転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第十五章

278話 希望の光


 1年後。

 呪いを発生させたのは僕だと触れ回り、嫌われ者となった僕は嫌悪感を疑似呪いとして集め、何度もオリオを発生させ過去の世界と現在を行き来していた。
 今日も過去の世界へと向かおうとしていた。

「ヒオゥネ」
「ウォルズさん」

 ヴァントリア様がどうなったかは分からなかったが、誰もが死んだものと考えていた。
 ウォルズさんも心のどこかで彼は生きていると考えているのだろう、ずっと僕のことを止めなかったが、ある日、声を掛けられた。

「もうやめろヒオゥネ、こんなの、こんな、お前のこんな姿見たら、ヴァントリアが悲しむ」

 悲しむ……?

 悲しむ、ヴァントリア様が?

 悲しんで欲しくない、泣いて欲しくない、苦しんで欲しくない。

 ヴァントリア様。
 あの人がいたら、確かに、涙目で掴みかかってきている。
泣いて胸にすがり付いてきている。
 もうやめてくれ。頼む。俺はどうなったっていいから。
 きっとそんなことをいいながら。
 違うんです、ヴァントリア様。僕はそうじゃないんです。
 他の誰がどうなったっていいんです、貴方さえ、いてくれるなら。

「こんな方法で生き返っても、ヴァントリアは喜ばない!」
「喜ばなくたっていい、嫌われたっていい、どんな手を使ってでもあの人を生き返らせる!!」
「ヒオゥネ!!」
 ウォルズさんの腕を振り払い、自分のオリオへと向かった。


.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+


「ヒオゥネ……!」

 ここは、どこだ。

「ヒオゥネ、しっかりしろ、オイ!」

 僕はベッドの上で目覚めた。自分を呼ぶ声の主が、顔を覗き込んでくる。

「目が覚めたか」
「ここは……」
「第二階層だ。最後に会ってから2年も経ってるんだぞ。お前まで死んじまったのかと思った」
「2年……何の話ですか。……あなたは一体誰ですか?」
「は…………」
「僕は……戻らないと」
「戻るって……どこに?」
「……どこでしたっけ」

 相手はそれを聞いて目を見開く。そして、必死に掴みかかってきた。

「ヒ、ヒオゥネ! も、もうやめるんだ、オリオとこっちの時間は違うんだ、お前が数日過ごしただけでこっちは2年も経つ、博士の話じゃ逆も有りうる。お前が向こうで何年過ごしても…………な、んねん、すごして、も……こっちでは、2年しか、経ってない……」

 相手の顔は真っ青になり、ぽつりぽつりと言葉を発する。

「ヒ、オゥネ、お前、何年向こうにいたんだ……一体、お、お前だと、何年でヴァントリアを助けることを忘れられるんだ……どれだけの時間向こうにいたんだ」
「ヴァントリア? 誰ですか?」

 眩い金髪の青年は、ヒュッと息を呑む。

「わ、忘れてるのか、どこまで忘れてるんだ、いや、どこまで覚えてるんだヒオゥネ!!」
「僕には大切な人がいて……愛している人がいて、かつて愛し合っていた筈だったんですが、僕がそれを拒んだんです。その人を救うために。でも、救えなかった。何百人の人を救いたくても救えなかった。でも、愛している人たった一人を救うことなら出来ると思っていた。けど、救えなかった。その人が誰であるかは、忘れてしまいました。でも、助けなきゃ、助けてあげなきゃいけないんです。愛しているんです、例え、顔も、声も、名前も、仕草も、覚えていなくても、最初からそうだった。唯一、愛することのできた存在です。あの人だけは、救いたかったんです。いえ、助けなければならない」

 確かに、助けてと、言われたから。

「ヒオ、ゥネ……」

 金髪の青年は眉をへしゃげて泣きそうになりながら言う。

「忘れているのに、もう、誰であるかも覚えていないのに、それでもヴァントリアの為に足掻き続けるって言うのか」

 不思議と彼の姿を見ていると、安心感さえ覚える。

「そんなの、そんなの……」

 彼は目に力を込め、涙目で言った。

「もしその働きでヴァントリアが救われたとして、お前はどうなるんだ。ヒオゥネ、お前は一体どこに行く気なんだ」

 答えられないでいると、彼は俯きながら言った。

「そんなの、ヴァントリアが、可哀想だ」

「かわい、そう? だれが?」

「好きな人が、自分のために悪者になって、しかも死んでからもずっと助けようとしてるなんて、そんなの可哀想だ!! あいつは死んだんだ、お前が前を向いてくれなきゃ、ヴァントリアが生命をはった意味がないじゃないか! お前は今でもアイツの気持ちを拒んだままだ! 好きなら、愛してるならこんなことやめてくれ!」

「……好き? 誰を?」

 金髪の青年はショックを受けるような顔をする。

「……思い出せない。何も、思い出せない。愛している人がいた、そこまでは覚えているんです。……あれ」

 分からない。分からない。

「誰がいたんだ。誰がいたんでしたっけ」

「………っ、ヴァントリアだっ!! ヴァントリア・オルテイルだ!!」


 ヴァントリア……ヴァントリア、さま…………がいた?


「ヴァントリア様。ヴァントリア様。何でだろう、唱えているだけなのに、酷く安心する。愛しい」


 あなたは一体、僕のなんなんだ。


 会いたい。

 ヴァントリア様。

「ヒオゥネ……!」

 視界がぐらりと揺らぎ、ベッドの中に意識は沈んだ。


.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+


 目覚めると、金髪の青年は眠っていて、僕はいつも通り自分のオリオへと向かおうとした。
 自分のオリオへと入ろうとしたその時、別の何かに引っ張られるような感覚がして、自分のオリオへ辿り着けなかったことに気がついた。
 地面に放り出され、四つん這いになり、ゆっくりと顔を上げる。
 眩い光に、思わず腕を掲げて眉を顰める。
 光に目が慣れてくると、巨大な透明の結晶の中に、赤い髪の青年が囚われている光景が目に入った。
 血のように真っ赤な髪、長い睫毛に見惚れながら、立ち上がり、それに近づいていく。

「ヴァン……トリア様」

 彼が探し続けてきたヴァントリア様であると、すぐにわかった。

「そうだ、僕はずっと、ずっと、貴方のために」

 忘れていた筈の記憶が、あなたとの記憶が、蘇ってくる。

 やっと……見つけた、ヴァントリア様。




 彼と自分を隔てる、輝くイグソモルタイトに触れる。

 七色の光が自分を包み込んでいる。





 呪いとは、憎しみ。

 憎しみとは、自分を救おうとし、友人や家族を思う、強い意志。

 強い意志とは強い願い。

 強い願いが集まれば、それは、希望となる。


 憎しみとは希望。

 呪いとは、憎しみが集まったモノ。

 呪いとは、希望の光。


 これは、皆の、希望の光。



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