転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第十一章

238話 第十、第七のハイブリッド



 マアス・グリフォンの屋敷を訪ね、彼に協力を頼むとやはりサイオンが望んだメルカデォと奴隷制度の廃止に協力的で、会議では賛成すると約束してくれた。

「それにしても第二王子、第四王子、第五王子が来てくださるなんて」

 彼はそう言ってお茶まで出してくれた。

「よろしければ、今夜開かれるオークションへご参加ください」
「オークション?」

 ロベスティゥが尋ねると、マアスが笑みを浮かべながら答える。

「はい、兵器の売買をウロボスの長から頼まれまして、最上級階の者達も訪れる予定です」
「オルテイルなのにウロボスに協力するのか?」
「い、いえ、そう言うわけではなく……」
「まあいい」

 ロベスティゥがこちらを見てきて、みんなと目を合わせてから頷く。
 ロベスティゥはそれを見てから答えた。

「窺おう」


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 その日はイーハ達吸血鬼と過ごし、深夜になってから俺達はオークションの会場であるマアス・グリフォンの屋敷の地下へ向かった。
 もうオークションは開かれており、おそらくハイブリッドの成りそこないだろう囚人達が売買されている。札がどんどん上げられ、値が付けられていく。
 囚人達はどうやらまだ引き渡されていないようで、舞台裏に連れていかれているようだ。
 舞台の裏側に忍び込み、囚人達を逃がそうと皆で決めた。
 俺とロベスティゥは舞台の上で時間稼ぎをする、他の皆はディスゲル兄様と協力して囚人達を逃がす。そういう作戦だった。


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 ヴァントリアとロベスティゥ兄さんは王族からの挨拶でうまく時間を稼いでいるようだ。

「ディスゲル、その二人で最後だ。俺達は逃亡ルートを探しておく」
「ああ、頼む」

 最後の二人は他の囚人達とは違う頑丈な檻にそれぞれ入れられていた。鍵は拝借してあるから開けることは簡単だった。最後の二人のうち一人の檻を開けると、中の者は檻の扉をくぐって自ら出てくる。ヴァントリアの仲間を思わせる小麦色の肌とグラデーションの掛かった美しい髪を持つ男性だった。身長が高く、見下ろされる。
 いっときそれに圧倒されて、ハッとしてから彼の手足に着けられた重りや枷を外していく。

「ありがとう。えっと……」

 そんな声が降ってきて、答える。

「ディスゲルだ」
「ディスゲル」

 呼び捨てかよ。囚人だからオレが王族だと知らないのか?
 逃げようとするも、彼はその場を動こうとしない。「行くぞ」と手を差し出せば、彼はその手を取る。しかしびくともしない。振り返ってもう一度、「もう一人を逃がさなきゃならない」と伝えようとすると、相手が跪いていることに気が付く。
 自分の手の甲に唇を落としてくる相手に真っ赤になって手を引き抜けば、相手は言った。

「俺はエンタナ。君に忠誠を誓う」
「え、ええっと……そうですか」

 余り状況が読み込めていなかったがそう答え、隣の檻に手を伸ばそうとした時だった。

「どうなってるんだこれは……!」
「……っ!!」
「――っ」

 オークションのスタッフらしい男に見つかってしまったと気が付いたとたんに、エンタナが動き、男の気を失わせる。あまりにも速い動きで、一瞬姿を消したかのように見えた。
 スタッフの話し声が廊下の奥から聞こえてきて、オレはエンタナの手を引き舞台のカーテン裏に隠れる。
ヴァントリア達の時間稼ぎはうまくいっていたが、エンタナに時間を取られ、スタッフ達の手によってあと一人の囚人が舞台に出されてしまった。

「オマエのせいだからな」
「すまなかった。誰かが来たら倒せばいいと思っていたから。だが、あいつは危険だからあのままでよかったかもしれない」
「危険だろうと奴隷にされるところを見過ごせるか」
「……すまなかった」
「いい、そろそろ行くぞ。大事にはしたくなかったけど、彼のことはヴァントリア達に任せるしかない」

 他の囚人達が逃げている今、もう一人はおそらく厳重に警戒されるだろう。いや、それならスタッフを倒せば一発だが、そのまま引き渡されるかもしれない。
アイコンタクトさえ取れない今、状況に気が付いてくれるかは分からなかったが、信じるしかなかった。
 眩しいくらいの金髪と特徴的な青い鎧が視界の端に入る。その姿を見たら、こんな状況でもホッとするような気がした。

「ディスゲル、逃亡ルート発見しました!」
「今行く!」
「ってえ!? エンタナ!?」
「彼を知っているのか?」
「第十のハイブリッドエンタナだよ!」

 ハイブリッドと言えば、ヴァントリアの仲間のジノとイルエラもそうだったか。彼らは聞いた話によると高い戦闘能力を持つらしい。もしかしてもう一人の彼もそうなのか?

