転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第十二章

256話 決別


 目が覚めると、そこは真っ白な世界だった。誰かの腕に抱き抱えられていて、それがテイガイアであることに気づく。

「テイガイア! 無事か!」

 テイガイアの隣にはラルフが立っていた。テイガイアの支えを受けながら立ち上がると、テイガイアが申し訳なさそうな顔をしながら言った。

「ここはオリオです」
「俺タチはもう意思がなくなるだろう」

 意思がなくなる?

「つまり……」
「…………」
「…………」

 つまり、二人は元の姿に戻れず、魔獣のまま暴れ続けると言うことだ。
 つまり、二人が死ぬと言うことだ。
 身体が震え出し、何も言えなくなっていると、ラルフが「お別れだ」と言い出した。

「な、何を言って」

「もうこうなったら助かる術はないんです、バン様」
「今だって話せてるじゃないか! 大丈夫、俺が、俺が呪いを解いてやるから!」

 そう怒鳴ると、それを宥めるようにラルフの手が俺の頭を撫でる。

「ラルフ……?」
「あの時、泣いてくれてありがとう」
「え?」
「お前が俺タチに一方的に約束して行った時、俺タチは、生きたいって思えたんだ」
「ら、ラルフ」
「今回もそうだ、アンタが来てくれたから、生きたいって、思った。それでやっとこの状態になったんだ」
「この、状態って……オリオのことか?」
「ラルフくんが呪いのコントロールに長けていたから、この状況がつくれたんですよ」
「でももうそろそろ限界だ。最後に会えてよかった」
「さ、最後ってなんだよ、変なこと言わないでくれ」
「助けに来てくれてありがとな」

 そう言って、ラルフの顔が近づいてくる。唇に冷たい感触が乗って、思わず目を閉じる。それが離れて行くと目を開け、ラルフの姿がなくなっていることに気が付いた。
 涙が溢れ、周囲を見渡す。

「ラルフ!」
「私より彼の方が呪いが少ない、恐らくもう呪いが吸われてしまったんでしょう。もうここには戻ってこれません」
「テ、テイガイア、助ける、助けるから! お前達を絶対に助けるから!」
「バン様、落ち着いてください」
「お願いだ、もう少しだけ、もう少しだけ頑張っててくれ、俺が絶対に助け出してみせるから!!」
「記憶の世界でのこと、覚えていますか」
「え……?」
「あなたが、いてくれなければ、私はおそらく、未だに実験体として、いろんな人を苦しめていたかとしれません。……自分が化け物であることは知っていました、私はあの頃、死にたくて仕方がなかったんだ」
「テイガイア……?」
「あなたが好きと言ってくれた時からずっと、私はあなたが、特別でした。私も好きです。あなたを愛しています」
「お、俺も好きだ、だから待って。助けるから、絶対に」
「もう既に助けられていますよ、あの時、私は助けて貰ったんだ。あなたのことを考えるだけで、全ての苦しみから解き放たれるんです。幸せだった。あなたがいてくれると思うだけで、私は充分、助けられていたんです。バン様、あなたは何度も私を助けに来てくれた。真っ暗闇へ落ちてしまった私を、何度もその手で引き上げてくれた。何度も温かい光で包み込んでくれました」

 テイガイアに抱きしめられ、何となく、押さえ込まれているような気がしてもがく。

「よせ、おねがいだ、もう」
「バン様、愛しています……あなたを、愛している。あなたのそばにいたい、私は欲張りになってしまった、あなたがいるだけで、幸せだった筈なのに……まだ、あなたのそばにいたいんです」
「テイガイア、まだ、まだだッ!! まだ、まだお前は、幸せになれるんだ、だってずっと、閉じ込められてたんだろ、ヒオゥネに実験されてたんだろ、やっと、やっと自由になれたのに、これから俺達と、たくさんの人を救って……」

 オリオは既に消えかかっている。

「やだ、いやだよ、テイガイア……。一緒に償って行こうって約束したじゃないか……待って、待ってくれ、頼む」
「バン様、愛しています」
「テイ――」

 テイガイアの顔が降ってきて、柔らかく湿った感触が唇の上に乗る。目を大きく見開いてそれを驚く。
 愛してる、って……。
 いつも、言ってたけど。
 からかわれていると、口説き症だと、思っていたけれど。
 テイガイアの涙と、深いキスがそれは間違いだと証明してくる。
 オリオは崩壊し始め、テイガイアの身体も消えかかって行く。
 やめろ、やめろ!
 待ってくれ、やめてくれ!
 消えないでくれ!
 涙が溢れ出し、テイガイアの服をぎゅっと握る。触れるだけの熱い口付けが離れていく。

「テイ――」

 名前を呼ぼうとすれば、再び顔が近づいてきて、キスをされる。

「んん、ん、んん!」

 言わせてくれ、話させてくれ、テイガイア。
 お願い…………言わせてくれ。
 どんどん、唇の熱が消えていく。
 テイガイアの愛情が込められた甘やかすような優しいキスが消えていく。
 力がかなわなくて、言いたいことも言えなくなった。
 お願い、お願い。言わせてくれ。テイガイア。

言わせて。行かないで。

死なないで。テイガイア。

 そっと唇が離れるが、もう姿は見えなかった。

「バン様、あなたは私の光だ」

「待ってくれ、待って!! いやだっ!」

「好きと言ってくれて、ありがとう」

 七色の光があたり一面を覆い、オリオの最後を知らせてくる。

「テイガイアあああああああっ!」

 オリオは消え、俺は真っ白な世界に投げ出される。徐々にその白い世界は暗転していき、無意識に身を委ねるように目を閉じた。


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