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一通り満足したのか今度は胸に手を伸ばしてきた。
「やめてください、こんなところで」
そう訴えるが聞いてもらえるはずもなく、胸を揉みしだかれる。
乳首に触れられると声が出そうになってしまうが必死に我慢した。
しかし、それを許さないとばかりに強く摘まれると思わず声が出てしまった。
それを聞いたレリオ様はニヤリと笑うと更に激しく責め立ててくる。
「やぁ、やめてぇ」
懇願しても聞いてくれるはずもない。寧ろどんどんエスカレートしていく一方だ。
スカートの中に手を入れられ下着越しに触れられるとビクッと反応してしまった。
それを見たレリオ様は嬉しそうに微笑むとこう言った。
「濡れているぞ、そんなに気持ちよかったか?」
恥ずかしくて顔を背けると強引に正面を向かされ、キスをされた。
それからしばらくした後、ようやく解放された私は放心状態で横たわっていた。
そこへレリオ様がやってきて、私を抱き上げると浴室へ連れて行き、身体を洗ってくれた。
その間、私はずっと泣いていたと思う。
そんな私を慰めるように優しく抱きしめてくれたレリオ様だったが、不意に耳元で囁かれた言葉で背筋が凍り付いた気がした。
「婚約破棄はしないからな、お前は一生俺のものだ」
そう言われてゾクッとした感覚を覚えたのだった。
お風呂から上がると、着替えを手伝ってもらい、髪を整えてもらった。
そして、馬車に乗せられて王城へ向かうことになったのだが、その道中でレリオ様はこんなことを言い出した。
「そうだ、これから行く場所は君の実家でもあるわけなのだが、先に言っておくことがある」
なんだろうと思って首を傾げると、彼は驚くべきことを口にしたのである。
それは衝撃的なものだった。
なんと私の実の父と母は既にこの世にはいないというのだ。
ショックのあまり呆然としていると、いつの間にか目的地に着いていたようで降りるように促される。
言われるままに降りてみるとそこは王宮だった。
どういうことだろうかと思っていると中に案内される。
「ここで待っていろ」
と言われたので大人しく待っていることにした。
暫くしてレリオ様が戻ってきたかと思うといきなり抱きしめられた。
驚いていると彼は耳元で囁いた。
「大丈夫だ、俺がついている」
その言葉に安心感を覚え、身を委ねることにした。
しばらくすると一人の男性が部屋に入ってきて挨拶を始めた。
どうやらこの国の宰相らしいが正直言って興味はない。
そんなことよりも気になることがあったからだ。
それはこの男性の態度である。
まるでこちらを見下しているかのような視線や話し方をしているからだ。
それに気づいているのかいないのかはわからないが、レリオ様は気にする様子もなく対応していた。
そして、話が終わると男性は部屋を出て行った。
「ミラ嬢、大丈夫かい?」
心配そうに見つめてくる彼に大丈夫ですと答えると安心したような表情を見せた後、こちらに向き直って言った。
「では、行こうか」
そう言って手を差し出してきたのでその手を取るとエスコートしてくれるようだった。
部屋を出る前に振り返るとそこには先程の男性の後ろ姿が見えた。
それを見て思うことはただ一つ、あの男は絶対に許せないということだった。
絶対に復讐してやる! そう心に誓ったのだった。
あれから数日が経過したある日のこと、私は再びあの場所に来ていた。
目的はもちろん復讐のためだ。
そのための準備はすでに整えてある。
後は実行に移すだけだ。
まず最初に行うべき事は情報集めである。
「失礼いたします」
と言って部屋に入ってきた使用人に声をかけると彼女は驚いた表情を浮かべた後で聞いてきた。
やはりまだ慣れないのだろう、無理もないことだと思いながらも彼女に指示を出すことにする。
最初は戸惑いを見せていた彼女だったが、すぐに行動に移してくれたようだ。
さすが優秀だと感心するばかりである。
彼女が戻ってくるまでの間、暇だったので読書をすることにした。
本の内容は冒険小説で、主人公が強敵と戦いながら仲間と共に成長していく物語であった。
読み進めていくうちにあっという間に時間が過ぎていき、気づけば夕方になっていた。
そろそろ夕食の時間だと思い、食堂へと向かうことにした。
途中ですれ違う人達から声をかけられる度に笑顔で応えつつ進んでいくと、やがて目的の場所に辿り着いた。
中に入ると既に何人か先客がいるようだ。
(あら、あれはもしかして……)
見覚えのある顔があった。その人物はこちらに気づくと声をかけてきた。
彼女の名前はセシリア、私の幼馴染であり親友でもある人だ。
彼女とは小さい頃からずっと一緒で、よく一緒に遊んでいたものである。
「ミラ、久しぶりね」
そう言って抱きついてくる彼女を受け止めるとそのまま抱き合ったまま話をする事にした。
「元気そうで何よりだわ」
そう答えると彼女もまた嬉しそうに微笑んでくれる。
「ええ、貴女も変わらないみたいで良かったわ」
そんなやり取りをしているともう一人の人物がやってきた。
その人物を見て私は驚愕した。何故ならそこにいたのは私が最も苦手としている人だったからだ。
その人はニヤニヤしながらこちらを見ており、その視線がとても不快だった。
(なんなのこの人?気持ち悪いわね)
そう思っていると不意に声をかけられた。
振り向くとそこに立っていたのは私の実の父親だったのだが、何故か嬉しそうだ。
いや、違う、これは喜んでいるのではない、何か企んでいる時の顔だ。
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