「すげえ本物強そう!」
「ほんもの?」
「あ、いえ、何でもないんです!」

 ヴァントリア、ロベスティゥ兄さん。失敗してしまってすまない、彼のことを頼む。


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 王族が来たと言うことで舞台の上で挨拶をし、VIP席に案内された。二人分の挨拶で時間稼ぎはうまくいったと思ったが、間に合わなかったらしい、一人の囚人が舞台の上に出される。見るからに頑丈そうな檻に入っているところを見ると、終盤に出されるようなメインの商品だろう。開けるのに手間取ったのか? 舞台裏にはまだいるんだろうか。
 そう考えていると、魔法石に通信が入って、「あと一人、舞台に出ちゃったみたい」とウォルズから連絡が入る。VIP席にはロベスティゥと俺しかいない。誰にも聞かれていないだろう。
「どうする?」そう問おうとしたとたん、すぐ目の前を番号の書かれた札が上がる。

「え……」

 それはロベスティゥの持つ札だった。

「倍の額を出そう。もし次に札が上がってもワタシは同じことを言うぞ」

 それ以降札が上がることはなく、オークションの司会者は嬉しそうにへこへこと頭を下げる。俺達は舞台裏へと案内されるらしい、スタッフが迎えにやってきた。
 舞台裏からでも、音声の拡声魔法を使っている司会者の声は聞こえた。

『今の商品以外の他の商品が暴れてしまいました。オークションは中止いたします』
『ふざけるな!』
『買った商品はどうするんだ!!』
『金はもう払ったぞ! ちゃんと返せ!!』

 舞台の上には次々とモノが投げ入れられる。相当怒りを買ったようだ。
俺達が舞台裏に着くと、オークションの司会者が舞台裏にわざわざお金をもらいに来る。彼がオーナーらしい。

「この男のために払う金などない」
「何だと!? 」
「何だ?」

 ロベスティゥにすごまれ、オーナーは怯む。ロベスティゥにすごまれて怯まない相手がいるなら連れて来て見せてほしいくらいだ。

「オークションは中止だろう? さっさと去れ」
「……は、はい!」

 元気よく返事しちゃってるよ。
 オーナーとそのスタッフが去ると、囚人を見ながらロベスティゥは俺に向き直って言った。

「こう言うのを解く魔法は得意だったな? 解いてやれ」
「う、うん」

 脱出系魔法を掛けると、檻の鍵や枷が外される。
 中から現れた人物を見て、俺は度肝を抜く。
 第七のハイブリッド、エリオット・マークス!
 歳は20歳! 灰色の髪を持つ美青年だ! レベルは確か70だった気がする。ちなみにロベスティゥは95、ディスゲル兄様が70、サイオンが99、シストは100から5000に進化する化け物だ。

「キサマはもう自由だ。どこにでも行くがいい」
「自分は自由にはなれない。どこに行こうが掴まり、また売られるだけの話だからだ」
「確かにゲームでもハイブリッドはそう言う運命にあるな……」

 そう俺が呟くと、ロベスティゥはちらりと俺を見てから言った。

「そうか。ならばワタシのしもべになれ」
「ええ!?」
「ワタシから奪い取る奴などいないからな。従うべき時に従えばいい」
「…………いいだろう」
「しもべになったのだから私を敬え」

 上から目線だと感じたのか、ロベスティゥはエリオットに向かってそう言う。

「……無理だ」

 まだロベスティゥが信用ならないらしい。

「まあいいか」
「いいのかよ!」
「別にしもべなど欲しくないしな。むしろいらん。だがまた捕まると言うのならワタシが所有しているように見せる方が得策だろう」
「…………」
「な、なるほど……?」
「分からないなら分からないでいいんだぞヴァントリア。かわいい奴だなキサマは」

 にこにこと笑われ、頭を撫でられる。なんか馬鹿にされてる気がするんですけど。
 俺達は通信機でウォルズ達の見つけた逃亡ルート――もう逃亡しなくてもいいんだけど、こっそり抜け出すために使った――を案内されながら、マアス・グリフォンの屋敷を後にした。


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