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第十一章
234話 謎すぎだもん
部屋の中に入ると、ロベスティゥは椅子に座って分厚い本を読んでおり、俺に気づくと彼はそれをパタンと閉じる。隣にはスイーツが並んでいた。
「久しぶりだなヴァントリア」
その低音を聞くと、自然と身体がビクつく。
「あ、ああ。久しぶり」
「さっきは敬語だったのに今はタメ口か?」
「も、申し訳ありません」
「別にいい。そんなことを気に留めたりはしない」
気に留めたから聞いてきたんじゃないのか。
「…………」
「…………座らないのか?」
「え?」
「座るといい」
気まずい。
本当に説得なんてできるのか?
恐る恐る向かいの椅子に座れば、ロベスティゥは机の上のティーカップに手を伸ばす。それだけでもびくりと震えれば、相手の鋭い視線が自分を貫いた。
「それより、メルカデォと奴隷制度を廃止するんだったな。その次はどうするつもりだ?」
「えっと、ディスゲル兄様が40層ゴーシェタルトから人間を逃してくれるから、そこは安心して任せていいとして。32層クジャに行きたいと思ってる、奴隷達を逃したいし、彼処にはあいつがいるから……」
ってなんか喋っちゃったけど、こんなことロベスティゥに話しても大丈夫なのか!?
「奴隷制度が廃止されれば奴隷達が追われることはないと思うが、確かにクジャならキサマの信頼する部下もいるか」
責められない? 寧ろ奴隷の味方をするような言い回しだな。
「あ、あの、怒らないのか?」
「何の話だ」
「メルカデォや奴隷制度のこと反対したりしないのか?」
「ワタシはキサマの言うことを聞く、そう言う約束だったろう」
「は?」
ぽかんとしていれば、ロベスティゥは首を傾げる。
「いやいやいや、そんな約束したか? お前いっつも俺のこといじめてきただろ、誰も見てないところで」
「それはキサマがワタシに敵をつくるなと、本気でいじめてこいと言ったからだろう。それに奴隷をいじめる自分が許せないから痛めつけろと無理矢理命令してきたのはキサマじゃないか」
「は? 命令?」
「さっきからまるでワタシが全て悪いような口ぶりだな、まさか忘れているのか?」
「その、最近記憶が曖昧で」
「何? どこまで覚えている?」
ロベスティゥはカップを置き、身を乗り出す。
「お前にいじめられてる記憶しかないんですけど」
「キサマはワタシと主従契約を交わしている」
え、そうなの!?
「つまり俺はお前に命令されたら従うしかないと……」
「いや、逆だ。ワタシがキサマに命令されたら従うしかない」
「なんで?」
「キサマがワタシの主人だからだ」
「なんで!?」
「本当に忘れているようだな、まるでワタシが悪人みたいじゃないか」
いやゲームでも結構悪人として知られてたよロベスティゥって!
「お、俺以外の人のことも無視してたりしただろ!」
「イノスオーラの血を引くワタシなどと話したい奴がいるか? こっちから話しかけなければいいことだ。それに嫌いな奴とは話さない。シストもサイオンも仕事の話はするが、あいつらはキサマやディスゲルと違って民を助けようとしない異常者だからな」
ええええええええ。確かにディスゲル兄様を好きなロベスティゥって悪い奴じゃないのかもしれないぞ! とは思えてきたけど、って言うか今の話を聞く限りロベスティゥっていい奴じゃないか!?
「キサマが奴隷を買うための資金をワタシが上に頼んでやったり、キサマが脱獄する度に隠してやったと言うのに、まあシストとは話さないから叱られることはなかったが、仲良くないふりをしているのだから不審に思っていただろうな」
確かにロベスティゥって仲良くない相手を庇ったりするところがあって何を考えてるか分からないキャラクターだったかもしれない。いや、仲良くないキャラってヴァントリアのことなんだけど。ええ。
つまりヴァントリアの前でしか見せない顔ってこと? シスト様もヴァントリアに対してだけ意地悪だったけど、ロベスティゥはまさかのヴァントリアとディスゲル兄様や他に気に入った人達だけ見せる顔があったってこと!? ウォルズともそんな仲良くなかった気がしたんだけど、あれってフリなの、気に入らなかったの、どっち!?
「うぉ、ウォルズのことはどう思ってるんだ?」
「ウォルズ? ああ、ウォルズ・サハニア・イノスオーラのことか。ワタシがそいつに協力してはイノスオーラに寝返ったと思われるだろう?」
なるほどフリだったかー!!
「忘れててごめんなさい」
「いい。キサマは昔から隠し事をしていたからな。教えろと言っているのに」
ゼクシィルやアゼンヒルトのことは教えなかったのか。まあいくらロベスティゥでも彼らに勝てる筈がないし、助けを求められなかったのかもしれない。そう考えるとやっぱりシストに見て見ぬ振りされたことを責めるなんて心が狭すぎたか。
あれ、でも昔のヴァントリアって誰にも話を聞いて貰えないって嘆いていたような。
「お、俺、話聞いてもらえてたなんて思ってなかったんだけど」
「キサマに頼まれたことは何でもやったがそれも主従契約の範囲内だとでも思っていたのだろう?」
「な、なるほど……」
ヴァントリアってやっぱバカだった!
「で、でもディスゲル兄様がメルカデォと奴隷制度の廃止の話をしたら反対したって」
「あいつはワタシに奴隷解放運動のことを隠している。ワタシに隠し事をしている奴にどうして従わなければならない。キサマは主従契約を交わしているから例外だが。奴が素直になれば何でも協力してやるのに」
えええええ、そんな理由かよ! ディスゲル兄様もロベスティゥにだけは絶対話したくないと思う。いや、こんな奴だと知っていたら話すんだろうけど、謎すぎだもんロベスティゥ。
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