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それから数年後、無事に出産を終えると、私はユリウス様のお子様を産んであげられたことがとても嬉しかった。
私のお腹の中には新たな命が宿っていたのである。
「ありがとう、カルネ。僕達の子供だよ」
ユリウス様は私を優しく抱き締めて下さった。
私はユリウス様の子供を身籠もる事が出来てとても幸せな気持ちでいっぱいだった。
しかし、ユリウス様は最近様子がおかしい。
どこか上の空で考え込んでいるような気がしていた。
私にはその理由が分からなかった。
ある日、私はユリウス様にある提案をした。
「ユリウス様、今から少しだけ散歩に出掛けませんか?」
「え? うん、構わないけれど。何かあったのかい?」
私は微笑むと、ユリウス様の手を引いて外へと出た。
私達は手を繋いで街へ出掛けた。
ユリウス様は私とのデートを楽しんでいるようだ。
私はユリウス様の喜ぶ顔を見るのが好きだ。
ユリウス様が喜んでくれると私も嬉しくなって、もっと笑顔にさせたくなる。
私とユリウス様が歩いていると、誰かに付けられている事に気が付いた。
「ねえ、ユリウス様」
「ん? どうしたんだい?」
私はユリウス様の腕に自分の腕を絡ませると、その人物の後を追った。
暫く歩くと人気の無い場所に出る。
私はその男に声を掛けた。
「ユリウス様を付け回すなんてどういうつもりかしら?」
私がそういうと男は慌てた様子で逃げようとするが、ユリウス様がそれを許さなかった。
「お前は誰だ?」
「ひ、人違いでは無いでしょうか?」
男は苦し紛れにそういうが、私は知っている。
この男の正体は……
「貴方は私の婚約者だった方で間違い無いですよね?」
私がまだ幼い頃に親同士が決めた婚約ではあったが、それなりに仲良くやっていたはずだった。
しかし、私が成長するにつれて彼への想いは冷めていき、いつしか嫌いになっていった。
彼は私に嫌われていることを知らない。
ユリウス様は私に問い掛けるが、私は答えることが出来なかった。
「おい、貴様。僕の姫に何の用だ?」
ユリウス様がそう言うと、その人は顔を青ざめさせていた。
私はその人が誰なのかを知っている。
そう、彼はユリウス様の従兄弟に当たる人で、次期国王となるべきお方なのだ。
つまり、私の婚約者だった人である。
私はユリウス様が彼を睨んでいるのを見て、怖くなってしまった。
私は彼に歩み寄ると、その手を握った。
「ごめんなさい。ユリウス様は悪くないんです。全て私のせいなのです。私の我がままのせいでユリウス様がこんな目に遭われてしまった。本当に申し訳ありませんでした」
私はユリウス様の前で深く頭を下げて謝罪した。
私が謝ると、ユリウス様は私を庇うようにして前に出た。
「お前がカルネを虐めたのか!? 」
「ち、違う! 誤解なんだ!」
「貴様は黙れ!」
ユリウス様は剣を抜くと、彼の首元に刃を当てた。
その目は怒りに満ちていて、私ですら震えてしまうほどだ。
「貴様、カルネに一体何をした?」
「何ってお前と同じくことをしてやった、お前がカルネを酷く抱いたのは有名な話だからな」
ユリウス様は私の方を向いた。
すると、
「カルネ、大丈夫かい? あいつに酷いことされなかったか?」
ユリウス様は心配そうにしている。
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