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第十二章
245話 いい加減にして!!
赤い町、赤い建物。赤い内装に、赤い商品達。そこは異様な雰囲気を放っているにもかかわらず、多くのお客さんが出入りする。
サベラスに連れてこられた場所には、ハート型の瓶といやらしい下着(女性用を模した男性用)が並ぶお店であった。
「な、な、なんだここはああああああああ!」
しかも堂々と町の中にあるではないか。大通りからは逸れているものの堂々すぎやしないか。看板にもハートがたくさんあしらわれていてなんだか入りたくないんですけど……。
「こちらですヴァントリア様」
「何がこちらなの」
「こちらのお店の持ち主、マキノ・リマークは数多の男達を虜にしまして」
「はあ」
「階層でも問題扱いされるほどです」
「凄すぎない!?」
「住民の中でも裕福層に手を出しているので……」
「なるほど……」
確かゲームでは、この辺りにやってこれなかった。雰囲気が合わないとか意味のわからんことを言ってUターンしていたが確かにこの場の雰囲気には合わない。
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「本当にそのマキノ・リマークさんに頼んでもいいのか?」
「ヒオゥネ様を誘うんですからあいつくらいじゃないと」
「何故か誘うことになってるけど、そ、そう言うことをするのか、俺は!?」
「嫌なんですか?」
「え、え……嫌じゃ、ないけど、でも、早い気が……」
「そうですか?」
お前……さては経験済みだな。
人類を滅亡させんとするくらいサベラスを睨んでいると、店の奥からある男が出てきた。色素の薄い髪と、小悪魔そうな可愛らしい顔立ちの青年だ。その青年がサベラスを見て目を見開いて後ずさる。
「うげ……サベラス!」
「マキノ。店番をサボるな」
「うるせぇ! 何しに来たんだよ!」
二人はどう言った関係なんだろう。そう考えていると、サベラスがちょうどよく説明する。
「こいつとは不本意ながら幼馴染なんです」
「不本意は余計だろ……っ! ……って、誰、こいつ?」
「失礼だぞマキノ。この方はヴァントリア・オルテイル様だ」
「オルテイル? あの王族の? ウロボスにいるなんて珍しいな」
そう言えばウロボスの階層なのに誰もオルテイルのことを敵視しないんだな。サベラスに聞いてみると、オルテイル派みたいに意地悪じゃないと言われた。ついでにハッとして
「申し訳ありません。ヴァントリア様はオルテイル一族であるのに」
と謝られる。
「いいんだよ。オルテイルは色々厳しいみたいだし、ウロボスは緩い感じでいいな」
「はあ……そのようなことは他の人の前では絶対に言わないでくださいね。オルテイル派にウロボスの味方をしたと思われたら厄介ですよ」
「そ、そっか。気をつけるよ」
「それで、お前ら何しにきたんだ」
「王族と分かってもその生意気な態度か……」
はぁ、とサベラスはため息をつく。
「ヴァントリア様が私の主人を愛しておられる。誘惑の仕方を教えてやってほしい」
「いいけど、何で俺?」
「お前はどんな男でも落としてきただろう」
「どんな……まあ、いいけど」
ちらちらとサベラスを見るマキノを見て、何となくだが言ってみた。
「サベラスの初体験ってマキノなのか?」
「うおおおおおおい!? 急に何言い出すんだ!!」
「違います」
「じゃあ誰なんだ?」
「まず何故私が経験していると思っておいでなのですか?」
「そんな風な発言しただろ」
「まあ経験はありますが」
「へ……」
マキノが明らかにショックを受けた顔をする。
「確かランタール様と言うヒオゥネ様の客人で……断ることができず」
生々しい! こんな話聞きたくなかった! 自分で聞いておいてって話だけど、だってマキノだと思うじゃん!
