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17 オプション
しおりを挟む次の日、僕は朝早く目覚めた。侯爵様はまだ隣で眠っている。
まだ侯爵様の物が僕の中に挿ってるような感覚が残ってる。終春節もあと三日で終わりだ。全然弟に連絡してないから、セドリックは心配してるかも知れない。
侯爵様が側仕えを僕の家に送ったと言っていた。魔力のある上級使用人をわざわざ送ってくれるなんて、僕の家には魔石を使うような物は明かり位しかないのに。
身体がひとつに繋がったせいだろうか? 侯爵様の寝顔が少し愛しく思えた。
……いや、この感情は本来の感情じゃない。
こんな状況で身体を結び合ったからだ。
大体、侯爵様だって、少年の身体を愛したかっただけだ。
たまたま神殿で見かけた美しい少年を、金で何とか出来るならやりたい、そう思っただけに過ぎない。
……これは愛情なんかじゃない。
自分に言い聞かせて瞼を閉じた。
目覚めると、侯爵様は起きていて、長椅子で本を読んでいた。
寝台から降りて、裸だということに気付き、ガウンを羽織って侯爵様の所に行った。
「やっと起きたか」
「すいません、遅くまで寝ていて」
「……昨夜は私も君を愛し過ぎた。反省してる。身体は大丈夫か?」
「何かまだ侯爵様のが挿ってるみたいな感じがする」
「……!!」
侯爵様はこめかみを押さえていた。
「ルイス、君に話がある」
ぽんぽんと長椅子の隣の席を叩く侯爵様。そこに座れということだ。
僕が座ると侯爵様は咳払いをした。
「愛人契約にオプションを付けたい」
「……オプション? 何ですかそれは?」
「追加でお願いしたい約束事だ。もちろんその分余計に金は出す」
「変な事だったら厭ですよ?」
「変……ではないと思う」
「何です? 追加でお願いしたいって」
「私の事を恋人だと思って接して欲しい。要するに、恋人の振りをして欲しいって事だ」
「……えっ」
「金は……そうだな、追加で一月30万ギルでどうだ?」
「お金のことはいいんですけど……」
僕が沈んだ顔をしたからか、侯爵様は僕の顔を覗きこんだ。
「どっ、どうした? そんなに厭なら別にいいんだぞ? そんな事をしなくても」
「いえ、何だか悪いなと思って……」
「は?」
「だって、恋人の振りをするだけで一月に30万ギルも貰えるんでしょ? なんだか僕がぼったくってるような気分です」
「……くっ、ははははっ! やっぱり君は面白いな」
僕は自分がそんなに面白い人間だとは思わない。でも侯爵様は何かに付けて面白いと言って笑ってくれる。失礼な人だけど、ちょっと嬉しい。
侯爵様は僕がその話を承諾したと思ったのか、追加オプションの契約書を出してサインをするように迫った。
「侯爵様、質問なんですが」
「ん? 何だ?」
「もし、本当に僕が侯爵様の事を好きになっちゃったらどうするんです?」
「……!!」
「今の所は何とも思ってませんけど……」
侯爵様はまたこめかみを押さえていた。
「……君が私を好きになる事は絶対……無い。だから、そんな心配はしなくてもいいんだ」
「そんな事分からないのに」
侯爵様は悲しそうに笑って言った。
「私には分かるんだよ」
僕はその時、何で侯爵様がそんな悲しそうな顔をするのか分からなかった。
そして、出されたオプション追加の契約書にサインをした。
その契約書にはお互い名前で呼び合う事もルールのひとつとして書いてあった。
「僕が侯爵様の名前を呼ぶんですか……」
「何だ? 厭なのか?」
「厭と言うか、自分より年上の方を呼び捨てするのに抵抗あるだけです」
「随分躾けが行き届いてるな?」
「……フォルカー様、じゃだめですか?」
「契約書には『ファーストネームの呼び捨て合い』となっているが?」
と、ぴらぴら契約書を見せる。
「ふ、……フォルカー?」
侯爵様を見上げるとこめかみを押さえていた。
僕、また変なことしたんだろうか?
そんなにこめかみを押さえるなんて、頭でも痛いのかな?
「ルイス!」
急にぎゅっと抱きしめられてびっくしりた。
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