転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
242 / 293
第十一章

239話 その間1秒


 イーハの屋敷に帰ってきてから、次に向かう階層――四皇級階最後の一人であるセル、彼がいる階層第10階層ラハードへ向かう準備をする。
 イーハ達吸血鬼は深夜でも元気いっぱいだ。イーハによると最近は信者や町の人達から血を採取させて貰っているらしい。ドナーのような精神を崩壊させて操るようなことは申もうしていないらしかった。町の人と共にかつてドナーだった人達の回復に努めているらしい。
 テイガイアとラルフがいない今、髪や瞳を赤くする薬は作れない。
 ディスゲル兄様とロベスティゥに、セルに会うのはヴァントリア一人の方がいいと説得され、早朝、皆と別れることとなった。
 王宮に戻るらしいディスゲル兄様とロベスティゥと(エンタナ、エリオットも)共に、本軸のエレベーターへ一緒に向かう。本軸のエレベーターは他のどのエレベーターよりも広く、天井のないそれは地下都市の巨大さを物語る。
 本軸のエレベーターに乗るのは初めてだと喜びたいところだが、来ないよな、敵がわんさか来ないよな。
「何警戒してるんだヴァントリア」
「いや、敵が来るんじゃないかと」
「なんでだよ。それより警戒するべきはセルだろう」
「セルに警戒?」

 それにはロベスティゥが答えた。

「あいつは何が何でもキサマを帰そうとしないだろう。帰れなくなった時は連絡しろ」

 そう言ってロベスティゥは通信機を渡してくる。
 おお、攻略本に乗ってたまんまの通信機だ!
「ありがとうロベスティゥ兄様」
「もうそろそろ着くぞ」

 エレベーターの扉が開き、眩しいくらいの真っ赤な町が目に入る。和のような中華のような建物が高くそびえ、並び、ウロボズ特有の真っ赤な衣装を着た人々が街を行き来する。そんな大通りをまっすぐまっすぐ、遥か奥に存在するのがウロボスの第14宮殿流遠るおんだった。
 ロベスティゥとディスゲルと別れ、いざその階層を歩き出そうとすれば、人々の視線が俺に集まってくる。……白い服着てるからか? 確かに珍しいよな。

「久しぶりだねヴァントリア」

 そう言って突然姿を現したのは黒い衣装とシルクハットがとても似合う、あのルーハンだった。

「ルーハン、本当に久しぶりだな!」
「別に迎えに来てやったわけじゃないよ。たまたま通りかかっただけだ」
「一人じゃ心細かったから会えて嬉しいよ」
「フハっ、別に俺は会いたかったなんて思ってねえからな」
「分かってるよ」

 ヴァントリアに会いたいなんて思う奴いないだろうからな。

「着替えが用意してある、こっちだ」
「着替え?」
「ああ。その白はあいつの目には毒だからな」
「なるほど……分かった」

 やっぱり注目を集めていたのはこの服か。
 ルーハンが用意したと言う馬車に乗って、第14宮殿流遠へ向かう。
 流遠に着くと、門番には感動され、通路を行きかう兵士達には拝まれる。そんなに俺の存在ってセルの理想だったのか。って、そっか、町の人に見られてたのって俺の髪と目が赤かったから見られてたのか。
 ルーハンが用意したと言う部屋で、彼が用意してくれた赤い衣装に着替える。

「似合うじゃないか」
「そうか?」

 いつもおんなじ白い服を着てたから色のついてる服は新鮮だな。鏡はないから姿の確認はできないけど、似合っていると言われたから喜べる。
 ルーハンはセルに会いに行く道中、口をつぐんでいたが、彼の待つ部屋の前にやって来てから向き直って、俺の両肩を掴んできて言った。

「俺が必ず帰してやる、約束だ」
「う、うん」

 いつになく真剣な顔をしていたので、少々驚く。ルーハンはやっぱりいい奴だな。
 胸を押さえて深呼吸をしてから、いざ、セルの待つ扉を開くと――


「待っていたよヴァントリアッ!!」


 耳が張り裂けんばかりの、セルの歓迎の声が聞こえてきて後ずさる。

「う、うるさい」
「ヴァントリア……ヴァントリア、何て美しい色なんだ! はぁ、はぁ、お前を見ていると、口に含んで食べてしまいたくなるよ!」

 セルは恍惚とした顔で少しずつ距離を縮めてくる。口から涎が垂れ、動悸が激しい、と呟きながら胸を手で押さえる。異常過ぎて「大丈夫か」と心配してしまった。

「むしろ元気だ!!」
「だからうるさい」

 セルはやっと俺の前まで来ると、熱い視線で舐めるようにじっくりと見てくる。まず髪を眺め、その次に瞳を眺め、そっと肌に触れてくる。

「美しい色だ……何もかも美しい」
「肌は赤くないんじゃ」

 思わず思ったことを口にすると、「そんなことはない!!」と抱き締められる。

「ひえ」
「その火照ったような肌が美しい色に染められて愛らしい」

 距離がとられ、またじっくりと眺められる。そんなに見られるといたたまれない……。
 セルはずっと笑顔だったが、ある一点を見てから、一瞬で真顔になる。
 それに気が付いた時にはもう、――セルの手がそれを引きちぎっていた。
 ロベスティゥに貰った腕輪型の通信機だ。
 セルはそれを地面に落とし、やめだと言わんばかりに踏み潰す。

「汚い色はお前には似合わないよ」

 目にとめて踏み潰すまで、その間1秒。
 それだけで圧倒的な力の差を見せつけられた気がして身体が委縮する。
 俺、ちゃんと帰れるよな?

感想 23

あなたにおすすめの小説

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
 【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!  僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして? ※R対象話には『*』マーク付けます。