「不本意だったってことか?」
マキノがダメージを受けながら問う。
「ああ」
「そこは断れよ!」
って言うかランタールってあのランタールだよな。まだヒオゥネと繋がりがあったのか。
「私の話はこれくらいにして、マキノには誘惑の仕方を教えてもらってください」
「おすすめの商品はこれ~。媚薬入りローションです!」
「び、媚薬!? そんなの使わない、本人の気持ちを大事にしたいし」
「でも初めての夜は媚薬に縋る子多いよ」
そう言う設定なのだろうか。
「大丈夫、初めてじゃないし、やり方は何となく分かってるから」
サベラスが瞠目しながら尋ねてくる。
「初めてではないのですか?」
「ヒオゥネが相手じゃないぞ。昔……ちょっと不本意な相手と」
「そうですか。マキノ、媚薬入りでないおすすめの商品を選んでくれ」
サベラスは赤い布袋を取り出し、中からお金を取り出しマキノに握らせる。
「おお! 太っ腹~」
「早く準備してヴァントリア様に指導を頼む」
「分かったよ。その間お前はどうする?」
「ヒオゥネ様の予定が早く終わるようヒオゥネ様と交渉してくる」
それってかなり大変なんじゃ。
「あ、ありがとうなサベラス」
「いえ。頑張ってください」
サベラスはおすすめの商品とやらを受け取った後、店を後にする。残された俺は店の奥でマキノから指導を受けた。
それはもう大変だった。
これをヒオゥネにするのか、出来るわけあるかと言うものばかりで結局マキノからも素直になってねだるくらいでいいかもなと言われた。
その素直になるのも、ねだるのも出来ないんだ俺は!
こんなんで大丈夫だろうか。
.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+
迎えに来たサベラスと共に宮殿へ向かい、宮殿に着くとずぐに屋敷の者が使う大浴場へ連れていかれる。それぞれが入る時間帯が決まっていて、今は誰も使わない時間帯なので好きに入っていいと言われた。後ろの準備もしておけと言われて少しだけしておいた。
イーハの教会以来の大きなお風呂に満足し、上がって着替えようとした時だった。
手を伸ばした衣服に異変を感じ、それを手に取り凝視する。
「な、何だこれええええええええ!?」
そこにあったのは、真っ赤な階層にしか売っていない真っ赤な女性用に似た男性用下着である。な、なぜこれが俺の着替えが入っていた筈の籠に入っているんだ。
「待て、俺の着替えはいずこに!?」
他の籠も探すが見当たらない。どうしようと考えていると、廊下からサベラスの声が聞こえてくる。
「ヒオゥネ様はそう言うのに興味があります。それを身に着けてください」
「鬼か!!」
どこからの情報なんだそれは、信用していい情報なのか。
でも着るものもないし……下だけでも。
「ちゃんとブラも身に着けないと衣服は渡しません」
「くそがあああああああああ!!」
口が悪くなっているが仕方がない。こんな状況だと皆悪くなる。絶対そう。
着用してから、自分は変態だと思い始める。
「こんな格好じゃ歩けない! 早く俺の服を返せ!」
サベラスは扉を開けて、衣服を渡してくる。それに手を伸ばして、またもや異変を感じた。
広げてから叫ぶ。
「だから何だこれはあああああああ!!」
フリフリの白いレースが付いたエプロンとカチューシャ。そして黒いワンピース。とそれに似合う白い靴下と黒の靴。
「女性用のメイド服です」
「見りゃわかる!!」
「大丈夫です。うちの召使い用の衣装ですから」
「何が大丈夫なんだ!!」
「今日から貴方はヒオゥネ様だけのメイドです」
「ええええ!? 下着だけでもうさすがにおかしいって分かるんですけど……」
「ヒオゥネ様の趣味は熟知しております。そういうのも好きです」
広げた召使い服を見ながら尋ねる。
「どんな熟知の仕方したんだ……?」
「そう言う方面に興味がないように見えていたので刺激するためにエッチな本を罠に仕掛けていたのですが」
「どんな罠だ……」
「表紙は見えないように細工してあの人が好きそうな内容の題名を書いたモノをあの人は疑いもせず開きます。仕置きはありますが慣れたものです。ヒオゥネ様はそう言う類はすぐに閉じますが、偶に数秒固まる時があります。多分想い人がその格好をしているところを想像していたのでしょう」
「想い人って、いたとしても俺じゃないし……」
「私は貴方のことだと思います」
そこまではっきり断言されると、そうであってほしいと思ってしまう。
「この機を逃したら、もう会えなくなるかもしれません。チャンスは今だけしかありません」
そうだよな、本体に会える機会は少ない。ちょっとやりすぎな気がするけど頑張るぞ!
「あ、メイド服を着る前にこのスケスケの羽織を着てください」
「もういい加減にして!!」
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