。
 イーハはその男を見て瞠目する。

「ルーハン」
「ヴァ、ヴァントリアが泊まったって聞いたぞ」
「誰にかな?」
「アーシャだ!」

 ルーハンとイーハ達はウロボス製の通信機で通信が出来る。恐らく王族二人も来たんだなんて自慢でもしたのだろう。ルーハンは王族と聞いて名を尋ねたのか、そしてわざわざ一層上まで駆けつけてきたと?

「もう既に旅立っていったよ。次の用が済んだらウロボス帝にも会いにいくらしい」
「に、兄さんに!? 正気かあいつ。わ、悪いが急用ができたいろいろ用意することがある!」
「うん、また来るといいよ」

 ルーハンは慌ただしく帰っていき、イーハはため息をつく。きっと、美しい色についての準備だろうね。


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